こんにちは、badと申します。皆様ウイスキーはお好きですか。僕は大好きです。今回はウイスキーの話です。
自分はもともとニッカのウイスキーが大好きです。いつかニッカウヰスキーにみんなのごはんらしい取材はできないか、をずっと考えてました。
そうだ、実際に一般の消費者がお酒を飲むようなバーでお酒を飲みながら「中の人」に話を聞いてみる、っていう取材はどうだろう。中の人は普段どんなお酒を飲んでいるのか、最初の1杯は何を頼むのか、2杯目は…。考え出すと興味が尽きません。さっそく親会社であるアサヒグループホールディングスさんにダメ元でオファーをしたところ…
なんと快くOKがでました。しかもブレンダーさんにまで来ていただきました。え?マジで?アサヒビールさん、めっちゃ太っ腹じゃないですか?これがどのくらい凄いことかというと、チケット転売問題を取材しようとチケットぴあに取材を申し込んだらなぜかYAZAWAが来た、ぐらい凄いことなんです!マジで!!だってブレンダーさんとバーで一緒にお酒が飲める、ってあり得ないから!!しかも取材の舞台はニッカファンの聖地、ニッカブレンダーズバー!完全に役得!アサヒビールさん、ありがとう!!!今回の取材、全てのウイスキーファンに捧げます!
■ニッカウヰスキー株式会社 ブレンダー 二瓶晋 (写真左)
2008年:ニッカウヰスキー仙台工場でウイスキー原酒の製造及び品質管理
2011年:ニッカウヰスキー弘前工場でシードル他果実酒の製造及び品質管理
2014年:ニッカウヰスキーブレンダー室 現在に至る
■アサヒビール株式会社 マーケティング第三部 横山博彦 (写真右)
2001年:アサヒビール入社
2001年4月~2008年8月:神戸・大阪勤務、業務用の営業担当者として特約店様・酒販店様・料飲店様を担当
2008年9月~2014年8月:グループ会社フルハウス、業務用統括部で外食企業や料飲店様のサポートを担当
2014年9月~:マーケティング第三部で国産洋酒の販促を担当
そう来たか…!ニッカの中の人はバーで最初の1杯に何をたのむのか
「今日はニッカの中の人と一緒にお酒が飲めてとても嬉しいです。今日はよろしくお願いします。最初の1杯を注文していただいて、お酒を飲みながら、ざっくばらんに話しましょう」
「スペシャルのハイボールを」
「じゃ僕、ブラックニッカクリアのハイボールで」
「なるほど。そう来ますか。僕は竹鶴メモリアルブレンドのハイボールをお願いします。…以前から僕はずっと興味があったんです。ニッカのブレンダーさんやアサヒビールの社員さんが、プライベートでふだんお酒を飲むときに最初1杯を何たのむのか、とか、おつまみは何をたのむのか、っていうのにものすごく興味があって」
「そうですか」
「最近は将棋界がすごく盛り上がってるんですけど、将棋のプロ棋士が対局の日のお昼ごはんに何食べたのかっていうのがニュースになって、で将棋ファンもまたそのニュースけっこう熱心に読んで『そう来たか』とか言ってるんですよ(笑)。僕はウイスキーファンなんで、ニッカのブレンダーさんがバーで最初の1杯に何を注文するのか、っていうのにも同様にニュースバリューあると思ってます。…実はですね、僕は今日、事前に展開を予想してきました。お2人が最初の1杯に何を注文してくるのかを」
「すごい(笑)」
「僕の予想、けっこういいセンついてたと思ったんですけど…じゃ、開封しますね」
「二瓶さんの1杯目予想はブラックニッカブレンダーズスピリットのハイボール。なぜならブレンダーさんだから、っていうそのまんまの理由なんですけど(笑)。実際はスペシャルのハイボールということでした。スペシャルって何ですか?」
「ブラックニッカスペシャルですね。ブラックニッカブランドには4種類あるんです。1つはブラックニッカクリア。これが一番の主力アイテムです。2つ目はブラックニッカのリッチブレンド。フルーティーでシェリーの甘さが特徴です。3つ目がブラックニッカディープブレンド。濃厚で樽がしっかりしててピートの香りがあるっていう。最後の1つが、昭和40年に発売したブラックニッカスペシャルです」
「なるほど。今日、このニッカブレンダーズバーで、ニッカのブレンダーさんが注文する最初の1杯として、非常に“らしい”、絶妙に渋いチョイスだと思いました。では横山さんの最初の1杯の予想なんですけど、僕は最初ブラックニッカクリアのハイボールしかないって予想してたんです。なぜならニッカの広告でもめっちゃプッシュしてるから。このまま予想を変えなければドンピシャでした」
「ああ、本当ですね(笑)。でもバツで消してある」
「そうなんです。なんだかんだいって横山さんはアサヒビールの社員だから、アサヒの生ビールをたのむんじゃないかな、と直前に予想を変えてしまいました(笑)」
「なるほど(笑)。いやもちろん普段はスーパードライの生ビールも飲みますけど」
「ブラックニッカクリアのハイボール、最初の1杯に選ばれた理由を教えてください」
「そうですね。やはりブラックニッカクリアは非常にすっきりとした味わいが特徴で、1杯目にすっと飲んでもらうのにすごくいいと思ってるんですね。それで、あまり重すぎず、みたいなので最初の1杯にハイボールで飲もう、と思いました」
1日100サンプルの利き酒がブレンダーの舌を生む
「ではまずブレンダーの二瓶さんにいろいろお話をうかがいたいと思います。今日は柏からここ表参道のブレンダーズバーにいらっしゃったということですが」
「柏にブレンダー室っていう組織があるのでそこで仕事をしています。柏にいる5人のブレンダーがニッカのすべてのウイスキー製品のブレンドをしています」
「なるほど…。ウイスキーファンからすれば自分の舌と感覚だけで商品の味を決めてるブレンダーさんは神に等しい存在です。でもギリシャ神話だとゼウスのような万能の最高神もいれば、けっこう人間に近いような神様まで、一口に神様といってもいろんな神様がいます。失礼な話かもしれませんが、二瓶さんはまだ神様になりたての人間に近い方の神様かなと(笑)。上司の方とかいらっしゃるんですよね?」
「はい、ブレンダー室の中では私が一番若いです。35です」
「なるほど。どうやってブレンダーになったんですか?学校出てからずっとブレンダーになりたかった、とかですか」
「就職したのはアサヒビールです。院卒ですね。生物の勉強をしていました」
「というと、酵母とかそういう…『もやしもん』のイメージで合ってますか」
