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「手に当たったらなんでもハンド」ではない……サッカーのルールを広める側から見た誤審騒動と現代サッカー【ごはん、ときどきサッカー】

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©Jリーグ

 

サッカーの競技規則は毎年細かく修正されている

ときとして同じ事象でも1年前とは違った判定になることがあり

見ているほうが規則改正を知らなければ

審判がミスをしたと思われることになる

 

どうしてこんな事態になっているのか

アジアサッカー連盟に9年間出向して審判部長を務め

世界的な競技規則改正の事情をよく知る

日本サッカー協会審判委員会の小川佳実副委員長に聞いた

 

2019年のマリノス対レッズの騒動は「大切な判断だった」

ヨーロッパには自分のサッカー観やプレーに対する考え方がすごく強い審判が多いですね。そして国によっては手に当たればすぐにハンドという反則を取るという傾向もあったりします。競技規則があったとしても、みんなピタッと判定が同じにはならないんですよ。でも、ある一定の範囲の中で同じになるようにして、その範囲を超えちゃいけないとは思います。

 

「手に当たったらなんでもハンド」というのは、やっぱり範囲を超えてるんです。そういう範囲から出ていることについては競技規則を決定している国際サッカー評議会(IFAB)も指導しています。たとえばプレミアリーグではオンフィールドレビュー(ピッチ横のビデオモニターでの確認)を審判がしない傾向があったので、今年の規則改正で、オンフィールドレビューをすべき時にはしなさいと書いてあるんです。

 

大切なのは、すべてが一緒ということではなくてその範囲から外れてはいけないということです。そしてその範囲に収まる判定基準でプレーしておかなければ、国内の大会ではよくても国際サッカー連盟(FIFA)の大会に出たときには通用しなくなります。

 

そしてビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が導入されることになったから、細かいところまで規則で述べなければいけなくなったのだろうと思いますね。PKのとき、キッカー以外がペナルティエリアに入ったらいけないのですが、体が入っていても地面に接している足がラインの外だったら大丈夫と明確になりました。普通は複数の人の地面に接している足まで見ていないでしょう。VARがあるからこそできる判定です。

 

ハンドも、どこから「腕」かということが今年細かく規定されました。でもそこで規定してある「脇の一番奥から水平に線を引いたところ」が境目と言われても、どうラインを引くかで変わってきますよね。それでも少しでも理解の幅を狭めるために定義されてるんです。今までは自分の考えで審判が取っていたのですが、これで一定の範囲の中に収まるのではないかと思います。

 

そうやってVARが介入することによって審判の持つ権威が削られるという意見もあります。でもサッカーの判定はもう「オレが決めたのだから従え」という世界ではなくなってきました。ただ、その中で審判の判定はリスペクトされるべきだし、時として間違うこともありますが、審判は競技規則の範囲内で与えられた権威・裁量の中で最大限の能力を発揮することが求められているんです。

 

権威のベースは基本的にやるべきことをきちんとやってることなんですよ。ピッチに立っている人たちにそういう共通の理解があって、その上で審判に任せますということになってこそ、審判に権威があるんです。

 

審判は元々両チームの意見が分かれたとき、仲裁役になってもらうために呼ばれた立場の人だったんです。そういう歴史的な部分を監督や選手は理解してほしいと思います。そして審判は、もしかしたら1試合の判定でレフェリング・キャリアが終わってしまうかもしれない。そういう覚悟で臨まなければいけないということだと思うんですけどね。

 

2019年7月13日の横浜F・マリノス対浦和レッズの試合、後半14分にゴールが入ったかどうか判定が下るまでに非常に時間がかかったという場面がありました。結局、松尾一主審は自分たちの目で見た判定に戻しました。あれは大切な判断だったんです。混乱させたけど、ちゃんとルールの範囲である元に戻したのがよかったと思います。

 

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ルール改正で1年前とは逆の判断になることもある

競技規則の改正は毎年行われています。その中には混乱させる恐れがあるものもあります。たとえば2019年ルール改正のメディア向け説明会で使ったビデオは、2020年に解釈が逆になりました。だからあえて今年のルール改正の説明にも使ったんですよ。それはこの場面です。

 

 

相手選手が蹴ったボールが偶然手に当たり、そこからドリブルして得点が生まれています。2019年、この場面はゴールにはならないと説明しました。それは意図的ではないにせよ手に当たり、それが得点に結びついたからです。今年のルール改正で、得点を認めないのは手に当たった「直後に」という言葉が加えられたため、この場面では手に当たったことは確かですが「直後に」ではないということで、ゴールが認められることになりました。

 

私たちとしては、自分たちの説明が1年経ったら逆の判断になるわけです。同じビデオを使うとそれがハッキリするので、そういう表現を避けたいと思う人もいたかもしれません。ですが、世界的にも同じような理解だったので隠すことなく、一番分かりやすいと思ってそのビデオを使用しました。

 

こういう競技規則の改正について近年、大きな出来事が2つありました。1つは1997年、ルールを簡易な表現にするように変わったんです。もう1つは2016年の改正です。これはサッカーのルールが制定されて130年の歴史の中で最も大きな改正と言われるものでした。

 

実は1997年は私が日本サッカー協会(JFA)に入った年です。そのとき審判委員会の浅見俊雄委員長を中心に私もお手伝いさせてもらいながら、かなりのボリュームの言葉を平易にする作業をしました。そして次の2016年は、私が出向していたアジアサッカー連盟(AFC)からJFAに戻ってきた年なんです。そこで2回目の大変な作業でしたが貴重な経験をさせてもらいました。

 

2016年は多くの項目で改正が行われました。三重罰と言われる、ペナルティエリア内での反則は「PK」「退場」「次節出場停止」になっていた点が改正されたのもこのときです。そこで多くの改正があったため、逆に明確ではなかった部分も浮き彫りになり、それを定義しているというのが今の状況です。IFABでテクニカルダイレクターを務めるデイビッド・エラリー氏は、今年で改正は一応収まるのではないかと言っていました。

 

また2016年の改正の翌年、IFABは将来的な戦略というのも発表しています。そこでは2017年から2022年の間に競技規則をサッカーの発展に向けてどのような観点からよりよいものにするかということが書いてあります。公平性、高潔性、普遍性、多様性などについて触れてあり、さらに「テクノロジー」という言葉が入って、VARにも触れてありました。

 

そういう意味でも2016年のルール改正に抜本的な部分があり、それに基づいて「サッカーが求めるものは何か」ということ、競技規則を通じてサッカーのイメージを向上させるということ、サッカーの競技の利益になるよう提案されたものはテストを経て取り入れていくこと、などが変わってきたという状況です。

 

元々IFABは保守的で大幅な改正に毎年取り組むような組織ではなかったのですが、サッカーの映像が世界中に配信されてビジネスの1つになり、プロフェッショナルのサッカーに求められるもの、たとえば得点が見たいとか、汚いファウルには断固たる措置が執られてほしいとか、そういうのが出てきたことで組織の考え方も変わってきたのだと思います。

 

それに、これは審判の世界の中にいて感じていたのですが、審判はどちらかというと審判員の考え方に基づいてルールを解釈していました。それを、競技規則の精神のもとにサッカーが期待する判定、またサッカーを発展させていくために必要なことは、ということをしっかり理解して適用していく、そしてその中で経験を生かしてマネジメントしていくというように変わってきました。

 

こういう状況を、選手、チームの指導者、そして見ている方々が知らなければ、「この前まではよかったのになぜ?」と言われて、最終的に審判が大変な思いをしてしまいます。これだけ毎年改正があるということをみなさんに伝えていくというのは本当に大切だと思っています。

 

私が審判委員会の委員長になったとき、それまでは年2回程度であったメディアの方々への説明会を、1ヶ月から1ヶ月半の間に1回、その間に起きたレフェリングについて説明会を開催することにしました。最初は担当する審判指導者の方々も含めて大変でした。報道も「あの判定は誤審だった」という内容が先行しましたから。

 

審判員を守れという意見も寄せられました。もちろん私も守るというのは大前提なのですが、ルールへの理解を深めないと逆に審判が言われっぱなしになると思ったのです。何か起きたときだけ記者会見を開いても、メデイアの人も受け入れてくれるはずがない。だからよかった判定も問題があったジャッジも含めて伝えて理解してもらおうと思いました。

 

そして映像を使って説明することで、最初は審判と同じ理解ではなかったものを合わせていく。そのためにはミスも伝えていくということをやっていました。今は審判員の方々もみんな理解してくれたと思います。

 

レフェリーはどっちにも文句を言われる可能性がある立場

IFABの中にテクニカル小委員会というのがあります。IFABから委ねられたルールの原案を作るところなのですが、その下に2つの組織があります。1つはテクニカル・アドバイザリー・パネル(TAP)と言って審判の技術を担当する組織、もう1つはプロフェッショナル・アドバイザリー・パネル(PAP)と言って、元選手や監督で構成されている組織です。その第1回の会合が2014年10月、北アイルランドのベルファストで開催され、私はAFCの審判部長だったのでアジアを代表して参加しました。ちなみにPAPにはアジアを代表して中田英寿さんが参加していました。

 

それまで競技規則というのは審判のテクニカルな人間だけが考えていたのですが、元選手や監督さんの話を聞いて、両方の側面からどうしていくか考えることになったんです。この話し合いは今も続いていて、私は2015年にロンドンで開催されたときにも参加させてもらいました。

 

2014年に参加したとき、初めてVARの話が出ました。2018年ロシアワールドカップでは採用することになったのですが、2014年の時点ではまだ反対意見もありました。当時はヨーロッパサッカー連盟(UEFA)の審判委員長で、現在はFIFA審判委員長のピエルルイジ・コッリーナさんも「1kmも離れた部屋の中にいる人間がどうやって判断するんだ」という意見でしたね。

 

でもそういう考えを打ち崩して、プロサッカーに求められるものは何かを革新的に考えるようになったんです。それまで保守的だった競技規則に対する考え方が、規則の精神はきちんと守りながら、どうやってよりよいものにしていくかというアプローチに変わったんですよ。そういう改革を行ったIFABダイレクターのエラリーさんはすごいと思いますね。

 

ただ、こうやって競技規則が変わっていくこと「なんでこんなに変わるんだ」と感じる人が多いだろうとも思います。混乱させるだけじゃないかと。

 

たとえば普通はドグソ(DOGSO : Denial Of an Obvious Goal Scoring Oppotunity/決定的得点機会の阻止)の状態でファウルがあったときは退場になります。ですが去年、ファウルはあったものの主審がアドバンテージを適用したり素早いFKを認めたときは、ファウルそのものが悪質でなければ、退場ではなくて警告ということになりました。

 

そして今年、同じような場面で警告に該当するようなファウルがあったとしたら、警告はなくなるということになったのです。実は去年の時点で、退場に相当するファウルが警告になるのだから、警告に該当するファウルはどうするかという問題が発生すると気付いていなかったんですよ。

 

「赤」が「黄」になるのだから、「黄」が「なし」になるというのは理屈が通っているのですが、その整合性を加えたのが今年になったんです。他にもそうやって整合性を取っていて、そのほうがみんな納得しやすいと思います。でもこういう部分は相当細かく説明しても難しいところです。

 

また実際の主審にとっても難しいところがあります。たとえばGKがペナルティエリアの外に飛び出してイエローカードに相当するファウルで止めた、ところがボールはコロコロとゴール方向に転がっていて、攻撃側の選手が誰か触ればゴールになる。もしそこで主審が笛を吹いてFKとすることは、それはサッカーが求めていることではありません。

 

さらに言えば、ペナルティエリアの中でトリッピング(反則行為のひとつ)があり、でも攻撃側の選手が簡単にゴールできるところにボールが転がったら、それはPKではなくてアドバンテージを取ってゴールに入るかどうかを見るという判断が求められます。

 

ところが、FKやPKを取らなかった場合、結果としてゴールが決まらなければすごく非難もされると思います。逆に、誰もがゴールを期待していた状況で笛を吹いてしまったら、それも批判されますよね。結局レフェリーはどっちにも文句を言われる可能性がある立場なんです。しかもルールが改正され、それに従ってレフェリーが笛を吹いたときに「今までと違う」という、改正を知らないことから非難されることもあると思うんです。

 

先日、あるチームのGMから今回の規則改正についての質問が来ました。攻撃しているときにこの改正はどうなのかという話になったので、私は「自分たちが攻めている立場だけではなく、守備側だったら、また守っている立場だけではなく、攻撃側だったらということで選手に話をしてください」と伝えました。両方の立場から考えると納得しやすいんですよ。そのGMは「選手にストレスがないようにするために理解したい」とおっしゃってました。素晴らしいと思いますね。

 

競技規則は審判のものではなくて、サッカーに関わるすべての人たちのものなんです。だから選手や監督さんの目線を入れた上でよりよいものに競技規則はなっているのではないかと思います。だからこそ私たち審判というのは、競技規則を審判だけではなく多くの人に広めていくということがすごく大切になってくるのです。

 

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©Jリーグ

「中東の笛」という表現はとても残念

私は1994年のヤマザキナビスコカップ決勝の主審でした。神戸で開催されたヴェルディ川崎vsジュビロ磐田ですね。あのときは、ラモス瑠偉さんはじめ結構面白い選手がたくさんいらっしゃいました。私は静岡出身で当時は教員でした。ジュビロには静岡出身者がたくさんいましたし、カズと三浦泰年の両選手は静岡学園のときのたった1年間だけでしたが教師と生徒という関係で教え子だったんですよ。

 

1997年3月に教員を辞めて4月からJFAの職員になりました。当時は不況で公務員志望者が増えているような時代だったんですけど、川淵三郎キャプテンや浅見委員長に席を用意していただいて、こんな機会はないと思って飛び込んだんです。まだワールドカップへの出場も決まっていないときでしたから、みんなには仕事を辞めることについて心配されました。

 

私が入ってJFAに審判部ができたんですが、当時の審判部って2人しかいなかったんですよ。それまでは東京FAの副会長で専務理事の植田昌利さん(JFA常務理事)が審判委員会の幹事として委員会の事務局を担当してくれており、JFA登録部職員がサポートをしていたという状態でした。そのような状況でしたから、当時はJリーグへの審判関係のことはJリーグで対応していたのですが、JFAに審判部ができたことで、今となっては当たり前になっているJリーグの審判関係の対応についてもJFAが対応することになりました。

 

私は現役審判員として笛を吹かなければならなかったので、もちろん割り当てには触れないという立場でしたが、JFA事務局として審判関係全体をとりまとめなければいけない、審判部部長代理という役職に就いていたので、非常に難しい状況だったことを覚えています。その当時は子供の教育のこともあったので静岡から引っ越す決断ができずに、東京まで新幹線通勤していたのですが肉体的にも精神的にも無理が来て、結果として審判を続けることが難しくなってしまい現役から引退したんです。

 

現役引退後、2002年ワールドカップに関わる業務を経て、改めて審判部部長として審判部での業務に携わる機会を頂きました。その後、プロ審判員の立ち上げにも携わり、岡田正義さん、上川徹さんなど当時は「スペシャル・レフェリー」と呼んでいたプロフェッショナル・レフェリーの制度を構築し、Jリーグで審判員として活躍されていたレスリー・モットラムさんに初のプロ審判指導者になっていただきました。それから審判の登録をアナログからWeb登録化にも関わることができ、審判のプロ化とともに、自分が審判をやっていた経験が、このようなから審判関係の新たな制度化に僅かではあったにしろ活かすことができたことは私にとっても貴重な経験をさせてもらいました。

 

そうしていると2006年7月、川淵キャプテンから呼ばれて「AFCへの出向の話があるが」と言われたんです。「いつからですか?」と聞いたら「9月から」って、もう2ヶ月しかない中で準備して。行ったらいい経験はさせてもらったんですけどね。

 

最初は2年の契約だったんですけど、AFCから延長のオファーがありJFAも認めてくれたので結局9年になりましたね。そういう意味ではサッカー界で審判の仕事はそんなに多くないのに、そこまで経験させてもらったのは、今考えると良かったなと思います。出向当初は辛かったですけどね(笑)。

 

AFCに行った最初の半年間ぐらいは「どうなるんだろう?」と思ってましたよ。英語力も不十分だし、モハメド・ビン・ハマム会長からも何かあるごとにエライ怒られたりとか。組織もきちんとしてなかったですね。それにアジア各国で判定基準の違いが目立ちました。

 

中東、東アジア、中央アジアでは、国民性、宗教、考え方が違いますからね。ワールドカップに出場しているUAEの審判に大会期間中に自宅へ招待してもらったことがありましたが、庭がサッカーのフィールド半分、そして家族5人に対して雇い人が30人いたことにびっくりしたこともあります。一方であまり裕福でない国の主審は月給30〜50ドルで働いているという話もありました。当時のAFCの2011年カタールアジアカップの時の審判の日当は100ドルで、1試合担当すると400ドルもらえるんです。中東の国のような豊かで恵まれているような国の審判にとってはさほどの金額ではありませんが、経済的に厳しい国の審判にとって400ドルは大金となるわけですよ。

 

ですからアジア各国の審判員を「アジアの審判員」として同じ考えを持って取り組むことが必要という話をしても、環境に大きな違いがあることから、話をすることだけで理解してもらうことは難しかったです。そこで私が考えたことは、審判員がセミナーに参加している期間中に「規律」の大切さを伝えようということでした。フィールドでのトレーニングでは、多くの審判員は自分が飲み終えたペットボトルをそのまま投げ捨てる中、私は、その捨てられたペットボトルを拾って片付けるようにしました。

 

そうすると、日本の審判をはじめ、何名かの審判員は当初から投げ捨てることはしないため、この状況は良くないということに気付いてくれるわけです。このような審判は、私が拾っていると自ら拾い始めてくれるようになりました。2006年からAFCに加盟したオーストラリアの審判も、自分たちはアジアとは違うという雰囲気を醸し出していた感じもありましたが、拾ってくれるようになり、それで中東の人たちも拾うようになりました。そしてだんだんみんな分かってきて、次第にちゃんと決められたところにボトルを捨てるようになったんです。

 

トレーニング会場に到着後、バスから降りる時も自分たちが飲む水を運ばない人が多くて、スタッフの女性がボールと一緒に運んだりしてたんですけど、意識が変わってきて自分で自分のものは運ぶようになりました。もちろん自分はちゃんとやっているというのを見せたいという気持ちもあったのも確かだと思います。

 

そしてこういうことをしっかりやるようになると、みんな規律を守るようになりました。試合の前に体を作って集合するようになったし、食事やトレーニングで自分を律するようになりましたね。そうやって自分を律することができないと、ピッチをマネージメントできないですよ。

 

もちろん私は厳しかったと思います。当時AFC審判委員長の国の審判を、規律を守らないことを繰り返したとということでAFCエリートレフェリーのリストから外すことを審判委員会に提案したりもしましたから。反対に規律、そしてテクニカル面がよければより高いレベルの試合を担当する機会を増やしたので、テクニカルがいい、きちんと体調をキープしている審判が増えたと思います。そうしたらいろんな国の代表チームの人から審判がよくなったと言ってもらうようになりました。うれしかったですね。そしてその声はちゃんと審判にフィードバックしました。もちろん、判定が正しくなかったことで、批判も受けることはありましたが。

 

そんなことを続けて審判の質は向上したと思うのですが、たまたまミスしたのを「中東の笛」と表現されたりするとすごく残念ですね。それに日本では「中東の笛」と言いますが、他の地域からは「東アジアの笛」と揶揄されることもあります。

 

もし判定が賄賂などによって左右されていたら、すべての試合を監視しているシステムがあるので、そこから間違いなくアラートが上がってきます。アラートが上がったということで調査が行われ、ある国でその対象となった審判員について私も参考人として呼ばれたこともあります。その審判員は3ヶ月ぐらい留置されていました。それくらい厳しくチェックされているんですよ。

 

帰国してJFA審判委員会の委員長を今年3月までの4年間務めました。今の審判委員会は、Jリーグを担当する部署、女子審判員を担当する部署、そして私が担当している国内審判ディベロップメントという部署です。私は審判委員会の副委員長としてこの部署の統括を担当し、指導者養成と地域の審判員の育成・強化、それからフットサルとビーチサッカーの審判員の育成・強化、そして競技規則や審判員の登録を取りまとめながら、合わせて国際関係のIFAB、AFC、アジア各国との交流など海外関係のレフェリーマターを担当する役割に就いています。

 

サッカーではすべての試合で両チームとも勝ちたい、得点したい、失点したくないという気持ちがぶつかり合っています。それを裁くという立場は、たぶん両方から100パーセント納得されることなんてないんですよね。そういう難しい立場であるというのを理解してもらいたいと思うし、そういう難しい立場でやる価値というものも審判は見出してるんです。

 

それはグラスルーツでやってる方も同じです。そういう人たちの気持ちというのを萎えさせないように周りの人たちが、そのときは感情的に言ってしまうかもしれないけど、あとでコミュニケーションを取ってほしいですね。

 

イングランドでは試合が終わった後、アウェイチームとファンサポーターがクラブのちょっとお茶を飲む場に集まって、そこに審判員も加わって話をするというのがあるんですよ。そういうのが文化になっていく一つの要因なのかなと思います。日本ではまだ難しいことかと思います。しかしながら、日本でも試合終了後、様々な立場で試合に関わった人たちが審判員といろいろな観点から話をする機会ができるようになったら、サッカーが文化になったと言えるようになるんじゃないかなとも思うんです。

 

Jリーグでも試合が終わった後に「ありがとう」と声をかけてくれる監督さんもたくさんいらっしゃるんですよ。そういう終わった後の対応は、日本の指導者の方々や選手の人たちにさらに広まってほしいと思いますね。

 

審判員との食事は立場上、避けていた

僕は東京と言っても、町田で横浜寄りのところに住んでるんですよ。オススメするとしたら、うちの近くのところですね。

 

僕は蕎麦が大好きで、海外から帰ってきたときにも必ず行っていた店があります。「つきみ野駅」の近くの「ほりのうち」という蕎麦屋さんですね。ここの「天麩羅せいろ」には松・竹・梅というランクがあるんですが、この一番下の梅ばっかり頼んでます。

 

あとは蕎麦がちゃんと食べたかったから3人前ほどのせいろで「へぎそば」というのを頼んで、これに天ぷらを頼んで女房と2人で食べるんですけど、量が多過ぎるくらいですよ。

 

僕は、今まで審判員と一緒に食事したりすることはほとんどありませんでした。立場的にそこは一線を引いてました。AFCに行っていたときも日本人と食事することはなかったですね。「日本人だけがいい思いをしている」と誤解されるんじゃないかと思いましたから。だから特定の審判員の誰かと食事というのは自ら避けていました。できなかったんですよ。それは今も一緒ですが、本音は審判の皆と楽しい食事をしたいことは確かですね。

 

紹介したお店 

 

 

小川佳実 プロフィール

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審判員として活動後、1997年に日本サッカー協会入りし、98年に審判を引退。2006年からAFCに出向し2015年に帰国。JFA審判委員長を4年間務めた。1959年生まれ、静岡県出身。

 

取材・文:森雅史(もり・まさふみ)

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佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。

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浅草のひやむぎ専門店「きわだち」で、今までにないひやむぎを知る

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浅草にできたばかりの、とある専門店へ

こんにちはみやけです。まだまだ暑い日が続きますね。今回は2020年7月にオープンしたばかりの、とある専門店に行ってきました。

 

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浅草駅から徒歩10分ほど 裏浅草エリアです

同行者は過去にも数回登場している友人K(めちゃくちゃよく食べる) です。

 

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日本で唯一のひやむぎ専門店、「特撰ひやむぎ きわだち」さんです。ひやむぎの専門店なんて聞いたことないですよね? 日本で初めてなんだそう。

まずここで、私のひやむぎに対する認識を整理してみます。

 

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私にとってひやむぎという存在は「うどんとそうめんの間」。そうめんよりは満足感を得たいなって時に茹でて食べたりしています。西日本ではあまり馴染みがなく、食べたことがない・初めて聞いたなんて人も結構な数いるんだとか。

 

そもそもひやむぎとは 

乾麺の規格によると、麺の直径の長さが

  • うどん」1.7mm〜
  • 「ひやむぎ」1.3mm〜1.7mm
  • 「そうめん」〜1.3mm

とあります。 (参考:乾めん−KANMEN.com− 全国乾麺協同組合連合会

構成要素はシンプルに小麦粉・塩・水なので、主に麺の太さで種類が分かれていると思って良さそうです(ちなみに幅が4.5mm以上になると「きしめん」だそうです)。

作り方は

  • 生地を延ばして切るのが「うどん」「ひやむぎ」
  • 生地を手で細く延ばしていくのが「そうめん」

です。

ひやむぎの食べ方は一般的にそうめんに似ているので、ひやむぎに数本、ピンクや緑の色付きの麺が入っているものを良く見かけるのは、そうめんと区別がつきやすくするためなんだとか。

 

生麺のひやむぎってどんな感じなんだろう

ひやむぎの定義がわかったところで、そもそも人生でのひやむぎ経験がそんなに無い私。なんとなく中途半端な立ち位置だったので、特別美味しい!と感じたこともありませんでした。

しかも生麺のひやむぎなんて、人生で一度も食べたことがない! 専門店好きな私としては行かない理由がないな、ということで早速お伺いしたのでした。

 

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ひやむぎメニュー

メインのひやむぎだけでも、これだけの種類があります。シンプルなものから味を想像できないアレンジまで。迷ってしまうやつ……!

 

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おつまみやおかずも充実。「羊」カテゴリがあるのが面白いですね。

 

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ひととおり注文し終えたら、まずは限定樽からビールを一杯。ちなみに昼からお酒が飲めます。

この日のビール東京クラフトの東京ペールエール。限定樽のビールの種類は、毎回樽ごとに変えているそう。理由は「同じビールが続くと、飽きちゃうんで」とのことです。来るたびにビールが違うと楽しくて良いですね。とってもフルーティで美味しい!

 

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お通しはこちら、なんでしょう、湯葉……? いいえ、ひやむぎのお刺身とのことです。 

 

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この形で食べるの、新鮮

もっちもちで、香りが良い。甘めのかえし醤油をつけて食べます。わさびともすごく合う。

ひやむぎは、うどんのように造の段階で生地を延ばすので、こういった形に切り出すことができるんですね。製麺からやるこの店だからこそ食べられる一品です。このあとに来るひやむぎは、一体どんなものなんだ?とわくわくさせてくれる演出です。

 

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おつまみもハズレなく美味しい

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ゴボウとニンジンのゴマサラダ。

 

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ラムの和風ローストは、火の通り加減が絶妙で、噛めば噛むほど美味しい。冷たさ・肉の厚さも個人的に大好きな状態でした。添えられたワサビ、柚子胡椒、パクチーも合います。自分で薬味の組み合わせを変えながら、ビールをごくごく飲むのが楽しい!

 

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ラムトマト。これ、すんごく美味しかったです。まずラムがゴロゴロと大きいのに、口に入れるとめちゃくちゃ柔らかい。イタリアンなトマトソースの酸味がラムにこんなに合うとは思わなくて、発見でした。 

 

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「きわだち」さんでは揚げたての天ぷらも出してくれるんです。

こちらは天ぷら5種盛り合わせ。砂肝、ナスに水ダコ。ここに鳥なんこつと舞茸の天ぷらを追加して持ってきてくれました。水ダコの天ぷらなんて初めて食べたし、鳥なんこつがぷりっぷりで超好きでした……。これは熱々のうちにぜひ食べていただきたい!

 

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栄光富士は私の地元山形県、鶴岡から。フルーティ。

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屋守は東京東村山から。ガツンとくるうまみ

2杯目以降は日本酒を注文。それぞれの個性も説明してくれるので、私のような日本酒初心者でも安心して注文することができます。「お蕎麦屋さんのような感覚で、お酒を楽しんでいただく方が多いです」と店主さん。ビール日本酒だけでなく、ワインやウイスキーなども揃ってます!

