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【ペンと箸 刊行記念!】田中圭一:制作秘話インタビュー「はじめはその場しのぎのつもりだった」

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表紙デザインが決定!もちろん田中圭一センセイが書いています

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▲2017年1月12日発売予定 『田中圭一のペンと箸』(小学館)書影より

 

先日、大好評のうちに連載終了となった『ペンと箸—漫画家の好物—』。現在、単行本発売に向けた作業の真っ只中の田中圭一先生にお話を伺いました。

聞き手は、ビッグコミックスピリッツやビッグコミックオリジナルなどの編集長を務めた、当代きっての「マンガ読み」堀靖樹氏。じつは、堀さんは田中先生の『昆虫物語 ピースケの冒険』の初代担当編集でもあります。

 

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田中圭一:マンガ家。京都精華大学 特任准教授。

 

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堀靖樹:小学館 第四コミック局 EXプロデューサー。コミックス企画室 編集長。

 

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堀靖樹(以下、堀):田中先生、久しぶりだね。

 

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田中圭一(以下、田中):お久しぶりです。その節はどうもお世話になりました。

 

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堀:さっそくだけど『ペンと箸』連載、お疲れ様でした。全部読みましたよ。いやぁ、面白かった。面白いと同時に、このマンガの執筆は、さぞ大変だっただろうな…と。

 

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田中:大変でしたねぇ…(シミジミ)

 

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堀:だってさ、もうマンガとして、てんこ盛りすぎるよ! いい話だわ、グルメだわ、パロディだわ。本人じゃなくて2世に話を聞いているというのもいい。でも、完全に積載量オーバーですよ。公道を走ってたら捕まるやつです。

 

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田中:自分としてもなんでこんなこと始めちゃったんだろう、というのは連載中に何度も自問しました(笑)。

 

連載のきっかけは「二世会」。最初はその場しのぎのつもりだった

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堀:そもそも、なんでこの企画が立ち上がったの?

 

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田中:もともとは、ぐるなびさんから、何か連載ができないかとお話をいただきまして。

 

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堀:ぐるなびも勇気あるな。田中先生が下品なマンガを描けるのは俺も知ってたけど(笑)。

 

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田中:そうなんですよ! それで、グルメといってもなぁ…と思い悩んでいたところ「そうだ、二世会があるじゃん!」と。

 

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堀:二世会?

 

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田中:はい。手塚るみ子さんたちが中心になっているマンガ家の二世たち(ご子息・ご息女)の交流会があるんです。その交流会のことを知っていたので、マンガ家のお子さんたちへのインタビューものなら、なんとか描けるかもしれないと思い…

 

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堀:なるほどね。

 

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田中:ただ、あくまでそのときは、その場しのぎの企画のつもりだったんですね。6回くらいまで、どうにかこうにか、この企画で持たせて、その間に別の企画を練ろうと。それが回を追うごとに好評になってしまって、やめるにやめられない状態になりました。

 

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堀:そうすると、マンガ家のお子さんたちは、おもに二世会からのご紹介だったわけですね。それは心強い。

 

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田中:はい。手塚るみ子さんをはじめとする二世会の皆さんには連載の初期から本当にお世話になりました。

 

マンガ家の子どもを探して四苦八苦 ー 連載の苦労

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田中:ただ、さすがにそれだけでやりくりできるわけでも無いので、あとは知り合いの編集者さんにご協力いただいたり、細々としたツテをなんとかたどってご連絡させていただいたり、苦労しましたね。

 

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堀:やっと連絡がついても、あれでしょ? マンガ家の子どもにはろくでもないやつも多いからなあ(笑)。

 

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田中:いやいや、そんなことないですよ! はっきり否定しておきます(苦笑)。でも取材を受けていただいたお子さんたちは、本当に親子関係が良くて羨ましいくらいでしたね。

皆さん、しっかり親のことを尊敬していて、その上で、今はしっかりと自分の道を見つけて歩んでいるようなステキな方ばかりでした。もちろん、そういう方だから取材を受けてくださるのでしょうけど。

 

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堀:連載が好評になるに連れ、逆に「取材してよ」みたいなラブコールはなかったの?

 

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田中:直接はなかったですが、人づてに聞いたりはしましたね。本当にありがたかったです。ただ、この連載って本当に難しいんですよ。やっぱり、それなりに名の知れたマンガ家さんでないといけないし、お子さんがいて、取材ができる年齢になってなくちゃならない。一度、本当に取材対象者が見当たらなくて、いっそ、唐沢なをきさんのところのお子さんに取材させてもらおうかと真剣に悩みましたが(笑)。

 

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堀:いや、あそこはまだ幼児でしょう(笑)。

 

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田中:あとは、そもそもなんですけど僕がその人のマンガをしっかり読み込んでいて、なおかつ「模写できる」マンガ家でないとダメなんです。ネットでは、某宗教法人の代表になぞらえて、やれ今回も田中が降霊術を使っただの好き勝手に言われてますが、毎回毎回、それはもう一生懸命、練習をしてるんです。で、やっぱりどう逆立ちしたってマネできないひとがいる。

だから、感覚的には、そうですねぇ、そういう諸々の難所を乗り越えて企画書を送っても、実際に取材までこぎつけられるのは5回に1回というところだったのではないでしょうか。

 

田中圭一の本当の「絵柄」は劇画調?

