大手の外資系IT企業オラクルに就職しながらも、40歳で独立起業の道を選び、人事コンサルティング会社を設立。さらにそこで留まらず、大好きなワインを扱う飲食店をオープンさせ、おまけにソムリエの資格も取得……普通の人なら人生に一度あるかないかの大きな挑戦を何度も成し遂げてきたパワフルな起業家・高橋敦子さん。
どうすれば高橋さんのようなスーパーマンになれるのか。
能力はともかく、メンタル面での秘密を少しでもゲットしたい! そして何よりおいしいワインが飲みたい! そんな欲望をだだ漏れにしつつ、高橋さんが経営するワイン居酒屋「赤坂あじる亭」を訪れました。
【もくじ】
- 副社長もしながら飲食店5つ経営って…!パワフルすぎるよ!
- 人事としてのキャリアを順調に積んだ日本CDC時代
- オラクル採用マネージャー時代に考えた "自分自身の"キャリア
- 「オンとオフ両方」で人の役に立ちたい⇒飲食店もやってしまおう
- 「できるできない」より先に「やれる方法探せばいいじゃん」
副社長もしながら飲食店5つ経営って…!パワフルすぎるよ!
ということで、あじる亭にやってきました! 左におわすお方がオーナーの高橋敦子さん!
そして、おいしいワインを飲みながら仕事ができるということで、すっかり舞い上がっている右のアホ面が僕です。
申し遅れました。わたくし、マルコと申します。
普段はカフェオレ・ライターという主にBL情報などを発信しているブログをやっております。ワインにすっかりハマってしまい、絶賛修行中であります。
さて、改めてご紹介しますが、高橋さんは現在、人事コンサルティング会社・セレブレインの代表取締役副社長としてバリバリ働きつつ、こちらのあじる亭を含む、5つの飲食店のオーナーも務めているという、控えめにいっても「僕の人生×10回分」くらいの濃密なキャリアを持つスーパーマンです。
実は高橋さん、40歳で飲食店をオープンするまでは大手外資系IT企業オラクルの社員であり、飲食業の経験もゼロだったんだとか。
すでに成功しているにもかかわらず、それまでの地位にとらわれず新天地で挑戦することのすごさについては、フリーランスとして独立しただけで"決断エネルギー"(人生で大きな決断をするときに消費するエネルギー。人によって上限値がぜんぜん違う)を使い切った僕としては、よーくわかります!
それではさっそく、おいしいワインとお料理をいただきながら、高橋さんのパワフルさの秘密を探っていきたいと思います。
っと、その前にお料理とワインの紹介から!
まずはサラダテロワール(980円)とフランス・ロワール地方のスパークリングワインです。
サラダテロワールは1皿でけっこうなボリュームがあり、何より野菜が色鮮やかでみずみずしく、シャッキシャキ!
居酒屋ではだいたい最初にサラダを頼む方が多いと思いますが、サラダの雰囲気で料理への期待値って変動しますよね。
あじる亭のサラダテロワールはこの後の料理が猛烈に楽しみになるクオリティなので、絶対に頼んでください!
おっと、いきなりサラダとワインに夢中になってしまいました。
僕が高橋さんについて知っているのは、オラクルを辞めて独立し、人事コンサルティング会社と飲食店を二足のわらじで経営しているということだけ(ざっくりはしょって書いてもすさまじい経歴だな……)。
そもそもオラクルに至るまでには、どんな歩みがあったのでしょう。
「実は最初に入った会社は商社だったんです。そこで3年ほど勤めた後、結婚を機に退職しました。そこから幸せな家庭生活を営むはずが、いろいろあって、また仕事人生を歩むことになったんです」
当時は男女雇用機会均等法が施行される前ということもあり、女性の就職や転職は現在よりも厳しい時代だったといいます。女性は就職した後、平均3年ほどで結婚退職が当たり前。5年も勤めれば、「永年勤続」としてハワイ旅行が会社から贈られるような状況だったのだとか。
そんな時代に僕みたいなフリーライターなんて、今よりももっとはみ出し者だったんでしょうね……おそろしい……。
そうした社会の空気もあり、仕事に復帰することを決めた高橋さんが入社したのは、外資系企業の日本CDC(現サイバネットシステム)でした。
これが、最初の大きな転機となります。
人事としてのキャリアを順調に積んだ日本CDC時代
「私がラッキーだったのは、商社時代に人事部にいたことです。というのも、日本CDCが募集していたのがたまたま人事のポジションで、さらに当時まだ珍しかった人材紹介会社に友人がいた縁もあり、入社することができたんです」
すでにこの時点で高橋さんが"持ってる"ことがわかりますが、ただまぁ僕もサラリーマンやってて、会社の規模はぜんぜん違いますけど、一度転職もしてますからね。ここまでなら……ここまでなら、僕もまだ戦えているといっていいのではないでしょうか!?
