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日本一の川幅で町おこし!? 埼玉県鴻巣市の名物“川幅グルメ”はあらゆる料理がワイドだった

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筆者は今、埼玉鴻巣市の「御成橋」にいる。大雨の中わざわざやってきたのは、ここにある「日本一の風景」を拝むためだ。

 

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その日本一とは「川幅」である。鴻巣市を流れる荒川は、最大幅2537m。これは日本一の長さなのだという。御成橋のたもとには「川幅日本一」と誇らしげに刻まれている。

 

川幅日本一。そういわれても、そのすごさを実感するのはなかなか難しいかもしれない。日本一長い川が信濃川であることは有名だが、日本一の川幅が荒川の御成橋付近にあることを知る人はそう多くないだろう。「長さ」のメジャー感に比べ、「幅」というのはどこか地味である。

 

しかし、実際に眺めてみると、これがなかなか壮観なのである。

 

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▲増水時の荒川(普段の荒川の川幅は数十mだが、国土交通省が定めている川幅は河川敷を含めた堤防の間)。

 

川幅日本一のインパクトは、実際に現地を訪れてこそ分かる。ぜひみなさんも、生でその迫力を感じてほしい。

 

そして、その「幅」を存分に堪能したら、そのまま鴻巣のご当地グルメを味わいに行こう。

 

 

鴻巣名物「川幅グルメ」を知っているか?

 

鴻巣市には川幅日本一という郷土の特徴を活かした名物、その名も「川幅グルメ」がある。御成橋付近の川幅にちなみ、市内のさまざまな飲食店のさまざまな料理が幅広、つまりワイドなサイズになっている。たとえば、こんなのだ。

 

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▲「長木屋」の川幅うどん。詳細は後ほどお伝えします。

 

こうした「川幅グルメ」は約15年前、鴻巣市を流れる荒川が川幅日本一に認定されると同時期に地域おこしとしてスタートした試みで、今では「えっ?そんなものまで?」という意外なグルメまで、ワイドに展開している。今回、筆者も実際に食べ歩いてみたが、「川幅」という難しいお題に対し、独自の「解」を生み出している各飲食店の創意工夫に唸らされた。

 

いち職員の思い付きから埼玉ナンバーワンのご当地グルメに

 

それは後ほどレポートするとして、まずは仕掛け人の一人にお話を聞いてみよう。そもそも、なぜ川幅を名物グルメにしようと考えたのだろうか?

 

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▲「こうのす川幅グルメ会」会長の成澤さんに経緯を聞いた。

 

——そもそも、どういった経緯で川幅グルメは誕生したんですか?

 

成澤さん「きっかけは、鴻巣市に観光協会が作られたことです。鴻巣市は『花や人形の町』として知られ、他にも米や小麦といった農産物、花火大会など多くの観光資源があります。その魅力をもっと広く発信しようと2004年に観光協会が発足しました。私はそこで産業観光部会の特産品開発を任せられ、その時に川幅グルメというアイデアが生まれたんです」

 

——なるほど。では、成澤さんが考案されたんですか?

 

成澤さん「いえ、考案したのは市の職員ですね。特産品開発に悩んでいた頃、ちょうど国土交通省が鴻巣市を流れる荒川を日本一の川幅と認定したんです。きっと、ニュースを聞いた瞬間、『川幅×グルメ』の発想がひらめいたんでしょう。そこから川幅グルメで町おこしをすることになりました」

 

——偶然にも同時期だったんですね。最初に『川幅グルメ』のアイデアを聞いた時はどう思いましたか? やや強引ではないかという気もしますが……。

 

成澤さん「いや、私自身はすごくおもしろいアイデアだなと。でも、始めた当初は周りからさんざん言われましたよ。『川幅グルメって何なんだよ』って。でも、めげずに普及宣伝活動を続け、お店を地道に勧誘していった結果、今では30店舗が加盟してくれるようになりました。そのうちの一つ、川幅うどんは『第12回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦』で優勝も果たしています」