 

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メインがまだだったことに気が付く

 

ついにひやむぎをいただく

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ついにきました ひやむぎ!!まずはシンプルに、せいろをいただきます。

 

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もう見るからに、私が知っているひやむぎとは違う。この色とツヤ。 一見更科そばのような見た目ですが、どんな味なんだろうか……。

 

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まずはつゆにつけず、このままいただいてみます。

まず感じたのが「なんだこれ。初めて食べる味!」

啜った時に鼻に抜ける小麦の香りが全然違う。この喉越しも初めての体験です。あえて例えるならば、細いのに讃岐うどんのようなもっちりとした歯応え、太いのにそうめんを食べた時のような清涼感……というところでしょうか。

でもやっぱり、うどんともそうめんとも、そばとも違います。これがひやむぎなのか。

 

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一口目から実感する「なにこれ!」

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出汁がきいた関西風のつゆ

つゆは鰹節と昆布をベースにし、椎茸やげそなどが加えられた特製のつゆ。上品な口当たりで、ひやむぎ自体の美味しさをそこなうことなく引き立ててくれます。薬味はネギに柚子胡椒。ぴりっとしたアクセントが楽しいです。

 

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つけとろ。こちらも同じくせいろのひやむぎですが、すり下ろしたとろろと泡立てた卵白をつけつゆにしていただきます。なかに卵が沈んでいるので、かき混ぜながら食べてくださいとのこと。

 

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とろろがずっとふわふわとろっとろ。最後までふわとろが続きます。

ひやむぎに絶妙にとろろが絡んで、口の中で一体になる感覚がたまりません。そんな中でも、シャッキリとしたひやむぎの存在はしっかりと感じられます。食感も美味しさのひとつだな……!と実感する一品。これがうどんやそうめんだったら全然違った味わいになるんだろうな。

このひやむぎは生麺なこともあり、茹で時間が1分20秒とのこと。きわだちのひやむぎは、水分量が45%を維持しているのでさっと茹でられるんだそう。乾麺のひやむぎの茹で時間が大体4分程度です。

 

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ここで温かいひやむぎもひとつ。鴨南蛮も頼みました。

 

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ひやむぎって、温かくしてもこんなに美味しいのか。

私は家でひやむぎをにゅうめんみたく調理することもあるんですが、茹で時間の調整がうまく行かないせいか、冷やで食べる時と違って麺が伸びて食感はぶよぶよになってしまって、その点では残念な仕上がりになることが多いんです。

が、これは温かくしてもしっかりとシャッキリ感が残っていて、スープに浸ることでよりぷりぷりに。それでいて小麦のうまみや、心地よい喉越しは変わりません。鴨の脂がしみ出た透き通ったスープにも合い、するするっと入ります。

 

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地産地消に根付いています

石臼挽きの全粒粉が使われている点は、訪れた外国の方も興味津々だそう。全粒粉のパスタはあっても、ひやむぎなんて初めて食べますもんね……。

何度も試作されて納得のいくひやむぎができたという、その丁寧な仕事っぷりも味わいから感じとることができます。

 

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埼玉のシンカメは常温で。打って変わって力強い味!

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京都の澤屋まつもと 酸味があり、スッキリとした味わい

ひやむぎに合わせる日本酒2杯目はこちら。常温と冷酒、それぞれひやむぎに合わせるとまた違った表情を見せてくれて面白い。いやあ、日本酒って美味しいんですね……。子育てでお酒からはしばらく離れてたんですが、これからもっと詳しくなりたいなあと思った夜。

 

まだいけるよね?いける!ということで、最後にまた、冷たいひやむぎを注文しました。 

 

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冷やし梅とろろ昆布 こちらはひやむぎの冷かけです。丸ごとドンと乗っかった梅干しの酸味、とろろ昆布の旨味、キリリと冷えたスープがより麺をシャッキリとさせて、喉越しも最高。

いや〜、全部本当に美味しい。他のひやむぎも食べたい。けど、お腹が限界を迎えたので今回はここまで。 ひやむぎでこんなにバリエーションが楽しめるなんて思っていませんでした。

 

ひやむぎの知名度をあげたい

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「特撰ひやむぎ きわだち」店主の永井さんは、飲食業界以外にも様々な経歴を持ち、自身のnoteなどでも積極的に情報発信をしています。元々実家がお蕎麦屋さんなこともあり、製麺に関する知識や技術は得意分野とのこと。

「本気で作ったひやむぎはうどんやそばに負けない美味しさなので、ぜひ皆さんに食べてもらいたいんです。」

 

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製麺への情熱がすごい

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現在は永井さん一人で切り盛りされている

夜のうちにひやむぎを製麺し、お店での調理や接客なども今は全部ご自身でやられています。すごい。

今後は通販も視野にいれているとのことで、自宅であの味が楽しめるとなると嬉しさしかない……!(意外にもひやむぎの生麺は日持ちし、なんと冷凍もできるとのこと!) 

「ひやむぎ=夏」のイメージが強いですが、これから寒くなる季節もひやむぎ一本で勝負していくそう。温かいメニューにも強い「きわだち」の生麺が冬にはどんなかたちで登場するのか楽しみですね。今回の料理の完成度を見るに、アレンジにも期待しか持てません。

 

新メニューやお酒の入荷情報など、じゃんじゃんSNSでも更新されてるので、ぜひチェックしてみてください。

 

 

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ごちそうさまでした!また行きます。

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このつやつやにまた会いたい

 

紹介したお店

店名:「特撰ひやむぎ きわだち」
住所:東京都台東区浅草3-9-10 キャピタルプラザ浅草106
電話:03-6876-3586
営業時間:11:30~14:00 / 17:30~21:00 (L.O.30分前)
定休日:木曜日

 

著者プロフィール

みやけ

みやけ

フリーのライター兼イラストレーター。育児のかたわら食べ歩いています。
Twitter :https://twitter.com/a_komotomo
Instagram:https://www.instagram.com/miyahahama/
みやけ 執筆記事一覧|みんなのごはん

硬水と軟水で料理の味は変わるの? 硬度が1458mg/L違う水で料理を作る

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水というものがある。我々の生活でなくてはならないものだ。蛇口をひねれば水が出るし、スーパーなどに行っても水は売っている。幸せなことだ。運動をした後に飲む水なんて、味がないはずなのに最高に美味しい。

 

水には「硬水」と「軟水」がある。日本の水は多くの場合が「軟水」で、ヨーロッパに行くとほとんどが「硬水」となる。では「硬水」と「軟水」で料理を作ると味は変わるのだろか。作ってみようと思う。

 

硬水と軟水の違い

ミネラルウォーターのラベルを見ると「硬度」という表示がある。硬度とは水に含まれるミネラルの多さを示すもので、カルシウムとマグネシウムの量で計算されている。この数値によって硬水と軟水が区別される。

 

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日本の水道水は軟水!

日本の水道水は、東京都水道局のサイトを見ると、「おいしさの面から10〜100mg/Lが設定されています」と書いてある。硬水と軟水の違いは1リットルに含まれるミネラル量が120mg以下なら軟水、それ以上が硬水となる。つまり水道水は軟水ということになる。

 

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軟水と硬水

日本の水は火山によってできた大地が多いため水を通しやすく、川の流れもあり、また川が短いので、水にあまりミネラルが溶け込まず軟水になりやすい傾向がある。逆にヨーロッパなどは石灰質の地域をゆっくりと水が流れる。大陸なので川の流れが遅く長い。そのため、ミネラルがたくさん溶け込み硬水となるわけだ。

 

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見かけは一緒だけどね!

今回買ってきたのは「コントレックス」と「熊野古道水」。コントレックスは硬度が「1468mg/L」。熊野古道水の硬度は「10mg/L」。すごい差である。もはや同じ水とは思えない差だ。でも、どちらも水なのだ。

 

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コントレックス(1468mg/L)

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熊野古道水(10mg/L)

硬度が高いと石鹸の泡立ちが悪くなると言われている。思い出してみると、確かにヨーロッパに行ってシャワーを浴びると、あまり泡立たない気がする。もっとも私が異常に汚れていたという可能性も捨てきれないけど。

 

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飲んでみると、

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味が違う!

硬水と軟水を飲み比べてみると、確かに味が違った。好みで言えば軟水だ。軟水はすんなり入ってくる。爽やかさを感じる。硬水は口に苦味的な何かが残り癖を感じる。東京都水道局のサイトに「おいしさの面から10〜100mg/Lが設定」と書かれている理由がわかる。確かに軟水の方が飲みやすいのだ。

 

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料理を作ります!

肉じゃがを作る

硬水と軟水で同じ料理を作ってみようと思う。同じ量の材料と調味料を使い、同じタイミングで調味料を投入する。そうすれば、硬水と軟水での料理の違いがわかるはずだ。

 

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2つに分けられた鍋を準備して、

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材料はキチンと計量して、

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硬水と軟水で同じ量を準備しました!

作るのは「肉じゃが」だ。それぞれに水200mlを利用するので、硬水と軟水の特徴がわかるのではないだろうか。ちなみに肉じゃがは私がもっとも得意とする料理だ。さらに、ちなみに豚肉派。いつか誰かに作ってあげたいと思っているけれど、一人暮らしだ。誰かに作ってあげた記憶はない。美味しいのに、もったいないと思います。

 

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同じタイミングで入れて、

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同じように混ぜて、

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硬水と軟水を同じタイミングで投入して、

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同じタイミングで調味料を投入して、

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蓋をして20分煮込む!

部屋に美味しそうな匂いが溢れている。この匂いに釣られて、まだ見ぬ私の子猫ちゃんがピンポーンと押してくれないかと思っていたけれど、そんなことはなく、ただただ美味しそうな硬水と軟水の肉じゃがが完成した。

 

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見た目は一緒!

味はどうなのか

硬水と軟水でそれぞれ作ったけれど、見た目はほぼ同じだった。水に色が付いているわけではないので、見た目は一緒なのだろう。問題は味だ。味がきっと違うのだ。だって、硬度が「1458mg/L」も違うのだから。

 

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食べてみる

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違う!!!

違いました、全然違いました。まず味が軟水の方がしみ込んでいる気がする。肉も軟水の方が柔らかい。私調べによると硬水は肉の臭みを取り柔らかくするそうだけれど、硬水が過ぎると肉は固くなる。今回の硬度1468mg/Lは硬度が過ぎたのだ。日本生まれの肉じゃがにはやはり硬度10mg/Lが合うようだ。

 

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あきらかに軟水が美味しい!

今回の差では軟水の方が味もまろやかなのだ。硬水は様々なミネラルがクセとなり、このような料理に向かないということなのかもしれない。考えてみれば、日本の料理は味噌汁やごはんなど水をふんだんに使うものが多い。一方でヨーロッパはシチューやパエリアなど、水をあまり使わない料理が多い。食文化は水によっても変わるのだ。

 

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カレーを入れてみよう!

肉じゃがにカレーを入れる

肉じゃがを作っていると、ほぼカレーだよな、と思った。カレールーを入れればカレーだなと。都市伝説ではビーフシチューを作ろうとして肉じゃがが生まれたと聞くけれど、肉じゃがからカレーが生まれたっていいのだ。

 

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同じタイミングでカレールーを入れる

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水も同じ量足す

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1時間煮込む

部屋中にカレーのいい匂いが漂う。この匂いに誘われてまだ見ぬ私のエンジェルたちがピンポーンと押してくれないかと思っていたけれど、そんなことはなく、ただただ美味しそうな硬水と軟水のカレーが完成した。

 

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完成しました!

相変わらず見た目は一緒。問題は味だ。肉じゃがでは硬水と軟水で確かに味が違った。軟水の方がクセのないやさしい味だった。カレーにしたらどうなのだろう。そんなドキドキと共にカレーを口に運んだ。

 

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硬水、美味しいね!

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軟水、美味しいね!

はい、一緒。一緒でした。1時間ほど煮込んだので肉の柔らかさにも差はない。また味はカレー味で違いがわからないのだ。私はカレーを入れたら全部カレー味という持論を持っている。それが証明された形だ。カレー味なのだ。違いなんてない。硬水も軟水もカレーを入れれば一緒なのだ。

 

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カレーは全てをカレーにする!

水から文化がわかる

日本の料理は繊細なものが多いと思っていた。それは軟水ということが影響しているということなのだろう。硬水だと今の日本のような食文化は生まれなかった。ヨーロッパなど硬水の国は煮込み料理やパスタなど硬水の特徴を活かした料理が多い。水が変われば料理変わるのである。水から食文化が垣間見られることに気がついた。そんな実験だった。

 

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お気に入りのエプロンです!

 

著者プロフィール

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地主恵亮
1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「妄想彼女」(鉄人社)、「インスタントリア充」(扶桑社)がある。
Twitter:@hitorimono

 

野菜を中心とした中国の田舎料理が味わえる店、「蓮香」でおまかせコースを堪能する旅

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先日、南インド料理と中国料理を学んだ料理人が腕を振るう「牧谿」という店で、スパイスや発酵食品の魅力を再確認させてもらった。知らない味付け、馴染みのない香りなのに、心が弾む不思議な食の体験だった。

その日以来、私の貧弱な食のアンテナではこれまで圏外だった店をもっと試したい、味覚の幅を広げてくれる異国の刺激を試したいという思いがとても強くなっている。

そんな話を牧谿に連れていってくれた友人のBさんにしたところ、「牧谿が気に入ったのなら、次は蓮香(レンシャン)だな。ちょっとディープな中国料理を食べに行こう」と誘ってくれた。

蓮の香りでレンシャン。そういえば先日、たまたま蓮の花を見に行ったことを思い出しつつ、そういう料理が好きそうなTさんも誘って、その申し出に乗らせていただくことにした。

 

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蓮の花。どんな香りなのか、ちゃんと嗅いでおけばよかった。

 

白金高輪でいただく、中国の田舎料理

Bさんに予約をしてもらった蓮香は、これまで全く縁のなかった白金高輪駅から、少し歩いたところにあった。いわゆる町中華的な店で食べるラーメンやギョウザ、エビチリに麻婆豆腐あたりが馴染んでいる舌と金銭感覚なので、こんな機会でもなかったら一生たどり着くことのなかった店だろう。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130255j:plain店のオープンに合わせて18時に予約をしてもらった。

 

まったく土地勘のない場所だったので、だいぶ余裕をみて出発したため早く着いた。とりあえず店の外から情報を探ってみよう。もう予約をしてあるので、今更チェックしても仕方がないのだが、より楽しく食べるためのヒントがあるかもしれない。

店の看板には〈郷村菜 蔬菜〉と書かれている。スマホで検索してみると、郷村菜は田舎の郷土料理、蔬菜(そさい)はキノコなども含む野菜全般という意味のようだ。

前に佐渡島の山奥で、地元のおばちゃんたちが作る地場野菜たっぷりのご当地宴会料理を食べさせてもらったが、なんとなくそんなニュアンスが〈郷村菜 蔬菜〉の文字から頭をよぎった。その中国版だとしたら、旅に飢えている身としては最高のコースになりそうだ。

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なんて腕組みしながら1人で唸っていたら、その下に「中国の田舎料理、野菜を中心にしたおまかせ5,900円からのコース料理です」と、わかりやすい説明が書かれていた。

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時間通りに3人が揃い、額をピっとやる検温、手のアルコール消毒をして入店。コロナ対策のためか席のレイアウトはかなり余裕があり、入り口の扉は換気のため開けたままになっていた。

BGMこそ中国っぽい歌謡曲のようだが、私がイメージする大衆中華の店とはだいぶ違う落ち着いた雰囲気。ここに何度か来たことがあるBさんに、「ずいぶん大人の店ですね」と小声で素直な感想を伝える。

だいぶ前に初老(40歳)を迎えておいて、いまさら大人の店もないのだが、この手の店に来た経験がほぼないので、やっぱり緊張してしまう。コース料理なので予算を読めるのが正直ありがたい。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130421j:plainワインや紹興酒は自分で選んで持ってくるセルフチョイスのスタイル。どのボトルも均一料金なので、金銭感覚の不一致で友情が壊れることはなさそう。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130357j:plainビールやソフトドリンク、中国茶なども用意されている。

 

まずは乾杯用のドリンクを注文。隣に座ったBさんは極上レモンサワー、そして斜め向かいのTさんはチンタオとやらを注文。そんなドリンク、メニューにあったかな。

「じゃあ私はアオシマ……」と言いそうになったところで、青島と書かれたビールの読み方がチンタオであることを思い出した。

あぶなく今日のあだ名が、アオシマになるところだった。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130336j:plain中国の代表的なビールである青島の読み方はチンタオ。これまでに10回くらい覚えて、10回くらい忘れている知識だ。極上レモンサワーは炭酸が強めで酸味がまろやかとのこと。さすが極上。

 

無事に乾杯をしたところで、マスクをしたスタッフさんが本日のコースを説明しつつ、苦手なものの確認をしてくれた。大丈夫、香菜も唐辛子でもどんとこいだ。〈毛瓜〉とか〈怪味〉とか〈白骨〉とか、味の想像ができない危険そうな文字もいくつか並んでいるが、おまかせコースなのだからおまかせしよう。知らない味だからこそ試したいメンバーだ。

これは当たり前の話なのだろうけれど、こうして苦手な食材を確認するということは、すでに用意してある料理を出すのではなく、これから一品ずつ調理して出来立てを提供するということなのだと理解して感動した。

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今日のコースは中国だけではなく台湾の料理も出てくるようだ。

 

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最近になって中国の酒に目覚めたというTが、金朱鷺黒米酒と書かれたボトルを選んできた。私が知っている紹興酒よりも爽やかで飲みやすい。

 

前菜の盛り合わせからすごかった

最初に運ばれてきたのは前菜四品の盛り合わせ。どれも見た目の印象よりも一味深く、あっさりしつつも食感や香りがとても豊かだ。

一つ一つの小さな皿から「これでいいでしょ」ではなく「これがいいんだよ」というシェフからのメッセージを強く感じる。とても丁寧に作られた前菜で始まるおまかせコース、もう次の料理が楽しみで仕方がない。味覚と胃袋の準備はバッチリ。ようやく少し緊張感がほぐれてきた。

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どれも丁寧に作られてることが伝わってくる前菜四品。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130626j:plain傣族式牛皮コラーゲン トマトハーブサラダ仕立て」。傣族(たいぞく)は中国雲南省あたりに住む少数民族とのこと。クニュクニュした食感の牛皮コラーゲンが独特の存在感だ。

 

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「細切り豆腐 野菜の葱油風味」。細切りの豆腐は何度か食べたことがあるけれど、どの記憶よりもうまい。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130541j:plain毛瓜の上湯煮 怪味ソース掛け」。毛瓜(モーウイ)は冬瓜(トウガン)の仲間の産毛が生えたウリとのことで、さっくりした歯ごたえ。怪味は複雑な味という意味だそうで、甘酸っぱくてちょっと辛くてうまい。「怪味は四川料理かな。数年前に唐揚げ屋さんのフレーバーとして流行りましたよね。実は初めて食べるけど、こんな味だったのか……」と感慨深げなT。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130612j:plain太モヤシとミント 木姜子風味」。木姜子(ムージャンズ)はクスノキ科の山蒼子(さんそうし)の実で爽やかな風味。「食べ慣れない不思議な味わいなのに、絶妙においしくてお酒が進んでしまう」とマタタビを前にした猫みたいになったBさん。

 

どの料理もおいしく、そして新しい発見がある

手の込んだ前菜を食べたことによって食べる前よりもお腹が空いてきたところで、続いての料理は「白骨空心菜 傣族の干し豆鼓炒め」だ。

運ばれてきた皿を見て、「骨が白くなるまで煮込んだスープと空心菜を炒めたものでは?」と自慢げに予想を発表したが、軸が白い空心菜の品種だった。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130755j:plain白骨空心菜、覚えました。

 

シャッキリパッキリと炒められた白骨空心菜はもちろんのこと、この皿に溜まったスープがうまかった。干し豆鼓の旨味なのか、私を含めて3人とも愛おしそうに空心菜へと沁み込ませている。フランス料理じゃないけれど、このソースを吸わせるパンが欲しい。

一緒に盛られている大きな唐辛子は食べるものではないんだろうなと思いつつも、せっかくなのでと皮部分をちょっと齧ってみたところ、恐れていた辛さはあまりなく、すっきりした香ばしい香りが口から鼻へと抜けていった。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130843j:plain青いボトルがかわいい花雕酒(長期熟成させた紹興酒)を追加。まろやか。

 

大豆とモヤシの中間みたいな食材である発芽大豆、ささげという細長いサヤインゲンのような野菜の漬物をひき肉と炒めた「発芽大豆 ささげ漬物 ひき肉炒め」もまた組み合わせがおもしろかった。これをずっと箸で口へと摘まみあげていたい。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130859j:plain発芽玄米ならぬ発芽大豆、大豆にこんな食べ方があったのか。

 

「カリカリっとしたひき肉、ホクホクの発芽大豆、酸味のあるササゲが相まって、絶妙のおいしさですね。ちょうどササゲの漬物を仕込んだところだったので、出来上がったら絶対に家でも作ってみます」と静かに興奮するBさん。

実は私もササゲの漬物を作ろうとしていて、でもささげが手に入らなかったので畑から採ってきた適当なインゲンを漬けている。果たしてどちらがこの味に近いものを再現できるのだろうか勝負だ。いや勝つのはBさんだろうけど。

 

「琵琶湖天然稚鮎 葉ニンニク 山盛り唐辛子炒め」は細い竹で作られたカゴのようなものに、稚鮎と葉ニンニクと唐辛子を炒めたものが豪快に盛られていた。鮎を捕るため川に掛ける簗(やな)という罠を彷彿とさせる盛り付けだ。

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唐辛子はほとんど辛くない品種のようで、見た目ほど強烈ではない。ほんの少し入った葉ニンニクが実に効果的。

 

おそらく純粋な中華料理ではなく、この時期に東京で手に入る魚の中で一番ふさわしい食材として琵琶湖の稚鮎が選ばれたのだろう。丸ごとサクッと揚げられた稚鮎が隠し持つ内臓の苦みが嬉しい。稚鮎は私の大好物、それに唐辛子の辛さと香りを纏わせるとは。これぞ日本でだからこそ食べられる中国郷土料理だ。

「大量の唐辛子は辛さというより香ばしさ担当かな。あと見た目のインパクトとして重要」と分析するT。ちなみにスタッフさんにこの唐辛子は食べるものなのかと聞いてみたところ、あくまで香りをつけるためのものなので、食べられなくはないけれど食べなくていいそうだ。でもせっかくだからと食べてみたが、やっぱり口ではなく鼻と目で楽しむものだなと納得した。

 

続いては「夏野菜 台湾バジルのオムレツ」。台湾バジルは九層塔という野菜で、これを食べてある記憶が呼び起こされた。

昨年台湾旅行をしたとき、港町のまったく英語が通じないお店でお任せコースを頼んだところ、貝と一緒に炒めたレモングラスとバジルとミントを足したような刺激的な葉っぱに驚いたのが、これだったのだ。オムレツを食べた瞬間に独特の味が引き金となって、あの日、あの場所の空気感が蘇ってきたのである。

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味が記憶を呼び起こすことがあるんだなと実感。もし台湾で台湾バジルを食べることがあれば、この店の記憶が蘇るのだと思う。

 

このオムレツは出汁巻き卵をスクランブルエッグ風に作ったようなフワッとした仕上がり。卵という日常的な食材と合わせることで、台湾バジルが持つ個性が輝いている。種を取り寄せて、畑に植えてみようかな。

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野菜中心の料理なので白ワインも合う。

 

「エビとさつまいも春雨 発酵唐辛子煮込み」は、さつまいも料理が出てくるのかと思ったら、さつまいもの澱粉で作った春雨だった。緑豆やジャガイモの澱粉で作られたものに比べてだいぶムチムチムニュムニュと太めの春雨に、プリプリのエビというコントラスト。

春雨の原材料なんて気にしたことが無かったけれど、さつまいも澱粉で作るとさつまいもらしい味がするのか。原料の香りを残す蒸留酒のようだ。

真っ赤な唐辛子が山盛りで辛そうに見えるけれどそんなに辛くない料理があったけれど、これは逆で辛そうじゃない見た目なのに不意打ちのような辛さが隠れているという嬉しい罠。しっかり発酵唐辛子煮込みって書いてあるけどね。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130953j:plain太いさつまいもの春雨、おいしい。

 

「月桃叶排骨 台湾阿美族風スペアリブ月桃の葉蒸し」は、今日のコースでは唯一の肉料理。台湾の原住民である阿美族が好んで使うという、月桃というショウガ科ハナミョウガ属の葉で包んで蒸した豚の骨付きばら肉だ。

f:id:tamaokiyutaka:20200808131005j:plain月桃の葉でフタをされた状態で登場。

 

「月桃のちょっと薬草っぽい香りがしますね。スペアリブは柔らかくてゼラチン質がぷりぷりになって口の中に絡みつく。濃厚なタレにレンコンが合いますね」とBさん。

「むっちりスペアリブとさっくりレンコン、しっかりした味付けの組み合わせがうまい」とTさん。

「白いご飯がほしくなる味」と私。舌と鼻に未知の経験が積まれることで、おいしいと思える食の守備範囲、ストライクゾーンがどんどんと広がっていく。これぞ外食の醍醐味。

f:id:tamaokiyutaka:20200808131015j:plainまた台湾に行きたくなってきた。

 

なんだか本日のコース料理を通して、厨房で鍋を振るっている小山内耕也シェフから土産話を聞いているような気分になってきた。きっと現地でこれらの源流となる料理を学び、それに日本独自の食材を加えて再現したものを、こうしてお客さんに旅の成果として提供しているのだろう。

だからこそ客が料理を選ぶのではなくシェフが料理をセレクトするコース仕立て。なんて勝手に深読みをしたり。ちょっと飲み過ぎたのかもしれない。次はカウンターに座らせてもらい、中華鍋を振るシェフから近い位置で土産料理を食べてみたい。

 

メニューに書かれていないサービス料理が登場

ここまででかなり満腹になったのだが、スタッフさんからコースの締めとして、メニューに掛かれていなかった炒飯と坦々麺を選んでくださいと促されて驚いた。そして迷った。この店の炒飯と担々麺、そんなのおいしいに決まっている。それを選べというんですか。

出されたものをおいしく食べるだけだったのに、ここにきて究極の二択。大いに迷った挙句、「両方を食べることは可能ですか?」と勇気を出して聞いてみたところ、500円プラスでできるとのこと。お願いします!

f:id:tamaokiyutaka:20200808131112j:plainシンプルながらも後を引く炒飯。炭水化物は別腹だ。

 

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意外と量が多かった汁なしの担々麺。「花椒の辛味、肉味噌の旨み、少しだけ入ったササゲの酸味が麺に絡み、辛い辛いと言いながらもどんどん食べてしまう」とBさん。「日本式とは違う複雑な風味で、空腹時にこれだけを一人分食べてみたい」とTさん。

 

もうさすがにお腹いっぱい、さあ家に帰りましょうと立ち上がりそうになったところで、最後にお茶とレンコンの澱粉で作った葛餅風のデザートがやってきた。

後半にレンコンやその澱粉を使った料理を出してきたのは、「蓮香」という店名へのこだわりなのかな。レンコンといえば蓮の地下茎だ。

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もしかしたらこのお茶も蓮茶だったのかも。

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レンコン澱粉の葛餅風。食べると確かにレンコンの味がする。

 

完全におまかせのコースだったが、シェフが食べさせたい料理とこちらが食べたい料理が見事に結ばれた、とても幸せな食事となった。ただ正直に言えば、私の知識不足、舌の経験不足で、料理の意味や奥行きを受け止めきれなかった部分も多かった。同行の2人はさらに楽しめたのだろう。

もう何度目かの来店であるBさんによると、4名以上の予約で一品、6名以上なら二品、8名なら三品と、コースの品数が増えるというシークレットサービスがあるのだとか。通常のコースでも十分満足できる量だが、とても気になるサービスだ。

大人数での会食が難しい状況ではあるが、どうにか落ち着いたらこの店の味を一緒に楽しんでくれそうな人を誘って、また食べに来たいと思う。やっぱり外食は楽しい。

 

紹介したお店

著者プロフィール

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玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

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玉置標本「みんなのごはん」過去記事一覧

特選ステーキ(時価)に力を借りて、中間管理職を不当に扱うヤツラに倍返しだっ…!【フミコフミオのサラリーマン御祝膳問答 第3回】

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僕は46歳である。定年はまだ見えない。遊んで暮らしていけるだけのお金もまだない。だから、しばらくは労働者でいなければならない。最近会社で面白くないことが続いており、ムカついている。中間管理職なので、上下からホットサンドメーカーのように押しつぶされているような感じである。中年男をプレスして何が楽しいのだろう…。

 

つい先日も、上司からは「まだ若いのだからもっと精力的に動き回れ」と若造扱いされ、部下には「あの人もうトシだよね。考え方が古いよ」と年寄り扱いをされ、しまいには上司からも部下からも「そんなんでコロナで沈み切ったマーケットで生き残れるのか(生き残れるのですか)」と詰められる始末。自分が年寄りサイドなのか若者サイドなのかわからなくなっているがひとつだけわかったことがある。それは上からも下からもウザがられているという悲しい現実。