早くも酔いが回ってきたからか、謎の対抗意識を燃やしながら、次のお料理とワインをいただきます。
こちらはシャルキュトリー盛り合わせ(1人前600円、2人前から)とフランス・ロワール地方の白ワイン。シャルキュトリーというのは、要するに前菜の盛り合わせですね。パテやサラミ、生ハムなど定番のおつまみが並んでいますが……。
「うちのパテは一味違いますよ」
と高橋さんが自信満々で仰るので、どれどれと一口。
あー。なにこれ、おいしい!
パテの味が明らかに濃厚! これは……ふふ……いけないですね……仕事中なのにワインが勝手に喉に送り込まれますよ……!
思わずシャルキュトリーとワインの無限ループに突入しかけましたが、まだお話が途中なのを思い出しました。
ええと、日本CDCに入社されたんですよね。
「ええ。日本CDCには7年くらいいました。外資系なので、総合職とか一般職とかの区別もなく、仕事ができるかできないかしかなかった。そこで人事の仕事が楽しいなって思えるようになったんです」
転職先で頭角を現していく高橋さん。……そろそろこのあたりから僕の人生との差がつき始めたような気がしますが、それはともかく、日本CDCに7年勤めた後は?
「そのタイミングで、オラクルが日本に再上陸したんです。人事を探していると聞いて転職することに決めました。日本CDCが嫌になったわけではないんです。ただ、30歳になって子どももある程度手がかからなくなり、そういうタイミングでの話だったので、これはチャレンジするしかないなと」
きたー! オラクル!
オラクル採用マネージャー時代に考えた "自分自身の"キャリア
オラクルではどんなお仕事を任されていたんですか?
「オラクルでは人事部で採用マネージャーをしていました。オラクル日本法人は当時まだ20人くらいしかいなくて、たくさんの優秀な人材が入社してきました。自分が選考に関わって入社した社員の多くが、世の中で大きく活躍している姿を見るのはすばらしい体験でしたね」
オラクルに入ったくだりあたりから、僕が勝手に勝負していた高橋さんとの人生ゲームに大きな開きが出てきていましたが、このままあっという間に周回遅れにされそうです。
さて、そろそろお店をオープンする話になりそうですね……!
ここでメインディッシュをいただきます!(※コースで頼んでいたわけではなくて僕が勝手に言ってるだけです)
大人のハンバーグ(1150円)と、南仏の赤ワイン!
「このハンバーグは絶対に食べてほしい」という高橋さん。
っていっても、ハンバーグはハンバーグでしょ? まぁ、無難においしいでしょ。
どれどれ。
うっま。
「ほらね~」と喜ぶ高橋さん。
やばい、顔を作る余裕もなかった。
なんですか、何なんですか、このハンバーグ!
……実はこちら、豚肉100%のハンバーグ。めちゃくちゃジューシーで、肉汁が切った瞬間にあふれてきます。肉がみっちりしていて、満足感がすごい。ミミガーのコリコリした食感が良いアクセント。これは……なんていうか……うまいー!(ライター失格の語彙力)
すみません、すっかり「単に飲み食いしにきただけのヤツ」になってしまっていましたが、いよいよお話も佳境ですね。オラクルの後、なぜ独立してワイン居酒屋をオープンされたのか……。
ぶっちゃけ、そのままオラクルにいてもよかったわけですよね?
