話の発端は2017年にあった忘年会になるのだが、その時が初対面だった女性の方に、江古田にある「ホワイトはうす」という店の良さを熱く語っていただいた。
私も酔っていたので詳しい内容は一切覚えていないのだが、その特徴的な店名とプレゼンの熱量がすごかったことだけは忘れていない。そこで2018年の忘年会として、その方を含めた3名のホワイトはうすファン達に、その良さをがっつりと語っていただく会を開くことにした。
新江古田駅と江古田駅と桜台駅の中間くらい、目白通り沿いにあるホワイトはうす。
それにしても「ホワイトはうす」である。一体どんな店なのかなと思ったら、「やきとり」と大きく書かれた庶民的なお店だった。このネーミングとのギャップは、上野にある「大統領」というモツ焼き屋と同レベルの破壊力だ。
なぜ彼らは「ホワイトはうす」に魅かれたのか
本日集まったのは下写真の方々。左がこの3人の中では一番古くからの常連である柳沼さんで、そのお隣が忘年会で私にこの店の存在を教えてくれた千穂さん。柳沼さんと千穂さんは、アグネス・チャンの誕生日に結婚したご夫婦である。そして右は以前に練馬の「末広」を紹介してくれた大木さんだ。
3人のうち2人がホワイトはうすのTシャツを着用している。
まずは一番の古株である柳沼さんから、この店との出逢いを教えていただけますか。
7~8年前に一人暮らしを始めたのが、ここから歩いて3分のところでした。近くに住む友達から、どうやら目白通りに変な店があるぞ、ホワイトはうすという名前だけど飲み屋らしいぞと聞き、その人と来てみたんです。そしたら焼き鳥がコブシ大みたいなものすごいのが出てきて。もう鈍器みたいな焼き鳥。
それじゃ、びっくり鈍器じゃないですか。唐揚げなら聞いたことがありますけど、焼き鳥でコブシサイズって。
今はそれほどでもないけど、昔はかなり大きさにブレがあったので、その日は特別大きかったのかも。そして豚バラを頼んだらノコギリみたいなのが出てきました。それ以来、ずっと通っていますね。昔は僕たちみたいな純度高めの変な人が多かったけど、最近は若い女性客も結構多いですよ。
とりあえずドリンクを頼みましょうか。
それから3年くらい通っている間に、この千穂と知り合って。それからは二人で通うようになりました。その頃にはもう最初に一人暮らしをした家から引っ越していたんですが、千穂と同棲するっていうタイミングでまたホワイトはうすのすぐ近くに住みたいと、前に住んでいた場所から3歩のところに二人で住み始めました。
駅が近いとか職場が近いじゃなくて、大好きな居酒屋との距離で家を決めるってすごいですね。
「僕はいつもこれです!」と、中(焼酎)が200ミリ入った特大ホッピーを注文する大木さん。
千穂さんはここに連れて来られて、どう思いました?
最初に来た時は、なんか「え、ここかー」って。22歳で連れて来られたので、耐性がなかったので。
キャピキャピの22歳だと、チェーン居酒屋で軟骨唐揚げに「レモンかけていい?」って聞いているくらいの年でしょ?
友達はカルアミルクとか頼んでいましたね。でも私は混ざりものの酒が苦手だから、同年代の子と飲むのがちょっと苦手で。実はこういうところに行きたいのに行けなくて悶々としていたんです。その頃は仕事が終わるのが夜遅くて、この辺りは遅くまでやっている店がここくらいしかないこともあって、気が付けば週4で来ていましたね。だんだん実家みたいになっちゃって。
大木さんに釣られて私も特大ホッピーを注文。大きすぎて中と外の配合がよくわからない。そして普通サイズのジョッキが子供用ドリンクに見える。
ホッピーを飲んでみるとすごい濃さ。なんでもキンミヤ20度時代に「中が多すぎてホッピーが入らない」というクレームがあり、度数を25度にアップして量を減らして総アルコール量をキープしたという伝説があるとか。
でも調子にのって一人で来ていたら、ある日おじさんにしつこいナンパをされてしまって、けっこう落ち込んだんですよ。せっかく一人でも飲めるところだったのに、なんかもう行きづらいなーって。でも私も調子に乗っちゃってたのかなーって。
せっかくのオアシスだったのにね。
で、その次の日もまたホワイトはうすに行ったんですよ。
全然懲りてないじゃないですか!