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▲牛肉に含まれる栄養素が会社で戦うエネルギーになるのだ。

 

真面目に仕事をしているだけで、どうして、このような不当な扱いを受けなければならないのだろう。少し考えてみればわかることであった。最近の僕にはギラギラが圧倒的に不足していた。1ヶ月1万円のランチ代のなかで僕は生きている。毎日、昼食でコンビニのおにぎりかアンパンを食べていては、ギラギラできるわけがない。虎のような目のギラギラを取り戻すには、肉を食べるしかない。

そう肉。ただの肉ではない。仕事帰りに買って帰る安売りグラム売りの鶏のむね肉では虎の目には戻れない。もっと、肉肉しいもの。後先考えず、野生を取り戻せるもの。上司や部下の発言にむかついていた僕は、野生を取り戻すべく一つの結論にいたっていた。《値段の決まっていない時価の肉を思うがままがっつり食べる》。それが僕の出した答えである。


で、調べてやってきたのが地元神奈川平塚駅そばにある「Steak134」さんである。ランチにステーキというだけで、おこづかい的にはピンチである。そのうえ地元の茅ヶ崎牛を使ったサーロインステーキは時価である。いくらかかるか店に入るまでわからない。もちろん注文の前に、「ハウマッチ?」と店員さんに本日の値段を聞いてから、検討することもできるがあえてしない。

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▲特選ちがさき牛サーロインステーキという文字に続く神々しい「時価」の2文字。

 

そんな守りの体勢だから、上下からつぶされるホットサンドになってしまったのだ。ムカつく。彼らを見返すためには、時価をあるがままに受け止めて、あえて値段を聞くことなく、クールにメニューを指さして「特選ちがさき牛サーロインステーキを200gで」とオーダーすれば良いのだ。

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▲リーズナブルで美味しそうなステーキに心揺れる46歳であった…。

 

で、オーダーした。店員さんからは「グラム~円です」と値段を伝えられた。絶句した。明日からの昼食代をどうすれば…。200gでコンビニおにぎりがいくつ買えるのかカウントしながら僕は素敵なステーキが焼きあがるのを待った。

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▲特選ちがさき牛サーロインステーキ(200g/時価)。ザ・ステーキな見た目。

 

どーん。これほど見た目が完璧なサーロインステーキは久しぶりである。イラストで書くようなザ・ステーキである。ナイフとフォークでカットして、口に運ぶ。その前にこの一切れでいくらだろう。おにぎり何個分になるのかしら。明日から大丈夫かしら。とおセンチになりながら食べる。

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▲とろけるバターが食欲をそそる。

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▲肉の暴力1

 

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▲肉の暴力2

 

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▲肉の暴力3


なにこれうますぎ。ファストフードのハンバーガーのやわらかさとはちがう、肉っぽい噛み応えと柔らかさ。そして肉汁が甘い。お上品にカットしながら食べていたが、なんか野生を取り戻せない気がして、途中で、一気にカットしてガツガツ食べる作戦に変更した。

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▲一気にカットして食べることにシューチューしました。

 

白飯との相性が最高すぎて、大盛りにしなかったことを悔やんだ。美味しいステーキには大量のライス。大きな学びを得た。あと脂がこんなに甘くて美味しいとはね。忘れていたよ。

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 ▲脂が甘くておいしい。

 

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▲白飯大正義の図


あっという間に食べてしまった。20分もかからず食べてしまった。なんという贅沢。店を出るときにはすっかり元気を取り戻していて、上司や部下に反撃するパワーがみなぎっていた。これが肉の力…。

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▲あっというまに食べてしまった。明日からのランチ代が心配…。

 

そのあとギラギラした虎の目をした僕は会社に戻って、上司や部下に毅然とした態度で接したのはいうまでもない。その後しばらくランチ代で苦労することもいうまでもない。みなさんもたまには、時価で美味しいステーキをたべてみてはいかがだろうか。では。

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▲テイクアウトもありますよ。

 

紹介したお店

Steak134
〒254-0034 神奈川平塚市宝町9-1-1F
2,000円(平均)1,000円(ランチ平均)

 

書いた人 フミコフミオ 

f:id:g-gourmedia:20140811094752j:plain海辺の町でロックンロールを叫ぶ不惑の会社員です。90年代末からWeb日記で恥を綴り続けて15年、現在の主戦場ははてなブログ。内容はナッシング、更新はおっさんの不整脈並みに不定期。でも、それがロックってもんだろう?昨年本も出版しました。ピース!

 

 
ブログ「Everything you've ever Dreamed」:http://delete-all.hatenablog.com/
ツイッター:https://twitter.com/Delete_All

【お題】「コロッケそば」どう食べる? “食べ方の流儀”を披露しあったら、めちゃくちゃ盛り上がった

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立ち食いそばの主力メニューのひとつで、根強いファンを持つコロッケそば。筆者も高い頻度で食べているが、いつも悩むのが「コロッケのあつかい方」だ。最初からつゆに浸すのか、とりあえずソースで半分程いってから投入するか。あるいは、ぐちゃぐちゃにかきまぜて、衣をそばに絡めてしまうのか。

 

おそらく正解はない。だからこそコロッケそばには、人によって食べ方の流儀のようなものがあるのではないだろうか。

 

そこで思った。ほかの人の流儀を見てみたい。

 

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そんなわけで、今回はコロッケそばに一過言を持つ方々にお声がけし、「名代 富士そば 神楽坂店」にお集まりいただいた。

 

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1人目はフリーライターの下関マグロさん。立ち食いそばはもちろん、数々のB級グルメに精通。「町中華」やナポリタンにまつわる著書もある。

 

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2人目は名嘉山直哉さん。2015年に国内の富士そばを全店制覇し、雑誌やラジオなどで富士そばの魅力を啓蒙する“富士そばライター”。

 

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3人目はこの記事を書いている小野洋平。これといった実績はないが、コロッケそばはけっこう好き

 

以上3名。1人1杯ずつコロッケそばを注文し、各々のこだわりを披露し合う。筆者はともかく、B級グルメに精通するマグロさん、富士そばを敬愛してやまない名嘉山さんが、どんなアプローチで臨むのか楽しみだ。

 

「そばは“冷”」「コロッケ別皿」注文の時点で富士そばライターのこだわりが炸裂

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今日はよろしくお願いします。さっそく注文しましょうか。温かいコロッケそば3つでいいですか?(※通常は食券にて購入)

 

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はい。僕は温かいそばで。

 

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僕は冷たいもりそばで。コロッケは「別皿のつゆあり」でお願いします。

 

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おお! さっそく、こだわりが炸裂していますね。

 

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なお、今回は富士そば社員の工藤さん(左)、上前さん(右)にもご同席いただいている。コロッケそばが到着するまで、お話を聞いてみよう


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コロッケそばって、やっぱり人気メニューなんですか?

 

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そうですね。僕が入社した24年前からメニューにありましたから、かなりのロングセラー商品ですね。そうそう、最近こんなものを作ったんですよ。

 

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コロッケそばを全面に推したタペストリー。手頃な期間限定メニューなどがない時に、店内に掲示されるという


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「立ち食い上級者はなぜ選ぶ!?」って書かれてる。コロッケそばって、富士そばさん的にもそういう(上級者向け)位置づけなんですね。

 

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コロッケそばってこれだけ根強く生き残っているのに、いまひとつ目立っていないところがあるなと思いまして。富士そばとしてもタペストリーを作って盛り上げていこうと。

 

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「ちょい浸し派?」「崩して食べる派?」ってフキダシついてますけど、大きく分けるとそうなるんですかね?

 

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うちの社員に聞いてみると、ちょっとだけ浸したい人と、がっつり浸して「崩す派」に分かれるんですよ。これは面白いと思い、タペストリーでもそこを推していこうと思いました。

 

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そうこうするうち、コロッケそば(温)430円が到着

 

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こちらはマグロさんが頼んだ「温」。そばの上にコロッケが乗った、スタンダードなスタイルですね。さっそくですが、どう食べますか?

 

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まず、コロッケはしばらく放置します。最初はコロッケが冷めているので、そばを食べながらつゆに少しずつ沈めて、じっくりと温めます。すると、食べ進めていくうちに、コロッケの衣がつゆに染み出していく。これがうまいんです。

 

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衣でつゆのコクが増していく感じですかね?

 

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そうです。僕は、コロッケって七味やこしょうと同じ「味変アイテム」だと思ってますから。

 

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コロッケでつゆを育てていく感じですよね。

 

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そうそう。まさに育てる感じ。最後のほうの、ほろりとほぐれたコロッケとつゆが融合していく状態がたまらないですね。

 

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僕は細かく分散した衣も余すことなく食べたいから、あれをすくうスプーンを置いてほしいです。坦々麺を食べる時の、挽肉をすくう穴があいているやつ。

 

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そんな名嘉山さんは「冷やし」でいくんですね。そして、コロッケは別皿スタイル。

 

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コロッケそば(冷)430円

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コロッケは別皿。そこに少しだけつゆをかけてもらう


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僕は最初はコロッケとして楽しみたいので、別皿です。富士そばのコロッケは「コーン」「にんじん」「グリーンピース」が入った“野菜コロッケ”。おかずとして食べてもおいしいのが特徴です。

 

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でも、まずはそばから食べます。僕もマグロさんと同じで、コロッケはつゆが染み込んで温かくなるまで待ちたい派なので。

 

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温かいそばの時はどうですか?

 

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「温」で食べる時も同じ流れです。ただ、僕の場合はコロッケがぐずぐずになってしまうのがいやだから、状態を見極めながら食べ進めていく感じですね。

 

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富士そばさんの分け方でいうと、名嘉山さんは「ちょい浸し派」ってことですね。逆にマグロさんは「崩して食べる派」だ。見事に分かれました。

 

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そういう小野さんは、何派なの?

 

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僕は「ぐちゃぐちゃ派」です。

 

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????

 

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食べ方としては、こんな感じですね。

 

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まず、コロッケを縦半分、横半分に切って4分割します。

 

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そして、そばの下に隠してしまいます。

 

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天地返しだ。

 

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はい?

 

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二郎系ラーメンを食べる時の技です。麺を具の上に引っ張り出す食べ方です。

 

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天地返しはコロッケそばを食べる上でも利にかなったテクニックだと思います。特に、富士そばのコロッケはジャガイモがギュッと詰まっているから、時間をかけないと柔らかくならない。小野さん、やりますね。

 

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知らないうちに、そんな技術を習得していたとは。

 

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そして、そばを食べていき、コロッケがいい塩梅にぐちゃぐちゃになったら、それを一気にかき込む、という感じですね。ゆえに「ぐちゃぐちゃ派」です。

 

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独特ですね……と言いたいところだけど、じつは僕もそんな感じで食べる時もあります。コロッケそばって、その日の体調や気分によって食べ方が変わりますよね。今日はハナからぐちゃぐちゃにするぞとか、あえて冷たいコロッケのままいってみようとか。コロッケ自体もつゆに浸すとどんどん味や食感が変わっていくから、どの段階で食べようかとか、そういうのを考えるのが毎回楽しい!

 

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つまりコロッケそばに正解はないと。自由で楽しい食べ物なんだなあ。

 

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そう、自由。僕はたまに、コロッケそばからそばを抜いた「コロッケぬき」をやることもありますよ。いわゆる「天ぬき」のコロッケバージョンですね。それを酒のアテにして、シメにそばを食べます。

 

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えっ、そんなことできるんですか?

 

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もちろん可能ですよ。たまに、そういうお客さんもいらっしゃいます。

 

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いいこと聞いた。今度やってみよう!

 

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あとは、ライスを一緒に頼んで、一度つゆに浸して育てたコロッケを白米の上に逆輸入するパターンもありますよ。

 

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逆輸入…。さすがベテラン。技が多彩だ。

 

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他にも、自分流の食べ方ってあったりしますかね?

 

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これは、だいぶトリッキーな技だと思うんだけど……。

 

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ぜひ教えてください!

 

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弁当に入ってる「魚の形をした醤油ケース」あるじゃないですか。

 

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はい。

 

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あれにソースを入れて持参して、コロッケの中にソースを注入します。上にかけるんじゃなくて、衣とタネのなかにソースを染み込ませるんですよ。すると、つゆがまた全く違う育ち方をするんです。

 

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それはすごい技だ……。

 

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あとは、お店側から新たな食べ方を提案してくれる時もありますよね。例えば2017年に「富士そば 小平店」などの店舗限定で「冷やしコロッケおろしそば」が出ていました。

 

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ぶっかけスタイルで、コロッケに特製ダレがかかっていて大根おろしやカイワレも添えられていました。「冷たいコロッケそば」ってなかなかないので面白かったです。

 

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さすが、実食済みなんですね。

 

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あとは、カレーとの相性も抜群ですよね。僕はたまにカレーそばにコロッケをトッピングしてます。

 

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美味しいですよね。ジャガイモがルウに溶けた「2日目のカレー」感があります。

 

 コロッケそばへの憧れ

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いやあコロッケそばの話、楽しいですね。改めて、偉大なメニューだと感じます。そもそもフライ系の揚げ物で、そばに合うのってコロッケくらいじゃないですか?

 

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カツ煮そばとかあるにはあるけど、出す店はあまり多くないですね。

 

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確かに、ずっと残ってるのはコロッケそばくらいですね。富士そばはこれまで、フライドポテトやポテトチップス入りのそば、最近は「ハッシュドポテトそば」なんかも出してるけど、なんとなく定着はしなさそうな気がします。

 

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材料は同じジャガイモなんですけどね。

 

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まあ、慣れもあるでしょうけどね。僕自身、最初にコロッケそばと出合った時は驚きましたよ。出身の西日本にはないメニューでしたからね。

 

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西のほうでは見かけないですよね。それに、僕は出身が沖縄なので、そもそも日本そばを食べる文化自体がなかったんです。でもある日、東海林さだおさんの『偉いぞ!立ち食いそば』を読んで、コロッケそばに憧れるようになりました。そこには“コロッケそばは立ち食いそば界の傑作である”と書かれていたんです。

 

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そこまでの思い入れが……。初めて食べた時はどうでしたか?

 

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正直、ものすごく感動する味ではなかったんですけど、東京のカルチャーに触れられた気がして嬉しかったです(笑)。

 

 

チェーンにより異なる「コロッケそば」へのアプローチ

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お二人は、特に好きなコロッケそばのお店はありますか?

 

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僕は富士そばの「鶯谷店」。

 

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富士そばでも、店によって味が違うんですか?

 

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いや、ほとんど一緒です。ただ、立ち食いそばって、わざわざ電車に乗って食べに行くものじゃないと思うんですよ。家から徒歩圏内で、美味しいお店を探すべきかなと。だから、早稲田に住んでいた時は「山吹 鶴巻町店」、東新宿に住んでいた時は「笠置そば 東新宿店」が好きでした。

 

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マグロさんらしいポリシーですね。名嘉山さんはどうですか?

 

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僕は普段は「富士そば」一辺倒なんですけど、この機会に他のチェーン店のコロッケそばもチェックしてみたんですよ。そしたら、ものすごいバリエーションがあって、お店によって様々な個性を発揮していることがわかりました。

 

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すごい気合! なかでも、お気に入りのお店はありましたか?

 

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驚いたのは、コロッケがやわやわの「大江戸そば」。つゆに浸した瞬間、ナウシカの巨神兵みたいにズルズルと崩れていったんですよ。ジャガイモが細かくマッシュされているためか、つゆに溶けていくのが早かったですね。もしかしたら、溶かすことを前提に作っているのかな。

 

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コロッケそばに特化したコロッケといえるかもしれませんね。

 

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その他、「梅もと」「爽亭」「ゆで太郎」「箱根そば」などを食べ比べました。その結果、都内におけるコロッケそばの元祖「箱根そば」のコロッケが好きでしたね。具はジャガイモ、にんじん、挽肉とシンプルなんですけど、あそこは「カレーコロッケ」なので、ちょっとスパイスが効いているんです。しかも、これは店舗によるのかもしれませんが、僕が食べた秋葉原店は丼が「深い」んですよね。だから、コロッケを丼の底で育てやすいんです。

 

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丼までチェックしているとは。

 

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他社の話で盛り上がってすみません

  

コロッケそばとは?

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最後に、改めてコロッケそばの魅力を聞いてもいいですか?

 

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そもそも、コロッケ自体がみんなに愛されているわけじゃないですか。そんなコロッケが入ったそばが、不味いわけがないんですよ。コロッケってソースはもちろん、醤油にもケチャップにも合うし、里芋コロッケやクリームコロッケ、カレーコロッケなど、種類自体も豊富です。そんな懐の深さゆえ、そばにも抜群の相性を見せる。

 

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だから、むしろコロッケそばは、そばの一種ではなく、カレーコロッケなどと同じ「コロッケの一種」なのかもしれません。

 

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その通りだ!

 

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その発想はなかったです。勉強になりました。

 

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いやあ楽しかったですね。じゃあ、このあと「コロッケぬき」で一杯やりましょうか。

 

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なお、先ほどの富士そばタペストリーは2020年9月16日から全国の富士そば店内にて掲示されているとのこと。この機会に、コロッケそば未食の方もぜひ!

 

【取材協力】

下関マグロ

https://twitter.com/maguro_shimo

 

名嘉山直哉

https://twitter.com/l_f_nakayama

 

名代富士そば

https://fujisoba.co.jp/

 

取材・文/小野洋平(やじろべえ)

編集・撮影/榎並紀行(やじろべえ)

 

【プロフィール】

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小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。

http://yajirobe.me/
Twitter:@onoberkon

【京都】山科区民が狂喜乱舞!伝説の町中華「ちゅん」が復活して、地元がちょっと活気づいてる

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こんにちは!十数年ぶりの関西で相変わらず食べまくってる猫田です!

実は今年札幌から大阪に引っ越してまして、この20年での引っ越し歴は、函館京都函館京都東京札幌大阪、となっております…

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JR、京阪、地下鉄も止まり便利な駅なのです

突然ですが、私が京都時代から20年ほど愛してやまない中華料理店が山科にあります。関西以外の方は、山科ってどこ?と思うかも知れませんが、一応京都市でありながら、山一つ越えただけで京都人に「ここ滋賀だっけ?」などとたまに勘違いされる、独特な存在感の街です。でも勧修寺、醍醐寺など名所も多いしベッドタウン的で暮らしやすいですよ(変ななぐさめとかじゃなく)。

 

山科区民の宝!「中国料理 ちゅん」

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店名の「ちゅん」は中国語で「中立」などを意味するそう

今回ご紹介する「中国料理 ちゅん」は、山科駅から徒歩10分、三条通沿いの京都薬科大前という到底観光客の行かないロケーションで50年ほど営業している店。長崎出身の大将・松崎武雄さんが腕を振るう、昼夜ともにいつも満席の超人気店です。

 

2019年、突然の閉店により山科に激震が走るも…

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実はこの「ちゅん」、2019年に大将の体調不良により突如閉店しました。その時は、山科に暴動が起きるんちゃうか?ってぐらい常連客がうろたえまくっていました。当時東京にいた私の耳にまで閉店のニュースが入って来ました。

 

2020年、不死鳥のごとく復活!!

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しかしこの6月、大将が体調回復し復活!しかも「まだ本調子じゃないので誰にも知られたくない」とひっそり開店したにもかかわらず、胡蝶蘭は届くわ、番号変えたのに予約の電話はかかってくるわで、スタッフ一同「? ? ?」の嵐だったそうです。

で、実際行ってみたら、小上がりはソーシャルなディスタンスを設けるなどコロナ仕様になっていたものの、大将は相変わらずパワー全開。そうそう、この大将、私がこれまで出会ったすごい店主ランキングで不動の1位を20年間ほどキープしています。

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「豪快」を形にしたらこうなります、ってぐらいパワー炸裂してる見た目と性格。とりあえず「経歴を教えてください」と聞きましたら「アホぅ!そんなん聞いてどうすんねん!」とバッサリ斬られましたが、何とか聞き出した話を断片的にまとめるとこうなります。

大将は1954年長崎県生まれ。家には6人の兄弟がおり、自分だけ勉強が嫌いで中学卒業後、神戸中華料理店へ修業に出ました。その後も大阪などで経験を積み、25歳の時、知人のツテを頼って山科で1972年から営業していた「ちゅん」を継ぐことに。中華料理人歴は50年を迎えると言います。

 

大将の話は後にして、まずは料理の凄さを見ていきましょう。

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これは日替わりランチの品書きです。「麻婆豆腐」「魚の甘酢あんかけ」…どれにしようかなあ、じゃなくてこれが全部出てきます。その他いろいろってざっくり書かれているのも気になります。

 

日替わりランチ900円は、何がメインかわからないくらいすごい

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麻婆豆腐と甘酢あんかけの二大巨頭ってとこでしょうか

おおー!付け合わせのフリした魚の甘酢あんかけが強烈な存在感!

麻婆豆腐も器いっぱいに敷き詰められ、イカも鶏肉も居酒屋の突き出しぐらいの量です。ライスはお替わり無料。

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この甘酢あんかけ、白身魚や野菜を揚げているのですが、この時は京都伝統野菜の山科なすを使用。時間が経ってもここまでパリサク、かつ中はジューシーだなんて、さぞかし高温短時間で揚げられているのであろう…と思いを馳せてしまいます。

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箸、重っ…

ちなみにランチの麻婆豆腐は、単品メニューの麻婆豆腐とは全く違ったマイルドな辛さ。単品の麻婆豆腐は、独自ブレンドの中華味噌(大将しか作れない)を使い、ビリッと痺れる辛さと豚肉のジューシー感溢れる自慢の味です。

 

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この単品の焼き餃子700円も、一見普通に見えますが、侮ってはいけません。豚ミンチにキャベツにニンニク、塩、コショウなど材料も普通ですが、口に入れると明らかに何かが違う!皮もバリッと香ばしい!

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理由を聞いても「ウチのは旨いに決まっとるやんけ!」と雲をつかむような答えしか返ってこないので勝手に想像しますと、よく研いだ包丁で野菜を切ることで、繊維を潰さずみずみずさを残したまま餡にすることができるんでしょうね。としか理由のつけようがありません。

 

「これが?」と言うなかれ!ダントツオススメは「大学芋」

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実はですね…。大将がウチのNo. 1!と自負するのが、この「抜糸地瓜(大学芋)」1800円。

料理ちゃうやんけ!と怒るなかれ。一口食べると、大学芋って立派な中華料理だったんだ!と最初バカにした自分を恥じ入ることになります。

 

さりげない!さりげなくウマ過ぎる!

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徳島産の鳴門金時を揚げて、飴の衣を纏わせるだけ。それだけなのにこの旨さ、何たる狼藉でしょう。ホックホクのイモはスイートポテトのように甘く、まわりのアメがパリパリッと軽快な食感。これがサツマイモだけでできたシロモノとは信じられません。勝手に、山科三大名物の一つに認定!

 

恐るべし二重人格の大将!?

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料理の鬼神が乗り移った大将

大将の料理がなぜここまで旨いか。「経験が長い=料理も美味しい」とは限りません。大将の凄いところは、「料理のことになると人が変わる」こと。正直、普段は「おっしゃー!」「やったるでー!」しか発しないぐらい気合一徹なのですが、料理を作っている時は超真剣かつ神経質、何人たりとも寄せ付けないようなオーラに包まれています。

この時話しかけると、「アホぅ!!」と空気が切れるほど怒られるので、私も何度か半ベソかきました。

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こちら秘伝のスープ。丸鶏、ネギ、他いろいろ(としか言えない)入ってます

あと仕入れは毎朝京都中央卸売市場に出向きます。「市場で買えば、みんな同じじゃ?」と思うのは誤解。市場では「カオ」がきけばきくほど良い素材を仕入れられる場所。40年以上市場通いを続け、もはや山科の雄とも呼ばれる(か知らないけど)大将のために、業者が良い食材を取っておいてくれるのです。だから、肉も魚も野菜も、高級料亭に卸すほどのハイレベルな食材を入手できるってことですね。

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12000円のアワビ料理も、「コンスタントに出る」というから驚き!

そんな素材を使うので、基本的にメニューは「高級中華」と言えるものばかりなのですが、日替わりランチと同じ大大大サービスメニューとして、「定食」もあります。

 

いつでもオーダー可能の「定食」(1,000円)は全部メインとしか思えない

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こちらは日曜、祝日の夜以外いつでもオーダー可能な「定食」。内容は、肉団子の甘酢・鶏の唐揚げ・フライ・サラダ・日替わりの小鉢・ライス・スープなのですが、こちらも破壊力すごいですねえ。どれもメインでしょってぐらいのオードブル盛り合わせ感です。

こちらもライスお替わり無料ですので、底なしのおかずとともにエンドレスライスを。

 

本能が旨いものを作らせるんや!

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この風景撮らんかい!と突如呼ばれ激写しました

大将の味を求めて、再開直後から予約が殺到するのも頷けますね。しかも今はテイクアウトも多いそうで、三条通の薬科大前付近で急に車が混み出してプチ渋滞が起こっているので、知らない通行車が不思議そうに見ていきます。

 

まかないも超絶旨い

仲良くなり過ぎて、働いてもいないのにまかないをいただくことがしばしばあります(すみません)。 

そのまかないがまた旨い。

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ある日は天津スープご飯だったり、

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ある日は豚の端肉のチリソース炒めだったり、

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長崎から取り寄せたちゃんぽん麺の新作って時も!

やはり料理もそうですが人を惹きつけるのは大将の人柄。豪快に見えて真面目で繊細、ハチャメチャに見えて鋭い直感力(降雨を予知したり)。人間の理性を超えた本能の部分で「旨いもの」を作る才能が超発達しているとしか思えません。

大将はよく「ウチはいつミシュラン来るんや」と言ってますが、覆面調査員の皆様、もしまだ行ってなかったら早く行ってあげてください。星付き間違いないですから!

 

紹介したお店

中国料理ちゅん

住所:京都府京都市山科区御陵中内町38

TEL:075-593-7788

 

著者プロフィール

猫田しげる

デカ盛りと食べ放題を求めて津々浦々。おいしいものもおいしくないものも大好きです。

猫田しげるの以前の記事はこちら

【漫画】間借り好きのはざまくん 第1話「真鯛らぁめん まちかど 恵比寿」

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この漫画について

飲食店の営業時間外の隙間時間にその場所を借りて、時短で営業をしている“間借りグルメ”。ただ料理が美味しいだけじゃなく、シェフの個性も魅力の一つ。ラーメンやハンバーガー、エスニックなどなど……そんな実在する“間借りグルメ”を、居候(間借り)している大学生“はざま”くんとともに、毎話巡っていきます。

 

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紹介したお店

真鯛らぁめん まちかど 恵比寿

住所:東京都渋谷区恵比寿西1−3−9田中ビル2F
営業時間:11時30分~16時、18時~22時
定休日:日曜日
席数:9席(カウンター7、ソファ2) 

 

著者プロフィール

wako

漫画家。女性向けWEBメディア「Pouch」にて「サチコと神ねこ様」、acaiaにてスピンオフ「木下くんとクロ」を連載。「だんな様はひろゆき」作画担当。「サチコと神ねこ様」 (フィールコミックス)既刊4巻が発売中

 

(編集:wwwaap)


予約数ヶ月待ちの吉祥寺「肉山」が、1階は予約不要に!新生「肉が丘」で気軽に噛みしめる赤身肉の旨さよ

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肉が丘 吉祥寺 ステーキ

“赤身肉の聖地”“総本山”ともいわれる焼肉店、吉祥寺「肉山」。

2012年11月に開山(開店)してから、すでに約8年の年月が経つにもかかわらず、いまだに予約は数ヶ月待ちという人気ぶり。いまでは全国各地に支店の「肉山」が開山され、登山希望者が絶えません。

 

そんななか、今年6月に吉祥寺「肉山」の下の階にあった「肉山の一階」が店名と業態を変えたという噂を耳にしまして、確認のため、さっそく吉祥寺へ。

 

 

肉山は予約数ヶ月待ち。だけど肉が丘は…「予約なし」で立ち寄り可能!

