金沢には全国的に有名なラーメン店がいくつかありますが、そのひとつが今回紹介する「神楽」です。
このお店、2009年、小林孝充著「ラーメンガイドブック東日本編」では、堂々の第一を記録。2010年には全国テレビ放送にて、ベスト30にも選ばれている実力派です。
その知名度とともに、注目すべきは「自然派ラーメン」を標榜する珍しいお店だということです。
コシのある麺とあっさりなのに大満足のスープがスゴい
一番人気「神楽そば」2種類のチャーシュー、肉ワンタン3個、半熟味玉入り。1080円。
良く通る道沿いに「自然派ラーメン」の看板が立っているのは知っていました。「自然派ラーメンか、珍しいな」と思いつつ、今まで行ったことはありませんでした。しかも、大体いつでも駐車場が一杯。そこまですごいお店とは知らず、「そんなに美味しいのかな」と思っていたのです。
いくら体に良いと言っても、美味しくなければ流行るわけがないと思います。そして、金沢には元々ラーメン文化はなく、金沢独自のラーメン店は少ないのですが、今ではそこそこラーメン店自体の数はあります。
「なぜだ?なぜここが有名なのか?」。そのワケを探るために取材にやってきました。
まずは「一番人気です!」とメニューに書かれた「神楽そば」を注文。「味噌味も出来るんですね~」と言ったら、店主が「おすすめは醤油だよ」と一言。じゃ、醤油で・・・。
澄んだスープの醤油ラーメン。化学調味料や添加物を使わないことにこだわった「完全無化調ラーメン」なんて、「物足りない味なのでは・・・?」と、この時点では少々、まだ心配でした。
あ、「コシ」がある! 喉ごしも良い、しっかりした麺だ。ツルツル感があって、風味も高い。
それもそのはず。この「麺」、昨年(2015年)の3月まで、足踏み、手もみを繰り返して手打ち式の「自家製麺」として甘みのある小麦から、イチから作っていたらしいです。
今では忙しくなり、製法そのままに業者に特注で頼んでいるそう。
そして「スープ」。
あっさりしていながら、全く「物足りなさ」は感じませんでした。「こってりラーメン」にありがちな動物性脂肪やタンパク質を敢えて抑えているとのこと。
「体に良いアミノ酸を採って欲しい」と考える店主が研究を重ね、自然系のアミノ酸豊富な昆布、煮干し、干し貝柱、鰹節、するめ、丸鶏、ガラなど他15種類のアミノ酸バランスを考えて作ってあるスープだそうです。
使っている醤油は、塩、丸大豆だけで作った3年ものの「天然醤油」。体に良い食べ物を研究し、「マクロビオティック」など「自然食」を勉強した店主のこだわりは半端ないようです。
このスープ、冷めると醤油、鶏ガラのコクがだんだん強く感じられるようになってきます。
化学調味料無添加なので、丼から直接スープを飲むのではなく、レンゲを使って飲む方が美味しく感じられるらしいですよ。
完全に「自然食」「無添加」にこだわっているため、赤ちゃんの「離乳食」や「ラーメンデビュー」にも最適なお店。
通常、小さい子がいる家庭だったら家族みんなでラーメン店に入るのは、「2~3歳くらいまで待つかな~」と考えるかもしれませんが、このお店なら離乳食時期の赤ちゃんも、がっつり食いついてラーメンどんぶりから離れなくなるそうなんです。
注目の「チャーシュー」は2種類ある
「Wチャーシュー麺」(各味1180円~)だと2種類を各2枚ずつ味わえます。
真空調理チャーシュー
県内産上質肩ロース肉をフランス料理の技法でじっくり5時間熱を加え、柔らかく仕上げたもの。薄切りなので風味が損なわれないよう、スープに浸しすぎないよう、そのまま食べるかスープで温める程度にして食べるのがおすすめ。「生ハムっぽいですね。」と言ったら、生ハムと製法が同じとのことです。
釜焼きチャーシュー
ヘルシーな豚もも肉を釜で焼き上げた本物のチャーシュー。釜焼きチャーシューは、真空調理チャーシューと比べると厚切り。比較する店によっては「かなり厚切り」と言えるかもしれないです。