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堀:いま模写の話が出たところで、その辺の話を掘り下げたいんだけれども。田中先生は劇画村塾の出身でもあるし、もともと劇画調の絵を描いていましたよね?

 

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田中:そうですね、『ドクター秩父山』の印象もあるし、一般の読者にはそういう印象が強いかもしれません。でも、実はそこまで劇画調に思い入れが強かったわけでもないんですよね。

当時は劇画調が全盛期だったことに加えて、これでギャグをやってるひとがまだあまりいなかったんです。それで少し戦略的にやっていた部分もあります。でも、やっぱり絵柄っていうのは時代の流れもあって、その後、ある編集者に「もうこの絵は古いんだよね」と言われてしまって(苦笑)。

 

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堀:そこで罰当たりにも、手塚治虫先生のタッチが出てくるわけだ。

 

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田中:まあ、いろいろと事情はありますが、順番的にはそういうことになると思います。

 

田中圭一が選ぶ「特に印象に残っている回」

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堀:いくつか印象に残っている回の話を聞きたいんだけど…

 

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田中:まず初回だったこともあって、ちばてつや先生の回でしょうね。

 

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堀:この回の少女のスケッチは秀逸だよなあ。まさに「ちばてつやタッチ」。しかも、これ、実話なんでしょう?

 

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田中:もちろん、実話です! ただ、ちば先生もお年なのでこんなに若い女性だったかどうかはわかりませんが…

 

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堀:やっぱり難しかった?

 

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田中:連載の初回ということもあって、全編、ちば先生の絵柄でいったわけじゃないんですよね。要所を押さえる、という感じで。

ただ、諸事情があって本宮タッチを習得していたので(笑)そこをベースにして、なんとかちばてつやタッチをものにした、という感じですね。

 

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堀:なるほど。

 

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田中:あと、描いてから気がついたことがあったのは、赤塚不二夫先生。赤塚マンガって実は、横顔や後頭部がほとんど出てこないんですよ。バカボンにしたって、斜め前の顔しかなくて。なのでこの回はマンガを構成するのも苦労したなあ。

 

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堀:ああ、それはマンガ家ならではの視線だね。

 

実は不評だった?似てないと言われた回

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堀:ところで、どれも俺としては「さすが田中圭一」という感じなんだけど、ネットだと全然似てないとか好き勝手なことを言ってくるやつがいるんだって?(笑)

 

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田中:(声を大にして)そりゃいますよ!! もちろん、それも含めてネット上の反響に支えられたマンガなので、励みにしていますが。

なかでも、江口寿史さんの回は、ネットでも「似てない」という声がちらほらあって傷つきました(笑)。でも、言い訳させてもらうと、取材した娘さん本人(実里さん)には似てるんですよ! ただ、江口さんの絵に出てくる女性って、実里さんとはちょっと違うタイプの女性なんですよね。この回以後、本人に似せるよりは、どちらかというと対象のマンガ家さんのキャラに似せるようになりました。

 

単行本では、このほかにも取材対象の全マンガ家さんの絵の模写ポイントや取材裏話などを「田中圭一のひとこと」として収録しています。また、巻末には当代随一のパロディ漫画家・田中圭一がそのモノマネ芸の「秘訣」を語る完全描き下ろし”オリジナル”短編「漫盗」も収録。ぜひお手にとってご覧ください。

 

連載を終えて。田中圭一の新たな代表作になったかも!?

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堀:では、全23回の連載を終えて一言、いただきましょうか。

 

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田中:辛いことも多かった連載ですが、読者のみなさんに支えられてなんとかここまでやってこれました。

最近は、京都精華大学の教員なんかもしていてですね、保護者の方と話す機会も増えました。いくら偉そうなことを言っても「先生、ありがとうごうざいます! ぜひ先生の作品を読みたいので作品名を教えてください!」と言われてしまうと…絶対に見てほしくない作品ばかりで(笑)。今後は私の代表作として(?)胸を張って、このマンガを差し出したいと思います!

 

 

田中先生、長期にわたる連載、お疲れ様でした! ぐるなび「みんなのごはん」も単行本の発売を心待ちにしています。

 

 

(聞き手:堀靖樹氏/構成・文:編集プロダクション studio woofoo byGMO

 

 

田中圭一『ペンと箸』は2017年1月12日発売!

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『ペンと箸』連載アーカイブはこちらから

r.gnavi.co.jp


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