「僕の場合は具体的に言うと植物なんですけど、遺伝子組み換えとかやってました。でも大学時代からお酒は好きだったですね(笑)。ニッカに移ったのはアサヒビールに入社してから1年後です」
「そんなにすぐなんですか。でもニッカに移られてからいきなりブレンダーになったというわけでもないですよね」
「まず最初に宮城峡蒸溜所で約3年半仕事をしました。原酒の製造だったり、品質管理だったりですね。その後は、弘前にもニッカの工場があるんですけど、そこでシードルっていうリンゴのワインの製造と品質管理を約2年半してました。ブレンダーになったのはその後ですね」
「なるほど分かりました。ブレンダーになるのに7年くらいかかってるんですね。でもやっぱり舌が鋭敏じゃないとブレンダーになれないと思うんですけど…」
「そう思いますか?」
「え、そうでもない?」
「フツーです。フツーで大丈夫です(笑)」
「え、本当に普通で大丈夫なんですか?相当な鋭敏な舌の持ち主じゃないと分かんなくないですか」
「それはトレーニング次第ですね。私の舌はもともと普通なんですよ」
「なるほど、修行があるわけですね」
「まさに修行ですね(笑)ブレンダーになりたての頃と現在を比べたら明らかに味覚と嗅覚が鍛えられました」
「舌のトレーニングなんて我々しませんもんね。ちなみにどういうトレーニングをされるんですか?」
「ひたすら利き酒をするっていう…つまり官能評価ですね。工場で樽からサンプリングした数千ものサンプルをひとつずつ官能評価します。1日だいたい100本ぐらいのサンプルをやりますね。でそのサンプルに対して自分なりにコメントします。その原酒がどういう特徴持っているのかっていうのを、感じたことを言葉にしてコメントを残す、っていうのを1日100本ぐらいやりますね。あと、同じサンプルを他のブレンダーも官能評価してコメントします。そして他のブレンダーの感じ方と、自分の感じ方の擦り合わせを行います」
「ウイスキー好きなブロガーでも1日1本感想かけば相当マメな方ですけど、1日100本ですか…まさに修行ですね、ドラゴンボール的な修行というか…数をこなすのが大事、ってことでしょうか」
「そうですね。あとはブレンダーになってやったトレーニングといえば既存商品のブレンドをずっとやってました。市場に流通している商品を毎年毎年処方の見直しをします。分かりやすい話し方をすると、あそこに竹鶴21年があると思うんですけど、今のブレンドは1年経ったら竹鶴22年になってしまうではないですか。なので1年に1回戻すっていう作業を竹鶴に限らず市販されてる全ての製品で行います。ブレンドをゼロから見直すということです」
「例えば去年とは別の樽を使ってブラックニッカクリアを再現するとかそういうことですか」
「そうですね」
「なるほど…。そんなトレーニングを毎日やってたら舌も鋭敏になって当然という気がしてきます。二瓶さんみたいな普通の人が、過酷な修行をして、その結果として神の舌を持つに至る、ということは非常に夢があるな…と思いました」
われわれウイスキーファンは原酒不足にどう臨むのか
「ちょっと前の話なんですけど、ブラックニッカクリアに果物を漬けて果実酒みたいにして飲もう、ってキャンペーンやってましたよね。素朴な疑問なんですけど、これだけニッカのウイスキーが売れまくってて品薄で原酒も足りないっていう状況なのに、あえてブラックニッカクリアに果実を漬け込んで飲んでみよう、っていうキャンペーンやる必要あります?」
「そうですね、我々やっぱりブラックニッカってエントリー層の入り口として通じるなと思っていて、価格も手頃ですし、ウイスキーの味わいも非常に飲みやすいので、そういうところからブラックニッカを中心に力を入れているという取り組みなんですね」
「なるほど。それはすごい良く分かるんです。創業者の竹鶴さんも『安くて、良いウイスキーを』ってことですもんね」
「はい、そうなんです」
「分かるんですけど、やっぱりファンとしては昔ふつうに売っていた余市10年とか宮城峡10年をまた飲みたいな、って思うんですけどね…。今は終売で再販の目途もたってないんですよね」
「そうですね。今売ってるシングルモルトはノンエイジの余市と宮城峡で、そちらも数量がすくないような状況なんですけど…」
「(笑)ですよねー…。や、初心者層に届くように、っていう話はすごくよくわかるんです。最初に口にしたときの印象ってすごく大事ですもんね。1口目の印象がダメでウイスキーが苦手になった、とか、日本酒が苦手になった、っていう人も一定数いらっしゃると思うんで、そういう初心者向けに力を入れているというのはすごくよく分かるんです。でもブラックニッカクリアって4Lのペットボトルで売ってますよね。あれは明らかに初心者向けじゃないですよね。なのに4Lで安売りするっていうのはどうなんですか」
「そうですね、ブラックニッカって去年360万箱の販売量がありまして、もちろんエントリー層からヘビーユーザーまで、もちろん私もヘビーユーザーなんですけど、そういう色々なお客様がいるっていうことですね。これを楽しんでくれるお客様がいらっしゃって、でどうしても700mlでは足りない、っていうお客様もたくさんいらっしゃるので、そういう方のために4Lを設定しております」
「足りない…(笑)。いや、分かります、分かりますけど…。僕、すごいウナギ問題に関心あるんですね。僕はウナギ大好きです。大好きなんですけど、やっぱ絶滅の危機だって言われちゃうと、もう食べられないんですよ。好きすぎて、逆に。絶滅しちゃうと嫌だから。もうそんな軽々しく食えない。どうしても食べるんだったら、何年かに1回、何かのお祝いの席で、とかそんな感じですよ。ほんとに僕はウナギ断ちしてるんです。好きすぎて」
「へえ、そうですか」
「なので、最近はね、僕はニッカのウイスキーも同じことを感じ始めています。つまり、こんだけ原酒が不足してるのに、僕ごときが、飲んで良いのか、って。好きすぎて。逆に」
「いやいやいや、そこは飲んでいただいて大丈夫です(笑)」
「いやもちろんそうやって言うでしょうよ(笑)。話をもどしますけど、700mlで売るのは良いですよ。でもね、本当に4Lもいるのかっていう。それは酔いたいためのウイスキーであって、味わうためのウイスキーじゃないんじゃないか、味わうためのウイスキーなら700mlで十分じゃないですか?」
「あと飲食店さん需要もありますから。飲食店さんが扱ってるのは4Lが多いですから」
