こんにちは、みんなのごはん編集部のしらやまと申します。
私事で恐縮ですが、餃子が好きです。
特に、もっちもちな皮からジューシーな肉汁があふれ出てくるタイプの餃子が好きです。もちもち原理主義者なので、サクサクな「揚げ餃子」の類はなんとなく許せませんでした。
そう、高知に行くまでは……!
高知には餃子で締める文化がある
これまた私事ですが、先日高知を訪れる機会がありました。高知は「口に入るものが何でもウマい」という、とんでもない場所です。
かつおのたたきはもちろん、お刺身全般、トマト、文旦、さつまいも、焼き鯖寿司、うなぎ……まじで何でも美味しい。何の気なしにホテルの朝食で飲んだ牛乳も、なぜか甘くてめっちゃ美味しかったんですけど、あれは何なのでしょうか。
▲写真は高知名物の「日曜市」で撮影。こんな感じの露店が通りにずらーっと並びます。文旦、トマト、さつまいも、イチゴ、干物などいろんなものが売っています。気をつけていないと荷物が大変なことになります。
高知滞在中の夜には高知在住の知人たちと飲みに行きました。プリップリなお刺身と日本酒をたんといただきお店を出たところ、
「じゃあ、締めに餃子食べに行きましょうか」
と言われたのです。
いや、さも当然かのように誘ってくれましたが、「締めに餃子」って何?
戸惑う筆者をよそに、ずんずんとどこかへ向かう知人たち。
そしてたどりついたのは、とある屋台でした。
しかも、並んでるやんけ! ※22時半頃です。
安兵衛の餃子はサックサクでめっちゃ軽い
連れてこられたのは、「安兵衛」という屋台。なんでも、高知の人なら当たり前に知っている名前なのだとか。屋台はコインパーキングだったら8台くらい停められそうな広さです。運転しないからわからないですが、たぶんそのくらい。
ビニールで仕切られた屋内(?)にはカウンターと大きなテーブル。プラス、屋外には立ち飲みスペース(ドラム缶ですね)が2卓ほど。
↑ このような力強いのぼりの前で待っていましたが、意外とあっさり席に案内してもらえました。22時半過ぎだったこともあり、締めでサクッと寄る人が多かったみたいです。
のぼりに書いてあったとおり、知人らは餃子とビールを注文。この時点では、まだ半信半疑。締めに餃子なんて、そんなことが許されるわけないんですよ…!
そしてソッコーでやってきた餃子。はやい。
ん……?
なんだか思っていたのと違います。だいぶきつね色。
これは揚げ餃子ではあるまいな……?もっちり皮の餃子を持ってきやがれ、などとひっそり思っていたわけですが、やっぱりこのぷっくりビジュアルには本能的にそそられてしまいます。だってこのツヤ……!
だいぶ小ぶりなのが伝わりますか?福岡の一口餃子に代表されるように、西のほうの餃子は小さいのがスタンダードなのかもしれない。しらないけど。
まずは何も付けずにいただきます。
え……?餃子じゃない。
いや違う、餃子なんだけど、餃子じゃない?でも餃子かな???
……餃子だと思って食べたら予想外の食感で、脳が追いつきませんでした。
揚げ餃子ではないけれど、たっぷりの油で揚げ焼きにされているのでしょうか、サックサクで軽い食感です。
春巻きみたいな「バリバリ」の皮ではありません。本当に「サックサク」なのです。餃子の皮というよりもパイ生地のようなサクサク感。とにかく皮がうっっっすいです。
▲にぎわう屋台。外だけど全然寒くなかったです。お兄さんがずっと餃子を焼いていました。
軽い食感だし、一口サイズだし……
あーはいはい、締めに餃子ってこういうことか。納得感しかない。
餡は野菜が多めなのか、だいぶさっぱり。何コレうんまいぞ。お腹いっぱいだったはずなのに、まじで5分もしないうちに完食してしまった……。
軽すぎるけどしっかりビールは進む、不思議な餃子でした。これは「安兵衛の餃子」という1ジャンルとして確立していいと思います。
地元の人は本当によく通っているっぽい
ビールを飲みつつ、連れてきてくれた知人に話を聞いてみました。
――恥ずかしながら、屋台の存在を知りませんでした。地元の人はよく行くんですか?
「よく行きますねぇ。仕事帰りに屋台で1杯やってから帰るとか、けっこうありますよ。安兵衛が一番有名だと思うけど、近くに屋台がたくさん出る通りがあって。夕方にみんな準備するから、朝~昼は全くその面影ないんです」
――もっと早く知りたかった……。ところで「締めが餃子」って高知じゃ普通なんですか?私が観光客だからって、からかっているだけでは?
