はじめまして。ぐるなびデータライブラリ編集部です。
ぐるなびデータライブラリ編集部では、ぐるなびのデータサービス「ぐるなびデータライブラリ」のデータを元に、トレンド予想やメニューの分析を行っております。
みなさんは、カレーはお好きでしょうか?私も大好きで、暇さえあればスパイスカレーを作っています。
昔から日本人の国民食として定着しているカレーですが、近年改めてカレー界隈が盛り上がっていることを感じている方も多いのではないでしょうか。
最近では、テレビのグルメ特集では常連メニューとなっていますし、夏にはカレー特集の雑誌が多く発売されています。
その中でも頻繁に登場するのが「スパイスカレー」。スパイスカレーが牽引する、この空前のカレーブームに裏付けはあるのか、スパイスカレーの流れを受け今後どんなカレーが流行るのかを、ぐるなび所有のデータで分析をしていきたいと思います。
スパイスカレーを筆頭に止まらないカレーブーム
では、まずどれくらい検索されているか集計データを見ていきます。
こちらのデータは、ぐるなびで独自集計している、特定期間に検索100,000回あたり何回検索されたかという指標で算出しています。
「カレー」の検索は4年で4.6倍増
こちらは「カレー」の検索データです。
一般的にカレーが食べたくなるといわれる夏の時期(ここでは7月~9月と定義)に少しずつ上昇を重ねながら、2016年7月と2020年7月を比較するとその数値はなんと4.6倍にもなっています。
「スパイスカレー」の検索は4年で35倍に増加!
では、「スパイスカレー」はどうでしょうか。比較のために「スープカレー」「キーマカレー」と一緒に見てみます。
2000年代はじめに流行したスープカレーですが、まだまだ根強い人気があり、やはり毎年夏に検索指数を伸ばしています。2019年まではスパイスカレーに圧倒的な差をつけていますが、2020年の夏、スパイスカレーが大きく上昇しついにスープカレーの検索数を上回ることになります。
スパイスカレーは、2016年7月の段階では低い数値であるものの、2020年春に急増し、4年間で実に35.8倍にもなっています。このタイミングでの増加の背景のひとつとして、おうち時間で凝ったカレーを作ってみる機会が増えたことも予想されます。
ここで補足をしておきたいのが、スープカレーも人気がなくなったというわけではなく、一般的に人気メニューとして定着したり足を運ぶお店が定まってくると、検索する機会が減り、指数が落ち着きを見せます。この傾向を逆に考えると、急上昇を見せているスパイスカレーは、強い関心を集めていることがわかります。
キーマカレーについては、あえて検索しなくてもよいほど定番メニューになっているので、低い数値ではあるのですが、緩やかな上昇をし続けています。カレーの定番メニューであるキーマカレーの上昇という事実には、やはりカレー界隈全体の盛り上がりを感じます。
カレーを取り扱う店舗数も約6倍に
実際の店舗での取り扱いはどうでしょうか。
こちらはカレー業態の店舗でのスパイスカレーの取り扱い指数のグラフです。
取扱指数は、1000店舗当たりで何店舗取り扱っているかを指数化したものです。
2016年7月には8だった取扱指数が、2017年後半にかけ急上昇、その後も上昇を続け、2020年7月には6.3倍の51まで上昇しています。
関西からブームが始まったといわれるスパイスカレーですが、大手のカレーチェーン店などでもメニューとして取り上げられるほどの人気メニューとして定着しつつあります。その現象は、このデータでも感じることができますね。
カレーのジャンルが細分化している
ここまでカレーおよびスパイスカレーのデータをメインに見てきましたが、ラーメンなどの国民的メニューがそうであるように、トレンドメニューは、ブームをきっかけに定着すると、さらにジャンルが細分化するともいわれています。どのようなジャンルが盛り上がっているのかを見ていきましょう。
マニアックなカレーが増えてきている
こちらは、カレー取扱数ランキングです。「定番」は2020年7月の取扱数の多いメニュー、「昨対比」は2019年7月と比較して上昇率が高いメニューとなります。