 

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▲川幅グルメが埼玉のB級ご当地グルメの頂点に立った瞬間

 

なお、最近では「川幅ネックレス」なるものまで登場するなど、鴻巣における川幅はグルメのみならず工芸品の分野にも展開されているという。まさに川幅が幅を利かせている状態だ。これからますます盛り上がりを見せそうな鴻巣の川幅シーン。その先駆けである川幅グルメを、さっそく食べ歩いてみることにしよう。

 

 

出汁が絡まりまくる、超ワイドなモチモチ麺!『川幅うどん

 

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はじめに訪れたのは、明治24年創業のうどん屋『長木屋』。北海道産小麦100%を使用した手打ちにこだわり、つゆは鹿児島県産の鰹節でとった天然ダシを使用。地元で人気の名店だ。

 

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店内は暖色系の光に照らされ、落ち着いた雰囲気。特に変わったところは見受けられない、正統派のうどん屋といったところだが……

 

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うどんの幅広さが、常軌を逸していた。うどんというか、もはや「壁」である。

これぞ埼玉B級ご当地グルメ王に輝いた「川幅うどん」だ。

 

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▲川幅彩うどん860円

 

ちなみに、かなりの重量。手がプルプルしてきたのでさっそくいただこう。

 

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あまりの巨大さに、すすることは難しい。箸でうどんをしっかり支えつつ、はむはむと食べ進める。すぐさま、口の中がモチモチのうどんでいっぱいになる。ものすごい満足感。食べ応えの化け物である。ちなみに、川幅うどんは5cm以上で公式に認定されるそうだが、長木屋のそれは8cm〜10cmもあるという。

 

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そして、これはただ奇をてらった料理ではなく、しっかりうまい。幅広のうどんにつゆが絡みつきまくり、鰹だしのうま味をたっぷりと口の中へ運んできてくれる。見た目はトリッキーだが、料理としての完成度が高い。

 

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▲三代目店主の田沼さん。自ら商工観光課に問い合わせ「川幅うどんを作りたい!!」と志願したとのこと。その後、試行錯誤を重ねて現在の遊び心ある「食べづらい幅のうどん」にたどり着いたそう

 

【紹介したお店】

手打ちうどん長木屋

TEL:048-541-0371

営業時間:11:30~15:00(L.O14:50)/17:00~20:00(L.O19:50)

定休日:木曜日

URL:https://r.gnavi.co.jp/murt4us30000/

 

 

川幅“2537m”にちなんだ味が楽しめる『川幅せんべい』

 

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続いて訪れたのは、昭和27年創業のお煎餅屋『おおとり』。これまた長い歴史を感じさせる、風格ある佇まいである。

 

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▲おおとりの川幅グルメはこれ。横10cm、縦15cmの「川幅せんべい」だ。

 

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▲全5種類セットは1000円

 

こちらが、お目当ての川幅せんべい。5種類の味は荒川の川幅「2537m」にちなんでいるという。2はニンニク、5はゴマ、3はミソ(ネギ味噌)、7は七味、そしてmは三河のたまり醤油という具合だ。しっかり練り込まれたコンセプトである。ただ広くしときゃいいんでしょ!などとおざなりに考えないところに、川幅に対する本気度がうかがえる。

 

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せんべいには100%国産米を使用。隣接する工房で職人が一枚ずつ焼き上げている。醤油味の川幅せんべいはそのインパクトある見た目に反して軽い食感で、ふわっと醤油の香ばしさが感じられた。なお、一番人気はネギ味噌だそうで、噛めば噛むほどネギの甘みと風味を楽しめる。

 

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▲「おおとり」の大塚さん。当初は川幅グルメがこんなに続くとは思わなかったそう。今では電話で注文が入るくらい地元の名物として浸透しているとのこと。

 

【紹介したお店】

おおとり

TEL:048-541-0373

営業時間:9:00~19:00

定休日:日曜日

 