まずは、ビルの案内板をチェック。

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漫画家・西原理恵子先生の文字とイラストで、2階が「肉山」で1階が「肉が丘」と書かれています。

どうやら「肉山の一階」→「肉が丘」と、店名が変わったようです。

 

緑の1階部分が「肉が丘」、その上の白い階が「肉山」。

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青々と緑が生い茂った山の麓が“丘”、雪の降り積もる上のほうが“山”といったところですね。

 

予約を取っていないのですが、店名&業態変更の話だけでもうかがえればと、お店の入り口に近づいてみると…こんなポスターが目に入ってきました。

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「ちょい肉 ちょい飲み ちょいホルモン ちょっと立ち寄り『肉が丘』」

めちゃめちゃリズミカルで語呂がいい!

 

いや、ちょっと待てよ。“ちょっと立ち寄り”と書いてあるということは……。

「肉山」は予約数ヶ月待ちのはずですが、予約ナシで“ちょっと立ち寄り”できるということでしょうか?

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「すいませーん! 予約していないのですが、ちょっと立ち寄れますか?」

とお声がけすると…。

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「はい、ご予約なしで、お食事をお召し上がりいただけます!」

素敵な言葉を返してくださったのは、ワイルドイケメン店長・横関哲也さん。

 

どうやら2階の「肉山」に登頂するには準備と装備(=予約)が必要だが、「肉山の一階」は「肉が丘」と名前を変え、準備と装備(=予約)不要で気軽に立ち寄れるようになったということのようです。

 

となれば、さっそく、メニューのなかからあんなものこんなものをオーダーし、腹ごしらえとまいりましょう。

まずは、ハンバーーーグ!

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200g、300g、400g…とサイズが自由に選べます。

さらには各種ソースを楽しむために、小さな100gサイズをいくつかオーダーてのも可能なようです。

せっかくなので、100gを4つ頼んでいろんなソースを楽しむこととしましょう!

 

ワクワク、ドキドキ、と胸を躍らせているとやってまいりました。

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ジュージューとよい音、そしてよい香りを携えて、4種盛りハンバーグ降臨。

  • (左)ネギ塩だれ
  • (中下)にんにく醤油
  • (中上)パクチーソース
  • (右)アラビアータソース

 

どれも自家製ソースとのこと。それでは、いただきまーす!

まずはハンバーグのポテンシャルを測るために、ソースのかかっていない部分を食してみましょう。

モゴモグモグ…おーこりゃ肉肉しい

 

よく「柔らかーい」や「ふわふわー」と称されるハンバーグがありますが、真逆です。

赤身のお肉を粗挽きにし、極力つなぎは入れずに塩分を加えて捏ねることで、挽いた肉どうしがしっかりと結着しています。これぞ本来のハンバーグという感じ!

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ひと言目に浮かんだのは…

 

“アメリカ人に食べさせたい!”

 

そう思わずにはいられないくらいの肉肉しさと本物感でございます。

 

そしてソースごとに味わってみると、それぞれ個性が素晴らしい。

 

ネギ塩だれ&にんにく醤油はもう、日本人全員が大好きな味です

オンザライスすれば、30代後半以上の中年でも、思春期真っ只中の10代ばりに大量のご飯をかき込んでしまうくらいのご飯泥棒ぶり!

 

パクチーソースは、肉のパンチに対抗するかのごとき、力強いアジアンな香りに、たちまちビールがほしくなります。

アラビアータソースは、トマトの旨味&酸味にピリッと辛味がきいて、ハイボールを所望せずにはいられない仕上がりです。

 

100g×4個=400gのハンバーグを食べてしまったけど、これまだいけるな。

 

「すいません、オススメのやーつ、もうひとつお願いします」と頼んでやってきたのがコチラ。

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青唐辛子を熟成をさせた「自家製タバスコソース」

これがまた、爽やかな辛味で、酸味もあって、大人な美味さ。

 

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素材感バッチリで、絶対に万能ソース! これ、ソースだけで売ってくれないでしょうか!?

 

そして「ハンバーグのソースといえば?」と問えば必ず出てくる、ド定番のデミグラスソースもコクとビターさと懐かしさが相まって極上の味です。

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これはもう、ソース全種盛りでいくしかないんじゃないでしょうか(笑)。

 

とはいえ、ハンバーグばかりに気を取られることなかれ。

ステーキもあるんでございますよー。

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リブロース、サーロイン、ヒレ、ハラミなど、部位を選ぶことが可能で、どれもお値打ち価格。

200gで1200円の「リブロース」いっちゃいましょう。

 

ハイキタ――(゚∀゚)――!!

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ナイフをグイグイグイっと、シャキーン。

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さすが「肉山」仕込みの焼き具合、100点のレア寄りミディアムレア。

噛めば噛むほど肉汁が染み出て、口のなかに赤身肉の旨味が拡がり、幸せ物質のセロトニンが脳内に分泌しまくり!

 

ハンバーグとステーキを同じ鉄板に同居させることも可能なので、どのソースをかけるか、何gにするか、どの組合せにするかなど、カスタムはアナタ次第です。

 

「肉山の一階」を「肉が丘」に変えた理由とは?

ところで、どうして「肉山の一階」を「肉が丘」にリニューアルしたのでしょうか。そのあたりのいきさつを、店長の横関哲也さんに聞いてみました。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plainクック井上。:今回「肉山の一階」を「肉が丘」に変更した経緯を教えてください。

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plain横関哲也さん:昨今のコロナ禍の影響で、お店の営業を自粛することになったのですが、お肉の生産者さんたちや、お客さんの声を聞き、何かやれることはないかと考えたんです。それで月1回の限定ハンバーグイベント「肉が丘」を立ち上げ、テイクアウト販売をはじめました。そこから、やり方次第で少しでも皆さんを助けられるのではないかと思うようになったんですよね。そうして、ご近所の方々にも応援していただいてお店を継続できるようになったときに、「以前と同じままの業態では難しい」と判断し、ふらっと寄っておつまみとお酒を一杯楽しんだり、手軽にお腹いっぱいになってもらいたいなと思い、この業態にリニューアルしました。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plainお店と生産者さんは一心同体、そしてお客さんとも一心同体なんですね。ちなみに今日、食べさせていただいたハンバーグとステーキはどんな牛のお肉なのですか? 教えられる範囲で、材料や調味料などのこだわりをお聞かせください。

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plain「肉山」のコースで提供しているお肉と同じにしたいと思い、熊本の「あか牛」、岩手の「短角牛」、群馬の「黒毛和牛」を仕入れ状況に応じて、日替わりで提供しております。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plain自家製ソースもとても美味しかったです!

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plainソースは今後も「こんな味で食べてみたい!」「これは合いそうだ!」とひらめいたら、どんどん作っていきます。気まぐれに、増えていったり変更したりするかもしれません。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plain「肉山」と「肉が丘」の同じ点と違う点、それぞれを教えてください。

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plain「肉が丘」は「肉山」と違ってコースではなくアラカルトになりますので、気軽に有意義な時間を過ごしていただけたらと思います。また、両店とも同じ肉を使っているので、「肉が丘」でも「肉山」と同じクオリティで提供できるよう、日々お肉と向き合っています。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plain「肉が丘」のウリ、いちばん伝えたい(提供したい)ことは何でしょうか?

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plainやはり、その場の“ライブ感”を伝えられたらと思っています。コース料理ではなく、アラカルトだからこそできるお客さんとのコミュニケーションこそ、“ライブ感”の本質ではないでしょうか。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plainところで、今回の店名変更・業態変更ですが、「肉山」創業者の光山英明さんとは、どのようにお店の方針や方向性を定めていったのですか?

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plainすごく任せてもらっています。基本的に「好きにやって構わないよ」というスタンスですね。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plain信頼関係ですね。では、光山さん、そして「肉山」からもっとも学んだこと、衝撃を受けたこと、そのほか思うことあれば教えてください。

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plainやはり、いちばんは「すぐやる!!」です。光山さんは思ったら即行動して、実現していきます。この言葉があったからこそ、いまの自分があります。

 

f:id:linakawase:20200804131059j:plain今回のことも、社会の状況に応じて「すぐやる!!」だったわけですね。ところで、今後の展望、夢がありましたらお聞きしたいです。

 

f:id:linakawase:20200804180744j:plain食で人を救えたらいいなと思っています。それが夢ですね。展望というか、野望は東京にもう1店舗「肉山」を出店したいのと、総本山である吉祥寺「肉山」の麓にある「肉が丘」が面白いよ! といわれたいです。

 

 

 

「肉山の一階」から「肉が丘」への店名変更、そして“予約なしで、ちょっと立ち寄れる”スタイルへの業態変更の経緯をザッと整理すると、次のようになるでしょう。

 

  1. 新型コロナで、お店の営業を自粛⇒
  2. お肉の生産者さんやお客さんに何かできることはないか?⇒
  3. 「肉山」創業者・光山さんから学んだ「すぐやる!!」を実行⇒
  4. 月1回の限定ハンバーグイベント「肉が丘」を開催⇒
  5. 店名「肉山の一階」から「肉が丘」への変更⇒
  6. 業態自体も“予約なし“へ変更

 

これを即座に決断し、「すぐやる!」を実行したという事実に、まず驚きを覚えます。

 

いくら新型コロナの影響があったとはいえ、すでに人気店として知名度がある店名を変更するのは、勇気がいることでしょう。そして、業態自体を根底から覆す“予約なし”スタイルにすることも、なかなかできることではありません。

 

ウィズコロナの時代にあって、感染の状況はまだまだ動いていくでしょうし、それに合わせてお客さんの気持ちや要望も変わり続けるでしょう。

 

そうした、世のなかの目まぐるしい変化に対応するためには、「肉山」創業者・光山さんの「すぐやる!!」という姿勢がどれだけ大切になるか──そう感じざるを得ません。

 

と、そんなタイミングで、登場!! 

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吉祥寺「肉山」創業者、光山英明さん。

 

THE迫力! うちわへズーム。

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「黙ってカレー食え」

 

そう、「肉が丘」では「肉山」のシメ飯として有名な「肉山かれーらいす」も食べられるのです。

 

横関哲也さんの故郷・群馬のもち豚を使った豚カツをトッピング、いくしかないでしょー!

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ドーーーンとボリューム満点。

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もち豚の、上質な脂が見え隠れする断面最高。

ジュワッと染み出る脂の甘味と肉の旨味が口のなかで踊り出します。

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カレーソースにはケジャン出汁の旨味&辛味、その向こう側にいる甘味もたまらん!

ふぅー腹パンパン、ごちそうさまでした。

 

大満足で吉祥寺駅へ歩いていると、見覚えのあるイラストが…。

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「肉山」「肉が丘」が入っているビルの案内板イラストと同じ、漫画家・西原理恵子先生のイラストです。

 

そして、右下に目をやると…。

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吉祥寺「肉山」創業者、光山英明さん!

もはや、「肉山」「肉が丘」は吉祥寺の顔、ランドマークとしての一面も持っているのですね。

 

というわけで予約数ヶ月待ちの「肉山」の麓、「肉が丘」いかがでしたでしょうか?

 

 

総本山「肉山」へ登頂するには準備と装備(=予約)が必要。

それゆえ「登ってみたいけど、登ったことない」という方も少なくなかったはずです。

 

しかし、準備と装備(=予約)不要の「肉が丘」なら、「肉山」と同じクオリティのお肉を、「肉山」にはないスタイルのお料理で食べることができます。

 

そして、通常ならば「肉山」に登頂した後(コースを食べた後)に、シメ飯としてしか食べられない「肉山かれーらいす」も、麓の「肉が丘」では気軽に食べられちゃうのです。

 

もうこれ、「肉が丘」に登ってみるしかないでしょー!

 

最後に、合言葉を再度…

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「ちょい肉 ちょい飲み ちょいホルモン ちょっと立ち寄り『肉が丘』」

 

(編集:漆原直行) 

紹介したお店 

肉が丘

住所:東京都武蔵野市吉祥寺北町1-1-20 藤野ビル1F

営業時間:12:00-14:30 / 16:30-23:00(22:30Lo)

不定休

電話番号:0422-22-2929

  

著者プロフィール

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フードコーディネーター・野菜ソムリエ・食育インストラクター・BBQインストラクター等、7つの食の資格を持つ料理芸人。 料理教室講師・食のイベントMC・レシピ開発・食品プロデュース等を務め、“最強料理芸人”の異名をとる。EX「『ぷっ』すま」やTBS「爆問パニックフェイス」の料理バトルでは優勝を果たしている。その他の出演歴は、NHK「グッと!スポーツ」・NTV「得する人損する人」・TBS「はなまるマーケット」・TX「TVチャンピオン極」等。

Twitter:@cook_inoue
Instagram:cook_inoue
ブログ:料理芸人・クック井上。の「ようこそブログへ クック クック♪」powerd by Ameba

【甘党急げ】500箱を3分で完売する「霧の森大福」が、10月2日までネットで抽選販売受付中!

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霧の森大福

こんにちは!猫田しげるです。

 

突然ですが、下の行列をご覧ください。

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並びすぎでしょ!アップル新製品発売日の銀座かってほどの行列ですねえ。もちろん写真はコロナ禍以前のものです。そこまでして何が欲しいんだ…?と思ったら、なんと、大福。ここ「道の駅 霧の森」で販売している「霧の森大福」は、多い時で2時間以上並び、10時開店なのに午前中には売り切れることもあるという幻の大福だそうです。

 

でも大福にそんな並ぶ!?

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って思いますよね。そもそもこの「道の駅 霧の森」は、愛媛県四国中央市にある、コテージやカフェ、レストラン、温泉などが併設された巨大な施設。大福はその中の「霧の森菓子工房」をはじめ、松山店、高原店、馬立PAでも販売しておりますが、いずれも開店前から並ぶほどの人気。ちなみにネットでも販売しているのですが、抽選制で、当選倍率は90倍~120倍!某「旅サラダ」の電話応募プレゼントとどっちが当たりにくいんでしょうね(って分かります?)。

 

しかもいつ抽選販売が行われるかは分からない(まさかのゲリラ販売!)。ちなみに6月に新茶ウィークとして1週間毎日500箱をネット販売したときは、毎日3~5分で完売したそうです。途方に暮れますね。

 

新宮茶」を使った大福ってとこがミソ

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この「新宮茶」ってのが、あまり名前は聞きませんがこれまた手間暇をかけて作られたお茶なんですよ。

 

1951年から栽培が始まったお茶で、農薬を使わず自然の力で育てられているそう。薬に頼らないことでお茶は自身の生命力を高め、香りも味も通常より強くなるのだとか。中でも、そのパイオニア的な脇製茶場で作られた新宮茶は「国際銘茶品評会」で金賞を受賞したほど美味。

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かぶせ風景。2週間程度覆いをかけ、茶葉の甘み、うまみ、コクを引き出します。

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さらに、濃厚な甘みを出すために、茶畑に覆いを被して甘み成分の「テアニン」を残したのが「かぶせ茶」。霧の森菓子工房では、そのかぶせ茶をふんだんに使ったスイーツを販売しており、その一つが「霧の森大福」なのです。

 

これが「霧の森大福」だ!

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抹茶でコーティングされた餅はそれ自体も抹茶が練り込まれており、その中にこしあん、さらに生クリームという4層構造になっています。しかも、通常は粉つけ機でまぶすところを、手作業で一つずつ、抹茶粉をこれでもかというほど纏わせます。「通常なら原価を気にして申し訳程度にうっすらまぶす抹茶ですが、当店はお茶の産地だからこそ心おきなくまぶします」。これで1個150円なんて、産地でしかあり得ない値段ですよね。

 

しかーしこんなに手に入りにくい大福、人生で口に入る機会なんてないんじゃねーか…?と思うことでしょう。それが、コロナの影響で販売スタイルに変化があったそうです!

 

奇跡的にネットで入手成功

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見事入手できた霧の森大福様。1箱8個入りで1,100円(税抜)

そもそも生産量が少ないので店頭販売中心、余裕があったらネット販売も行っていたわけですが、コロナで出張販売と店頭販売分が減ったので、ネット販売に回す個数が確保できるように。

というわけで、日頃の行いの良さを存分に活かして(?)、見事ネットで入手しました!

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開けてみると、うわー、緑!北海道出身の私が見たら、特別天然記念物であるところのマリモにしか見えませぬ(すみません…)。寸分の隙もなく抹茶で覆われています。フレッシュな抹茶の香りがします。

 

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冷凍で届くので、「必ず冷蔵庫でゆっくり解凍してください。結露するので常温で解凍などもってのほかです」的な注意書きをよく守り、4時間ほどかけて解凍。最高の状態で食べたいですからね!

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うわーやわらかい!この大福にくるまれて寝たいです。抹茶を練り込んだ餅はほろ苦く、甘さ控えめなこしあんとピュアな味のクリームが絶妙のバランス。とろける大福。飲める大福! 

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しかもなんと、通常はあまり大々的に事前告知をしないゲリラ販売なのですが、「みんなのごはん」にだけ、次回の抽選日を教えていただきました。

10月2日(金)午前10時まで、抽選販売を受け付けているそうです!

しかも当選者数は通常の10倍の100名!!

抽選は10月2日(金)中に行い、その日のうちにHP上で当選者発表をします。

風が吹いて桶屋が儲かるではないですが、コロナの影響で大福が買えるようになる、てこともあるんですね!もちろんコロナが収束するのが一番ですが。

皆さんもコチラから抽選に参加してみてはいかがでしょうか!

 

https://www.kirinomori.co.jp/

 

著者プロフィール 

猫田しげる

デカ盛りと食べ放題を求めて津々浦々。おいしいものもおいしくないものも大好きです。

猫田しげるの以前の記事はこちら

皿うどんは何を足すとうまいのか? お店の調味料ぜんぶ試す

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街をぶらつくのが好きなイラストレーター・中村一般が、飲食店での出来事や散歩中に思ったことを漫画でつづります。今回は、はじめて皿うどんに“ちょい足し”して食べてみたいと思い、三軒茶屋の人気店「長崎」へ向かいました。

 

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紹介したお店

長崎

住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-15-1

TEL:03-3422-4839

営業時間:11:00~21:30

定休日:火曜日

 

この漫画を書いた人

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中村一般

1995年東京生まれ。フリーのイラストレーター。趣味は読書と散歩。
ホームページ:http://nakamuraippan.com
Twitter:@nakamuraippan

 

編集:ノオト

 

前回の漫画はこちらから

【漫画】ヒポポタマスのガリチーハンバーグ

ほったらかし家電「ホットクック」の能力を最大限に引き出す「ヘルシオ公認料理教室」にリモート入門してみた

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こちらはシャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」。

“電気自動調理鍋”あるいは“ほったらかし家電”と呼ばれるハイテク調理家電だ。簡単に言うと、ボタンひとつでうまい料理が作れる、めちゃすごい鍋である。

 

我が家でも半年前に導入した。以来、うちの食事の8割がこの機械により生み出されている。

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左上から時計回りに「手羽元の無水カレー」「ミートソーススパゲッティ」「手羽元の無水カレー」「豚バラと大根の煮物」。ある1週間の献立だ。全てホットクックが作ってくれた


4食のうち「無水カレー」が2度も登場しているが、これはホットクックのレシピのバリエーションが少ないということではない。一度うまいと思ったらバカのひとつ覚えのようにそればかり作ってしまう筆者のせいであって、ホットクック側に落ち度はない。

 

それどころかホットクックを使えば、だいたい何でも作れる(パンとかも作れるらしい。作ったことないけど)。しかし、食に保守的な筆者はその機能を十分に活用できていない。

 

そんななか、ホットクックを使ったレシピを学べる「ヘルシオシリーズの公認料理教室」があるとの情報をキャッチした。これに通えば、あいつの能力を100%解放させてあげられるかもしれない。

 

そもそも、「ヘルシオ公認」ってなんなんだ? など気になることもあるので、シャープに取材を申し込んだ。

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お話を伺ったのは、シャープ 商品企画の中島さん、広報の飯沢さん、料理教室で講師を務める岡本さん(東京教室)、今田さん(大阪教室)の4名 ※取材はリモートで実施

【目次】

 

ホットクック、何がどう凄いの?

――ホットクック、毎日使っていてもちろん便利なんですが、何がどう凄いのかイマイチ分かっていません。これって、そもそもどういう鍋なのでしょうか?

 

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一番のポイントは、自動で「火加減」と「かき混ぜ」ができるところですね。とくに「かき混ぜ」は、食材の量や固さ、煮え具合に合わせて混ぜ加減を調節し、味がしっかり馴染むように調理することができます。

 

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――この「まぜ技ユニット」のしわざですね。こいつ、そんな繊細な仕事をしてくれてたんですね。正直、適当にかき混ぜてるのかと思ってました。

 

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適当じゃないですね(笑)。普通のお鍋で煮物を作る時も、混ぜながら味の染み込み具合や柔らかさを確認しつつ、火加減、混ぜ加減を調整しますよね。同じことをホットクックもやっています。だから、材料や分量が変わっても、うまく仕上げてくれるんです。

 

――ホットクックってクックブック(※)通りの分量と材料で作らなくても、それなりに美味しくなるんですけど、あれは「まぜ技ユニット」が頑張ってくれていたからなのかー。

 

※クックブック……ホットクックを買うとセットで付いてくるレシピブック。

 

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はい、頑張ってます。お料理って、わりと大雑把に作ってしまうところもあるじゃないですか。レシピの分量より少し足りなかったり、余った食材をレシピにないけど入れてしまったり。そういうことをしても、しっかり味がまとまるよう調整してくれるのが自動調理鍋のすごさじゃないかと思います。

 

ヘルシオ好きが高じて“公認講師”に

――では本題ですが、「ヘルシオ公認の料理教室」って、なんですか?

 

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水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」とウォーターオーブン「ヘルシオ」を使った料理教室で、2017年から東京大阪で実施しています。本日の取材にもご参加いただいている岡本さんに東京教室を、今田さんに大阪教室をご担当いただき、新型コロナウイルスが拡大する以前は毎月開催。いつも満席という状況でした。

 

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東京教室(左)/大阪教室(右)

 

 ――岡本さんと今田さんはシャープの社員なんでしょうか?

 

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いえ、違いますが、私たちからお願いをして、教室のスタート時から「公認講師」をご担当いただいています。お二人とも、もともとヘルシオのヘビーユーザーでいらしたんですよね。

 

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そうです。私は2006年からヘルシオを愛用していました。それで、ある日、もともと友人だった中島さんに「ヘルシオ愛」を熱弁したところ、公認講師という形でお声がけいただくことになりました。

 

ですから、ホットクックとヘルシオが大好きな、マニアックなユーザーがやっている教室と思っていただけるとわかりやすいかと思います。

 

 

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ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XA10(左)/ヘルシオ ホットクック KN-HW16F(右)

 

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教室では私たち自身が実際に使ってみて感じた、便利な使い方や美味しいレシピをご紹介している感じですよね。

 

――今田さんは例えば、どんな便利な使い方をしているんですか?

 

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作り置きの時に重宝しますね。私は週末にまとめて料理をするので、土日はひたすらホットクックを回転させます。食材を入れてボタンを押し、その間に新しい食材を準備して…、という繰り返しで平日分のおかずを10種類くらい一気に作ります。

 

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ホットクックが稼働している間はほったらかしにできるので、出かけたり掃除をしたり、他の家事をしています。コンロと違ってその場を離れられるのが個人的には一番ありがたいポイントです。

 

――本当に「ホットクックが好きで使っているんだ」というのが伝わってきてよかったです。じつはお二人はシャープの回し者で、料理教室に参加するとホットクックを買わされるのでは? という疑惑を持っていたので。

 

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いえいえ(笑)。「公認」という形ではありますが、そこでセールスもしませんし、教室のなかで企業色も強く打ち出していません。あくまで、岡本さん、今田さんの個人教室ととらえていただいていいかと思います。シャープ主催で社員や特別講師による体験教室も別にありますが、公認講師のお二人に実施いただいている料理教室では、基本的にすべておまかせしています。内容にもノータッチで、レシピもお二人に考えていただき、自由に運営していただいている形ですね。

     

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シャープ主催 体験料理教室

 

この鍋なんなの? 最初は売れなかったホットクック

――ところで、ホットクックってここ数年で注目されるようになった気がするんですけど、じつは結構前からある商品なんですよね。

 

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発売自体は2015年ですね。じつは当初はその付加価値を広くお伝えすることができておらず、しばらく認知度も低い状況でした。大々的にTVコマーシャルを打てるわけでもなかったので……。「この、わけの分からない鍋はなんなの?」という反応が多かったですね。

 

――わけのわからない鍋! 確かにいきなり「ボタン一つで料理ができる」と言われても、わけがわからないかもしれない。

 

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新しいものなので、口や文章で説明しても、なかなか伝わりづらいんですよね。価値を感じてもらうには、やはり「体験」こそが最も有効な手段だろうと考えました。そこで、実際にホットクックの魅力を肌で感じていただいている岡本さんや今田さんの教室から、少しずつでも口コミで良さが広がっていけばいいなと思ったんです。

 

――地道だけど、実際に使えば良さはわかりますもんね。

 

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実際、お二人に教室を始めていただいてからは「便利」「食事の支度が楽になった」といった声を多く頂戴するようになりました。そして、教室参加者が累計2,000人、3,000人と増えていくと同時に販売台数も伸びて、2020年9月末までに累計販売30万台達成見込みというところまできています。

 

――売れましたねー。実際、僕も知人に勧められて買ったクチですし。

 

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はい。TVコマーシャルはなくとも、大部分は口コミや、経済評論家の勝間和代さんをはじめとして、実際に使っている方自らがSNSを通じて情報発信くださった、ホットクックファンのお力だと思います。

 

――TVコマーシャルもやりたかったんだろうな、という気持ちが伝わってきますが、結果的に戦略がばっちりハマった感じですね。

 

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ありがたいですね。最終的には炊飯器と並ぶような、一家に一台、キッチンの必需品にしていけたらと考えています。

 

――ちなみに、飯沢さんと中島さんのお気に入りホットクックレシピはなんですか?