「安兵衛の餃子で締めるのは高知では普通ですw ここの餃子が締めにピッタリなのは、食べてわかったでしょう?」
――すんごいよくわかりました。
「あ、締めといえば、安兵衛はラーメンも"昔ながら"って味で美味しいんですわ」
――あ、すみません、追加でラーメンお願いします。
旅行中は摂取カロリーなんて気にしないようにしていますが、さすがにこの1杯は罪悪感がスゴかった。時間にして23時半。でも、この背徳感こそ最高のスパイスですよね!(前向き)
にしても、高知の人って食べさせ&飲ませ上手多い気がする。屋台の前にも散々食べさせられ、飲まされています。気の良い人ばかりなのです。あぁ、高知こわい……。
知人の言うとおり、「ウワァァァァァ!懐かしいいい」って感じでした。うまい……。さっぱりで全然クドくないし、麺がちゅるちゅるなので、あっさり食べてしまいました。やっぱり高知こわい……。
本当にお腹もいっぱいになったところで辺りを見渡してみると、そこかしこで高知弁が飛び交っていました。目の前のおじさま方8人組(?)も、隣のカップルも、みんな高知弁。あぁ、本当に地元の人たちが集うお店なんだなぁ。
こうして、高知の美味しいものをまた一つ見つけてしまった!という満足感で東京へ帰ってきたのでした。今回は3kgくらい太りました。
▲朝から飲めちゃう最高のダメ人間製造所こと「ひろめ市場」。ここでも、安兵衛の餃子が食べられるようです。ひろめ市場では、昼から飲んでいる大人たちに混じって、近所の高校生とかがご飯を食べていたりするので思わず笑ってしまう。この寛容でおおらかな雰囲気も、高知の良いところだと思います。
東京に帰ってきた途端、安兵衛ロスに襲われる
この高知旅行を経てからというもの、飲んだ後にあの味を求めている自分がいました。中毒性ヤバすぎ。
しかし、どの餃子もやっぱり違います。ふだんは食べない揚げ餃子を注文したり、蒲田まで羽根つき餃子を食べにいったりしましたが(パリパリ具合が似てるかもと思った)、どれも安兵衛の味ではありません。かすりもしない。あの餃子は本当に唯一無二なんだと感じました。こんな味、知るんじゃなかった。
▲高知で撮影。「営餃時間」という文字さえも愛しい。
安兵衛ロスに襲われている折、会議中にポロっと「あの味が忘れられない……」とため息をもらすと、編集部のF氏が「え、もしかして安兵衛?恵比寿にあるけど?あそこの餃子ウマいよねーw」などと言うではないですか。おうおう、ぼやいてみるもんだな。
というわけで、思い焦がれたあの餃子に再会すべく、さっそく恵比寿へ向かいます。
※ちなみに、「お取り寄せ」という手段もあったんだけれど、それではダメなのです。なぜなら焼き加減が難しいからです。
駅からけっこう遠いのに、入店待ちの列ができている
高知にあったあの安兵衛の東京支店、「えびすの安兵衛」はJR恵比寿駅東口から徒歩7~8分くらい。まあまあ歩きます。お世辞にもアクセス良好とはいえないのですが、それでもお邪魔した時は、お店をグルっと囲むように入店待ちの列ができていました。
この日は木曜、そして夜20時頃。我々の前には4~5組ほど並んでいる人が。「金曜じゃないし、サクっと入れるっしょ!」くらいの甘い気持ちでいたけど、甘すぎた。
あとから問い合わせたところ、席の予約は受け付けていないそうです。黙って並ぶべし。
▲どっかで見たことあるやつだ!
ただ、厳密に時間を計るのは忘れてしまいましたが、およそ30分ほどで入れました。自業自得ですが、気合を入れすぎてお昼をほんの軽~くしか食べていなかったので、待ち時間が永遠とも思える長さでした。
案内されて最初に注文したのは、そう高知の安兵衛と同じ「焼餃子」(420円)とビール。えびすの安兵衛には「やかんビール」(1,500円)がありましたので、そちらを注文しました。イカしてるぜ!
なぜか、やかんで注いだビールは泡がなめらかで美味しい。サーバーの立つ瀬がなくなってしまうのでは、と勝手に心配。
カンパイしたあたりで、さっそく焼餃子がやってきました。早すぎて笑う。
これは…これは……!
完全に一致!!!!!
見た目はもう高知の安兵衛のやつ!いっしょ!やっほーい!
しかし、筆者と先述のF氏以外は、初めての安兵衛です。みんなやっぱり「?!」という顔をしてました。そして食べてみるとやっぱり驚きの声が。
「え、これ餃子?!」
「こんなん食べたことない」
「揚げてるのかな、すんげぇサクサク」
「う、うめぇ……」
「いかん、箸が止まらん」
などなど。
期待通りのコメントに思わずニヤリ。ほらほら、美味しいでしょう。
やっぱり、一度「餃子じゃない!」という反応をしてから「ウマい!」という反応へ移るようですね。餃子だと思って食べるとビックリする餃子!