「そりゃ飲食店さんは4Lでしょうけど…や、分かりました。僕は本当にニッカが好きすぎて軽々しく飲めなくなってきてるんで、最近はスコッチとか飲むようになっちゃったんですけど…あ、そういえばニッカもスコットランドに蒸溜所もってましたよね」
「ベン・ネヴィスですか?でもそんなに数量が多いわけではないですし…」
「アサヒさんが扱ってるジャックダニエルやアーリータイムズを知ってらっしゃる方は多いと思いますが、ベン・ネヴィスを知ってる人はほぼいないですよ。ベン・ネヴィスをもっと推してくださいよ」
「ベン・ネヴィスはどちらかというとバーのようなお店をターゲットにして広げてるようなところがあります。アーリータイムズやジャックダニエルは一般の飲食店さんでハイボールで扱ってもらって、当然バーにもありますけど、まあそういうことでベン・ネヴィスの方はちょっと見えづらいっていうところがあるかもしれないですね。エイジング商品って少ないので…。全てが豊富にあるわけではないので、そういった点ではベン・ネヴィスはきっちりターゲットを絞ってバーとかを中心に販促しています」
「なるほど…よく分かりました。ニッカのウイスキーが原酒不足なんでニッカファンの僕としては積極的にスコッチとかスピリッツを飲もうっていう気持ちがあるんですよね」
ブレンダーはアルコール度数が30%になるように加水してテイスティングする
「というか僕ばっか飲んでてすでにもうお酒が無いんですけど…お二人ともぜんぜん飲んでないじゃないですか(笑)」
「いや、飲んでますよ(笑)」
「横山さんはまだ勤務中モードですよ、ぜんぜんお酒が進んでないですもん(笑)」
「2杯目どうぞ」
「いや、こんだけ原酒が無いんだ、貴重品なんだ、っていう話をしてるのにですね…(笑)。そうそう、ブレンダーズバーって、ニッカのいろんなブレンダーさんがつくったオリジナルブレンドのウイスキーを置いてるんですよね。これ、ブレンダーズバーでしか飲めないウイスキーなんで、これ目当てで来るファンも当然いると思うんです。現に僕もこの店に初めて来たきっかけはそうでしたからね。ちなみにいまメニューに載ってるブレンダーさんの中で現在ブレンダー室に所属してるブレンダーさんっていますか」
「佐久間が現在のチーフブレンダーですね」
「あ、ほんとだ。佐久間さんのプロフィールも載ってます。2012年からチーフブレンダー。なるほど。じゃあせっかくなんで佐久間チーフの作品を飲ませていただこうかな。ブレンダーズウイスキーのNO.6をストレートでお願いします。チーフのお酒をいただきます」
「ぜひ召し上がってください(笑)」
「(グラスをゆらし香りをかぐ)…すごい良いにおいが…(口に含む)…美味しい。美味しいんですけど、僕シロウトなんで、この美味しさを表現できないんですよね(笑)違いは分かるんですけど、その違いをうまく表現できないんです。語彙力なさ過ぎて(笑)もうライターとして致命的なんですけど…あ、二瓶さん、もし良かったらこれティスティングしてもらって感想をいただいてもいいですか」
「いいですよ、じゃあ香りだけ…(グラスをゆらし香りをかぐ)…これ、カフェグレーンの、甘い香ばしい感じと、あと…(メニューに目をやる)」
「ちょっと待って!二瓶さん、メニューに書いてあるNO.6の解説文を読んでません?」
「(笑)」
「ちょっと、解説文を読むのやめてください(笑)。修行したんでしょ?修行したんですよね?」
「いや、これは…(笑)」
「読んじゃだめですよ、閉じてください(笑)。いやーびっくりした、はいどうぞ、お願いします」
「…(グラスをゆらし香りをかぐ)…ベース自体にカフェグレーンの、甘くて香ばしいがあって…あとバニラのような甘さがあります。ただこれけっこうボディがしっかりしていて…」
「ボディ?ボディっていうのは、ワイン的なボディですか。ちょっと分かんないんですけど」
「うーん、お酒としての厚み、というか、力強さ、というか…」
「力強さ…うーん、そう、そういうね、“文学”が入ってくると分かんなくなってくるんですよね、僕みたいなシロウトは。そう、ウイスキー好きな方って、けっこうブログとかで味の感想とか書いているんですけど、ポエムすぎて分かんないんですよ、僕みたいな貧乏舌には」
「(笑)」
「ボディ…酒としての厚み…いやそれこそ修行で『これが厚いんだ!』って言われたら分かると思うんです。でも我々みたいな修行してない民にとっては、酒の厚みっていうのが分かんないんですよね…」
「…あとはシェリー樽由来の、レーズンのような香りだったり、プリンとか、カラメルだとか、そういうニュアンスもありますね」
「そこまで分かりますか。凄いですね…」
「ふだん水で割ったりしないですか」
「そうですね、いちど加水してしまうと元に戻せないですから、とりあえずストレートで飲んでから、徐々に加水する感じでふだんは飲んでるんですけども。ちなみにどういう飲み方がおすすめなんですか」
「似たような感じですね。最初はストレートで、このまま飲むんですけど…加水すると香りが“ひらく”の分かりますか。ストレートでは見えなかった香りが、広がって、見えてくるんですね。なので、飲みすすめて行く時に、少しずつ加水しながら、そういう香りの広がりも楽しむことができますね」
「なるほど。…ウイスキーファンにもけっこう面倒くさい方がいらっしゃって。あ、別に変な意味で言ってるんじゃないですよ。うるさいファンというか、うんちくがすごい好きなファンの度合いが高いとか、そういう意味で言っているんですけど。でウイスキーの面倒くさいファンいわく、ウイスキーの至高の飲み方はトワイスアップだ、トワイスアップが一番味が分かりやすい、っていう、トワイスアップ原理主義者がいるんです。なので、そうなのかな、とも思っちゃうんですけど、やっぱりそういうものですか」
「ブレンダー自身も、官能評価をするときは30%ぐらいに加水して香りのテイスティングをします」
「30%ですか?水7に対しウイスキー3で割る、ってことですか」
「違います。アルコール度数が30%です。ウイスキーっていろいろな度数ありますけど、アルコール度数が30%になるように加水するんです」
「へえ、知りませんでした。通常40%くらいでしたっけ」
「普通にボトリングされてるものは40%くらいですが、このブレンダーズウイスキーは55%です」