 

特大マグロが柵のまま一本!『川幅鉄火丼』

 

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お花の卸市場『鴻巣フラワーセンター』の2階に店を構える『ご馳走Dokoro かねはち

』。魚屋が営む和食処で、市場直送の新鮮な食材が堪能できると地元でも評判のお店だ。

ここにも、驚きの川幅グルメが存在する。

 

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それがこれ。1日限定10食の『川幅鉄火丼』(1050円)。

 

 川幅要素はもちろん、巨大なマグロである。幅だけでなく厚みもすごいマグロが、中央にどーんと鎮座している。柵のままかぶりつくという、マグロ好きにとっての夢を叶えてくれる丼だ。

 

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それこそ、マグロを「すするように」食べることができる。これは楽しい! 川幅バンザイ!

なお、切り身にすると10~12切れぶんになるそうだ。それを一気に口へと放り込む背徳感。これは、自宅では恐れ多くてとてもできない。川幅グルメという免罪符があるからこそできる、特別な体験である。

 

また、魚屋直営店だけにマグロの味自体も言うまでもなくハイレベルだ。川幅グルメへの信頼感は、ここで確信に変わった。

 

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▲店主の清水さん。頼まれちゃ仕方ないか~という感じで始めた川幅鉄火丼だが、今ではこれを目当てに来るお客さんもいるそうで「お客さんのびっくりする顔を見るのが楽しいよ」とのこと。

 

【紹介したお店】

ご馳走Dokoro かねはち

TEL:048-595-3446

営業時間:11:00~14:00

定休日:土曜日

URL:https://r.gnavi.co.jp/nte1gge20000/

 

 

荒川を忠実に再現! あまりにジャンボな『川幅どらやき』

 

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最後は明治38年創業の『木村屋製菓舗』。鴻巣市を代表する和菓子店である。

こちらでは和菓子の定番、どら焼きを川幅グルメに仕立てたというが……。

 

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どら焼きというか、もはや瓦のようである。立派なお屋敷の屋根に似合いそうな「川幅どら焼き」(1800円)だ。サイズは荒川の最大幅の1万分の1にあたる26cm。表面の魚の焼印で川を再現している。

 

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通常サイズのどら焼きと比べると、そのやりすぎ感がよく分かる。普通のどら焼きの約12個分に相当し、重量は1.2kg。ものすごい迫力である。

 

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特に小顔でもない筆者の顔面も余裕で覆い尽くすこのサイズ。これをお客さんに出したら、絶対にウケるに違いない。ひとしきりウケをいただいたあとで、食べやすく切り分ければいい。

 

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ちなみに、中の栗は川の中の岩を表現したもの。ディテールが細かい。

 

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せっかくなので豪快にかぶりついた。仕事が終わらなさ過ぎてノートパソコンにかぶりついている人みたいにみえるが、どら焼きである。ちゃんとふんわりと柔らかい。これほどまでにかぶりつき甲斐のあるノートパソコン、いやどら焼きが他にあるだろうか。

なお、こちらの川幅どら焼きは全国発送も行っていて、お土産や贈呈品として重宝されているそうだ。

 

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▲店主の木村さん。今では川幅どら焼きを求めて遠方から訪れるお客さんもいるという。ただし、作るのに半日かかるため確実に手に入れたい場合は前もって連絡してほしいとのこと。

 

【紹介したお店】

木村屋製菓舗

TEL:048-541-0340

営業時間:8:30~18:30

定休日:水曜日

 

 

というわけで、じつに多種多様だった川幅グルメ。川幅というテーマに真剣に取り組み、しっかり人気商品に仕立てた店主たちの姿勢には感動すら覚えてしまった。同時に、町を盛り上げるための資源というのは探せばいくらでもあるものなのだなあと、しみじみと思う。

 

これからも川幅グルメが、幅広い人々に愛されることを願う。

 

【プロフィール】

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小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。

http://yajirobe.me/
Twitter:@onoberkon


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