昨対比では、メニュー名を見ただけではどんなものがわからないようなマニアックなカレー(赤印)も多く登場しています。
インドカレーといえば、北インドのバターチキンカレーとナンというイメージが強いかと思いますが、最近では南インドのカレー含むそれ以外のカレーや、そこから派生してスリランカのカレー専門店なども見かけるようになりました。
では、どのようなジャンルがどのくらい伸びているのかを見てみましょう。メニュー名で「カレー」と掛け合わせて使用されているキーワードの指数をグラフにしています。
カレー×南インド・スリランカ・ネパール
まず、「南インド」「スリランカ」「ネパール」です。
取扱指数が一番高いのは「カレー×ネパール」でした。ネパールのカレーは、スープのようにさらっとしているのが特徴です。
伸び率が高いのは「カレー×スリランカ」。スリランカのカレーは、南インドのカレーと近いのですが、多彩なスパイスが使用されており、ご飯と混ぜて食べるのが特徴です。これらの特徴は関西で流行しているスパイスカレーと相性がよく、指数が伸びているのも納得の結果です。
いずれも1.6~2倍の上昇を見せており、バターチキンカレーに代表される北インド以外の地方への細分化の傾向を見ることができます。
カレー×和風だし・中華
次に、「和風だし」「中華」です。
「カレー×中華」は、2017年末~2019年半ばにかけ、一度落ち込みを見せているものの、最終的に2016年7月と比較すると、3.2倍もの数値になっています。インド流にアレンジされた中華で「インド中華」というジャンルがありますが、その逆でインドのカレーが中華風にアレンジされる現象というのは興味深いです。
「カレー×和風だし」は数値は中華より低いものの、少しずつ上昇し続け、2.3倍まで伸びています。関西のスパイスカレーは和風の出汁と掛け合わせたものも多く、この系統のカレーは関東にも進出していますので、その流れを受けた数値とも言えるでしょう。
このように、様々な系統のカレーが増加してきている傾向にあることがわかりました。
ぐるなびが注目しているカレー系メニュー
この流れを踏まえ、今後いったいどのようなカレーが流行るのでしょうか。
ぐるなびのデータサービス「ぐるなびデータライブラリ」では、独自のデータ解析ロジックを利用して、今後流行する可能性があるメニューを毎月5つ選出して、トレンド予報として紹介しています。
ここではその中のカレー系メニューを紹介します。
出汁カレー
味付けに出汁を使用したカレーの総称です。
明確な定義はありませんが、関西で数年前から進化し続けているスパイスカレーに多く見られる、和風の出汁とスパイスを組み合わせたシャバシャバとしたカレーを指すことが多いです。
昆布、鶏、いりこ、鰹、にぼしなど出汁に使用される素材は様々で、今後新たなカレーのジャンルとして確立し、ラーメンのように味が細分化していくのではと一部でいわれており、実際に2019年春頃から取扱店舗数が少しずつ増え続けています。
カレーパン
カレーが入ったパンの総称です。起源は諸説ありますが、1920年代に東京都のお店で生まれた洋食パンがルーツという説が有名です。
定番は揚げたタイプですが、焼きカレーパンや、黒毛和牛などカレーの具材にこだわったもの、オリジナルスパイスで煮込んだカレーを使ったものなど、進化系カレーパンといわれるジャンルが注目されています。
2019年7月に千葉県の有名ベーカリーが東京駅にカレーパン専門店をオープンすると、行列のできる人気店となりました。
中華カレー
中華の要素があるカレーの総称を指します。
町の中華料理店で出されているような、とろみが強く餡かけ状のタイプが主流ですが、最近の流れとして、近年のスパイスカレーブームの流れを受けたような、スパイスを使用した中華カレーも登場しています。
五香粉や八角、桂皮などの中華系スパイスを使用したものや、麻婆豆腐とミックスしたものなど、麻辣を効かせた痺れ系のものなど、様々な種類があり、中でも台湾の魯肉飯の要素を取り入れたスパイスカレー店は、連日行列の絶えない超人気店となっています。
カレーブームは、様々な国の要素を取り入れ細分化していく傾向が出始めていますが、中華カレーも次のトレンドとして一部で注目されています。