「なるほど…わかりました、あくまでアルコール度数を30%にするように調節して割るってことですね。へー。これウイスキーファンでも知らない方もけっこういると思うんでニュースバリューあると思います。これは良いことを聞きました。これはねえ……ドヤれます(笑)。この記事を読んだ方は、明日からドヤれる!いやすいません、僕も実はおもいっきり面倒くさいファンなんです、すみません」
「(笑)」
プライベートでは日本酒もワインも、チューハイもレモンサワーも飲む
「二瓶さんってプライベートではどんなお酒を飲んでるんですか」
「自宅でですか?本当に様々な酒を飲みますね。ビールも飲みますし、家でハイボールも自分でつくりますし、場合によっては日本酒も飲みますし、ワインも飲むし、チューハイ、レモンサワーも飲みますね」
「なるほど、じゃあ本当にお酒自体が好きなんですね。いろんなお酒が」
「その通りです」
「ニッカやアサヒ以外の酒も当然飲まれますよね?」
「あのー…」
「いまちょっと緊張してますよね(笑)? 大丈夫です!これ仕事終わってふらっと寄ったバーでの飲み会の体なんで。読者の皆さんもそういうところ聞きたいと思います。というかですね、逆に『アサヒやニッカの酒しか飲みません』なんて言おうものならみんな信用しないですよ!だってあり得ないですもん。特にお酒なんて嗜好品なんで…僕だってそうですけど、新商品出たら、サントリーだろうがキリンだろうがサッポロだろうが、とりあえず手に取って飲んでみたい、ってなりますから!それが普通ですから」
「実際その通りですよ。原則はスーパードライだしブラックニッカですけど…ただ自分の視野を広げるために、口に入れることは確実にあります(笑)」
「…まだ何かに遠慮してますね(笑)。でもまあいいや、分かりました。あの、ぶっちゃけ、サントリーのウイスキーのことどう思ってますか?」
「あのー……ちゃんとブランディングできていて、良い酒だな、って思います」
「それは僕もすごい思います。…二瓶さんがものすごく慎重に言葉を選んで地雷を踏まないようにしゃべってるので(笑)、僕が勝手にサントリー褒めますけど、いやほんとサントリーはイメージづくり上手ですよね。というかサントリーのお酒って全体的にビンが工芸品のように凝ってて美しくてめっちゃインスタ映えするんですよね。角からしてすごい凝ってます。そこへいくと、角よりだいぶ高級酒であるニッカの竹鶴とか、カフェジンとか、高い酒の割には本当に地味だな、って…」
「(笑)」
「いや、誤解のないように言いますけど、俺はニッカのそういうところが好きなんです!中身に力を入れてる。サントリーのビンは加工賃にぜったいお金がかかりますから、もしサントリーとニッカのウイスキーが同じぐらいの値段なら、ニッカのウイスキーの方が間違いなく中身に金をかけてるんです(※筆者個人の感想です)。実際のところは分かんないですよ(笑)。分かんないですけど、でもニッカはもともと質実剛健っぽいイメージで、僕はそういうところが好きなんです」
そう来るか…!中の人はバーの2杯目で何を頼むのか
「すいません僕ばっかしゃべってますね、まだ皆さん酒が進んでないんでテンションの温度差を感じます…(笑)。そろそろ2杯目を飲んでください」
「ではカフェジンのジントニックで」
「え、てっきりウイスキーで来るもんだと思ってたので意外です。二瓶さんがカフェジンのジントニックを頼んだ意図を教えてください」
「美味しいから…美味しいからです(笑)」
「そうですよね、さっぱりしますよね。僕もカフェジンを買って飲んだことありますが、カフェジンのジントニック大好きです」
「あとインスタ映えするかなと思って」
「普通ですね(笑)。たしかにカフェジンのボトルはおしゃれというか可愛い感じですけども…僕、ブレンダーさんのこと、神様だと思ってましたし神様のつもりで接してましたけど、普通ですね(笑)。ありがとうございます。本当に楽しいな…」
「私はスーパーニッカのハイボールでお願いします」
「へえ、かなり渋いチョイスですね。何でスーパーニッカを選ばれたんですか」
「もう少し…ブレンダーさんの前で言うのは何ですけども、もうちょっとビター感とかがハイボールにすると出てくるので、さっきよりちょっと味わいが出てくるので、そうすると2杯目にちょうどいいのかなと思います」
実際に「30%に加水」して飲んでみたら…
「すみません、お願いがあるんですが、今から佐久間チーフのNO.6ストレートをお勧めの30%に割っていただけますか」
「少しずつこうやって水を加えるのがおすすめですよ(ストレートにちょっと水を加える)…とりあえずこのぐらいで。そうすると香りの印象が全然違うので。より華やかな香りになってると思います。バナナとか、洋梨とか、りんごとか」
「りんご…確かにさっきより飲みやすくなって、さっきはアルコール臭がきつかったですけど、さっきはわからなかった香りも出てきたような気がします。気がしますけど、バナナにリンゴですか…」
「りんごとか洋梨とか…」
「洋梨?本当ですか…」
「そういう香りが立ってます」
「立ってきてます?ごめんなさい、佐久間チーフに失礼なことを言ってしまいました(笑)。美味しいんです、美味しいんですけど、語彙力がないので表現できないんですよね…」
「飲んだ後ちょっと置いといて 香りとかかいでもらうとわかると思います」
「なるほど時間をおくと香りもたちのぼってくるということですね」
「さっきと同じぐらいの水を加えますね(さらに加水する)…こうやって段階的にやっていく感じですね。(加水したNO.6の香りをかぐ)より甘さがふわっと広がった感じはありますよね」
「本当ですか、ちょっと待ってください…それは香りの段階でそうですか」
「はい、バニラのようなバニラの甘い感じが」
「確かにさっきのきつい香りがなくなってきたのは分かるんですけど…(香りをかぐ)…でも言われてみれば甘くなりましたね確かに。甘いバニラ?すごい先入観で今飲んでますんで違いは分かりますけど…語彙力がないので表現しづらいんですけども、すごく美味しいです(笑)。すいませんこんな感想で」
「(笑)」
「でもセミナーでお客様と一緒にテイスティングするんですけども、やっぱりそういう感じですよ(笑)。香りを感じているけれど具体的にどう表現すれば良いか分からないというお客様に対して、一緒にグラスを回しながらテイスティングして、自分なりのその時感じた印象を説明すると、お客様も『うんうん』てなります」
ウイスキーの販売戦略担当者に社割などなかった(!)