「もちろん、そのままいてもそれなりのポジションにいたと思います。でも採用マネージャーとして、たくさんの人の人生、キャリアを見てきて、思ったんです。私自身は何を目指してるんだっけと。子どもも順調に育っていくし、じゃあ自分の成長はどうなんだろう。冷静に考えると、私には何ができるんだろう。もっと人の役に立てないだろうか……」
(あっ、ここで僕と10周差ついたんだな)と悟った顔。
「それで、人事コンサルティング会社・セレブレインを設立したんです。ただ、もう一つ私にはやりたいことがありました。それが飲食業です」
「オンとオフ両方」で人の役に立ちたい⇒飲食店もやってしまおう
高橋さんが独立された頃、世の中はまさにITバブル時代。現在大企業となっている様々な会社が産声を上げていたイケイケの時代でした。
「若い子たちがどんどん独立して会社をやっていたのを見ていました。それはすごいことだと思いますけど、若いからやっぱり悩むこともあるじゃないですか。そういうときに、他の人と交流して話ができるサロンみたいな場が必要なんじゃないかと思ったんです。実際にちょっとやってみたりもしたんですけど、やっぱりお酒が入らないと盛り上がらなくて(笑)。私はワインが大好きだったので、それで始めたのがワインバーのセレブールです」
あれっ、セレブールって高橋さんの別のお店ですよね? そっちが先だったんですか。
「ワインサロンとして始めたので、セレブールは少し格式の高めなお店になってしまったんです。でも、もっとカジュアルにワインを楽しんでほしいと思って作ったのが、あじる亭なんです。最初は同じ場所で別の名前のお店をやったんですが、少ししてからあじる亭になりました」
はー……。いや、なんかもう、脱帽です。
ここで、最後のデザートメニュー、プリン!(250円)
これもお店の自信作らしく、高橋さんのイチオシとのこと。
……もう、こんなん絶対おいしいに決まってますよね! プリンは絶妙に甘く、さらにカラメルの苦味と合わさって味の情報量がめっちゃ多い! たぶん、極楽の果物ってこういう味がすると思う。
高橋さん曰く、「バニラビーンズ使いすぎてて経営者として心配になるレベル」らしいので、皆さんあじる亭に行ったらじゃんじゃん注文してください!
さて、そろそろ一番聞きたいことなんですが、高橋さんの「お店やりたいエネルギー」ってどこから来るものなんですか?
正直、僕だったら会社を一つ作っただけで力尽きてしまうわけですが……。
「それはですね、オラクルを辞めて独立したときに考えた"人の役に立ちたい"という思い、それも"オンとオフの両方で"という思いが原動力になっているんです」
オンとオフ?
「オンは人事コンサルティング会社です。でも人事制度の改革の結果が出るまでには、半年とか一年とか長い時間がかかります。一方でオフ、つまり飲食店はすぐにお客様の笑顔が見えて結果がわかりますよね。どちらかだけというのではなく、オンとオフの両方で人の役に立つことを目標にしたら、たまたまそうなったんです」
な、なるほど……僕、今のこの感じ、何に似てるかわかりましたよ。これ、一流アスリートの話を聞いているときの感覚ですわ。
レベルの違いすぎる話に、思わずワインをあおってしまう。
「オフでお客様に満足していただくために、とにかくプロフェッショナルであることにこだわりました。あじる亭のキャッチフレーズは『シェフとソムリエのいる居酒屋』です。
シェフも含め、全員がワインのプロであるためにソムリエの資格を取っていますし、言い出した私がやらないわけにもいかないので4年くらい前に取りました。飲み残したワインを持ち帰っていただけるよう、酒販免許も取っています。おかげさまで当店の飲み放題は5,000円ですが、ものすごくレベルが高いとお褒めの言葉もいただけるんです」
高橋さん。
「はい」
降参です。
「できるできない」より先に「やれる方法探せばいいじゃん」
……ということで、ワイン居酒屋「赤坂あじる亭」のオーナー、高橋敦子さんのお話を伺いました。
お話を聞いていて感じたのは、高橋さんがとにかく「まっすぐ」だということ。そして、「できるかどうかではなく、やりたいかどうか」で動いているということです。
いや、実際問題、「できるかどうか」もすごく重要なんですが、そればっかり考えていると、「会社作るの無理だろ」とか「会社に加えて飲食店までやるのは無理だろ」とか始める前から結論づけてしまうと思うんですよね。
そうじゃなく、「やりたいんだから、やれる方法を探せばいいじゃん」という思考でまず動けるかどうかなんだなぁと。
そうやって高橋さんが作り上げた、こだわりのワイン居酒屋「赤坂あじる亭」。
友だち同士でワイワイ楽しむお店としても、気になるあの人を誘う初デートのお店としても、ワインに興味がある人の入門のお店としても、あらゆるニーズにマッチするお店としておすすめなのです。
……最後に僕からアドバイスさせてもらうなら、お店に行ったらハンバーグとプリンは食べときなね。
紹介したお店
著者プロフィール
マルコ
ブログ「カフェオレ・ライター」を2001年より運営。
BL帯の魅力を発信しているうちにいつのまにかBL研究家に。
フリーライターとしても活動中。
ブログ:coffeewriter.com/
Twitter:@cafewriter