 

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私はスペアリブですね。この前、新たまねぎを入れて作ってみたんですけど、すごく美味しくて、新たまねぎとスペアリブの相性が絶妙でした。

 

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私はミートローフが最近のお気に入りですね。ホットクックの内鍋の中で挽肉をこねればそのままセットできるので楽です。

 

リモートで料理教室を体験してみる

――今回、せっかくなので僕もヘルシオ料理教室をリモートで体験させていただこうと思ってまして。岡本さん、今田さんにレシピをご用意いただいたんですよね。

 

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はい。教室でも特に人気が高かったレシピを用意しました。いずれも、製品付属の「クックブック」のメニューに、少し応用を加えた3品になります。「豆と野菜たっぷりカレー」「さけと野菜の塩麹蒸し」「酢豚」ですね。

 

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私は、ホットクックを使わない普通の料理教室で評判の良かった「鶏モモ肉のごま味噌煮」と「チャプチェ」を、ホットクックレシピにアレンジしたものをご紹介します。ホットクックを使うとより簡単においしくできますね。

 

――全部うまそう……。

 

***

 

①豆と野菜たっぷりカレー(4人分/調理時間約20分)

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冷蔵庫の残り野菜を使ってできる無水カレーです。今回は、お肉のカサ増しで水煮の豆を使います。豆を冷凍のミックスシーフードやソーセージに変えても美味しいですよ。4人前だとタンパク質系は300gくらいにするとバランスがいいと思います。

 

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トマトはへたを取り、ピーマン、パプリカはへたと種を除いて、2cmの角切りにします。玉ねぎはみじん切り、しめじは石づきを切って、ほぐしてください。豆水煮は水気を切っておきましょう。合びき肉は塩、こしょうを加えてよく混ぜ合わせてください。

 

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ホットクックに「まぜ技ユニット」をセットし、内鍋に「野菜」「豆水煮」の順に入れます。その上から合びき肉をほぐして入れてください。

 

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その上にカレールーを割り入れて表面を平らにならし、本体にセットします。

 

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ホットクックの「メニューを選ぶ」→「カテゴリーで探す」→「カレー・シチュー」→「キーマカレー」→「スタート」を押します。

 

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約20分で完成です。全体を混ぜて、お好みでレッドペパーを振りかけましょう。

 

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――具がどっさりで食べ応えありますね。こういう食材もりもりのカレーって、普通の鍋でやると味がぼんやりしがちだと思うんですけど、これは一つひとつの具にしっかり味が入っている感じがします。

 

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具を均一に混ぜて、味をしっかり染み込ませているからですね。ちなみに、ホットクックにはいつでもできたてのおいしさで食べられるように保温する機能もあるので便利ですよ。

 

***

 

②酢豚(4人分/調理時間約20分)

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酢豚は、カレーや八宝菜と並ぶ、冷蔵庫のお掃除メニューです。残り野菜を分量だけ合わせて適当に入れたり、野菜の切れ端を捨てるのもったいないから入れちゃえ!って感じで大雑把に作っても、意外と美味しくなりますよ。

 

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※合わせ調味料Aは「しょうゆ(大さじ1/2)」「酒(大さじ1/2)」「すりおろしにんにく(小さじ1)」「すりおろししょうが(小さじ2)」 ※合わせ調味料Bは「しょうゆ(大さじ2)」「酒(大さじ2)」「ケチャップ(大さじ2)」「水(大さじ2)」「酢(大さじ3)」「砂糖(大さじ4)」「鶏がらスープの素(大さじ1)」「こしょう(少々)」

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豚ひれ肉は2〜3cm角に切り、Aの合わせ調味料とともにビニール袋に入れて、よくもみこみます。そこに片栗粉を加え、袋を振って粉をまんべんなく豚肉にまぶします。

 

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玉ねぎは縦半分に切ってから横半分に切り、くし切りにします。たけのこは乱切り、ピーマンは縦半分に切ってへたと種を除き、ひと口大に切ります。にんじんは皮をむいて縦半分に切り、5cmの厚さの半月切りにします。生しいたけは石づきを切り落とし、4等分に切ります。

 

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本体に「まぜ技ユニット」をセットします。内鍋に切った野菜を入れ、その上にほぐした豚肉を広げます。Bの合わせ調味料を加え、本体にセットします。

 

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ホットクックの「メニューを選ぶ」→「カテゴリーで探す」→「煮物」→「肉」→「八宝菜」→「スタート」を押します。約20分加熱して完成です。

 

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――いつもの酢豚より、肉がやわらかいです。あと、ちゃんと味が入ってるけど油っこくないからするする食べられる。

 

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酢豚って豚肉や野菜を素揚げしてから作るんですけど、これは全く油を使わないんですよ。豚肉は揚げると水分が出てしまい、少し縮んで硬くなりますが、このレシピならお肉をふわふわの状態にできます。ホットクックで作ると、基本的にお肉をやわらかく仕上げられると感じますね。

 

***

 

③さけと野菜の塩麹蒸し(4人分/調理時間約25分)

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春に新玉ねぎがすごく甘く、美味しくなる時期がありますよね。あれを使いたくて考案したレシピです。新玉ねぎがない時期は普通の玉ねぎでも大丈夫ですよ。野菜を敷き詰めて、塩麹につけたお魚を置いてみたらとても美味しかったので紹介します。

 

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生鮭はキッチンペーパーなどで余分な水分と脂をふき取ります。それをビニール袋に入れて、塩麹とみりんを入れてなじませます。袋から空気を抜いて冷蔵庫に入れ、3時間〜半日ほど漬け込みましょう。

 

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キャベツはざく切り、にんじんは短冊切り、しめじは石づきを切り落として小房に分けます。玉ねぎは縦うす切りにします。それを内鍋に入れて、その上に鮭を漬けだれごと広げてのせ、本体にセットします。

 

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今回は「まぜ技ユニット」は使いません。「メニューを選ぶ」→「カテゴリーで探す」→「煮物」→「魚介」→「アクアパッツァ」→「スタート」と押してください。

 

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――野菜が甘い。あと、すごくいい出汁が出てます。繊細な仕事してくれますね、ホットクック。こんなこともできたのか、おまえ!と。

 

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調味料は塩麹とみりんだけなんですけど、塩麹の風味と野菜の甘さ、鮭の旨味が相まって、すごくいい出汁が野菜につくんです。塩麹自体もホットクックで作れるので、私の冷蔵庫には塩麹のストックが大量にありますよ。

 

***

 

④鶏モモ肉のごま味噌煮(4人分/調理時間約20分)

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以前、普通の料理教室をやっていたレシピをホットクック用にアレンジしたものです。材料が少なくシンプルですがとても味わい深く、ごはんにもお酒にも合いますよ。

 

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※合わせ調味料は「すり白ごま(大さじ2)」「みりん(大さじ1)」「みそ(大さじ4)」「砂糖(大さじ2)」「ごま油(小さじ1)」

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鶏もも肉は一口大に切り、塩で下味をつけます。白ねぎは小口切りにします。内鍋に鶏もも肉、白ねぎ、合わせ調味料を入れ混ぜて本体にセットします。

 

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「まぜ技ユニット」を本体にセットします。ホットクックの「カテゴリーで探す」→「煮物」→「肉」→「鶏とカシューナッツの炒め煮」→「スタート」を押します。約20分加熱して完成です。

 

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――これ、めちゃくちゃ好きです! ごまの風味で食べる、甘じょっぱい鶏。味付けでごまかすんじゃなくて、お肉自体の旨味もしっかり感じられますね。

 

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ホットクックで作ると、お肉がふっくらジューシーに仕上がります。鉄板レシピですね。

 

***

 

⑤チャプチェ(4人分/調理時間約20分)

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鍋でチャプチェを作る場合、春雨を戻すのが面倒ですよね。ホットクックなら、乾燥したまま放り込めばOKです。鍋のなかで戻り、具材と混ぜ合わせるところまで自動でやってくれるので、とても楽です。

 

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※合わせ調味料は「しょうゆ(大さじ4)」「砂糖(大さじ2)」「酒(小さじ2)」「塩(2つまみ)」「にんにくのすりおろし(小さじ1/2)」「粒ごま(小さじ2)」「ごま油(大さじ1)」

 

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豚こま切れ肉をボウルに入れ、合わせ調味料を大さじ1加えてもみ込みます。

 

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玉ねぎは薄切り、にんじんは短冊切りにします。豆もやしはさっと洗ってざるにあげておきます。にらは3cmの長さに切ります。内鍋に春雨を入れて豚肉と野菜(にら以外)をのせます。残りの合わせ調味料と水150ccを加え、本体にセットします。

 

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本体に「まぜ技ユニット」をセットします。ホットクックの「カテゴリーで探す」→「煮物」→「肉」→「豚とブロッコリーのオイスターソース炒め」→「スタート」を押します。

約20分加熱して終了したら、蓋をあけて、にらを入れ3分加熱を延長します。延長加熱が終了したら混ぜて、出来上がりです。

 

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――これも美味しいです。薄めの味つけなんだけど、そのぶん野菜の甘さとか肉の旨味が感じられて、ぜんぜん物足りなくない。

 

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ホットクックはフタを閉めた状態で調理するので、水分が蒸発しません。そのぶん調味料も普通の鍋より少なめで済みますが、さじ加減はお好みで調節いただければと思います。

 

***

 

と、ホットクックを極めた達人から教わったレシピは、さすがにどれも素晴らしいクオリティだった。これで我が家のホットクックも、さらに活躍させてあげられるだろう。

 

……と思ったけど、あれから「鳥モモ肉のごま味噌煮」ばっかり作り続けているので、無水カレーをヘビロテしてたころと状況はあまり変わっていない。ごめんホットクック。

 

※なお、新型コロナウイルスの影響により教室は現在お休み中とのこと。再開時期などについては、以下の公式サイトでご確認を

https://www.kotokotocooking.com

 

プロフィール

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榎並紀行(やじろべえ)

1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。
>ツイッター: Twitter (@noriyukienami)
>ホームページ:やじろべえ

我々は梨のことを何も知らずに食べているのではないか

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梨というものがある。秋を代表する味覚で、その季節にスーパーに行けば、いろいろな品種の梨が並んでいる。ジュースにもなっているし、アイスなどにもなっている。瑞々しく、とても美味しい果実だ。

 

しかし、我々はどのくらい梨のことを知っているだろうか。秋になれば必ず食べるけれど、梨のことを全く知らずに食べている。あんなに美味しいのだから、もっと彼のことを知っていいと思うのだ。ということで、梨のことを知ってから梨を食べようと思う。

 

好きだから知りたい

我々は毎日いろいろなものを口にする。野菜も食べるし、肉も食べるし、魚も食べるし、果物も食べる。ただ我々はよくわからないまま食べているのではないだろうか。栽培方法や生産地を知っている、ということではない。もっと歴史的なことだ。

 

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どうも、この記事を書いている地主です!

たとえば、好きな人ができたとする。すると、いろいろ調べるじゃない。どこで生まれたのかとか、どんな学校に通ったのかとか。食べ物もそういうことなのだ。好きならもっと知らなくてはいけないのだ。味に深みが出るかもしれない。

 

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そこで梨です!

私は梨が好きだ。とても好きだ。真夏の麦茶より梨が好きであり、ふかふかのお布団の次に梨が好きなのだ。秋になると必ず食べる。ただ私は漫然と梨を食べており、彼のことを知らずにいた。しかし、それではダメだと思い、ここ数年勉強していた。その結果、梨の美味しさが増した気がする。

 

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梨狩りに来ました!

私の住む東京は実は梨で有名な産地。「多摩川梨」というブランドがあるのだ。また梨の歴史を振り返る時に、避けることのできない品種も多摩川沿いの街で生まれている。今回梨狩りに出かけたのも、多摩川に面する現在の東京での梨の中心地である稲城市だ。

 

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梨を狩ります!

梨について

梨狩りの途中だけれど、梨について学んでいこうと思う。狩る時から梨について知っていた方が狩りに力が入るのだ。まず梨には「洋梨」「中国梨」「和梨」の3つがある。今回この記事で書くのは「和梨」についてだ。以後、ただ梨と書いてあったら和梨のことです。

 

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これがご存知「和梨」です!

果実には海外からやってきたものが多い。梨と形が似ているリンゴは中央アジアなどに自生している。一方で梨は日本固有の種と言える。日本書紀にも梨は登場するし、弥生時代の遺跡からも梨の種が見つかっている。

 

梨自体に3つの種類があり、和梨はさらに2つに分けることができる。それが青梨と赤梨だ。梨には青っぽい見た目のものと、赤っぽい見た目のものがあるのだ。最近の流行りからすれば、梨といえば赤梨を思い浮かべる人が多いだろう。

 

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青梨と赤梨

梨は日本の果実産出額の約9%を占めている。産地としては、千葉茨城栃木、福島、鳥取などが挙げられる。栽培面積は1980年代をピークに減少傾向にある。ピーク時と比べると4割ほど減っている。なぜ減っているのだろうか。

 

もちろんそこには、現在の農業では必ず挙げられる後継者不足と高齢化がある。ただ梨の場合はそれだけではない。手間がかかるのである。梨は自家不和合性という特徴を持っている。同じ品種同士では実をつけないのだ。別品種を人工受粉させる必要がある。

 

また10アール辺りの年間作業時間はリンゴと比べると約120時間ほど梨の方が多い。そのリンゴ農家も、一部の地域では作業時間の多さと単価の問題でモモ農家へと変わっているという話を聞いた。どれも大変だけど、梨もまた大変なのだ。

 

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豊水

梨は美味しいけれど、いろいろな苦労の末に実をつけるのだ。現在は自家不和合性問題を解決する品種もできている。突然変異により生まれた「おさ二十世紀」や、「新王」、「秋甘泉」などがそれに当たる。

 

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これも豊水

人工受粉をする際の品種では味は変わらないという話を梨農家さんから聞いた。ただ別品種を準備するのが大変。近い品種で人工受粉させないように、海外から花粉を仕入れたりもしているそうだ。

 

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梨園

長十郎の時代

梨の歴史を語る際は、1893年に販売が始まった「長十郎」という品種誕生の以前と以後に分けることができるだろう。江戸時代にも多くの場所で梨は育てられ、品種としては150を超えていた。後述するが「淡雪」などが、長十郎以前を代表する品種だ。

 

長十郎以前の品種を食べるのは難しい。スーパーに行ってもまず間違いなく並んでいないからだ。では、どんな味だったのだろう。たとえば、1878年に日本を旅したイザベラ・バードが書いた『日本奥地紀行』に梨についての話があった。「酸っぱくて香りがない」と書いてある。今の梨とはかなり違うようで、彼女はあまり美味しくないという感想を持ったようだ。

 

また淡雪を数年前に食べたという人にも出会った。今も育てている人はいるようだ。その人は「大根を食べているようだった」と言っていた。やっぱり我々が思い浮かべる梨とは違うようだ。

 

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淡雪公園(東京稲城市

そんな淡雪など江戸時代から育てられた150もの品種を、過去のものにした品種が「長十郎」なのだ。この梨が生まれたのが多摩川。今では梨の産地として多摩川下流域が大きく出てくることはないけれど、梨の革命はそこで起きた。

 

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多摩川です!

長十郎は多摩川の下流域である「川崎」で生まれた。それは偶発的なものだった。ある年に黒星病で梨園が全滅しかけた時に、1本だけ大粒の実がなっている木が見つかる。その木は野生の梨を接ぎ木したもので、大粒の赤梨で甘みも強く、病気にも強かった。これが長十郎だ。

 

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これが長十郎の木(川崎・若宮八幡

これが1889年頃の話で、1897年に全国の梨産地で黒斑病が流行る。多くの品種が壊滅的な被害を受けるのだけれど、長十郎だけは被害をあまり受けなかったことから、全国的に長十郎が注目を浴びることになる。

 

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長十郎のお守り(川崎・若宮八幡

ここからの長十郎がすごい。1970年代まで長十郎は全国各地で育てられ、地域によっては育てている品種の9割が長十郎というところもあった。ほぼ全ての梨を過去のものにしたのだ。それくらいに長十郎はすごかったのだ。

 

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種梨遺功碑(川崎大師

正岡子規の闘病中の日記を読むと1日1個ほど梨を食べている。長十郎も登場する。正岡子規も長十郎を食べたのだろう。ただ現在では長十郎を見かけることは少ない。育てている地域もあるけれど、かなり少ない。

 

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これが長十郎

長十郎は食べてみるとなかなかに美味しかった。硬めで酸味も適度で甘みもある。ただ甘みとしてはそこまで強くない。ただ懐かしい梨の味なのだ。近年の品種は甘さに舵を切っていることが多い。

 

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長十郎です!

これは梨に限った話ではなく、野菜などもそうだ。種苗会社の方に聞いたのだけれど、昔と比べると甘い野菜が好まれる傾向にあると言う。人参も昔と比べると臭みがなくなり甘くなっているし、トマトもフルーツかと思うほど甘い品種がある。人々は甘みを求めているのだ。

 

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新甘泉!

梨でいえば、鳥取の「新甘泉」などがまさにそれだ。とにかく甘い。いい意味でだけれど、これ梨なの? と思うほどに甘い。新甘泉は筑水におさ二十世紀を交配したものだ。2008年に品種登録された新しい梨と言える。

 

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新甘泉、甘いです!

二十世紀の登場

長十郎の次に時代を築いたのが「二十世紀」である。梨と言われて思い浮かべる名前が二十世紀という人も多いと思う。この品種もまた長十郎と同じように偶発的に生まれたものだ。千葉松戸市のゴミ捨て場から、二十世紀の幼木が発見されたのだ。1888年のことだった。

 

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これが二十世紀です!

そもそも千葉は現在もそうだけれど、古くから梨の一大産地だった。江戸時代後期に描かれた「江戸名所図会」にも千葉の梨園の様子が登場する。「梨下駄」と言われる下駄を履き、梨を収穫する様子だ。

 

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江戸名所図会。立っている人の足元に注目!

この品種が何かはわからないけれど、面白いのはやはり梨下駄である。この記事の最初の方に私が梨狩りをしている写真があったと思う。梨棚というものが作られるのだけれど、高さは160センチほど。いろいろな作業がしやすい高さである。

 

一方で江戸名所図会の梨棚は高い。だって、歯の部分が長い梨下駄を履いているわけだから。またイザベラ・バードは「日本奥地紀行」で梨の木を8フィートと言っているので、240センチほどあったということになる。育て方にも変化があったことがわかる。

 

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今はこう!

ポイントは二十世紀は千葉で生まれたということだ。二十世紀といえば鳥取のイメージを持つ人も多いだろう。現に鳥取で一番作られている品種は二十世紀だ。しかし、千葉のしかもごみ捨て場で誕生したのだ。

 

その幼木が実をつけるまでになるのに10年を要した。実は甘く、瑞々しく、口触りもよかった。最初は「新太白」と名付けられたが、1904年に「二十世紀」と改名する。長十郎は病気に強いという理由で全国に広がったが、二十世紀は美味しいという理由で全国に広がった。

 

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二十世紀

1904年に10本の二十世紀の苗木が鳥取に植えられる。黒斑病が流行った時も鳥取は二十世紀を諦めることはなく、突然変異による「おさ二十世紀」も誕生している。先にも書いたように「おさ二十世紀」は自家不和合性という問題を解決している。

 

さて二十世紀は長十郎と共に時代を築いた。1970年代はほぼ二十世紀と長十郎だけと言ってもいいほどの栽培面積を誇った。やがて長十郎は減っていき、もはや幻くらいの勢いだけれど、二十世紀は今も栽培面積としては4番目に位置している。

 

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うちの子たちも二十世紀好きらしいです!

幸水の誕生

長十郎が衰え、二十世紀だけの時代が来るか、と思ったけれど、そこで誕生したのが「幸水」である。1989年に幸水が生産量1位になった。幸水は甘かった。江戸時代の品種より長十郎や二十世紀は甘く、幸水は長十郎や二十世紀よりも甘い。時代は甘さを求めているのだ。

 

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これが幸水!

いま日本で一番育てられている品種が「幸水」。栽培面積の約4割が幸水となっている。菊水と早生幸蔵の交配で生まれたもので、1959年に発表された。特別病気に強いということもなく、最初の頃は決して流行らなかったけれど、埼玉県が力を入れ、栽培方法を確立して、現在に至る。確かに幸水は梨としてのバランスがよい味わいだ。

 

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美しいですね!

同時期に2種類ということもあるけれど、基本的には30年、40年くらいで次の品種が流行りだしている。長十郎が流行り、二十世紀が流行り、幸水が流行る。そのような流れだ。そして、幸水が流行って30年ほどが経った。ということは、そろそろ次の品種が来るかもしれない。スーパーにもいろいろな品種が並んでいる。

 

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スーパーに並ぶ品種(稲城は並ばないかも)

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どれも美しいですな!

パッと手に入れただけで、6種類の梨を集めることができた。どれも食べ比べると味が違う。私の好みで言えば茨城で生まれた「あきづき」が好きだった。新高と豊水を組み合わせたものに、幸水を交配したものだ。2001年に品種登録された。

 

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あきづき

あきづきは超エリートなのだ。現在の栽培面積の1位が幸水、2位が豊水、3位が新高である。全部入っているのだ。栽培面積も増えており、現在5位という感じだ。食べてみると粘りのあるねっとりした食感に瑞々しさと甘さ。美味しかった。味を考えると、今後、彼が天下を取るのではないかと思っている。

 

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エリートのあきづき!

多摩川梨について

さて、話は最初の梨狩りに戻る。とても長い梨のお話だったけれど、梨についてはだいたいわかったのではないだろうか。短くまとめると、「梨は古くから日本各地で育てられ、明治に入ると長十郎が生まれ、二十世紀が生まれ、それまでの梨が過去のものになり、さらに現在は幸水が天下を取っている」ということ。3行もあればまとまるところをたぶん4,500字以上書いた。

 

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梨狩りは楽しい!

私が梨を狩っているのは、先にも書いたように多摩川に面する東京稲城市。長十郎が川崎で生まれたことでわかるように、古くから梨の生産をしてきた地域だ。川崎あたりは江戸時代頃、多摩川沿いは延々に梨園だったそうだ。今では工場や家々が建ち、その面影はないけれど。

 

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稲城市のキャラクター「稲城なしのすけ」

ただ稲城市は現在も梨農家さんが多く、東京の梨の中心地になっている。稲城市での梨栽培は元禄年間(1688〜1704年)頃に始まった。代官が公用で京都に出かけ、先にも登場した「淡雪」という品種の梨の苗を持ち帰り、稲城市に植えたのが始まりだ。

 

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先にも登場した淡雪公園、特に何もない!(四方は梨園だけど!)

その原木は1889年まで稲城市の「清玉園」にあった。そして、私がいま梨狩りをしているのが「清玉園」。「多摩川梨発祥之地」という石碑が庭の片隅に建てられている。

 

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多摩川梨発祥之地

多摩川梨という名前は1927年に多摩川沿いの梨生産組合が団結して誕生した。つまり品種の名前ではなく、その地域で作られた梨の総称みたいなことだ。今も稲城市を歩けば、多くの梨園を目にするし、梨の街だからの注意書きも街中に普通にある。

 

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こんな注意書きが普通にある!

稲城市の梨園の特徴は観光果樹園が多いことではないだろうか。1955年頃から梨のもぎ取りが始まった。関東一円から婦人会や家族連れ、幼稚園などがもぎ取りに訪れ、稲城市の梨園は完全に観光化する。同じ時期に梨の街頭販売も盛んになり、今も街を歩くと直売所を目にする。

 

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直売所!

稲城市には「稲城」という品種の梨がある。一部では幻の梨と言われている品種だ。収量は決して多くなく、人工受粉も何度もしないといけないと聞いた。稲城はそんなには市場に出ていないと思うので、稲城市に行って買った。

 

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売っていました!

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これが稲城です!

新高と八雲の交配で生まれた品種だ。柔らかく多汁で酸味はない。食べてみると確かに美味しかった。稲城もまた偶発実生だそうだ。稲城市ではこの品種を使ったワインなども作っている。

 

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稲城を使ったワイン!

そもそも論として、多摩川の下流域は梨作りに向いた土地だった。黄河文明が黄河による肥沃な土壌がキイになっているのと同じように、多摩川により肥沃な土壌が作られたわけだ。もちろん梨だけではなく「高尾ぶどう」なども作られている。

 

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狩りました!

清玉園で梨を狩った。狩った梨の品種は「清玉」。この梨園で生まれた品種で、私はこの品種を食べたいと、もう数年思っていた。それはなぜか、時代を築いたものたちの組み合わせで生まれた品種だからだ。

 

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こういうことです!

長十郎と二十世紀の組み合わせで生まれたのが「清玉」。最高ではないか。「あきづき」と同じように、時代としては古くなるけれど、エリートと言える。見かけからわかるように、青梨ということになる。スーパーなどではお目にかかれない品種だ。

 

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美しいですね!

梨に限った話ではないのだけれど、品種を知ると楽しくなる。競馬をする人ならわかると思うのだけれど、夢の組み合わせがあるのだ。メジロドーベルにディープインパクトは12冠ベイビーと言われ、テイエムオーシャンにテイエムオペラオーは10冠ベイビーと言われ、共に盛り上がった。

 

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清玉、美しい!

いや、これは例がよくなかった。いま挙げた馬は残念ながら強くはなかった。ただ野菜等も品種を知っているからこその興奮があるのだ。食に対する新しい興奮ではないだろうか。栽培法ではない、料理法でもない、産地でもない。品種に興奮するのだ。

 

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夢の組み合わせに興奮するでしょ!

長十郎に二十世紀ですよ。熱が出るのではないのかと思うほどの興奮と共に多摩川に出かけ、清玉を切り食べた。感動を超える何かがあったと思う。実際に美味しかった。酸味はなく、実はシャリシャリ感があり、適度な甘み。梨だ、梨だ! という王道の味だ。

 

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感動の瞬間!

長かった。興味があり梨について勉強を始め、長十郎と二十世紀に出会い、その組み合わせの「清玉」があると知り、梨についての理解を深めてから食べようと思っていた。その結果、美味しかった。とても美味しかった。梨についての歴史を知っているので、甘みが増幅した気がする。知らなくても甘いと思うけど。

 

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美味しいよ!

梨は秋の代表

梨について、とても長々と書いた。これでもかなり端折っている。普段何気なく食べている梨にも、ものすごい歴史があるのだ。それを知ってから食べて欲しいけれど、知らなくて食べても別に美味しいから梨はすごい。

 

ちなみに梨は品種によって出荷時期が違うので、8月から11月くらいまで食べることができる。品種が変わるので、その期間中は食べ続けて欲しい。ぶっちゃけね、どの品種も美味しいから。

 

あと、途中で「うちの子たちも」と書いたけれど、知り合いのお子さんで、私の子供ではないです。なんとなく書いてみました! また梨については私が、見たり聞いたり、または読んだものをまとめたものなので、思い違いがあるかもしれない。その時は、なんか、すみません。

 

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多摩川で多摩川梨を食べる贅沢!

参考文献

日本園芸農業協同組合連合会『果実日本 第75巻 第8号』2020

稲城市教育委員会社会教育課『文化財ノート』2001

竹下大学『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』中央公論新社 2019

多摩川果物協同組合連合会『多摩川梨変遷史』1963

川島琢象『東京多摩川 梨の歩み』1981

天野秀二『図説 世界のくだもの366日事典』講談社 1995

イザベラ・バード(時岡敬子)『イザベラ・バードの日本紀行』講談社 2008

 

梨狩りをした梨園

清玉園

住所:東京都稲城市東長沼2025

TEL:042-377-6156

 

著者プロフィール

 

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地主恵亮
1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「妄想彼女」(鉄人社)、「インスタントリア充」(扶桑社)がある。
Twitter:@hitorimono

 

サッカー選手の浮き沈みに妻はどう向き合うのか…モデル・山本佳代子が語る結婚生活

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サッカー選手はたくさんの人に支えられている

ストライカーのゴールは

DFがボールを奪いMFがパスを繋ぐことで生まれる

 

だがそれは試合の90分間だけの話

ピッチを離れた残りの時間は周囲の人が見守る

特に家族の力は大きい

 

波瀾万丈な人生を送ってきた松原良香氏

配偶者の佳代子さんに包まれてきたと言えるだろう

現役時代は結婚した後も離ればなれの時間が長かった

 

15歳のときからモデルとして活躍する佳代子さんは

どうやって出会い結婚に至ったのか

そしてどんな結婚生活を送っていたのか

ご本人にお勧めの店とともに語っていただいた

 

「ボーッとした千葉の田舎の子」がCanCamモデルに

夫との出会いって、最初はライターの方の紹介だったんです。

 

私って、今でもそうなんですけど、ずっとボーッとした子だったんです。中学3年生の時に美術の先生がコンテスト(国民的美少女コンテスト)の紙を持ってきて、「これ、あなた出しなさい」と言ったんですけど、そのときはピンとこないで「イヤだ先生、何言ってるの」っていう感じだったんです。

 

でもその1年後の高校1年生のときに、環境問題のことについて調べましょうという課題が毎月出ていて、新聞を読んでいたら同じコンテストの広告が出てたんですよ。「あ、これは先生が言ったやつだ」と思ってよく読んだらコンテストには年齢制限があって、私がコンテストに出られる最後の年だったんです。

 

「じゃあ出してみようかな」って軽い気持ちで応募したんです。そうしたらモデル部門賞をいただいて。その時にもうコマーシャルが決まってたのかな。

 

私が通ってた学校はとても厳しくてアルバイトが禁止だったんです。コンテストに出る前に母に相談したら、コンテストは夏休みの間に予選と本選があるから、出ちゃってから学校に報告した方がいいっていうことになって出てたんですよ。

 

それで先生に報告したら、テレビ放送もあったからもう先生も知っていて。先生は「将来蕎麦屋さんになりたい人が蕎麦屋で修行したいと言ったら学校としては応援する。君の場合はそれがモデルなのかもしれない」って言ってくれて、特例として認めてもらったんです。

 

今はモデルってたくさんいるけど、その時はそんなに人数もいなかったし、千葉でそういうことをする人もあまりいなかったので認めてくれた部分もあったと思います。

 

そもそもモデルっていう仕事があることや、どんなことをやるかなんてまるで知らないくらい、ボーッとした千葉の田舎の子だったんですけれど、そういうきっかけでモデルという仕事を学生をしながらやり始めて、そこで人生がガラリと変わりました。

 

「プチセブン」というティーン雑誌の表紙をやらせていただいたり、「CanCam」に載せていただいたり、コマーシャルに出たりと、それからは仕事をしながら学校に通ってたんです。一生懸命楽しくやってました。

 

サッカー選手はちょっと遊んでる感が出てる人たちがいっぱいいた

当時、夫は1996年アトランタ五輪に向けた合宿でいろんな国に行ってました。サッカーって練習時間がそんなに長くなくて、ホテルに缶詰になる時間がたくさんあるじゃないですか。それでみなさんゲームとか雑誌とか持ち込むんですけど、本の中に男性誌ばかりじゃなくて、「プチセブン」や「CanCam」があったらしいんですよ。

 

ちょうどそのとき、サッカーだけじゃなくて「プチセブン」の仕事もしているライターの方がいて、夫はその人に「この子を紹介して」って私のことを言ったらしいんです。私もそのライターさんと仲良しで、「今度ごはん食べに行こうよ」って誘われて、そのときに知り合った感じですね。1995年で、夫はジュビロ磐田にいたときでした。

 

でも私サッカーあまり知らなかったんです。家は野球が大好きで、サッカーはあまり見てなくて。ルールもボールをゴールを入れることぐらいしか知らなくて。

 

それに当時、雑誌がやっている忘年会にいろんな芸能人やサッカー選手が来てたんですけど、サッカー選手はちょっと遊んでる感が出てる人たちがいっぱいいて。だから会った時に「サッカー選手だから気をつけなくっちゃ」って思ってました。

 

夫はよく東京にいましたね。私はサッカー選手っていろんな所に試合に行くからそうなのかなって思ってましたけど、後から聞くとそうじゃないみたいですね。夫からよく「東京にいるからご飯食べようか」って連絡がありました。その時は時間があれば東京に来る感じだったのかな。

 

付き合い始めたのは、何回かご飯を食べたりしてる間に「付き合おうか」っていう感じになったからです。1996年に夫が清水エスパルスに移籍したころだったと思います。1997年にはジェフユナイテッド市原に移籍したんですけど、いろいろあった中で市原を選んだんで、私のためじゃなかったと思います。

 

あとになって夫はメディアに対して尖ってるところがあったって聞いたんですけど、そういうところがあるって知らなかったです。それに私、サッカーのことがあまりわからなかったのでサッカーの話をしなかったですし。選手だからプライベートは休むのが基本で、一緒にのんびり過ごしてました。でも全然尖ってなくて普通だったと思います。

 

むしろ優しい一面があると思ったんですよ。お年寄りとかちっちゃい子に対してとても親切だったんで。それから付き合いだしたころだったか、ものを受け取るときにひったくるような取り方をしたんで「そういう取り方をしちゃいけないんだよ」と言ったらちゃんと直してくれたから、言えば改めてくれるんだと思って。

 

だから尖った感じは私が感じてなかったんですけど、今考えると不良少年だったのかもしれないという部分はありました。でも、そんなに気にならなかったですね。

 

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父は「あぁ、サッカー選手なのか」とショックを受けた

私、結婚相手を何人の中から選ぶとかそういう感覚がなくて、付き合っててそのまま自然な流れで結婚するんだろうって思ってたんです。大人になって「結婚相手の条件」を話す人がいて、それでそうやって選ぶ人がいるんだっていうのが分かったくらいで。

 

だから私は付き合ってて「結婚して」って言われたんで、「じゃあ結婚しようかな」って。そこもボーッとしてるんですよ(笑)。あんまり他のこと知らなかったんで。

 

それで夫を両親に紹介したんです。最初は市原にいた1997年に父を「サッカーの試合見に行こうよ」って誘って一緒に行って、試合中に「あの人と付き合ってるんだ」って教えたんです。

 

私がそう話したときに父は「ふーん」って言ってたんですけど、「あぁ、サッカー選手なのか」ってショックを受けたみたいで。父も弟も野球が好きで、弟は今も千葉西シニアというチームで監督をしていて、父が事務局長で手伝っているくらいなんですよ。それに、サッカー選手には遊び人というイメージもあったし。

 

サッカーって練習時間が短くて、髪の毛も伸ばしててチャラチャラしてるっていう印象を持ってて。野球部は坊主で練習はしっかりして挨拶のときに握手とかしないみたいな、キリッとしたイメージが昔はあったから。だからサッカーの印象はあまり良くなかったみたいで。

 

かといってすごく反対されたわけでもなくて「そうか……」っていう感じでした。1998年に夫は市原から磐田に戻って、試合の出場機会がなかったりして大変だったらしいんですけど、私、サッカーってあまり分からないから。それに活躍してるから結婚するとか、活躍してないから結婚しないというわけじゃないでしょう?