ポークビンダルー
インド西海岸ゴア地方のカレーで、ワインビネガーなどのお酢と様々なスパイスで漬け込んだ豚肉を玉ねぎやトマトなどと一緒に煮込んで作ります。酸味と辛味のあいまった爽やかな風味が特徴です。
インドでは宗教上の理由で豚肉を食べる人は少ないですが、ゴア地方のポルトガル植民地時代にポルトガルの豚肉料理を元に生み出されたといわれています。
近年のスパイスカレーブームの後押しもあり、大手高級スーパーでレトルトが販売され、少しずつ知名度を上げてきています。
こちらも、前章でご紹介したような、「南インド」「和風だし」「中華」周辺のメニューが予測データという裏付けによってピックアップされています。
取扱数が増え続け、バリエーションや進化の伸びしろもある中華カレーに注目
その中で編集部が特に注目しているのは「中華カレー」です。
カレーを取り扱っている中華料理店は1.9倍に増加している
カレーを取り扱う中華料理店は、毎年夏の時期を経て少しずつ上昇し、4年前と比較すると実に1.9倍もの数値となっています。
前章で述べたように、関西のスパイスカレーブームを発端にカレー業界が盛り上がりを見せはじめました。これまで海外のカレーというと、北インドのバターチキンカレーや、タイのグリーンカレーやマッサマンカレーなどが主流でしたが、カレーブームの後押しもあり、カレーのジャンルが細分化していき、南インド・ネパール・スリランカなど、様々な国のカレーが日本でも食べられるようになりました。
その流れでいくと、日本人にも馴染み深い中華をベースとした中華カレーが流行する可能性が十分にあるといえます。馴染みがある分、アレンジ展開や進化をさせやすく、お店ごとに豊富なバリエーション展開が期待できます。
元々中華とカレーは相性が良いと言われており、香港では独自のカレー文化が発達していますし、マカオではカレー味の料理が多くあり、カレーおでんは有名です。
また、中国では日本式の家庭風カレーが浸透しつつあるという興味深い事実もあります。
さらにインドでは中華料理をインド風にアレンジした「インド中華(インディアンチャイニーズ)」と呼ばれるジャンルもあり、ここからも相性の良さがわかります。
これらの事実から、中華(中国)とカレー(インド)の親和性の高さが感じられます。
スパイスを取り扱う中華料理店も増加している
こちらは中華業態のスパイスの取扱指数です。きれいに上昇し続けています。
スパイスを使った中華が注目されている流れもあり、中華カレーはこの傾向にフィットしているとも言えます。
編集部オススメ!中華カレーが食べられるお店
※最新のメニューについては店舗にご確認ください
横浜中華街北京飯店
牛ヒレ肉の中華カレーライス
テレビや雑誌でも多数紹介された有名な中華カレーです。飴色玉ねぎとスパイスをじっくり煮込むようなタイプではなく、炒め物のように中華鍋を使い、具材をカレー粉で炒めているのが特徴です。
横浜中華街廣東飯店
豚ばら肉入り特製カレー
曜日限定のランチメニューとして人気があったメニューで、柔らかく煮込んだ豚バラに、ジャガイモやにんじん、季節の野菜をたっぷり入れて仕上げた、ボリューム満点のオリジナル中華カレーです。
バルダイニングイッツ
シビ辛極まる四川風麻婆カレー
花椒と辣油でシビ辛に仕上げた麻婆豆腐を中華風のスパイスカレーと組み合わせたカレーです。
新橋2丁目 蘭苑飯店
チキンカレー
「白い麻婆豆腐」で有名な新橋の中華では、ぶつ切りの鶏肉や野菜がたっぷり入った、とろみがかった中華カレーがいただけます。
また、ぐるなび内のメディアでも過去に中華カレーのお店を紹介しています。
【まとめ】進化し続ける国民食カレー
データから読み取れるように、カレーブームは現在進行中であることがわかります。今後も勢いは衰えることなく、細分化やアレンジが加わり、進化を続けることが予想されます。
海外旅行がしづらい昨今、他国の料理を食べることで旅行気分を味わうという方も少なくないかと思います。様々なジャンルのカレーやそのデータを紹介させていただきましたが、その中でも編集部一押し、カレー界の新ジャンルといわれている中華カレーに挑戦してみてはいかがでしょうか。