いやいや、行きづらいわーって思いつつだし。それでマスターに「ははは、昨日ナンパされちゃって~」ってちょっと愚痴ったら、「そんなことあったの!」って驚いて。店が忙しくて気づいてなかったんですよ。それでまた次の日にホワイトはうすに行ったんですね。
3日連続!
そしたら店内に「ナンパ禁止!」って張り紙をしてくれて。もうこの店についていこう!と思って、今に至ると。もうナンパは撲滅されたので、その紙は剥がされましたけど。
ずいぶんと男気溢れるマスターですね。
そのマスターは退職されて今は別の方がこの店をやっていますが、今度のマスターも素敵な人ですよ。
二代目マスターの大輔さん。
大木さんはこの店を何で知ったんですか?
僕はこの辺の住民なんですが、この店は目白通り沿いにあるから「ここなんなんだ?」と思っている人は多いんですよ。存在は知っているけれど、なんとなく入れない店。そんな風に思っていたら、この二人と出逢って布教されて。それで来てみたらすごく良くて。今では家族でファミレス以上に来ています。子供2人と夫婦の4人で、お腹いっぱいに飲んで食べて3,600円とかですよ!
私は一人で来たら890円でした。飲み屋なのにマックみたいな。
ここってどの駅からもちょっと歩くじゃないですか。駅近グルメならぬ駅遠グルメ。遠くても来たい店なんです。
本当の常連は、あえて遠い駅から歩いてくる。気持ちを高めるためにって聞きます。違う景色が見えるらしいです。
一番最初に書かれたメニューを頼んではいけない罠
ホワイトはうすと三人のなれそめを聞いたところで、そろそろ料理をオーダーしようとメニュー表を確認すると、ものすごい情報量で料理名が羅列されていた。順番に法則性があるんだかないんだか。
この文字だけのメニューから料理を想像するのが楽しい。
まずは何を頼むかだなー。
今日は4人だから、調子に乗りたいな。
とりあえず、左上の5本盛り合わせですかね。これが店のオススメなんでしょ?
それはダメです!それですべてが終わっちゃいます!
もう全力で止めます!他のものをいろいろ食べていただきたい!
メニューの左上角位置にあるのにもかかわらず、5本盛りだけは頼んじゃダメです。4人なら1人あたり1本ちょっとで余裕と思うでしょ。それがダメなんです!
な、なんですか、その全力の圧力は。よくわからないけど、わかりました。じゃあ、つくねカレ~チ~ズにします。人数分いきますか?
1本でいいです!!
そんなこんながありまして、どうやらヘタに私が注文を決めると危険らしいので、残りのメニューは3人に適量を選んでいただいた。
最初の注文は紙に書いて頼むのがルール。
千穂さんによる模範的な注文票の書き方。
ところでそのTシャツはなんなんですか。店員さんも同じやつを着ているみたいですが。
僕が好きで勝手に作りました。趣味でやっているTシャツのワークショップで、自分のデザインを作るときに一番好きなものをモチーフにしようと。それで考えた結果、この店が好きだと気が付いて。俺が一番好きなものは、ホワイトはうすだと。ちなみに今着ているのは、千穂の子供の頃の写真Tシャツです。
は、はい。
最初に出てきたのは「うずら豊玉」。胡麻油で和えたちょっとスパイシーな味付けで「序章」に最適とのこと。豊玉はここの地名で「とよたま」と読む。「たまに『うずらほうぎょく』って注文する人がいて、地元じゃないなって思うんです。遠くからありがとうって」と千穂さん。
この店が好きだから、ロゴも自分で作って。看板とは全然違うロゴ。それで当時のマスターに確認を取ったんですね。勝手に作ったTシャツをこの店に着ていって、愛を熱く語って、もう作っちゃったし今度のワークショップでこれをやっていいですかって。
好き過ぎるあまりの事後承諾だ。
「今日はインナーもたまたまホワイトはうすのTシャツですね。たまたまですよ」と千穂さん。絶対わざとだ。
そのTシャツを脱がせて上から着た柳沼さん。なんだか少しドキドキした。
そしたらワークショップの当日に、「今日はお店を休みにしました」って、マスターが来て、いっぱい買ってくれたんです。そして勝手にデザインされた自分の店のTシャツをユニホームにしますと。正規採用されたんですね。
ただ好きでファンをやっていただけなのに、こんなにいいことがあるんだって泣けました。