 

それで1998年の年末にウルグアイに2人で旅行に行って、夫の向こうの知り合いに教会を頼んでいただき、1999年にその知り合いや向こうの友達に来てもらって、ちっちゃな規模で挙式しました。帰国して日本ではちょっとしたパーティーをやったんです。

 

それで結婚したんですけど、1998年に夫は磐田との契約が終わっていて、今後のチームをどうしようかってことになったんです。夫はヨーロッパでプレーするということで海外に行って、ドイツに行ったりして最後にクロアチアのチームが決まりました。だから結婚した途端に別居でしたね。

 

私は父が単身赴任で出張が多い会社にいたので、子供のころから母と弟と3人でいることが多くて、父親が仕事でいないという生活に違和感がなかったのかもしれないです。それに私も仕事でバタバタもしていたし、付き合っていたときもずっと遠距離だったから、別居してても距離はそんなに気にならなかったです。

 

それに私「結婚生活はこうだ」というのを思い描いてなかったのかもしれないです。「なるようになる」とか思ってたのかな。仕事も影響してるかもしれないですね。モデルの仕事って1つのいい写真を撮るためにたくさんの大人の人がとても一生懸命にやって、なんとか作っていくっていう感じで。私はそれがすごい好きだし楽しかったんですよね。

 

ただ、制作過程って「普通に考えると違うよね」っていうことがあったりするんですよ。風邪をひいて熱があっても仕事をするとか、何があっても仕事をベストにとか。ショーだったら、もし何か落としちゃっても臨機応変にやっていくというのがあって。目の前のやらなきゃいけないことをやるという環境に16歳ぐらいから慣れていたから、「結婚生活とはこうじゃなきゃいけない」というのがなかったのかもしれないですね。

 

だけど、ときどきヨーロッパには行ってました。最初にドイツでテストを受けてる時にも行ったし、クロアチアに決まったあとは、クロアチアに1ヶ月行って1ヶ月戻って仕事をして、クロアチアの後にスイスに行ったときは3ヶ月行って、3ヶ月帰ってきてとか、そうやってました。

 

夫が2000年にヨーロッパから戻ってきて湘南ベルマーレに入って、そのときやっと一緒に暮らすようになりました。2人で住んでみて特に大変とも思わなかったし、のんびりしてました。選手だと時間が結構ありますでしょう。だから振り返ると私たちよく散歩してたなって。平塚に住んでた時もお散歩してました。そう言えばクロアチアへ訪ねたときもよく散歩してましたね。

 

湘南のときもチームの状況は大変だったと思うんですけど、私は試合とか順位とか全然見ないんで。だから今、思うんです。私がもっとストイックにお尻叩いてたら、もっといい選手になったかもしれないなって(笑)。

 

夫は湘南を辞めた後、一度ウルグアイに行って、戻ってきて2001年にアビスパ福岡に入ったんです。私の両親の実家は北九州で馴染はあったし、福岡って美味しいものがとてもたくさんあって、私は福岡ってすごくいいところだったと思ってるんです。楽しかった思い出がたくさんあって。千葉の実家と行ったり来たりしながら仕事をして、飛行機のマイルも貯まるし何かとても楽しかったです。

 

それで福岡を辞めた2002年、夫はもう一度ウルグアイに行きました。ウルグアイに行くことになったときに長女の妊娠がわかって、お腹出てきたら仕事できないということになったんです。

 

「じゃあ仕事できないから、後から行くね」みたいな感じで夫を追ってウルグアイに行ったんですよ。よく考えたら大変な時期だったんですけど、夫も私も子供というか。子供ができて自然に生まれるとしか考えてなくて。今だったら「子供を育てるのは大変だ」って思うんでしょうけど、そのときは普通のことだから、ぐらいにしか考えてなかったですね。

 

それでウルグアイで妊婦健診に行ったら、日本で受けた検診の機材とウルグアイの機材がまるで違って。日本だと3Dで見られたんですけど、向こうだと白黒の平面で、それって私がちっちゃいころにあったような機材だったんですね。

 

たぶんちゃんとしたいい病院だったと思うんです。今のウルグアイはよくなったんですけど当時はそれくらい差があって。それでもし生まれる時に何か不具合があって、助かるものも助からなかったらどうしようと思って、日本に帰って生むことにしたんです。

 

そのころ夫は、プロとしてウルグアイのチームでプレーできると思ったら実は違ったということでショックを受けてたみたいなんですけど、その話を私は覚えてないんです。きっと夫は私に私にショックを与えないよう、言ってなかったんじゃないかって思います。そして指導者の資格を取るために一生懸命勉強しているということだったので、私もそれでいいんじゃないかと思ってました。

 

子供が生まれるとき、夫は一度帰国して、すぐにまたウルグアイに戻ったんです。ところが夫が通っていた学校でストライキが始まって、資格が取れないかもしれないっていうことになって。

 

私は結婚生活の中でそのころが一番不安だったみたいで。生まれたての長女がいて、私は仕事に復帰できるかどうか分からなくて、夫もどうなるか分からなくて。「どうしよう」とは思ってなかったんですけど、過呼吸になったことが何回かあって、あとから「あれはストレスだったんだ」って思いました。

 

でもその後、私がまた働けるようになって、母も子供の面倒を見てくれてたので安心して仕事できました。2003年に夫が日本に戻ってきて沖縄かりゆしに入団した後は、何週間か沖縄に行って、また戻って仕事をするというペースになりました。そのころは、もうやれることをやるしかないと、一生懸命仕事をしてました。

 

でも仕事はやりがいがあるし、子供はかわいいし、沖縄もいいところだし、たまに美ら海水族館に行ったりして。だから沖縄も楽しかったんです。沖縄では大きなお弁当2つ買ってきて子供と3人で分けて食べてたとかそういうこともありました。当時は夫より私の方が稼いでいたかもしれないんですけど、別れるとか、そういう選択肢は一切なかったです。

 

2005年、夫が現役を辞めた後は、私の実家に同居したんですよ。そうするしかないというか、私が仕事をする間、子供を見てもらえるのでそうするのが楽というか。夫が私の実家に一緒に住むっていうのはびっくりというか、よく夫も頑張ったと思います。

 

夫について困ったことは……出産して子育てしているとき、私は仕事に影響しないようにしたいと思ってたんですけど、夫はあまり理解してくれないというか。子供がいても父親の感覚じゃなかったというか、父親になるのに時間がかかりましたね。そのころは「まったくもう!」と思ってました。

 

サッカー選手を夫に持って、私はとても面白かったです。私は特に何もしてなくて、ただ応援してただけだと思いますし、他の人と違うのはいろんなところへの引っ越しが多かったぐらいですけど、でも自分でもいろんなところに行って面白かったと思うので、本当に楽しかったです。

 

そして夫は昔、いろんな失敗があってみなさんにご迷惑かけてたのかもしれないと思います。ですが、自分が反面教師になった経験があるから、若い子たちにはこういう指導をしなきゃいけないということに気づけたと思うし、こうしてれば良かったという反省が、今の仕事に生きてるんじゃないかと思いますね。

 

娘はね、もう2人ともサッカーやってないんです。小さいころはやってたんですけどね。だから2人がサッカー選手になることはもうないですね(笑)。

 

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料理はなるべく手作りを心がけている

私は普通に料理を作るだけでそんなに得意料理とかないんですよ。でも子供たちから「焼売はどこよりも美味しいから得意と言えばいいのに」とそそのかされたので、焼売にします(笑)。

 

それから「なるべく手作りしようと心がけている」という感じですね。市販のものも使うけど、簡単にできるものは手作りしたいと思ってて、マヨネーズはオリーブオイルから作ったり、パンとかピザとかは自分で焼いたりしてます。それからお味噌とか梅干しとかも作ります。体にいいものを研究してる感じですかね。

 

料理をやり始めたのは結婚してからですね。あと友達に紹介してもらったお料理教室が世界各国のお料理を教えてくれるので楽しくて、レシピを引っ張り出して今でも作ったりしてます。

 

おすすめのレストランは、私たちの事を振り返ってよく行ったのは白金の「金竜山」という焼肉屋さんですね。夫が選手のときから通っていつもパワーをもらって帰ってくるという感じでした。でもあそこは有名だし。

 

私の個人的なお気に入りとしてご紹介したいのは、恵比寿渋谷の間にある並木橋の「アンティヴィーノ」というイタリアンレストランです。季節のものを美味しく出してくれるんです。お店のおすすめ料理、牡蠣とかボルチーニとか、そのときの旬のものを頼んでます。

 

あとは接客がすごく心地よくて。ヨーロッパのいろんなとこに行きましたけど、そのことをすごく思い出させる雰囲気があります。白いクロスを見るとヨーロッパを思い出すんですよ。とても居心地が良くて好きなんです。

 

今の夢はリバーサーフィンで波に乗ること

モデルの仕事は16歳の時からですから、大変というよりもずっとそういうものだということでやってきてます。他の人から見ると、暑い時に厚い服を来て撮影するとか、そういうのは大変そうに見えるみたいですけどね。

 

着物の仕事もすごく好きなんですよ。立ち方に特徴があって、体重のかけ方とか言葉にはできないんですけど、振袖の仕事がすごくたくさんあって身についちゃってるから。カカトを上げたほうがいいとか、裾の中で足を曲げた方が細く見えるとか、いろんなことがあるんです。立つときに不安定になりがちなんですけど、やっているうちに出来るようになりました。

 

そして私、一昨年からサーフィンにはまってるんです。プールのサーフィンです。

 

あるとき何の気なしに大井町のプールに行って、そこでサーフィンを経験したんです。プールなのでバーを立てて、それにつかまりながらボードの上に立つんですけど、その日のうちに波の上に立てちゃったんですね。その自分が立ってるっていう感動と喜びが忘れられなくて、そこからハマっちゃったんですよ。

 

今の夢は「プロサーファーになること」って言っちゃおうかなと思って。嘘ですけど(笑)。まだすごい下手くそなんですけど、「リバーサーフィン」というのがあって、それができるようになりたくて。川の水でサーフィンするんですよ。岩の影響で波というか流れが出来て、それに乗るんです。いま一生懸命やっていて、本当の今の夢はリバーサーフィンでちゃんと波に乗れることです。

 

サーフィンって最初の日は首から足首まで筋肉痛になったんですけど、体幹を使うのでいい運動になります。ダイエットには運動がいいと思いますし、それに筋肉は鍛えないと衰えますからね。おすすめです。ぜひ。

 

紹介したお店

ANTIVINO
〒150-0011 東京渋谷区東1-14-13 サンフローラハイツ1F
10,000円(平均)

 

山本佳代子(松原佳代子) プロフィール

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1991年、第5回全日本国民的美少女コンテストでモデル部門賞を受賞し、芸能界デビュー。「プチセブン」「CanCam」の専属モデルを経て、現在も様々な媒体にモデルとして登場する。夫は松原良香。1975年生まれ、千葉県出身。

 

取材・文:森雅史(もり・まさふみ)

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佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。

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夏バテとは違います!身体を冷やし過ぎる「クーラー病」の危険性を知ろう

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夏場に感じる体調不良…それはクーラー病かも知れません。原因、予防、対策を知ってこじらせないように気をつけましょう。

夏バテでしょ?…と軽く考えがちなクーラー病の怖さ

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気温が暑い日はついつい、冷房をガンガン効かせてしまいがちです。長時間クーラーで冷やされた部屋にいたり、ヒンヤリした部屋と暑い屋外を何度も行き来することで自律神経のバランスが崩れてしまいます。

そのために、足腰や手指が冷えたり、肩こりや頭痛などの症状を感じたり、神経痛や発熱、食欲不振、生理不順などが引き起こされたりします。また身体のだるさだけではなく、精神的にもやる気が出ず鬱に近い症状になってしまうことも!

これらの症状はすべて「クーラー病」に当てはまるのですが、症状が夏バテと共通しているものもあるので混同されてしまいがちです。

夏バテは、暑い時に体温調節をするためにかく汗がうまく蒸発せず残ってしまいのぼせてしまうのですが、クーラー病は自律神経の乱れで体温が上手に調節できなくなった状態です。

特に女性の場合は、家でも会社でもクーラーで冷やされ、ヒールのシューズや締め付ける下着で血流が悪くなり、ダイエットの弊害で筋力が衰え、シャワーだけで済ませてしまう習慣などでより身体は24時間冷やされている状態になりがちです。

身体が冷えると低体温になり免疫力が低下、色々な病気にかかり易くなってしまいます。さらにクーラー病が慢性化すると、脳梗塞や心臓疾患の危険性が約2倍にも高まってしまいます。

クーラーに頼り過ぎずに上手に涼を取り入れ、温度変化に強い身体を作るように心がけて下さい。

クーラー病にならないために日常で心がけたいこと

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1) 暑い時以外はクーラーをできるだけ使用しない

会社の場合はクーラーの温度を変えづらいので、せめて自宅にいる時には気温がかなり高い時以外は、四六時中キンキンに冷やすのはやめて、時々クーラーを切るようにしましょう。

2) 窓を開ける、扇風機を使うなど他の手段で涼を取る

かなり暑い時はクーラーを我慢していると熱中症になる恐れもあるので危険。でもそれほど暑くない風のある時は窓を開ける、扇風機で部屋の空気をかき回すなどの工夫をしましょう。

3) 外気温と室内気温の温度差を5度以内にする

24度以下にならないようにして、できるだけ27〜28度を保つようにしましょう。またクーラーの風が直接身体に当たらないようにして下さい。

4) 暑い夜には寝る前に寝室を冷やす

寝室の室温を下げておき、寝る時にはクーラーは切るようにしましょう。ベッドに敷くヒンヤリマットやヒンヤリ枕などを利用するとより快適に眠れます。

5) 時々外に出る

クーラーの効いた室内に長時間いないで、2時間に1回くらいは外に出て深呼吸をするようにしましょう。

クーラー病にならないために!身体を上手にケアしよう

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1) 冷たい飲み物ばかり飲まない

冷たいジュースやアイスクリーム、かき氷、生野菜サラダなど冷たい飲み物や食べ物はできるだけ避け、クーラーの効いている部屋では身体を温めるハーブ茶、生姜茶などを飲むようにしましょう。

2) 食事をきちんととる

食欲がないからと毎日冷たいものばかり食べていては、栄養のバランスも偏ります。スパイスの効いたカレーや辛い麺など食欲をそそるような物を選んで食べるようにしましょう。

3) 毎日湯船につかる

シャワーで済ませないでお湯をためて、しっかりと湯船につかり全身の血行を促しましょう。

4)お腹や肩、背中、足元を温める

クーラーが効き過ぎているオフィスでは、大きめのストールを持っていく、座布団を椅子に敷く、ニットなどのレッグウォーマーを履く、「腰」や「首のつけ根」にカイロを貼るなどがおすすめです。

真夏でも血行をアップする食べ物を食べよう

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食べ物には身体を冷やす「陰」の食べ物(暑い地方の食べ物)と、身体を温める「陽」の食べ物(寒い地方の食べ物)があります。できるだけ「陽」の食べ物を食べて、身体の血行をアップするようにしましょう。

「陽」の食べ物…玄米・カボチャ・レンコン・玉ねぎ・ネギ、ごぼう・人参・山芋・ゴマ・生姜.鮭・鰤・鯵.カニ・味噌・醤油・干物など

【毎日手軽に食べられる生姜味噌汁のすすめ!】

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本格的な出汁をとるのが苦手でも、粉末の出汁の素ならお湯に溶かすだけ。化学調味料は身体を冷やすので、ぜひ無添加のものを探して下さい。身体を温める食材である味噌、生姜、具材を入れた味噌汁を毎朝、毎晩飲むようにしましょう。

『材料』

無添加の粉末出汁、味噌、ネギ、人参、ごぼう、生姜など

1) お湯に無添加の粉末出汁を溶かす。
2) ネギ、人参、ごぼうなどの野菜はみじんきり、千切りにする。
3) 生姜はたっぷりすりおろしておく。
4) 1)に2)の野菜を入れて火が通ったら味噌を溶かし、すりおろし生姜を加える。

※生姜の燃焼効果をアップするには一緒にタンパク質を摂るとより効率的です。豚肉や鶏肉を入れたり、卵とじにするのもおすすめです。

 

新宿ですき焼きを食べるなら、こちらから。
http://r.gnavi.co.jp/area/aream2115/sukiyaki/rs/
新橋でしゃぶしゃぶを食べるなら、こちらから。
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ポイントは皮とワタ! レモンの魅力に取り憑かれた男の「レモンサワー&絶品レシピ」に心を奪われてしまった

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レモン レシピ

こんにちは。料理研究家の河瀬璃菜です。

 

すっかり肌寒くなり、秋を感じる今日このごろ。実はこの時期に「レモン」が旬を迎えます。

 

夏のイメージが強いレモンですが、旬は10月から翌年の5月くらいまで。

10月から12月ごろまでは皮の色が緑の「グリーンレモン」。そこから徐々に熟していく過程で、皮が黄色くなっていきます。

 

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同じレモンでも、グリーンレモンは酸味と香りが特徴である一方、すっかり黄色くなった完熟レモンは糖度とまろやかさが特徴…と違いがあります。時期によって酸度や糖度が異なるので、さまざまな風味が楽しめるのもレモンの魅力といえるでしょう。

 

店頭で通年見かけるものだけに、いつも同じように感じていたレモンですが、なかなか奥深いですね。

 

今回はそんなレモンの魅力に取り憑かれ、「レモンザムライ」とまで名乗るようになった人物に、美味しいレモンサワーの作り方をはじめ、ぜひ真似してみたいレモンレシピをうかがってみました!

 

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レモンザムライ

1985年10月4日、奄美大島生まれ茨城県育ち。

 

31歳のときに「レモンザムライ」として、大好きでよく飲んでいたレモンサワーを普及する活動を開始。

あるとき、広島の「瀬戸田レモン」と出会い、美味しさに感動。その魅力を多くの人に知ってほしいと個人で瀬戸田レモンの卸業を開始する。現在、「尾道せとだレモン大使」も務めており、瀬戸田レモンをはじめとした国産レモンの「美味しい」を広めるために活動中。

国産レモンの需要促進や魅力を伝えるために、レモンサワーイベントや「レモンヌーボー」といったレモンの収穫祭を企画。

これまでは需要に対してのアプローチがメインだったが、今後は供給側である農家さんの助けになり、レモン生産量促進になるような活動もおこないたいと考えている。

 

レモンザムライに聞く! 極上レモンサワーの作り方

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 レモンといえば、近年はレモンサワーが流行中ですよね。まずは、自宅でも作ることができる美味しいレモンサワーのレシピを教えてください」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ 「はい! それでは、ベースを変えて楽しむレシピを紹介しますね。通常、甲類焼酎やウォッカを使って作るレモンサワーですが、あえて黒糖焼酎やラム酒、クラフトジン、芋焼酎などベースになる酒を変えて、味わいの違いを楽しむ飲み方です」

 

ベースを変えて楽しむレモンサワーレシピ

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材料(1人分)

  • 黒糖焼酎・・・45~60cc(お好みで)
  • レモン・・・半個(1/4個や2/8個などお好みで)
  • ソーダ・・・適量

作り方

  1. 黒糖焼酎をグラスに注ぎ、カットレモンを入れる。
  2. ペストルのような棒でグラス内のレモンをしっかりと潰す。
  3. 氷を入れてしっかりと冷やす。
  4. 冷えたソーダを氷に当てないように入れたら、完成。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 こ、これは美味い。普段自分で作って飲むレモンサワーよりまろやか、かつ爽やかな香りが広がります。ジンやラム酒でも試してみたい! ちなみに、冷えたソーダを氷に当てないように入れるのには何か意味があるのですか?」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ はい。ソーダが氷に触れると炭酸が飛んでしまうので、なるべくソーダを氷に当てないように注ぐのがポイントなんです」

 

 

なるほど。ちょっとした気づかいで、味わいが格段に変わってくるんだなあ…。

 

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ ベースを変える楽しみ方を紹介しましたが、お次はちょい足しで楽しんでみましょう!」

ちょい足しで楽しむレモンサワーレシピ

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材料(1人分)

  • 甲類焼酎・・・45~60cc(またはウォッカ:30~45cc)
  • コアントロー・・・15cc
  • レモン・・・半個(1/4個や2/8個などお好みで)
  • ソーダ・・・適量

作り方

  1. ベース酒とコアントローをグラスに入れて、カットレモンを入れる。
  2. ペストルのような棒でレモンをしっかりと潰す。
  3. 氷を入れてしっかりと冷やす。
  4. 冷えたソーダを氷に当てないように入れたら、完成。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 あっ、これまた先ほどとまったく違う味わいになりましたね! コアントローのオレンジの香りとまろやかな甘さが足されて、いくらでも飲めてしまうやつだ…。コアントロー以外にオススメのちょい足しって、何かありますか??」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ 「『ティフィン』という紅茶リキュールのちょい足しオススメです!」

 

 

これは、いろいろな組み合わせを試したくなります! このご時世で家飲みすることが増えましたが、さらに家飲みが捗ってしまうな~。皆さまもぜひ、美味しい国産レモンをゲットして作ってみてくださいね。

 

 

レモンザムライに聞く! レモンを使った美味しいおつまみレシピ

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 「レモンサワーを飲んでると恋しくなるのが美味しいオツマミなのですが、レモンを使ったとっておきのレシピも教えてほしいです!」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ 「そうですね、僕がオススメしているレモンは皮まで美味しく食べられる国産レモンですから、せっかくなので、レモンを果汁から皮まで丸々味わうことができるレシピを紹介しますね」

 

ジューシー爽やか!レモン唐揚げ

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材料(2人分)

  • 鳥もも肉・・・400g
  • レモンの皮・・・1/2個分
  • 片栗粉・・・適量
  • 以下A
  • 醤油・・・大さじ1
  • レモン汁・・・大さじ1
  • ごま油・・・適量
  • 生姜(すりおろし)・・・1かけ
  • にんにく(すりおろし)・・・1かけ

作り方

  1. 鳥もも肉を食べやすい大きさに切ったら、Aに漬けて30分ほど冷蔵庫におく。
  2. 1.に片栗粉をまぶし、余分な粉を落としたら、180度の油できつね色になるまで揚げる。
  3. 2.に削ったレモンの皮をたっぷりとかける。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 「あぁ、レモンの皮の香りが爽やかすぎる~。お肉もやわらかくてジューシーですね」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ ええ、お肉をレモン汁に漬け込むことによって、 お肉の保水性が高まり、やわらかくジューシーな食感になります」

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 皮まで香り高くて美味しい国産レモンですが、あまり流通していないように感じます。実際はどうなのでしょう?」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ 確かに、日本国内で現在流通しているレモンのシェア率は、外国産レモン8割、国産レモン2割という状況です。僕の目標はこのシェア率をひっくり返し、国産シェアを6割にすること。食べた瞬間に感じる、この美味しさの感動を多くの方に届けるため頑張ります」

 

 

美味しい国産レモンが全国で当たり前に食べられるようになる日も近い…!? 今後の展開に期待が高まりますね。

 

 

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 気持ちよくお酒を飲んだら、やっぱりほしくなるのがシメになる一品。レモンを使ったシメ飯も教えてください!」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ でしたら、夏に買って余った素麺をワンランク上の美味しさで楽しめる、簡単レシピを紹介しますね。そうめんのつけ汁にレモンの皮、果汁をたっぷりと入れるだけなのですが、これがとても爽やかで、飲んだ後のシメにもぴったりなんです!」

 

二日酔い予防にも! シメに食べたいレモン素麺

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材料(1人分)

  • 素麺・・・1束
  • オリーブオイル・・・適量
  • 輪切りレモン・・・2枚
  • サラダチキン(ほぐし) ・・・適量
  • 以下A
  • レモンの皮・・・1/4個分
  • めんつゆ(3倍希釈)・・・大さじ1
  • レモンの汁・・・1/2個分
  • 冷水・・・50cc

作り方

  1. 素麺は袋の表示どおりに茹でて、冷水でしめたら、よく水気を切ってオリーブオイルであえる。
  2. 器に1.を盛り付け、輪切りレモン、サラダチキンをのせたら、Aにつけていただく。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 うわっ、これも美味しい! 素麺、もう1束茹でればよかった~~~! 今回はトッピングにサラダチキンをのせましたが、ツナやしらすなども合いそう」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ レモンに含まれるビタミンCはアルコールの分解を助け、二日酔い症状の軽減にも効果が期待できる、という研究結果もあるんですよ」

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 美味しいだけでなく、二日酔いを軽くしてくれるかもしれないなんて、最高のシメじゃないですか!」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ なお、ビタミンCはレモン果汁に多く含まれていると思われているかもしれませんが、それは間違いです。レモン全体(100gの場合)で見ると、ビタミンCの34%はレモン果汁に含まれており、レモンの皮にも果汁と同量(34%)のビタミンCが含まれているそうです。

また、強い抗酸化力を持つ『レモンポリフェノール』も皮や白いワタの部分に含まれているので、レモンの栄養素をしっかり摂取するためには、皮の部分を上手に活用することが重要なんです」

 

 

レモンはとかく果汁ばかりが注目され、皮やワタは捨ててしまう場面が少なくありません。でも、捨てていた部分にも栄養素が豊富に含まれていると聞いたら、「どう料理すればレモン全体を美味しく味わえるだろう」といった具合に、食材としての捉え方が変わってきますよね。

 

 

大量消費にはこれ!簡単調味料「レモン塩麹」

そういえば、もうひとつ悩みがありました。レモンはなかなか量がさばけないのです。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 レモンって『1個だけ買うよりもお得だから』と、袋に複数個入ったものを買うことが多いのですが、実際は全部使いきれずに傷めてしまう…なんてことが起こりがちです。そういったときにオススメのレシピはありますか?」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ 「それでは、レモンを使った簡単調味料『レモン塩麹』を紹介しますね。一般的な塩麹と同様に肉や魚などを漬けこんでソテーにしたり、マヨネーズと合わせてソースを作り、食パンに塗って焼いたりすると絶品です! アボカドと合わせても美味しいと思います」

 

レモン塩麹

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材料(作りやすい量)

  • 以下A
  • 米麹・・・100g
  • 水・・・100cc
  • 塩・・・30g
  • 以下B
  • レモン・・・1個分の果汁
  • レモン・・・2個分の皮

作り方

  1. Aを合わせて発酵(常温で、暑い時期は1週間程度、寒い時期は2週間程度)させ、塩麹を作る。
  2. 塩麹が完成したらBを加えて、ミキサーにかけたら完成。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 めちゃくちゃ簡単! 塩麹の旨味にレモンの香りがプラスされて、どんな料理にも合いそう。私は厚切りの豚ロース肉に塗って焼いてみました!」

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お肉は柔らかくなり、旨味も強くなって、とても美味しかったです。作っておくといろいろな料理で活用できそう~!