「横山さんは普段どんなお酒を飲むんですか」
「もちろんビールは飲みますし、スーパードライがやっぱり好きですね」
「なるほど。でもアサヒのスーパードライ以外も飲むんですよね」
「そうですね、他社さんでも新商品出たら飲んでみますし…」
「やっぱりライバルの動向とか気になりますもんね」
「それもありますし、やっぱり珍しいものを見たら、二瓶さんもそうでしょうけど、お酒が好きな人が多いので、それは当然飲みたくなりますし、味を試してみたいという気分になります」
「やっぱりそうですよね。僕もニッカファンである以前にただの酒好きなんで、すごく共感します」
「いろいろ飲みますけども、ただやっぱり飲み慣れてる自分の好みの酒に戻ってきますね。あともちろんウイスキーが家に並んでるので、今日はこれ、今日はこれ、って感じでその日の気分で飲んでますね」
「家に並んでるウイスキー、具体例を挙げてもらってもいいですか(笑)? 別にニッカのウイスキーばっかりがあるわけでもないですよね」
「もちろん輸入洋酒もありますけど」
「輸入洋酒… うまい逃げ方だなと思いました(笑)」
「あはは。アサヒが輸入している商品もたくさんあるので」
「社員割引みたいなのがあるわけですか」
「我々はないですね」
「え、ないんですか!店の価格で買ってるってことですか」
「ないんですよ。だから本当に我々も皆さんと一緒にお店で同じ価格で買って家で飲んでます。ふだんはブラックニッカクリアだったり、高いお酒をゆっくり飲んでみたりだとか、その時の気分に合わせて飲んでますね」
ブレンダーになって最初に作った「ブラックニッカディープブレンド」
「二瓶さんがブレンダーとして担当したウイスキーってありますか?」
「ブレンダーになって最初につくったのがブラックニッカディープブレンドです」
「それはマーケティングの方からそういう商品が欲しいという話があったわけですか」
「そうですね。ブラックニッカにはクリアとリッチブレンドっていう商品があります。ブラックニッカクリアはスッキリとした味わいで非常に飲みやすいです。でももう少しシェリーの甘い香りを感じられるものを出したいということでリッチブレンドというのを出したんですね。で、今度はもう少し樽感がしっかりした濃厚で…」
「樽感」
「ウイスキーにはそういう言葉があるんです(笑)。オークの甘い香りやバニラのような甘い香りのことです」
「すいませんまたポエムかと反応するところでした(笑)。なるほど勉強になります、樽感ですね」
「ロックで飲んでもゆっくりと味わいが広がると言うか、そういうものが求められているというので、ディープブレンドを開発してもらったっていうことです」
「これはロックで飲むのがおすすめです。時間と共に水で割ってるのと同じようになりますので。氷が溶けていっても逆に香りがまた広がっていきます」
「ディープブレンドはアルコール度数が45度あります。ブラックニッカクリアは37度なので、それに比べるとアルコール感がしっかりしてきます」
「なるほど確かに45度って言ったら高いですね。ちなみにこれだいたいおいくらなんですか」
「1,500円です」
「え。安い。45度で1,500円ですか。めっちゃ安くないですかこれ」
「お客様からの評価は、発売してからとても高いです(笑)」
1GV(ガスボリューム )とは=「水100 mlに対して100ml分の炭酸ガス」のこと
「ディープブレンドの発売が2015年6月というですね。それ以降で二瓶さんが手掛けた作品はありますか」
「それ以降はブラックニッカの缶ハイボールを担当しました」
「なるほど缶ハイボール。コンビニとかで売ってるやつですね。でもそれより以前から缶ハイボールってありませんでしたか」
「ありましたね。そのリニューアルのタイミングで担当しました」
「味を変えたっていうことですか」
「中味をウィルキンソンの炭酸割りに変えました。炭酸の刺激や爽快感というコンセプトで中身を開発し、ウィルキンソンタンサンを使用したのです」
「確かにウィルキンソンの炭酸はかなり強いなという感じがします。でもアルコールだったら度数が書いてあるからわかるんですけども、炭酸てパッと見では強さが分かんないですよね。そういう指数ってありますか。だってわからないですよね」
「お客さんからしたらわからないですね。でも開発する側からしたらそういう数字があります。例えば完全にお客さんにオープンになって伝えられてるペプシの5.0GVって分かりますか。そういう商品がありまして、 GVでガスボリュームなんですよ」
「ガスボリューム!へーそういう単位なんですね。5.0っていうのはどのくらいの強さなんですか。GV とは…」
「1GV っていうのは、水100 mlに対して100ml分の炭酸ガスが入っています」
「へー。GV なかなか知らないですよ。例えば通常の平均的な炭酸の GV はどのぐらいですか」
「2.0~5.0まで様々です。コンセプト実現のためにあわせたGVで設計されています」
「ってことはペプシの5.0 GV は相当強いんですね。今度のウィルキンソンの炭酸を使ったブラックニッカ缶ハイボールの GV はどのぐらいになりますか」
「内緒です」
「えー内緒ですか」
「ウィルキンソン自体が GV を公表してないですので」
「わかりました。ではペプシより弱いですか、強いですか、ウィルキンソンは」
「それは知らないです(笑)」
「うはははは。え、明らかに知ってますよね(笑)。何で公表しないんですか?」
「それはアサヒ飲料の人が設計してるものなので」
「なるほどグループとはいえ他社だからっていうことですか。自社だったら言えるけど他社だったら確かに言えないですね。でも公表しない理由が分からないなー」
「いろんな処方って言わないものですよ」
「処方ですか…いや処方ならわかりますよ!これとこれをどの分量で混ぜたっていうのは言えないっていうのは分かりますけども、炭酸の含有量の話は言えるんじゃないですか。だってアルコール度数は公表してますよね」
「炭酸って商品がたくさんあるじゃないですか。で、炭酸の含有量もそれが一つの処方にあたりますので」
「なるほどそういうことなんですね」
平日はカレーもイタリアンも食べられないし、コーヒーも仕事中は飲めない