高知の安兵衛を体験した身として気になるのは「現地といっしょなのか?」です。
結論:いっしょでした
この軽い食感、じゅわっとにじみ出る肉と野菜の旨味。ああ、締めじゃなくても美味しいんだなぁ……。恋焦がれていた味にたどり着いて大変うれしいです。泣ける。
▲あっという間に1皿なくなります。
水餃子がおかしいくらいに美味しい
さて、本店である高知の安兵衛にはないメニューがありました。それが「水餃子」(420円)。先にいっとくと、この水餃子が笑っちゃうほど美味しい。
あの薄い皮で包んだ餃子を茹でるなんて、悲惨なことになるのでは……?と心配していたんですが。
そんな心配をよそにやってきた水餃子。きちんと原形は保っています。いっしょに具なしのスープも運ばれてくるんですが、店員さんいわく「スープに浸すか、タレをつけてお召し上がりください」とのこと。
こんなふうにスープにちゃぽんと浸してもいいし、
タレにつけてもいい。
お気づきのことと思いますが、口がパカッと開いています。あーあ、せっかくの肉汁がもったいない、とか思うんですけど、食べてみるとめっちゃジューシー。
……こうして、いつも安兵衛には裏切られる。
水餃子のスープは、中華料理屋さんで炒飯を注文すると出てくるあのスープの味がしました。水餃子を浸すと、皮がちゅるんっとなめらかになって美味しい。タレをつけると、「いまニンニク摂取してるぜ!」って感じがして最高です。どっちもめっちゃ美味しくて、大げさでもなんでもなく、思わず笑顔になっちゃいます。
餃子以外のおつまみも充実しているうえに安すぎる
他にもいろいろ頼んだのですが、どれも安くて量があって美味しすぎてツライ。ここは天国か。
▲おでん盛り合わせ(500円)。ピンクの物体は「すまき」。味はかまぼこなのだけど、もっとむっちりしていて美味しいです。一緒にいった人はコレを見て反射的に日本酒を頼んでいました。
▲自家製チャーシュー盛り(450円)。ベスト・オブ・けしからん食べ物。美味しすぎて一瞬でなくなった。とろけるお肉に甘辛いタレ。永遠に食べ続けたい。
▲ニラ玉(350円)。予想していたのとまるで違うビジュアル…!ニラがほの甘くて、卵黄と絡むと最高でした。
▲ちくきゅう(350円)。ちくわがはちきれそうでかわいい。マヨネーズを付けていただきます。味はご想像のとおりです。
▲高知が誇る栗焼酎、ダバダ火振(580円)の水割り。まさかのジョッキ。「こぢゃんと」は土佐弁で「徹底的に」という意味だそう。ジョッキに酒量をあおられる。やっぱり高知は飲ませるのが上手だな。
▲話題のゆずジュース(250円)もあります。過疎化が進む馬路村はゆずで町おこしに成功したんだと、このジュースはその象徴なんだと、高知の知人が熱く話してくれました。
▲らーめん(500円)も健在!皿までいっしょでした。味もやっぱり高知で食べたやつ。つるんっとあっさり食べてしまう危険なラーメンです。
▲チャーシューめし(350円)。チャーシューにハマってリピートする猛者が出現。まぁ、気持ちはわかります。
他にも、生ぶし(簡単にいうとかつおのツナ)、たまごのピクルス、じゃこ飯などをちまちま食べ、やかんビールを3~4周し、最後に焼餃子で締めたのですが、それでも1人3,000~4,000円くらい。はちきれんばかりに食べて飲んだというのに。
個人的な思いが募りすぎて、まさかの5,500字オーバーという大作になってしまいました。ここまで読んでいただいた皆様には、安兵衛の魅力が伝わったと信じています。あの餃子は本当にビックリしますので、ぜひとも恵比寿か高知まで足を運んで食べてほしい。きっと新しい世界が開けます。
紹介したお店①
店名:屋台安兵衛
住所:高知県高知市廿代町4-19
定休日:日曜日
営餃時間:月~金 19:00~翌3:00、土 19:00~翌4:00(LO:閉店30分前)
※悪天候の場合は臨時休業することもあり。
HP:http://mfc-group.jp/yasube/
紹介したお店②
店名:えびすの安兵衛
住所: 東京都渋谷区恵比寿4-9-15 HAGIWARAビル5 1F
定休日:月曜日(ほか不定休あり)
営餃時間:火~土 17:30~翌3:00、日 17:30~翌1:00(LO:閉店30分前)
ぐるなびページ:えびすの安兵衛