 

レモンザムライが語る、国産レモン「瀬戸田レモン」の魅力

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 美味しいレシピをたくさん教えていただきありがとうございました! ところで、レモンザムライさんは瀬戸田レモン大使とのことですが、他の地域のレモンにはない、瀬戸田レモン(※)の魅力ってどんなところなのでしょうか?」

 

f:id:linakawase:20201007160850j:plainレモンザムライ 実は、レモンザムライを名乗るようになってからしばらくは『レモンの産地による違い』などに関する知識は一切ありませんでした。

そもそも私は『レモンサワーの主役って、やはりレモンだよな』と率直に思い始めたところからレモンザムライを名乗るようになったのですが、あるとき『広島のレモン農家さんが東京でワークショップを催す』との情報を聞きつけ、試しに参加してみたんです。そこで出会ったのが瀬戸田レモンでした。

レモンの知識も大して持っておらす、レモン農家さんとも会ったことのない私にとって、このワークショップはとても有意義な機会となり、ここで始まったご縁から瀬戸田レモンの卸販売業をさせていただくようになりました。

他の地域で作られたレモンも、もちろん美味しいのですが、僕にとって瀬戸田レモンは特別なご縁に導かれるようにして出会っただけに思い入れが強いんです。何より、その味わいは本当に格別で、感動的ですらあります」

 

※瀬戸田レモンとは

広島尾道市瀬戸田町で栽培・収穫されたレモンのこと。

瀬戸田町はしまなみ街道に浮かぶ「生口島」「高根島」の2つの島にまたがるように位置しており、レモン収穫量が日本一のエリア。そもそも広島県はレモンの生産量日本一を誇るが、その6割以上のシェアを瀬戸田産のレモンが占めている。

 

f:id:linakawase:20201007160824j:plain河瀬 「土地や人、素材との出会いで人生が変わるって素晴らしいことですね。瀬戸田レモン、私も探してみます! レモンザムライさん、ありがとうございました!」

 

 

これからの寒い季節に旬を迎えるレモン。爽やかで、芳潤で、美味しい果実を皆さんもぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

 

(編集:漆原直行)

 

著者プロフィール

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河瀬璃菜 りな助(料理研究家・フードコーディネーター)

1988年5月8日生まれ。福岡県出身。

レシピ開発、商品開発、食の企画やコンサル、レシピ動画制作、企画執筆、編集、イベントメディア出演、料理教室など食に纏わる様々な活動をしている。

SONY XperiaのCMやKIRIN本麒麟の広告への出演などその活動は多岐にわたる。

近年では地方を元気にするための6次化商品の開発に力を入れている。

著書「ジャーではじめるデトックスウォーター」「決定版節約冷凍レシピ」「発酵いらずのちぎりパン」 など

Blog: http://lineblog.me/linakawase/
Twitter:https://twitter.com/linasuke0508

豪徳寺の新店「OLD NEPAL」で、ネパール料理のカジャ(軽食)とカナ(ダルバード)を学ぶ旅

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ネパール料理のレシピ本を出したオーナーの店へ

最近、東京で世界の味を旅している。……あえて面倒くさい人風に書いてみたが、要するに都内にある外国の料理を出す店を巡っているのだ。

その道に旅慣れた友人Bさんの案内で、南インドと中国の料理をベースに東京の味を創作している「牧谿」、そして中国や台湾の珍しい田舎料理が食べられる「蓮香」の味を体験し、まだ馴染みのないスパイスや食べたことのない発酵食品を知る喜びを教えてもらった。

そして次にBさんから誘われたのが、小田急電鉄の豪徳寺駅、東急世田谷線の山下駅が最寄りの「OLD NEPAL」。その名の通り、伝統的なネパール料理の店である。ただしネパール人の店ではなく、ネパール料理に惚れ込んだ日本人によるお店。

f:id:tamaokiyutaka:20200827224546j:plain混雑を避けて、ディナータイム開始の18時に予約をしてもらった。

 

南インド、中国、台湾ときて、一気に北上してネパールへ。なんでも店のオーナーである本田遼氏の本『ダルバートとネパール料理』をBさんが読んで、このレシピの料理を店で食べてみたくなったそうだ。

本田氏の店は「ダルバート食堂」が大阪にあるのだが、その系列として「OLD NEPAL」が今年の7月、東京にオープンしたのである。

f:id:tamaokiyutaka:20200827162719j:plainオープンしたばかりのOLD NEPAL。

 

この話を聞いて驚いた。実は私も同じ本を買っていて、そのレシピにチャレンジする前に、正しい味を確認しようと思っていたところだったのだ。「これは奇遇ですね!」とお誘いに乗り、Bさん、そして共通の友人であるMさんと平日の夜に店を訪れた。

このエリアも私は初めて訪れたのだが、豪徳寺は招き猫発祥の地ともいわれていると、予約の2時間前に来て見学してきたというBさんとMさんから店の前で聞いた。なんだ、私も早く来て散歩すればよかったよ。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023248j:plain店内に置かれていた本田氏の本。Bさんは両方持っているそうだ。

 

料理と音楽

突然だが料理と音楽は似たところがある。レシピを譜面、食材を楽器、料理の写真をCDなどの音源に置き換えると、店で食べる料理はステージでのライブである。

本に載っているレシピと食材を使って写真通りの料理を作るのは、アマチュアによるコピーバンドの楽しみ方。ビートルズのスコアブックと似たような楽器を買ってきて、素人が集まって演奏した曲は、当然だが本物と全然違う。でも曲名としては同じ。

本田氏に店を任せられたプロの料理人が作るネパール料理は、一体どんな体験をさせてくれるのだろうか。ちなみに私は本を読んで脳内で料理するところまでは試したが、まだ実際には作っていない段階である。ベスト盤のCDを聞きこんで、初めてそのアーティストのライブに行くようなドキドキ感だ。

ちなみにネパール料理は新大久保で何度か食べたことはあるのだが、そこは日本に住むネパール人向けのディープな店で、すごくおいしいし刺激的な体験だったけれど、まさに外国語で歌う民族音楽のライブ。スパイスの使い方や調理方法がまったく理解できなくて、ちょっと悔しかったのだ。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023324j:plainオープンして間もない店独特の緊張感があるように感じた。奥の厨房にはネパールから来た方と思われるコックの姿も。

 

カジャとカナ

例の本によると、ネパール人の食事のとり方は、朝、昼、夜の三食を基本とする我々のスタイルとは異なり、豆のタルカリ(おかず的なもの)やモモ(肉まん)などの軽食である「カジャ」と、白いご飯でしっかり食べる「カナ」を交互に食べることが多いそうだ。

カナで食べる食事をダルバート(米を中心とした定食)と呼び、「朝のカジャ→昼のカナ→午後のカジャ→夜のカナ」といった流れで食事をとるのだとか。余談だがカジャとカナという単語は〈鍛冶屋の加奈ちゃん〉と覚えた。

あくまで軽食のカジャと、米をたっぷり食べるカナでは料理の内容は全く違う。どうせなら両方を食べたかったので、カジャとカナを食べられるディナーコース(税別2,700円)をBさんに予約してもらった。その際にダルバートのカレーを水牛に変更(追加料金あり)したらしい。

カジャとカナのディナーコースは、おやつを食べてすぐ夕飯を食べるみたいでおかしいのではとも思ったが、ネパールでは家に招かれたらまずカジャを食べつつ歓談し、最後にカナで締めるという流れはよくあるスタイルらしい(以下のリンク参照)。今回はそんなゆったりとした雰囲気を含めて、ネパール料理をたっぷりと味合わせていただこう。

 

ネパールビールと自家製クラフトコーラで乾杯

かなり広めに間隔が開いたテーブル席に案内していただき、気になるコースメニューを眺めつつドリンクを選ぶ。私とBさんはネパールビール、これから夜釣りに行くというMさんは運転があるからと自家製クラフトコーラを注文。このメンツでは一番お酒が好きなのに。

私もその釣りに誘われていたのだが、今宵はネパール料理に集中したかったのでそちらは断念させてもらった。それにしてもMさん、元気だな。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023352j:plainドリンクはラッシーやチヤ(ミルクティー)といったソフトドリンク、ビール、ワイン、スピリッツなど。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200823023450j:plainすっきりとして飲みやすいネパールビール。ラベルのマチャプチャレ山は神聖な山で登山が禁止されているため人類未踏峰だとか。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200823023503j:plainクラフトコーラは自家製のシロップを炭酸水と混ぜるスタイル。コーラって手作りできるのか。

 

定期的に変わるコースの内容をスタッフさんにしてもらったときに、追加料金となるがチョエラも水牛にできると勧めてもらったので、チョエラがなにかまったくわかっていないがそちらもお願いした。

水牛といえば高野秀行さんの本などに登場する憧れの食材、食べたことが無かったのでとても楽しみだ。

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8月上旬のセットリスト、いやコースメニュー。一応ネパール料理の勉強はしてきたけれど、半分くらいはチンプンカンプン。

 

前菜のカジャ三皿で知らない味を楽しむ

ディナーコースの前半は、前菜としてカジャからスタート。1品目は「バーラ」である。本に載っていたような気もするが、どんな料理だったかな。

お腹を空かせて待ち構えていると、銀色に輝く食器に琥珀色のスープが注がれていて、その中央にハンバーグ的なものが鎮座して運ばれてきた。見た目だけでいうと、マクドナルドのハンバーガーに挟まっている薄いハンバーグにコンソメスープを掛けたものが近い。

このハンバーグ(バーラ)は肉ではなく、豆(ウラドダル?)をペースト状にして作ったもので、スープの方に水牛とチキンが使われているそうだ。なんと肉のエキスで肉のような豆を食べるか。

f:id:tamaokiyutaka:20200823170310j:plainバーラは首都のカトマンドゥに王国を築いていたネワール族の料理らしいです。

 

スープは肉汁たっぷりで脂っ気もあるのだが、意外とあっさりしていて、しっかりと塩辛くてちょっと辛い。そして好ましい苦味のあるスパイスが、汁をたっぷりと吸ったバーラと合う。なるほど、これは知らない料理だ。

前菜の1品目といえばあっさりした料理が多いけれど、こういった胃袋を叩き起こすようなメニューもアリなのか。味の刺激はあるけれど、豆なので胃に重くはない。どの風味が水牛由来なのかは正直まだわからなかったが、水牛だから臭みがあるということはなかった。

 

続いては「スイカ サデコ」。サデコという調理方法は本に掲載されていなかったが、スタッフの方によると酸味のある和え物といった意味のようだ。デザートではなく料理としてのスイカであり、ミントのアチャールと穂紫蘇が添えられている。

本によるとアチャールとは、塩味、酸味、辛味を持つ箸休め的なもので、ネパール料理を特徴づける存在のようだ。日本でいう漬物に近い存在で、そのテクスチャー(食感)の個性もポイントらしい。このあたりは後ほどダルバートを食べて強く納得することとなる。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023553j:plainトマトっぽいけれどスイカ。

 

スプーンですくって食べてみると、ベースは知っている味のスイカなのに、しっかりと知らない国の味になっている。ミントがしっかり効いて、暑い日に嬉しい清涼感。和食でしか食べたことのない穂紫蘇の歯ごたえと風味も実に効果的だ。日本だからこそ食べられるサデコなのだろう。

「スイカだけを食べた一口目は知っているスイカだったけど、混ぜてから食べた二口目は知らない料理になっている!」と驚くMさん。

「確かに野菜としてのスイカを感じる。穂紫蘇がよいアクセント、ミントのアチャールで口が爽やかになりますね」と賛同するBさん。

 

続いてやってきた皿には、ポークから水牛に変えてもらった「チョエラ」、「葉にんにくのアチャール」、そして「チウラ」が一緒に盛られていた。

この水牛は北海道の牧場で育てられた、とても貴重な国産水牛と聞いて驚いた。国産水牛のミルクやチーズなら聞いたことがあるけれど、まさか水牛の肉も国産が存在したのか。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023614j:plainどの料理も器がかわいい。

 

チョエラは藁焼き風に直火で焼いた水牛をマリネしたもので、その肉は意外と柔らかい。レバーのような深みのある味で、辛さと苦さを合わせた独特のスパイス感と合う。水牛、うまいな。これは私が好きな肉かもしれない。味付け無しだとどんな感じなんだろう。

葉ニンニクのアチャールは予想と違って甘みのある味。米を蒸して潰して干したチウラは懐かしのポン菓子のように軽い。チョエラと同じ皿に盛られて出てきた意味がなんとなくわかる、一緒に食べたい組み合わせだ。

「水牛は予想に反してとても柔らかい。ラム肉を思わせるような癖があるけれど、噛みしめるほどに味わいが出て素直においしい。葉ニンニクのアチャールは大豆ミート入りでボリュームがある。香ばしいチウラは一袋買って帰って家でモリモリ食べたいな」とBさん。

「米を潰したパリパリのやつ、チラウだっけ。すごく好きだけど、これが好きっていうのも他の料理に失礼な気がするな。でも好き。水牛がちょっと辛いのでペトペトと衣みたいに纏わせるとちょうどいい」とMさん。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023637j:plainヒエ焼酎を炭酸割りでいただいた。どことなく雑さがあり、それが今日の料理に合う。ベトナムで飲んだネプモイが雰囲気は近いかな。いや全然違うかも。

 

ダルバードは味の万華鏡だった

前半戦のカジャを楽しんだら、後半戦はカナのダルバート。これは一気にワンプレートで登場する。

南インド料理のミールスという食事のスタイルに似ているが、こちらのほうが汁のないおかず(いわゆるカレー以外)の割合が多いかな。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023712j:plainご飯は量を選べる。これは普通サイズ。

 

真ん中にドンと構えるパラっとした長粒米を囲む色とりどりのおかず達。どれからどう食べようかと考えると手が止まる。これぞ本日のベストナイン。

日本人スタッフによるお店の利点は、わからないことがあれば日本語で聞けること。メニューと料理だけを出されても、私なんかはダルバードに馴染みが無さ過ぎて、どれがどれのことなのか、まったくわからなかったと思う。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023747j:plain左からチキンカレー、水牛カレー、ミックスダール。

 

まずはカレーのエリアをご飯と一緒に攻めてみる。左の「チキンカレー」は汁気が多いジョールタイプというやつだろうか。辛さがバーンとくる味付けではなく、素材の持ち味をシンプルなスパイスで引き立てた、私の口(日本人のというと分母が大きすぎるか)にすごく合う味。本に載っているレシピ通りに作れば、これと似たような味が私でも再現できるかな。

ランチの週替わりカレーだったので変更できた「水牛のカレー」は、初めてマトンを食べたときのような食べ慣れていない風味を感じるが、それがすごくおいしい。クセというか野性味というか、牛とはちょっと違う獣感。本来のメニューだった骨付き山羊肉のカレーも気になるな。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023803j:plain水牛のカレーとライスだけでお腹いっぱいになってみたい。ランチでまたこようかな。

 

「ミックスダール(挽き割豆のスープ風)」はベジ料理なのにコクがすごい。豆に対するイメージが変わるほどの濃厚さ。甘くないお汁粉が近いかも。日本人とネパール人、それぞれがイメージする豆料理の違いをわからせてくれる一品だ。

 

「タルカリ(野菜の炒め煮)」はジャガイモとナスだろうか。これもよく知っている食材なのに知らない味へと仕上がっている。

日本の肉じゃがのようにベーシックな料理だからこそ、ネパールでは野菜をこうやって食べるんだぞと、スパイスや調理手順の違いが表れていておもしろい。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023832j:plainジャガイモがホクホクしておいしい。

 

「サーグ(青菜の炒め煮)」の材料は小松菜だろうか。シャキシャキ感が心地よい。演歌歌手がたまにみせるプライベートの洋服姿みたいな、ちょっと意外性のある味だ。

「グンドゥルック サデコ」は無塩発酵させた高菜の乾物を使った和え物。本に登場する食材で一番気になっていたのが、このグンドゥルック。聞きたかった曲をライブでやってくれたようなうれしさだ。塩辛くない高菜の古漬けといった感じで、これが入ることでダルバート全体の味をグッと引き締める。

f:id:tamaokiyutaka:20200823170652j:plain右上がサーグ、左下がグンドゥルック サデコ。

 

歯ごたえがとても良い「大根のアチャール」。いわば大根の胡麻和えなのに、これもしっかりとネパール料理だ。その横のメニューにはないニンジンとキュウリのアチャールは、穏やかな味で舌を休ませてくれる。これらの副菜があってこそ、カレーとご飯を飽きずに食べられる。

f:id:tamaokiyutaka:20200823171004j:plain左下のメニューにないアチャールは、きっと日替わりなのだろう。

 

「乳酸発酵のアチャール」はトウガンなのだが、なんと本日一番驚きの味だった。トウガンなのに強烈に酸っぱいのである。外国人が梅干を食べたくらいのインパクトを感じる、しっかりとした酸味で目が覚めた。「すもも漬」というきついピンク色をした駄菓子に近い味かな。それに対してトマトのアチャールはフレッシュ感のあるさっぱり味という落差。

これもメニューには書かれていない金時草などの加賀野菜は、私が食べなれていない味なので、ネパールの野菜だよと言われたら信じるかも。このプレートに乗せられたメッセージはなんだろう。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023852j:plainトウガンのアチャール、すごいですよ。

 

これらの豊富なオカズを組み合わせて、中央のご飯を食べていく楽しさこそがダルバートの醍醐味。それぞれの味が個性的かつ予想外だし、それが組み合わされたり食べる順番が変わることで新たな味が生まれるため、一口たりとも油断ができない。ダルバートを真剣に食べると、カニを食べているときくらい無口になるということがわかった。

白いご飯をおかずで汚しながら(というと行儀が悪いけど)食べるのが好きな人にとって(それは私だ)、ダルバートという食事のスタイルは最高だ。これだけ食べても野菜があくまでメインなので、胃がそれほど重くない。効果的に使われている酸味の効果もあるのかな。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023928j:plainちょっと汚いですが、この状態がうまいんですよ。

 

「ダルバードを一目見た感想は、万華鏡のような美しさ。目にも美味しそうでした。お店の人から、まずは右上のダールを一口飲み、それからご飯になじませて他のおかずと混ぜ合わせて食べると教わって実践。塩味、酸味、旨味のバランスがよくて、おかずとカレーでご飯がどんどん進む。特に酸味が特徴的でおもしろい!」とBさん。一口ごとに変化する味も、まさに万華鏡でしたね。

「水牛が好き。好きな臭さ。ダルバートってカレーと漬物との組み合わせ方次第で、味が何通りにも変わる食べ物なのだと初めて知った。絵の具のパレットみたい。漬物は特に高菜のやつが好きです」とMさん。日本のカレーだと福神漬けとかラッキョウはあくまで添え物だけど(それはそれで大切ですが)、ダルバートのアチャールは助演として主役を支える存在であり名脇役でしたね。

 

デザートは未知の二択

最後にデザートを「ジュジュドウ」と「クルフィ」から選ぶ。名前だけだとまったくわからないが、結果的にフワフワとシャリシャリの二択だった。私とBさんはジュジュドウ、Mさんはクルフィを注文。

ジュジュドウはフワフワで酸味のあるレアチーズケーキのようなスウィーツで、固まった泡といった謎食感。ベースはヨーグルトだろうか。Bさん曰く「中央の巨峰が甘さを引き立てている。カルダモンの後味が爽やか」とのこと。

f:id:tamaokiyutaka:20200823024007j:plain今年食べたもので一番フワフワしている。

 

クルフィはローストマサラパウダーが掛かったアイスのようだ。注文したMさんによると「ココナッツとシナモンの味わいがするシャリシャリしたアイス。ちょっとあずきバーっぽいかも」だそうだ。

f:id:tamaokiyutaka:20200823023949j:plainこっちのシャリシャリも気になるね。

 

本のレシピを試した上で、また食べにこよう

こうしてカジャ3皿からカナのダルバード、そしてデザートというコースを無事完走。日本語がほとんど通じないネパール料理店に飛び込むのもいいけれど、ネパール料理の味に惚れ込んだ日本人オーナーの店だからこそ、提供される料理と情報はわかりやすく、学べることはとても多かった。

「お店は外観内装、共にとてもおしゃれ。でもお高くとまっている感じはなくて親しみやすい。私たちがコース料理を食べている間も夕ご飯にダルバートを食べに来たと思しき地元の人がひっきりなしに訪れていて、すでに街になじんでいる気配を感じた。料理ももちろん素晴らしかったが、個人的には日本ではなかなか見ることのできないネパール食器がどれも素敵で目も大満足!」とBさん。次はどこの国へ案内してくれるのかな。

「ごちそうさま!じゃあ今から釣りに行ってきます!」と元気なMさん。ええと、大漁を祈っています。

 

こうしてOLD NEPALで食べてその味を確認したところで、『ダルバートとネパール料理』に掲載されているレシピからいくつか実際に作って食べて、またその復習としてOLD NEPALに来てみよう。そうすれば食の解像度はぐっと上がり、今よりもっとネパールの味を楽しめるはずだ。

どうにかレベルを上げることができたら、今度はネパール人が経営する日本語が通じない店に行ったり、いつかは本場ネパールに行ってみようじゃないか。その前に大阪のダルバード食堂かな。こんな時代だけど、とりあえず夢だけは大きく膨らませておこう。

 

紹介したお店

OLD NEPAL

住所:東京都世田谷区豪徳寺1-42-11

TEL:03-6413-6618

 

著者プロフィール

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玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

ツイッター:@hyouhon
ホームページ:私的標本
製麺活動:趣味の製麺

玉置標本「みんなのごはん」過去記事一覧

食卓に魚を取り戻せ。魚食を伝える居酒屋が背負う「罪滅ぼし」の想い

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「おいしいものを、家でも食べたい!」

そう思ったとき、レシピ本を買わなくても、私たちはいろんなものから情報収拾できます。YouTubeもその一つ。動画を見るだけで簡単に料理のレシピを知ることのできる時代です。

 

そんな中でも「自宅で魚をおいしく食べる」ことに特化した発信をしているのが、東京・中野にある「宮城漁師酒場 魚谷屋」。「刺身を綺麗に盛り付けるコツ」、「殻付きの牡蠣を楽しむ」、「魚の保存=調理である」など、調理法から考え方まで、便利な情報を日々伝えています。

 


【魚谷ch.第21回】祝!20話突破記念のスペシャル総集編

 

「定番メニューはありません。そのときに心から良いと思う魚を漁師から仕入れて、お客さんに食べて欲しいから」。そう語る店主・魚谷さんはお店を開いてからの4年間、毎日のように厨房に立ち、魚に対する尋常ではない愛とこだわりによって、多くのお客を楽しませてきました。

 

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そんな魚谷屋も新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、3月下旬から9月上旬まで、店舗の営業をストップ。目の前のお客さんへ向けてきたサービス精神を、オンラインでの発信に注ぎ込むことになります。

 

お客さんに会えなかった6ヶ月間。魚谷さんは何を思い、オンラインでの取り組みを行なってきたのか? その背景には、魚谷さんの抱える「一次産業への罪滅ぼしがしたい」という深い動機と、「飲食店は一次産業のために何ができるのか?」という大きな問いがありました。

「休業中」の裏で過ごした、多忙な3ヵ月間

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——まずは、営業再開おめでとうございます。半年間もの長い間、お客さんに会えない日々を過ごしていたわけですが……その間はどのような気持ちで過ごしていましたか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainお客さんと会えない時間はやっぱり寂しかったですよ。元々、「お店を通して、多くの人に魚食文化を伝えたい」という思いではじめたお店でしたから。

ただその一方で、店を休業してからの3ヶ月間はとても忙しく過ごしていました。コロナ禍をきっかけにスタートした「YouTubeチャンネル」「鮮魚のEC販売」「お魚捌き教室」の3つの対応に追われていて。

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plain全て初めての取り組みだったので、もうスタッフもてんやわんや。休業中のお店は、ECの受発注センターか、YouTubeの撮影スタジオみたいになっていました。

——そんなに忙しかったんですね……! でも、外から見ていると「居酒屋がECや、YouTubeをやるってどういうこと?」という疑問があります。営業がストップする中で、「専門外」な活動をはじめた理由は何でしょう?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainただ休むのではなく、将来の種まきになるような何かがしたかったんです。「家にいる時間が増えたなら、魚を捌いて食べる時間もあるだろう」と考えて。それなら、家庭で作れる魚料理を伝えることには意味があるだろうと、YouTubeで「魚谷屋チャンネル」を開設しました。

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plainもちろん、多くの人にとって「魚を家で捌いて食べる」のはハードルが高いこともわかります。だからYouTubeチャンネルでは、魚の料理人だから話せる「ニッチななるほど感」を伝えることを動画作りのテーマにしました。

——ニッチななるほど感?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそう。例えば「包丁を研ぐ前に、実は研ぎ石を研ぐことが大事なんだよ」とか。僕が後輩の料理人に教えるような内容を、家庭向けにわかりやすく伝えることを意識して。結果的に、たくさんの人に見てもらえました。

 


【魚谷ch. 第1回】おうちで魚介を楽しもう!「包丁を研ぐ、その前に...。」

「研ぎ石」について気になった方は、こちらの動画をご覧ください。


——料理の細かい部分って、慣れていない人ほど「どう調べたらいいのか」もわからないですもんね。動画で教われるのはありがたい。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそれから続けていくうちに「このYouTubeと、生産者さんの商品(鮮魚)を紐づけられたら、インターネットで販売できるのでは?」という考えに繋がって。YouTube動画の第4回を公開する頃には、専用の「鮮魚ボックス」をECで販売できるように準備していました。

——確かにあの頃、「家の中で新しいことにチャレンジしよう」という風潮がありました。でも、どうして飲食店が鮮魚の販売までできたんでしょう?

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plainうちの経営母体は、宮城石巻市漁業支援の活動をしている「フィッシャーマン・ジャパン」という団体なんです。EC事業のノウハウを持ち、現地の漁師たちと強い結びつきを持っていた彼らのおかげで、すぐに動き出すことができました。
 

——飲食店とは別の事業、別の関係性を持った仲間がいたんですね。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain仲間たちがいたからこそ、漁師さんたちと連携がとりやすかったことはもちろん、経営の資金面でもサポートしてもらえたので、救われましたね。個人だけでコロナ禍を乗り越えようとしたらと思うと……ゾッとします。

——有事に助け合える関係性があってよかったですね……。取り組みの反応はいかがでしたか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain鮮魚販売のニュースは、新聞にも何紙も取り上げていただいて。多いときには1日に200件の注文がサイトに届くようになっていました。これだけで、店にとっても漁師にとっても大きな売り上げでした。

——コロナ禍では、新しい収益ルートは貴重ですね。同時に、鮮魚を購入したお客さんに向けた「オンラインお魚捌き教室」もスタートされました。反響はどうでしたか?