「二瓶さんはふだん、飲み屋さんとか行ったりするんですか?バーでも居酒屋でもいいんですけども…でも居酒屋っていう感じじゃないですよね(笑)? そこを聞きたいです」
「居酒屋も行きますよ」
「どこですか?おすすめの居酒屋を教えてください」
「えーおすすめの居酒屋ですか…」
「それはそうですよ、みんな知りたいですよ! ブレンダーさんの出没する居酒屋知りたいです、ブレンダーさんの舌にかなう居酒屋ってことですから」
「本当に一般人ですから(笑)」
「こんな失礼な話ないですけども、二瓶さんと会いたいからそこに通い詰めるっていう人は多分いないと思いますよ(笑)。いいですよ多分、普通に言っちゃっても」
「でも食べ物とかはすごい気を使ってるんですよね」
「気を使いますねー。だからイタリアンは平日いかないです。ニンニクがダメなんです。翌日残ってしまうんで」
「香りが強いから舌に影響あるっていうことですか。ニラレバとかも駄目ですよね。ニラとかニンニクとか…あとは何がダメですか」
「カレーも駄目ですね」
「あ、カレーも駄目ですか。確かにスパイスいっぱい使ってますもんね。他に何かありますか」
「コーヒーも仕事中は飲まないです」
「コーヒーもダメですか。日本酒作ってる方は納豆ダメっていうのは聞いたことがありますけど、ブレンダーさんはかなりダメな食材があるんですね。でもそれはあくまで平日だめなだけであって休みの日は食べれるんですか」
「そうですね。金曜日の夜から解放されて…(笑)」
「わはははは、え、金曜日の夜からどこまでが大丈夫ですか」
「確実に大丈夫なのは土曜日の夜までです(笑)」
「なるほど、日曜日はちょっと危ないからよしとこう、みたいな感じなんですね(笑)。なるほど…金曜日の夜から土曜日までが唯一、神から人間に戻ってイタリアンとかニラレバとかニンニクめっちゃ効いた料理を食べれるんですね」
「餃子とか味噌ラーメンとかもそうですね。餃子や味噌ラーメンにニンニクたくさん入ってたりする場合もあるので。お店にもよると思いますけども」
「なるほど…僕はブレンダーに憧れてましたけども結構生きるのに制限があるんですね。本当に神職の方みたい」
「テイスティングするから他のメンバーにも影響してしまいますしね」
「我々にしてみれば、例えば営業の方で口が臭うからお客さんと会う前にニンニク食べないっていうのはあるかもしれないです。でも翌日までの影響ってそこまで考えてる人はいないと思います(笑)。やっぱり翌日まで影響するものですか」
「しますよーがっつり食べると」
「がっつり食べても歯を磨けば大丈夫かななんて思うんですけども(笑)」
「完全に血流に乗っちゃって肺から出てきます」
「血流に乗って肺から(笑)。やっぱり修行すると分かるんですね、今日は肺から臭いが来てるぞみたいなのが。やっぱり修行をしてると感覚が鋭敏ですね」
ある日のブレンダーの居酒屋メニューを教えてもらった
「ところで僕はおすすめの居酒屋を聞きそびれてるんですけども(笑)」
「それって載るんですか」
「名前を伏せることも出来ますけども」
「何て言うんでしょう、特定のお得意様の名前をあげるっていうのが…」
「わかりました、載せません。名前を伏せますから教えてください」
「本当に単価の張らないような気軽に行けるような店ですよ」
「むしろそういう方がニュースバリューあるんですよ」
「普通に畳があって座卓があって…本当にそういうような店ですよ。雰囲気で言うと、淡路町にある日本最古の居酒屋って分かりますかね。そういう雰囲気です」
「だから名前伏せますから教えてくださいよ(笑)いいじゃないですか、何をかたくなに拒んでるんですか(笑)」
「うーん…よく行くのは〇〇っていう和食系の居酒屋です」
「ありがとうございます。その店のどういうところがお好きですか」
「ニッカとアサヒのお酒がある」
「なるほど、それ前提ですか」
「そうですそうです」
「プライベートですよね?(笑)」
「もちろんもちろん」
「プライベートでも飲みたいんですか(笑)」
「もちろんもちろん」
「…分かりました、ニッカとアサヒのお酒を置いている。あとはどんなところがお好きですか」
「肩肘を張らないとか、そういう感じですね 。あとはたくさん食べて飲んでも4,000円いかないていう。そういう感じですね」
「その店は何が美味しいんですか」
「実は昨日も行ったんですけども」
「ニンニク系を食べたとか言うんじゃないでしょうね(笑)」
「昨日はハムカツを頼んで食べました」
「それすごくいいですね…!お酒は何を頼まれましたか」
「その時はビールを飲んでいました。その後、スーパーニッカの水割りを飲みました。ボトルで入れて」
「へーボトルで入れるんですね。本当に常連ですね。スーパーニッカのアテは何ですか」
「昨日はホタルイカ、山ウド…」
「あーホタルイカに山ウド!いいですね、春ですしね」
「よく覚えてますね(笑)」
「菜の花も食べました。春を食べましたね」
「なるほど。居酒屋で今の旬のおすすめみたいな。通常のメニューではなくボードとかに書いてある感じの」
「ありますよね。そうレギュラーのメニュー以外の、その日だけのメニューっていうので食べました」
「なるほど、いいですね」
「あとは、だし巻き玉子、刺身の盛り合わせ…」
「すごいな…僕は何を食べたのか忘れちゃいますね(笑)」
「そういう雰囲気のお店です。そういう食事と酒を、肩肘張らずに食べれる ていう感じのお店なんです」
「なるほど、良く分かりました。ありがとうございます。しつこく食い下がった価値がありました(笑)。あ、ちょうどお酒がなくなったので次のお酒を頼みましょう」
ブラックニッカシリーズ3種を飲み比べてみる
「僕はブラックニッカのディープブレンドをロックでお願いします。二瓶さんの作品をぜひ飲んでみたいです」
「では我々はリッチブレンドとクリアを頼んでみますか。せっかくだから比較してみましょう。同じブラックでも全然違うじゃないですか。ディープとリッチとクリアを飲み比べしてもらうと 面白いと思います」
「なるほど、確かに飲み比べしたことないですね」
「その3つをロックでお願いします。せっかくなんで」
