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なぜ元フレンチシェフは給食が食べられるお店「給食当番」をつくったのか?【東京別視点ガイド ぐるなび支店】

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御徒町駅から徒歩1分。「給食当番」は昔なつかしの給食が食べられるお店だ。

給食セットは750円から。平日のランチタイムは近隣オフィスで働く会社員でいっぱい。

 

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▲教室風パーティールームのドア

 

通常は1階席にとおされるが、スペシャル給食セット(1,500円)を2名以上で注文すると教室風パーティールームに案内される。

エレベーターに缶の灰皿・・・。

雑居ビル感あふれる外面だがドアをあけると別世界。

 

 

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黒板に学校机、イスにはランドセルがかけられている。まさに教室。20名まで収容可能だ。

 

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▲店長の息子さんが子どものころに描いた絵

 

どんぐりひろいと題された作文

「どんぐりがあんまいなかったけどどんぐりがつちのなかにどんぐりがはいっててびっくりしました」

と書かれている。

どんぐりが強調されている。大人が子ども風の文章を書いているのかと邪推したが、これ本物。店長の息子さんが子どものころに描いたイラストなんだとか。

 

 

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給食がくるまでの時間、戦闘態勢で待つ。

 

 

ミルメークにソフト麺!ボリューム満点の給食だ 

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まず牛乳がはこばれてきた。

そえられてる小袋はミルメークだ。

 

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ミルメークはバナナ、イチゴなどの味がついた粉。牛乳にいれればフルーツ牛乳に早変わりする。

わたしが住んでた江戸川区では一度もお目にかかったことがないので、過去の産物だとおもっていた。しかし、同行したカメラマンの地元・静岡ではちょくちょくでてきたそうだ。

給食あるあるは地域差、年代差がでるのでおもしろい。コーヒー牛乳のミルメークが給食に出た地域や世代もあるそうだ。

 

 

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▲スペシャル給食セット 1,500円

 

 

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店員さんと「いただきます!!」と手を合わせ、スペシャル給食セットをいただく。

ソフト麺に揚げパン、カレーシチュー、肉ダンゴスープ、クジラの竜田揚げとボリューム満点。

 

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クジラの竜田揚げ。

独特の匂い、噛みごたえのある食感が好きですね。

 

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さとう・きなこ・ココア・シナモン・カフェラテから選べる揚げパン

いままで食った揚げパンのなかで一番うまかった。しっとり柔らかな食感で温かい。味つけも甘くて最高だった。

 

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ソフト麺も給食にでたことがないので、はじめて食べた。こんなにくっつくものなんですね。

 

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ミートソースにつけていただく。

給食で食べたことがないのに「懐かしい・・・」とおもった。優しい味なんだな。 

 

 

最初のころは「もっとマズく作れ!」とクレームがきました

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▲給食当番のオーナーシェフ方伊儀(かたいぎ)さん。お話をうかがった

 

――このお店をはじめてどれぐらいたちますか。

 

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方伊儀さん:おかげさまで26年ですね。このお店をひらくまえはフランス料理を10年間修行してたんです。

 

 

――え?フレンチシェフがなぜ給食を?

 

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親父がここでペットショップやってたんですよ。改装して飲食店やるにしても、御徒町駅から10分くらいかかるでしょ。駅から遠いしフレンチやってもすぐ潰れそう、変わったことやんなきゃとかんがえたわけです。

そのころ給食食べられるところがなかったんですね。でも食べてみたいじゃないですか。それではじめたわけです。

 

はじめは「給食なんてフレンチにくらべれば簡単だ」とおもってたんですよ。でも、やってみると難しいし手間もかかる。

子どものころ、給食を捨てたら給食のおばちゃんが泣いてましたね。やってみると泣いてたわけもよくわかる。愛情もってやってたんだなって。

満足いく給食が作れるようになったのは15年目くらいからです。

 

 

――なにがそんなに難しいんですか?

 

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どうも給食に似た味にならなかったんです。

年配の人からは「こんなにうまくなかった」「もっとマズく作れ!」とクレームがはいりましたよ。

 

 

――うまくてクレームになるメシ屋、ここぐらいですよ!

 

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フランス料理だと小さい鍋で作るんですけど、でかい鍋で大量につくらないと給食の味にならないんです。

揚げパンの配合にしても資料がないから苦戦しました。元給食のおばちゃんや元学校の先生がおこしになるんです。そういうお客さんから「こう作ってたよ」と情報をもらって改良してました。

ソフト麺のミートソースも「野菜きらいの子のために玉ねぎを増やしてる」と聞いて、そのようにつくったら給食に近づきましたね。

 

 

――口頭で受け継いだんですね。

 

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むかしは気合いれてデザート作ってたんですけどやめました。力をいれすぎない。フレンチならバターいれたりフランベしたりひと手間くわえますし、そのほうがおいしいですけどあえてやらない。それぐらいがちょうどいいのかもしれませんね。

でも、むかしの思い出は美化されてるので、すこしだけ当時よりおいしくしてあげる。「やっぱうまかったなあ」っておもえるように。元カノみたいなものですよね、いいように記憶してますから。

 

――方伊儀さんが一番好きな給食メニューってなんだったんですか?

 

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一番好きだったのは揚げパン。甘いものがあんまり流通してなかったから、甘い揚げパンはみんな好きでしたね。生徒によっては熱が出ても揚げパンの日は登校してきましたから。校長が困っちゃって「揚げパンは休んでも家までとどける」という決まりをつくったぐらいですよ。

 

 

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▲壁に貼られた献立表は、息子さんが小学生のころのもの

 

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年々、メニューも増えてきてるんですよ。たとえばソフト麺。市販されてなかったので手にはいらなかったんです。店をやりはじめて2年目に「親父がソフト麺作ってたよ」というお客さんがきまして。交渉して工場を再稼働してもらったんです。

男子はソフト麺をくっついた状態でがつがつ食べちゃいますけど、女子は袋のまま4つに割ったりして食べてましたよね。

 

 

――再現のためにそこまでやるんですね!

 

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給食って国から配合が決められてるから、そこまでしないと給食と同じものが作れないんですね。給食にでてくる冷凍みかんも糖度チェックしてるから、ぜんぶ甘いですし。

 

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――どういうお客さんがおおいんですか?

 

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近くで働く会社員のかたとか。さっきのスペシャル給食セットは遠くからはるばる食べにこられたかたが頼みますね。最近は外国のかたもちらほらみえますよ。日本のマンガに給食でてくるから「これ、これ!」って感じで食べてます。

セーラー服を着てくるおじさんたちとか、赤ちゃんの人形をイスに座らせて給食を食べさせてあげるおじさんグループもいますね。

 

――この店ならではの客層!

 

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ははははははは、たのしいですよ!

オテルドゥミクニ(三國清三シェフの本格フレンチ店)が好きだったので味を追求したくもなるし、先輩たちがフレンチでがんばってるのをみるとちょっと羨ましくもなります。でも26年やってる人は少ないですし。

このお店だと「ありがとう」っていわれるんです。高級料理店だと「おいしかった」とはいわれるけど「ありがとう」「楽しかった」っていわれることはなくって、それが嬉しいですね。

 

 

 

取材したお店

r.gnavi.co.jp

 

 

作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)

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東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo by GMO

 

東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/matsuzawa_s


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