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plain海のある県からも、海のない県からも、全国から生徒が参加してくれました。ご高齢の方や、親御さんに見守られながら包丁を握るお子さんまで。


教室を開く中で感じたのは、やっぱり「魚を捌いて家で食べる」ことに「難しいでしょ?」って偏見がまだまだあるということ。でも、家庭の魚料理はポイントさえ抑えれば難しいものではないんですよ。魚の捌き方を伝えながら、少しずつ「実は難しくないよ」ということを伝えていきました。

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plain例えば、「レシピ次第で、魚は捨てるところなく食べられるんですよ」とか、「実は4〜5日の間冷凍した方が美味しく食べられる魚もあるんですよ」とか。


——4〜5日も魚を置いておいて、大丈夫なものなんですか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそもそも多くの人は水揚げ=魚が死んだ日、と思われていますが、そうではないんです。


——え! そうなんですか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain漁で獲られた魚は、陸に戻るまで漁船の上で何日も冷蔵されるもの。本来なら港での水揚げ・市場での仕入れ・スーパーへの流通、という工程がありますから、鮮魚ボックスは市場を通していない分、スーパーより新鮮な状態でご家庭に届くんです。
 

——なるほど〜!お店のコンセプトである「魚食体験を広める」活動を、オンラインを通して取り組まれていたんですね。

罪滅ぼしのために、「漁師たちのライブステージ」を作った

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店内には多彩な日本酒と、大漁旗を再利用して作られたインテリアが並ぶ

——9月上旬にお店の再営業を決断されました。きっかけはなんだったのでしょう?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain7月くらいになると、毎日のように店に電話がかかってきはじめたんです。「今日はお店開いてないの?」って。

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plain何ヶ月も直接会えていなかったお客様から、そういう声が上がるのは嬉しかったですね。ちょうど、7月には鮮魚販売の方も落ち着いてきていたし、店としてもそろそろ新しい風を入れないといけないと思っていたところで。

常連さんたちのガス抜きの意味合いも込めて、客席を減らした状態での営業再開を決めました。これまではアラカルト中心だったけれど、初めてのコース料理も用意して。魚谷屋の魚食を楽しみにしてくれる人たちに、最上のパフォーマンスを提供したいなと。

 

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その日に仕入れた魚たち

——最上のパフォーマンス……。そもそも、魚谷屋って飲食店としてもかなり特殊ですよね。「魚食文化を広めよう」と意気込んだり、漁師さんと深く繋がっている居酒屋はあまり見たことがないです。生産者さんたちを大切にするのには、なにか理由があるんですか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそうですね……。強いて言うならば、

 

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罪滅ぼしの意識があるのかもしれません。


——罪滅ぼし……?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain僕は前職の頃、市場から「美味しい食材を安く、たくさん仕入れる」仕事をしていました。でもその結果、回り回って、生産者さんを苦しめていたんだと気づいて。その罪滅ぼしを、店を通してできたらと思ったんです。

——その考えに至るきっかけはあったのでしょうか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain石巻の震災ボランティアに参加したことが大きかったですね。以前所属していた飲食店経営の会社を辞めて、いざ自分の店を持とうと考えた2011年に東日本大震災が起きて。

 

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神戸市東灘区出身の魚谷さん。阪神淡路大震災で多くのボランティアに救われた経験が、彼を石巻に向かわせた

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain数ヶ月間だけ手伝いに行くつもりが、気づけば4年間も石巻に住み、ボランティア活動をしていました。漁村の復興をお手伝いしていると、漁師さんが「お礼に牡蠣を食ってけ」って言うんですよ。その牡蠣が本当に美味しくて。

——うわあ、仲良くなった漁師さんからもらう牡蠣は格別の味でしょうね!

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainしかも話を聞いてみると、驚くほど安い値段で市場に売っている。いわゆる「浜値(※1)」というやつです。市場でひとつぶ数十円で売られている牡蠣も、東京のオイスターバーに行けばひとつぶ500円とかで売られている。

※1浜値:水揚げされた水産物の、港で取引される値段のこと

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそこで、そんな漁師さんたちから、自分は食材を安く安く買っていたんだ、と気づきいたんです。前職の会社では、従業員みんなの給料を上げてやることを第一に追い求めていて、その先の豊かさが見えていなかった。これまでの仕事に対する考えを、ひっくり返すような出会いでした。

——今まで見えていなかった、現場の人たちとの出会いだったんですね。従業員のためとはいえ、誰かに無理をさせていたことに気づいてしまったと。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそれで自然と「魚食文化を広める仕事をしよう」と考えるようになりました。魚を食べる文化が広がれば、一次産業に関心を持つ人も増える。そうしたら漁師さんたちの立場ももっと良くなるかもしれない。

その第一歩として、魚谷屋で提供する魚はすべて、漁師から直接仕入れてます。そうすれば、市場から買う時と同じ高い金額を漁師に支払うことで「あなたの獲った魚にはこれだけの価値があるんです」と伝えることができる。

——魚谷さんがおっしゃった「罪滅ぼし」とは、「漁師さんたちに適正な対価を支払う」ことだと。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainあとは、魚食文化とお魚の本当の価値を伝えたいという目的もあります。僕みたいな関西出身のおしゃべり好きは、やっぱり対面で人に伝えるのが向いてるだろうから、東京に店を出すことに決めました。


——それで魚谷屋ができたんですね!

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainええ。僕が石巻で体感した「漁師の魅力」を存分に伝えたくて、店のあり方を考えてきました。彼らと飲んでると、アテもいらないくらい面白いんですよ。海のこと、魚のこと、魚料理のこと、知らないことをたくさん教えてくれる。漁師の生き様は、もはや一つの地域資源だと思います。
 

——魚谷屋では、イベントもたくさん行なっているそうですね。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain漁師たちの魅力を、お客さんたちに直接届けたいと思って、漁師を店に招いてカウンターに立ってもらう「漁師ナイト」を何度も開催しました。「この土地で獲れた」を知ることはあっても、「この漁師が獲った」まで知って魚を食べることなんてないでしょう。顔を見せれば、「漁師のライブステージ」ができ上がるんです。

 

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漁師をお店に招待し、「漁師ナイト」を開催。

——そうやって生産者と消費者を繋げていると。魚谷屋に来るだけで、「海」や「漁師」、「魚食」という世界への解像度が上がるような気がします。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainそれは目指すところですね。そのためなら、僕は魚谷屋は“ハブ”でいいと思っています。魚谷屋はテーブル、カウンター合わせて53席あるんですが、反対に言えば同時に53人にしか魚食の魅力を伝えられない。

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plainでも、皆さんの食卓をお借りできたら、もっと多くの人に魚食文化を伝えられる。鮮魚のEC販売とお魚捌き教室で、魚谷屋は「家庭の食卓」にまで出張できました。コロナ渦中の取り組みとして見ていただくことも多いけれど、実は、お店でやっていることも、オンラインでやっていることも、目指すところは何も変わらないんですよ。

これからの外食産業の変化

——この数ヶ月で世界は大きく変化したと思います。魚谷屋として、これからの外食産業をどう考えていますか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainこの新型コロナ感染症は、これまで通りの外食産業は戻ってこないほどの大災害だと思っています。だからこそ、飲食店は「どうありたいか」を改めて考えて、コンセプトチェンジする柔軟さが必要になっていく。

 

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f:id:Huuuu:20201004215028p:plain一方で、魚谷屋は幸運にも大きなコンセプトチェンジを必要としませんでした。それは、「漁師と関係性を結ぶ」、「魚食文化の伝える」という変える必要のない信念があったから。店の営業がストップしたことで、信念を貫き通すために「オンライン」という戦い方を選んだんです。

——お店としてどうあるべきか、理念がはっきりしている店だからこそ、柔軟に対応できたんですね。魚谷屋は「漁師たちのために」という考えがあるからこそ、取り組みの幅も広がっている気がします。

f:id:Huuuu:20201004215028p:plain生産者について深掘りすれば、生産者と飲食店は互いに高め合う関係性になれると思っています。料理人の役割は、生産者から食材を受け取って、アレンジして、メッセージとしてお客さんに届けること。何も仕事場は、まな板の上だけじゃないんです。

——料理人に多くが求められる時代になっていくんですね。これからの飲食業界はどうなっていくと思いますか?

f:id:Huuuu:20201004215028p:plainこれから、外食はもっと特別なものになると思います。家族のために自炊をしている人、自分のために自炊をしている人が疲れてしまったとき、『外食』にはガス抜き以上の大きな期待が向けられる。そんな期待を超えるために、高いパフォーマンスを追求していくしかないですね。

 

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取材を終えて

お店にお客さんが来られない状況を逆手に取り、鮮魚のEC販売やお魚捌き教室など、「オンラインで魚食文化を伝える」ことに取り組んできた魚谷さん。

それは逆境における一瞬の閃きではなく、これまでの4年間と半年があったからこそ生まれた、自然なパフォーマンスの形。飲食店と生産者は、連携して互いに高め合えるということを実証してくれました。

インタビュー中に魚谷さんが口にした「罪滅ぼし」という言葉。「美味しい食材を安く、たくさん仕入れる」という、これまで当たり前のように享受してきた豊かさについて、私たち消費者も考えるときかもしれません。


魚谷屋が大切にする「魚食文化を伝えていく」というバトンは、ただ外食に行き、家で自炊をする私たち消費者さえも、受け取ることができるのです。

 

執筆:いぬいはやと
編集:Huuuu
写真:藤原慶 

取材協力

r.gnavi.co.jp

決してカレー屋ではない「夜のインド料理店」の楽しみ方を本気でプレゼンしてみる(1回目)

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タンドリーチキン

皆さん、インド料理といえばまず何を思い浮かべますか?

なんて質問するまでもないですね。インド料理といえばカレーです。

「インド料理店=カレーを食べに行くとこ=カレー屋さん」というのが、一般的な認識だと思います。

日本人はみんなカレーが好きです。でも、外食のカレーってお昼に食べることが圧倒的なのではないでしょうか。インドカレーも例外ではなく、どこのお店も、お昼はお客さんでいっぱいだけど夜はガラガラということが多いようです。

しかし! ここで僕はあえて主張したい。

 

「インド料理店には夜に行け!」

 

「え~」、という声が聞こえてきそうです。「夜にカレーはちょっと……。せっかく外食するならイタリアンとかフレンチとか焼き肉とか居酒屋とかがいいなぁ」

その意見もわかります。しかしここであえてもう1つ主張したいことがあります。

 

「インド料理店=カレー屋ではない!」

 

どういうことか。実は夜のインド料理店は、居酒屋やイタリアンにも負けない料理コンテンツの宝庫なのですが、日本ではインド料理=カレーのイメージが強すぎてそこに気付いていない人が圧倒的です。これはもったいない! というわけで、今回は「夜のインド料理店」の楽しみ方の一例をプレゼンして行こうと思います。

 

この記事でご紹介するのは銀座博品館の6階にあるインド料理店「カーン ケバブ&ビリヤニ」さんです。カーンは社長さんのお名前。写真左の方です。

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社長さん自身が料理人で「スパイスに関することはなんでもお手のもの」とのこと。頼もしいですね! そして店名の中に「ケバブ」と「ビリヤニ」。推し料理はこの2つってことですね。

インド料理でケバブとは、タンドール窯などを使って焼くスパイシーなグリル料理の総称。有名な「タンドリーチキン」はこのバリエーションの1つということなんです。今回はこのケバブを中心にメニューを組んでいこうと思います。

もう1つの推しが「ビリヤニ」。インドの長粒米とお肉をスパイスで炊き込んだ豪華な炊き込みご飯の1種です。

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こちらのお店のビリヤニ、店名に冠するだけあって絶品なんですが、今回は起用を見送ります。なぜならビリヤニはとてもボリュームがあってそれだけでお腹いっぱいになってしまうので。そしてこのビリヤニは実はランチメニューでも食べることができるので、また次の機会にということにしましょう。ビリヤニを外す代わりに、前菜をしっかり楽しみ、ケバブで盛り上げ、その後少しはカレーも食べ、デザートで締めようという魂胆です。メンバーはこの日のためにしっかりお腹を空かせて臨んだ食いしん坊の男2人。インド料理は1皿のボリュームがしっかりあるので2人でシェアしながら進めていきます。

 

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ナプキンが飾られた席のセッテイングでいきなりテンションが上がります。安くてボリュームたっぷりの料理がこんなビっとしたレストランの雰囲気で優雅に楽しめるのも、夜のインド料理店の魅力の1つです。本当だったら男2人ではなくデートで楽しみたいところですが、無い物ねだりは身を滅ぼすのでその気持ちはそっと心にしまいます。

 

【プレゼンメニュー】

 

 

【冷前菜】スターターの「ライタ」は少し残しておく

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ライタというのは簡単に言うと「スプーンで食べるヨーグルトサラダ」です。塩とクミンなどのスパイスで軽く味付けされたヨーグルトにトマト、きゅうり、玉ねぎなどの細かくカットされた野菜が入っています。上品なタルタルソースという趣もあるヘルシーな前菜はスターターにぴったりなのですが、ライタはあえてここでは全部食べきらず、少し残しておくのがコツ。この後続くスパイスの波状攻撃の合間に口中リセット要員としていい仕事をしてくれます。

 

【温前菜】繊細で豪快、「マッシュルームサグパコラ」がビールに合う

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大きなマッシュルームの間に鮮やかな緑のほうれん草、そして赤く色付けされた衣。ランチタイムのカレープレートではまず出会えない優美な世界がここにあります。

衣が小麦粉ではなくひよこ豆の粉というのがインド式フリッター「パコラ」の特徴で、これだけ厚くても油っぽさはなく、衣自体に単に香ばしいだけではない滋味深い味わいがあるのです。その衣の中でジューシーに蒸されたマッシュルームとほんのりスパイスが香る刻みほうれん草。繊細さと豪快さが同居する一品です。

 

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インド料理の前菜は揚げ物が重要な一角を占めています。ビール派の僕としてはこれがたいへん嬉しい。ビールに揚げ物、しかもそこにスパイスが効いているなんてもはやこの時点で天国ではないですか! 今日はインドビールと共にいただきます。インドのビールは基本スッキリ系が多く、スパイスを洗い流しながらまた次のスパイスを迎え撃つ、そんな楽しみ方ができます。

 

【グリル一品目】「ハリヤリチキンティッカ」はインド本来の複雑で立体的な味付け

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こちらのお店の推しであるケバブ系のメニュー、これだけズラリと並んだ中から選ぶのはタイヘンです。うれしい悲鳴です。が、今回はまず僕がこの店で個人的に一番好きな料理のひとつをチョイス。それがこのハリヤリチキンティッカです。チキンをミント、パクチー、スパイスなどで漬け込んでタンドール窯で焼いた料理。

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ハリヤリチキンティッカはインド料理店の定番メニューの一つなのですが、残念ながら日本はハーブの代わりにほうれん草ペーストが使われるレシピが定番化してしまっています。なのでこちらのお店のようにミントもパクチーもガンガンに効かせる本来のスタイルはとても貴重。パクチーのペーストはタンドールでしっかり火が入ることで青臭い刺激臭が飛び、甘美な芳香だけを残しています。そこにミントの爽やかさとスパイスの底味。複雑で立体的な味わいに蕩然となります。

 

【グリル二品目】世界水準の真の「タンドリーチキン」の旨味

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グリルもう一品を何にすべきか、ハゲ上がるほど悩みました。羊肉もいいし野菜系も捨てがたい……。しかし今回は初回のプレゼンという点も考慮しつつ、あえてのド定番に。

ああタンドリーチキンか、と思うかもしれませんが、こちらのタンドリーチキンは一味も二味も違います。タンドリーチキンというとインド料理店のランチのプレートにもよくおまけ的に乗っかってくる硬くてパサつき気味のやつとか、インド関係ない店でなぜか出てくるカレー味の焼き鳥みたいなやつを思い浮かべるかもしれませんが、これはまったく違います。

チキンは旨味を湛えたまましっとりと柔らかく、骨の際まで複雑なスパイスが浸透しています。ヨーグルトとレモン汁でしっかりと酸味を効かせて漬け込まれているのも特徴。そしてタンドール窯ならではの炭焼きの芳香。このタンドリーチキンを食べれば、タンドリーチキンという料理がなぜ世界中で有名な人気料理なのかがはっきりわかるんじゃないでしょうか。

そして僕はここでワインに切り替えました。このどっしりとしたチキンとスパイスの旨味を、しかと受け止めよ、赤ワイン!

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【カレー】インドカレーの真髄ここにあり!「ベイガンバルタ」と「ロティ」

ここまでで既にかなり満足なのですが、折角なのでカレーもお迎えしましょう。

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インド料理店のカレーというと、なんとなく誰もが「バターチキン」などのチキン系やキーマカレー、あるいはインドカレーが少し好きになり始めた人ならマトンカレーあたりをチョイスしがちですが、夜来たらその辺りは無視しましょう。なぜなら夜のインド料理店には昼には食べられないスペシャルなカレーがたくさんあるからです。

特にお勧めしたいのは野菜系のカレー。極論すればインドカレーの真髄はベジ(菜食)カレーにあり!です。チキンカレーやマトンカレーがおいしいのは言うなれば当たり前。野菜だけのカレーと聞くと「物足りない味なのでは」と心配になってしまうのが日本人の感情かもしれませんが、こちらのようなお店であれば絶対にそんなことはありません。はい、言い切った! スパイスの力をもってすれば野菜だけでこんな圧倒的な満足感が創出されるのか!というミラクルがそこにあります。

今回はそのミラクルがとても伝わりやすいカレーとして、焼きナスを刻んで玉ねぎやトマトと共に仕上げた「ベイガンバルタ」をチョイスしました。こちらのベイガンバルタにはそこに揚げたナスまで加わってさらにゴージャスです。そして野菜だけなのにすごいコク。これがまた赤ワインに抜群に合います。今回は中盤でしっかり肉料理のグリルを堪能したので、野菜によるこの別ベクトルのコクが満足度を最大値まで跳ね上げてくれるのです。

そしてこういうカレーにはやっぱりナンじゃなくてロティですね。ナンと違って甘くもオイリーでもなく、全粒粉と塩と水だけのキッパリしたリーンなおいしさが、こういう時にはぴったりです。

 

【ダメ押し】胃がパンクするのを覚悟で骨付きマトンシチュー「ニハリ」

などとさんざん野菜推しをしておきながら、我々はバカなので丼いっぱいに出てくる肉料理もさらに追加してしまいました……。

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ニハリは言うなれば骨付きマトンのシチューです。ほら、あれです、さんざん飲み食いした後にこってりした豚骨ラーメンで締めたくなるあの感じです。とろける羊肉と共に濃厚な汁をズズっと啜って、もはや豚骨ラーメンを超えて二郎です。

普通の人は真似してはいけません。胃がパンクします。ニハリもビリヤニ同様ランチメニューとしても楽しめますので、皆さんは日を分けてまたの機会にどうぞ。

 

デザート】スパイス満載料理の終着駅「グラブジャムン」と「マンゴークルフィ」

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どちらもインド料理の定番デザート。特にキャラが強いのがグラブジャムン。揚げたドーナツのシロップ漬けです。これを食べるのが初めての同行者に散々「甘いですよ」と脅しておいたのですが、同行者氏は「そんな甘くないですよ。むしろちょうどいい」とバクバク食べてます。満腹感とスパイスで完全におかしくなってます。でも、まさにこの感覚なんですよ! スパイス満載の料理から続くこの甘さが天国の終着駅。後はアツアツのチャイをすすりながら放心して腹をさするだけです。

 

という感じで、夜のインド料理店では昼とは全く別次元のこんな楽しみ方ができますよ、というお話でした。

そしてそれはフレンチやイタリアン和食などのコースともまた違う、新鮮な魅力に溢れています。皆さんもぜひ体験してみて下さい!

 

 

紹介したお店

カーン ケバブ ビリヤニ 銀座店
〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-11 博品館ビル
2,200円(平均)975円(ランチ平均)

 

著者プロフィール

イナダシュンスケ

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鹿児島県出身。京都大学卒業後、食品メーカー勤務などを経て円相フードサービスを設立。多ジャンルの飲食店を経営する傍ら、食文化に関する著書も手がける。最新刊に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社刊)

肉汁タンク、爆発に注意…!神戸元町「祥龍」の小籠包と水餃子が暴力的に旨すぎて大阪から毎週通ってしまう

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祥龍の小籠包と水餃子

こんにちは!札幌から大阪に引っ越して食い倒れライフを満喫している猫田しげるです。

 

さて最近、神戸元町にほぼ毎週通ってます。何のためにかと言うと、この店のためですよ。中華料理屋の「祥龍」。

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ザ・中華街ではなく元町商店街から1本山側の道にあります。入り口が細くて「何かと何かに挟まれた店」という印象しかありませんが、侮ったらアカン…!ここに1回入った人は気づいたら2度も3度も来ちゃってるという、驚異のヨーヨー現象を引き起こす店なんです。

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「キャベジンピリ辛炒め」もハルピン料理かと思ったら、「キャベツ炒め」と書きたかったらしい。内服液かっ

ここで食べられるのは店主の出身地であるハルピンの家庭料理。ハルピンってピンとこないかもしれませんが、まあ中国の最北端、内陸なので粉もんが美味しいです。ってざっくりし過ぎてるのでちゃんと説明すると、東北料理で煮込み系が多く、寒い(冬は−40℃にまで!)ので味付けも濃いめ。ロシア料理の影響も受けており、中国の中でも日本人が好む味と言えるでしょう。 

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カウンターだけの店なので予約がベターかも

既製品は皆無…手間ひまのカタマリみたいな店!

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で、この「祥龍」。ちょっと日本語のたどたどしい女性店主の池(チー)さんが一人で切り盛りしており、夜に夫の林(リン)さんが手伝いに来ます。メニューは30種ほどと比較的少なめですが、餃子も皮から、ラー油も自家製とどれもこれも全力で手作り。この店に既製品のものなどほぼ皆無です。

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夫婦は中学時代の同級生で、林さんは奥さんのことが大っ好きです

まずは自慢の水餃子480円(6個)

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水餃子って「どんなに美味しくても写真だとどの店も同じに見える料理」の一つで残念なのですが、もうこの水餃子、見た目から旨さが溢れてますよね。箸で掴むと逃げるほどチュルンチュルンです。透けて見えるブリッと弾力ありそうな中の具。「はよ出たい!」という肉汁の声すら聞こえてきそうです。

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食べる時注意!うまく肉汁を吸いながら食べないと、大事な肉汁様が皿にこぼれてしまいます。具は豚ミンチとニラ、長ネギ、ショウガとシンプルですが、豚はお店で挽いているので、既製のミンチより肉汁含有量が多い。まるで肉汁袋やー!「水餃子って飲み物だったのか」と今知りました。 

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そのままでも十分味がしますが、旨味のある自家製ラー油と高級黒酢でいただくとさらに至福。このラー油、売ってくれという声が絶えないそうです。激しく同意。

 

お店の看板料理の一つ、焼き小籠包!

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で、次は焼き小籠包910円(7個)。日本でも数年前にブームになって中華料理店や屋台で食べられるようになりましたが、ここのを味わったら、他のは小っさい肉まんを焼いただけだったのかな? とすら思います。

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ついでに茹でられているのは、シュウマイ(あとで出てきます)

ふっくらもっちりと仕上げた自家製皮の小籠包、なんとまずは茹でて肉汁を閉じ込めます。その後、たっぷりの油で揚げ焼き風に。こんがりと羽を付けて、表面カリッと皮むっちりと。

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この小籠包も、肉汁流出危惧種の一つです。無計画に食べると、じょばーっと流出事故が起こってしまうので要注意。こちらの具は豚ミンチとネギのみ。空気の入る隙がないほど肉汁を湛えております。肉汁タンクです。

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恥も外聞もなく皿に溢れた肉汁を飲みましょう

あーやばい。旨い料理があり過ぎる

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でもこれだけは紹介しときたいランキング上位の一つが「ジンギスカン」。北海道のものと全然違いますが、要するに羊肉の串焼きです。

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でっかいカタマリの羊肉をお店で串打ちし、卵液やスパイスの入ったタレに漬け込んで柔らかくします。数種のスパイスとクミンをまぶし、炭火でじっくり焼き上げます。

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実はこれ、脂身と赤身を交互に刺してあり、2つを同時に頬張ることでコリコリ感と脂のジュンワリ感を楽しめるっつー仕掛け!なんたるベストプランニング!ビール誘発危惧種!これで1串150円って…(((;゚Д゚)))

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酢豚にスペアリブ。ハルピン料理を連打

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で、こちら、何だと思いますか? なんとこれ、酢豚。ハルピンの酢豚は「鍋包肉」と言って、30分以上タレに漬け込んだ豚ヒレ肉に卵や片栗粉で作った衣をまぶして揚げ、酢と醤油などを効かせた甘酸っぱい餡を絡めます。豚肉はサックリ揚がっていて、普通の酢豚よりクリスピーな食感。出来たての旨さに泣けてきます。1,380円。

 

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こちらは、ハルピン風スペアリブ1,250円。豚バラ肉を煮て余分な脂を取り除き、4時間ほどかけて調理。肉柔らか~!パクチーと八角の香りでちょっとエキゾチックな味わい。

 

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ハルピン風ソーセージなんてのもあります。八角とか色々なスパイスで味付けた肉を自分で腸詰め。風に当てて乾燥させ、半生状態に。写真は突き出し的に出てきたものですが、通常は結構盛られて500円。って、安すぎでしょ!

中国の方って、「手間賃」という概念があんまりないんだなってよく思います。手間暇かけて作るの、当たり前なんですねえ。

 

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あと、これも写真撮って!と熱烈リコメンドされたのが、花椒を効かせた麻婆豆腐(っていう名前です)680円。「ウチのを食べたら驚くよ!」とグイグイ来るので「いやぁ、さすがに麻婆豆腐は大体想像つくわぁ…」と思って食べたら、ホントに何これ!と目ん玉飛び出ました。

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自家製ラー油でコクを出し、大きめに挽いた豚バラが肉々しい!花椒がプッチンプッチンと歯応え良く、自家製ラー油の旨みが猛烈にアタック!

 

リクエストすると、メニューにない料理が次々と

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こちら、メニューにはない胃袋炒め。ホルモンが苦手な私でも食べられる理由は、「もう洗って洗って洗って、匂いがなくなるまでキレイにしてるよ!」(池さん)。グニグニ感も気にならない、ホルモンとは思えないシャクっとした歯切れの良さ。我要白飯!

 

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こちらもメニューにはないシュウマイですが、猫田史上ナンバー3入りするぐらいの旨さです。皮が黄色いのは卵が入っているから。上にはカニミソ、具は豚肉とキクラゲとネギ。この肉肉しさ、まるで肉爆弾!

 

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こちらは定番のキムチチャーハン800円。自家製キムチでキレがある辛さ!

お気づきでしょうが、この店に通い詰めると、メニューにない料理ばっかり出てきます。実は池さんは韓国人とのハーフなので、自家製キムチを使ったキムパプとか冷麺も食べられるそうです。はい絶対旨いヤツ~!

 

あ、でも胃袋炒めもシュウマイも冷麺も、そのうちレギュラー入りするそうですよ。ゆくゆくはジャジャ麺なども始めるとか。

 

餃子、小籠包などは冷凍発送も可能! 

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で、水餃子、焼き餃子、小籠包、ハルピン風ソーセージはなんと冷凍で全国発送も可能だそうです。水餃子は近所の人も作ったそばから冷凍で買いに来るそう。

神戸に来なくても、家庭でこの味が楽しめるなんて…。物流ってすげえ。ってソコじゃないですね。

 

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こちらは干し豆腐炒め780円。ハルピン定番料理なんですって。地味な見た目なのに、箸が止まらない旨さ

書いてるそばからまた食べたくなってきたので、明日あたり肉汁の海に溺れて来ますかね。

※価格は全て税抜です 

 

紹介したお店

店名:祥龍

住所:兵庫県神戸市中央区元町通1-9-8

TEL:080-5789-7999

著者プロフィール

猫田しげる

デカ盛りと食べ放題を求めて津々浦々。おいしいものもおいしくないものも大好きです。

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