「ではディープブレンドのロックが来たのでファーストインプレッションを…(口に含む)うん、力強い。ディープですねこれは。すいませんそのまんまの感想ですけど(笑)。ちなみに僕が普段飲むのはブラックニッカのリッチブレンドです」
「ありがとうございます」
「参考価格でブラックニッカクリアが900円、リッチブレンドは1,330円ですけど、わずか数百円の違いで相当複雑と言うか、美味しいと言うか…語彙力ないんですけども…それこそ“リッチ”な味がするから僕はリッチブレンドが好きですね」
「ボトルも可愛いですよね。色っぽいボトルで」
「確かにニッカのボトルの中ではよく頑張った方だと思います(笑)」
「あはは」
「すいません、さっきサントリーのボトルはすごい彫刻みたい(※筆者個人の感想です)だって言っていたので…(笑)。ちょっとくびれてますよねこのボトル」
「ええ、そうですね」
「そうですよね。若干切れてますよね。ストーンて行くよりちょっとくびれると工賃があがりますよね。だからニッカの中ではこのわずかなくびれがすごい頑張ってると思います(笑)。すいませんちょっと一口だけいいですか」
「どうぞどうぞ」
「何度も飲み慣れた味ですけども、こうやって飲み比べる機会はないので…。うん。おいしいんですけども、ディープブレンドの方が力強いなっているのは分かります。こっちは力強いです。はい。では、いいですかクリアもいただいて…水飲んでからの方がいいですよね」
「どうぞ、召し上がって下さい」
「いただきます。……すいません語彙力ないんですけども、ウイスキーの味がします。これはウイスキーです」
「クリアな」
「え、クリアって何ですか」
「ノンピートなんですよ。ピート原酒を使っていないので」
「え、僕はウイスキーってぜんぶピートを使ってるもんだとばかり思ってました。するとこの香りはどこから来てるんですか」
「モルト原酒とグレーン原酒と樽からですね」
「ピート香みたいなスモーキーな感じではないと思います」
「なるほどクリアってそういうことなんですか」
「ハイボールにしてもロックにしても飲みやすいっていうので我々がお客様から一番支持をいただいてるウイスキーっていうことになります」
「なるほど、ではブラックニッカ系は全部ノンピートってことですか」
「ディープブレンドはピートの香りが感じられる味わいです。ボトルの裏にも書いてあります」
「力強いですもんね。なるほど」
「心地よいピートの香りとビターな感じが」
「いろんな味が好きな方がいらっしゃいますので、シーンによってゆっくり飲みたいなっていうのはあるじゃないですか。それに合わせて飲んでいただきたくて。よく見ていただくとボトルも全部違います」
「確かにこの値段で頑張ってるなって思います。頑張ってます!(笑)」
ブレンダーが選ぶウイスキーに合うつまみ
「そういえば我々お酒しか飲んでなくて全然つまみを頼んでないので、ここはお2人に1つずつ選んで欲しいです」
「カツサンドお願いします」
「あーなるほど!カツサンドですか」
「カツサンドいいですね。僕はじゃあスモークサーモンをください」
「なるほど、でもちょっと待ってください。初手からカツサンドは行かないですよね(笑)いやいいんですよ、皆さん3杯目だからいいんですけど」
「何て言うんでしょうね。居酒屋にいるのとこういうバーで飲食するってのは全然感覚が違くて。なのでこうやってつまみながら食べられるっていうのが」
「バーのカツサンドいいですね」
「確かに想像のつかなかった一手です。これが将棋の対局だったらですね、完全に解説席がどよめきますよ(笑)」
「これも予想してきたんですか(笑)」
「すいません、ここは予想してないです(笑)。しかし奇襲みたいな一手でした。その手があるのかと。横山さんのスモークサーモンはどうですか。ここはしがらみがないから素直に食べたいものを言うと思うんですけど(笑)」
「そうですね、ちょうどウイスキーには合うかなって」
「そうですね、鉄板ですもんね。燻製とか、凝縮した味のものにウイスキーは合うと思いますね。あと甘いものとの相性は抜群だと思います。甘い食べ物に合うお酒ってなかなかないですがウイスキーは本当に合います。過去にもそういう記事を書きました」
「ケーキもそうですし、羊羹とか、甘いものはウイスキーすごい合うなってのは思います。なかなかお店では食べられない組み合わせですけど」
「実際、竹鶴と羊羹って言う組み合わせは以前東京インターナショナルバーショーで行ったことがあります」
「あとチョコレートとの組み合わせも美味しいです。面白いのはチョコレートの種類によってもウイスキーの相性って違うんです。森永製菓さんの小枝やカル・ド・ショコラというチョコレートとブラックブランドの組み合わせもやりました」
「あ、小枝とウイスキーのキャンペーンは見たかもしれないです」
「同じチョコレートでもチョコレートのタイプによっての組み合わせはいろんな発見があって楽しいです。ブラックニッカリッチブレンドはカレ・ド・ショコラベネズエラビターと、ブラックニッカディープブレンドはカレ・ド・ショコラフレンチミルクと相性が良いです」
「なるほど…やっぱ苦いコーヒーに甘いチョコが合うように、相性ってあるんですね。そういえば僕こないだファミレスで発見したんですけども、アイスコーヒーとアイスティーのハーフ&ハーフは意外といけるんです。このハーフ&ハーフはファミレスでしかできないです(笑)」
「ドリンクバーですか(笑)」
「そうです(笑)。ビールのハーフ&ハーフはありますけど、アイスティーとアイスコーヒーのハーフ&ハーフはなかなかないんで」
「お茶とコーヒーならワンダでやりましたけどね。アサヒ飲料のコーヒブランドなんですけど、ワンダTEA COFFEEっていう新商品でカフェラテ×ほうじ茶、ブラック×煎茶の組み合わせで出しました」
「あーそうなんだ、やられた、僕がファーストペンギンじゃなかった(笑)。でも実際アリなんですね、コーヒーとお茶のブレンド。味って感覚的なものなんで一概には言えないですけども、複雑な味の方が美味しいっていう考え方があるってのは聞いたことがあります」
「そうですね。ウイスキーなんてまさにそうですけども、ブレンダーさんがたくさんの樽の中から複雑な味がするように調合してくれてるんで」