500円のシーザーサラダがでかい。宴会メニューサイズだこれ。塩昆布や煮玉子など、オリジナリティのある具が楽しい。毎回このシーザーサラダとハムエッグだけ頼む人がいて、心の中で「A朝食さん」と呼んでいたとか。
間違いなくうまいやつ、スパムチーズ。「このとろけたチーズをトロって呼んでいます」と柳沼さん。「私たちの言葉はみんな理解不能なので気にしないでください。ちなみに固まったチーズはカリです」と千穂さん。
新潟県長岡市の名物である栃尾揚げもフルサイズ。「この量、二人で頼んだらアウトなので、今日は頼めてうれしいです!」と千穂さん。
追加オーダーした「単品カレ~」という謎メニュー。「何につけても美味しくなるブースターです!」と鼻息荒く語るのは柳沼さんだ。
「座敷に座るのと、向こうの席に座るのではまったく景色が違います。しきりがないじゃないですか。だから対面の人のメニューを見ながら食うのがおもしろいんです」と大木さん。
確かに串焼きのサイズがヤバかった
そうこうしているうちに、この店の看板メニューである串焼きが登場した。
まずは豚バラおろしポン酢だが、これは確かにノコギリだ。
この大きさ、伝わりますかね。
なんですかこの肉の塊は。よくある豚バラ串はペラペラで、よく串に刺せたなって感じですけど、これは串に刺した豚テキだ。サムギョプサル1人前くらいありますよ。
肉が多すぎて串が持ちづらいんです。ギチギチに詰まっているんで、串から外そうとするとパンって飛ぶんですよ。気を付けて!
豚バラあるあるですね。この肉の大きさで串カツもあるんですよ。それを頼むと完全に今日は終わりますけど。
ネギがたっぷり入ったつくねカレ~チ~ズ。もはやちょっとしたミートローフだ。
サークルKの破壊王弁当を宣伝する橋本真也みたいな写真になった(この例えはわからなくて大丈夫です)。
わかりましたか。5本盛り合わせを頼むと、内容こそ違いますがこの大きさの串が5本来ちゃうんです。焼鳥なんてドサッですよ。たまにラグビー部みたいな人が、店員さんが止めてもたくさん頼んじゃって、結局残すっていうね。
それは一番悲しいやつ。店員さんのアドバイスはちゃんと聞いてください!
というか、店側がデカ盛りのアピールをもっとしたほうが。お得過ぎますよ!
とり梅わさびも当然でかい。
レバチ~もつくねとかに比べると小さいのだが、普通の店の倍はありそうだ。
卓上調味料もやたらと多く、これで味を変えるのが常連さんの楽しみ。
炭火トーストとぺヤングという大暴走
こうしてテーブルの上に肉の塊が並んでいるにもかかわらず、大木さんの暴走注文が始まった。
僕、トーストを頼んでいいですか?
でたー、トースト使い!
え、喫茶店じゃないですよここ。
皆さんトーストは? え、いらないんですか? では僕は2枚!
ダブルトースト使い現る!
焼き台の炭火で焼かれるトースト。何だこの最高の店は。
炭火トーストには溶かしバターがついている。
たとえばここにつくねがあるじゃないですか。これをこうしてこうやって。トースト1枚90円なのでこの店では高級なんですが、すべてにアジャストできるんです!
おしゃれですねー!
パン貴族ですねー!
自慢げにトーストにつくねを乗せる大木さん。
それを無性に腹立つ顔で食べるパン貴族。
つまみ選びはパンを軸に考えます。シーザーサラダなんて絶対に合うじゃないですか。沢口靖子もびっくり。リッツパーティーの次はトーストパーティです!
リゾートホテルの朝食みたーい!
ナイス、ブレックファースト!
ちょっと、今は夜ですよ!
間違いなく美味しそうではある。悔しいけど。
ここで単品カレーが生きてくるのか。ちょっともらったら、このパン自体がうまいやつだった。
あとぺヤングも頼もうかな。
でたー!この店でペヤング頼んでいる人を初めて見ましたけど、そんなにお腹空いているんですか?
お腹は空いてないんですけど、炭火トーストとペヤングはルーティーンで必ず頼むんです。僕はそのルールで生きている。運命?
知らないですよ。
お湯の切られたペヤングと、紅ショウガなどの嬉しいトッピングがセットで登場。
このペヤングをパンに乗せて食べます。だってみんな焼きそばよりもぺヤングが好きじゃないですか。それを炭火焼のトーストに乗せちゃうんだから、この世で最強の食い物のひとつじゃないかな。
運動部所属の中学生が考えた最高のおやつみたいな食べ方をする大木さん。
炭水化物に炭水化物だ。……大木さんって何歳ですか?