メンマに関しては、見たことのない厚さ。厚切りのメンマって初めてかも。
温泉卵に味付けしたような「味玉」は、黄身がトロンとしていくつでも食べられる感じでした。
「お客さんには、(ラーメンのことを)何て言われます?」と店主に聞いてみると、「あっさりしてて美味しいって言われる。スープを全部飲んでも安心だし、食べた後も喉が渇かないって」
店主がラーメン雑誌に掲載された記事を色々見せてくれました。
私はラーメンマニアというわけではないので、雑誌名を「知らない」と言うと、「こんなに有名なのに、知らないの?」と店主。
「す、すみませんッ!師匠!!!」と思わず言ってしまいそうな自分がいました。(汗
なんか、そういう雰囲気のある方だったので・・・。
職人気質の無添加と味、全てにおいて最高峰を求める姿勢。「寡黙な人なのかな」と思いきや、こだわりについて語り出すと止まりません。
和歌山県「清乃」の店主が感銘を受けた「食に対する妥協のない考え方」は、尋常ではないほどの執着心に圧倒されてしまいました。
こちらがウワサの店主「宮本さん」。
同性に慕われそうな「アニキ」的な雰囲気を持ってます。客の私も、なぜか思わず「師匠!」と呼びたくなったくらい。(笑)
そんな店主のおすすめの一品は、シンプルな「塩味」。(並そば 各味780円)
ミネラルたっぷりの「能登の塩」を使っています。スープは「あっさり」、だけど、しっかり塩味とだしが効いていました。具もシンプルなので、その分、素材の味をしっかり味わえます。
せっかくだから「無添加餃子」も注文。
一口食べると熱々の餃子から「じゅわっ」と肉汁が溢れる期待通りの一品でした。
チルド餃子などは添加物がたくさん入ってるはずなので、無添加餃子というのはたしかに珍しく感じます。余計なものが入っていない、素材を楽しめる餃子です。
「まずはタレを付けずに一個食べてみる。2個目はタレを付けて食べる。3個目からはお好みで」というのが師匠・・・いや、店主がすすめる餃子の食べ方ですよ。
店主が「体に良いラーメンを作ろう」と考えた理由
店主が「体に良いラーメンを」と考えたのにはワケがありました。大阪で中華料理の修業をし、ホテルや料理店で修行を重ね、金沢で念願の中華料理店を開業。11年間繁盛を続けましたが、体調を崩し店を譲る。その時、よほど健康の大切さを思い知らされたのでしょう。体に良い食事処を模索し、2000年の「神楽」開業を果たしました。
「現代人は、間違った食文化の中にある。他で真似できないこの店のラーメンを食べて、お客さんに元気に健康になって貰いたい。」と語る店主の志は高く、「全てにおいて高次元のものを提供する」「無添加の最高峰を目指している」と熱く語ってくださいました。
店主はどんな人に食べて欲しいのか?
ラーメンを食べた後、血糖値が上がりにくいとなると、普段は食べることを我慢している「疾病を持つ方」とか「お年寄り」などにも朗報なんじゃないかと思いますが、店主に「どんな人に食べて欲しいのか?」聞いてみました。
返ってきた答えは「澄んだスープの醤油味の理想を求めている方」だそうです。
忙しい時間帯は話しかけられないと思いますが、店主の話をひとつ、ふたつ「おかず」にして聞きながら「こだわりと情熱がたくさん詰まった一杯」を食べに、また行きたいなぁと思っています。
紹介したお店
自然派ラーメン 神楽
TEL:076-280-5010
定休日:月曜日
11:30~14:30(L.O.)
17:30~20:00(L.O.)
ランチ営業、日曜営業
Twitterで閉店、売り切れ情報などを流しています。
自然派ラーメン神楽 (@musanjin) | Twitter
ライター「あひる隊長」プロフィール
石川県金沢市在住。フリーライター、主婦ブロガー。3人の子どものママです。