鼻の手前と鼻の奥で香りを嗅ぎ分けている
「当然いろんな美味しいがあって、素材の味だけで美味しい、焼いただけで美味しい、ていうのはあると思うんですけど、フレンチとか創作料理とかだと、より複雑に、っていう方向性はあるのかなと思いますね」
「舌の感覚とかあるんですかね。前で感じるところとか舌の奥で感じるとか」
「それはありますね、何味はここで感じるとか」
「あーそうですよね、あるんですよね、舌の部位によって。だから複雑な味は舌のいろんなところが反応するからいいんですかね。いや分かりませんですけども」
「鼻もありますよ。手前で感じるとか、奥で感じるとか。部位でも感じ方が違うということです」
「それは初めて聞きました」
「香りを嗅ぐ時に、鼻の手前の香りに集中するか、鼻の奥の香りに集中するかっていうのがあります」
「あ、それ大事ですよ。一流の野球選手とか、小説家とか、その人だけの独特の感性ってなかなか一般人では分かんないんですけど、一流の人だけが感じてる感覚っていうのを言葉で教えてくれるとなんとなく想像できるしすごいありがたいなと思います。今の鼻の前と後ろとっていう感覚、なるほどこういう世界が見えてるんだ…って勉強になります。それは修行でいわれた感じですか」
「自分で気づきましたね」
「ではこれは二瓶さん独特の感じ方ということですね」
「少なからずそういうインプットはあったのかもしれないですけども、でも実際自分で香りを探していくうちに…そう、香りを探すんです。まず誰かが表現した香りを自分でも同じように共感するように、自分で捉えられてないといけないので探すんです。そういう探す過程で鼻のどんな部分で、っていうふうに気づきましたね」
「なるほど、今日はめっちゃいいことを聞いてます。そういう話を聞けてよかったです」
「テイスティングに関しては“なるほど”と思っていただける話があるんですけども。テイスティングするじゃないですか。私はアゲハ蝶って表現するんです」
「え?どういうことですか??」
「アゲハ蝶の幼虫ってぐにゅって触角を出すじゃないですか。そこから香りがするのわかります?」
「角から香りがするんですか…嗅いだことないですね。アゲハ蝶の幼虫ってたしか柑橘系の葉っぱしか食べないんですよね。柑橘系の香りがするってことですか」
「そうです。今官能評価してるウイスキーの香りと、小さい頃にアゲハチョウの幼虫が出した香りっていうのと記憶が一致して、で私がコメントするのが『その原酒はアゲハ蝶の香りがする』」
「へーなかなか分かんないですねそれは。ただの柑橘の香りじゃないっていうことですもんね」
「アゲハチョウの幼虫の香りとしか表現できない一方で、佐久間さんからしたらエステルとか柑橘とかキンカンとか、そういう一個一個の香りを分解して表現するけど、一言でいうんだったらアゲハチョウの香りとしか言えない、と」
「なるほど、初めて聞きました。よくそんなアゲハチョウの幼虫の触角の匂いをかぐ機会がありましたね…。『舟を編む』っていう映画で見たんですけども、辞書編纂者は普段いろんな言葉を採集してるそうですけども、同じようにブレンダーさんは香りを採集してるんですかね(笑)。なかなかアゲハ蝶の香りを嗅いだ人はいないと思います」
「ブレンダーさんによって皆さん表現が違うんですよね」
「そうなんです、自由なんです。原酒の官能評価に関してはそうですね」
「そうですか。でも言われてみればアゲハ蝶の幼虫の香りを一度知ってしまったら、そうとしか言えないわけですから、それを別の言葉で伝えるって多分難しいと思います。僕もアゲハ蝶の香りを知ってれば…匂いをかごうとは思わないですけど(笑)でも知ってたら分かる世界なのかもしれないですね、これしかないって」
「そのコメントを見ただけでそのウイスキーの持ってる個性がイメージできるって言うことが一番大切です。自分がブレンドする時に『この香りが足りないからこれを補いたい』って言うのを何千っていう原酒の中から絞り込んで行く過程において、自分の感じた香りを自分なりの表現で文字に表しておくことがブレンドする時にはとても大切です」
「自分の感覚でしか持って来れないですからその言葉しかないわけですね」
「やっぱりウイスキーってブレンドする工程があるのでそこがやはり繊細と言うか、非常に神秘的で、ウイスキーのブレンダーはちょっとカリスマっぽくなるんですよね。だからふだん行く居酒屋の名前も安易に教えてくれないみたいな感じだと思うんですけども(笑)」
「(爆笑)」
「やっぱりニッカ商品の味を守ってるのはブレンダーさんなんで、そこはブレンダーさんの完成されたブレンド技術があると思います」
「そうですね、横山さんは全然酔ってない感じなんで、最後の最後までコメントがしっかりしてるなと思いました(笑)。お2人とも今日は本当にありがとうございました!」
ニッカウヰスキーのあらゆるウイスキーが飲める店、ニッカブレンダーズバー
今回の取材の舞台となったニッカブレンダーズバーは、終売になった商品も含め、在庫のあるものはニッカのありとあらゆるウイスキーを取り揃えているバーです。佐久間チーフブレンダーのスペシャルブレンドウイスキーをはじめ、歴代チーフブレンダーのスペシャルブレンドウイスキーが飲める、日本で唯一無二のお店です。こういう神感ある“ファンサ”もすごく嬉しいですよね…。東京に来たニッカファンはぜひ一度表参道のニッカブレンダーズバーを訪れてみてください。
現場からは以上です。
紹介したお店

- ジャンル:バー
- 住所: 〒107-0062 東京都港区南青山5-4-31ニッカウイスキー本社ビルB1
- エリア: 表参道・青山
- このお店を含むブログ・クーポンを見る | 表参道・青山の欧米・各国料理 その他をぐるなびで見る
TEL:050-3467-5250
プロフィール
bad
1980年横浜生まれ、東京の下町在住。 趣味は写真。酒は人生。最近は娘の成長をブログに綴ってます。
ブログ:水蛇の背
twitter:https://twitter.com/kodawari
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