僕は46歳です。それがなにか? ホワイトはうすといえばペヤングにパンです。だって家でペヤングを作っても、絶対にパンと一緒に食べられないじゃないですか。
パンくらい焼けばいいでしょ!
ペヤングを久しぶりに食べたけど、やっぱり美味しいですね。
隣のテーブルで即席ラーメンを注文していたが、袋めんがカゴでやってきて、その中から好きなものを選ぶスタイルらしい。
「ここに日本地図とか世界地図があって、たまに画鋲が刺さっていると、きっと地元の話をしたんだろうなーって」「四国にめっちゃ刺さっていた時は、ここにいた人は四国出身で、うずら豊玉を『うずらほうぎょく』って頼んだのかなって」と、妄想を広げる二人。
「バイスがここに入ったら最高だなーってチラッといったら、次の日にマスターから『入れたよ』っていわれて。だから私は責任を持って、毎回頼んでいます。無くならないように私が守るんです」と千穂さん。
バイスもそうですが、この店はメニューがどんどん変わっていくんです。しかも絶対に気付かれないようにこっそり。それを毎回探すのが楽しいみたいな。
常連だからこそ楽しめる間違い探しだ。
でも頼むものってだいたい一緒だから、トーストとかペヤングとか、それ以外だとわからなくない?
それがわかるんですよ。あれ、なんか増えてない? あれがなくなっている!って。このスペースに載せられるメニューの数は一定だから、増えた分だけ減るんです。メニュー量保存の法則。
「のばし棒を見てください。ある日からカレ~やチ~ズがニョロニョロしていることに気が付いたときの喜び。ニョロニョロかけましたねっていったときの、マスターの『気づいたね』っていうしたり顔がもう!」と千穂さん。「生PP」がなんなのかはお店で確認しよう。
やっぱりお気に入りだったメニューがなくなると悲しくなっちゃいますよね。あいつ人気なかったんだな、もっと食べて応援してあげればよかったって。
食べて応援だ。なんだかアイドルのファンみたいですね。
ここのメニューは選抜メンバーですから。でも逆に、すごく頼まれるけどなくなるのもあるんですよ。作るのが面倒だからって。
親子丼の頭っていうのがあったんですけど、一瞬でなくなりました。作るのが大変だったんでしょうね。たまにならいいけど、しょっちゅう頼まれたら困るって。
「ここで玉置さんにプレゼントです」と謎のサプライズ展開が!
プレゼントはもちろんホワイトはうすのロゴ入りTシャツ!しかもロング!やったー、これを着て釣りに行きます!
せっかくの機会だからと、チューハイ(辛口)380円、タルハイサワー360円、キンミヤ強炭酸割り440円の飲み比べ。意外と量も味も違うんですね。ただその違いを覚えられないのが酔っ払いの悲しさだ。
「無色透明最高!」と大木さん。「僕が今飲んでいるのはなに?」と覚えられない柳沼さん。「普段はこんなややこしい注文をしたら店員さんに嫌われちゃうかもしれないから、絶対にできません!」と千穂さん。
モーゼの十戒みたいな明太ジャガバター。前は明太子の割合がこの倍だったそうで、メニューに登場して10年目でようやく多すぎることに気が付いたとか。
この後も延々とホワイトはうすでホワイトはうすの話をして盛り上がった。今日食べられなかったおすすめメニューとか、もし一人で来たらどんなルートで頼むかとか、逆に同じメンバーで来たら次はどこを攻めるべきかとか。この店で忘年会をしたら「行けたら行く」って言っていた人が全員来て酸欠になりそうになった逸話や、ホワイトはうすという店名の由来を誰もちゃんと把握していない話なんていうのも最高だった。
ファンになって熱く語りたくなる店、それがホワイトはうすなのである。いやー、楽しい飲み会だった。
「次はオムライスとかオムドライカレーとかの卵系を頼んで!全部美味しいから!」と柳沼さん。「仲良くなりたい人を連れてきたい店なんです」と千穂さん。「ポテトFってフライドポテトなんだけど、藤子・F・不二雄っぽくない?」と大木さん。
柳沼さんが締めに頼んだのはアイスコーヒーハイのバニラフロート添え。昔はチェーン店のカルアミルクが好きな友達と飲んでいた千穂さんが、今やホワイトはうすでアイスコーヒーフロートハイを頼む男と結婚したのだ。
4人で豪遊しても8,570円也。安い。
残さずすべていただきました。ご注文は計画的にね!
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