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吉澤ひとみは怒っていたかもしれない…藤本美貴が振り返るガッタスの人間関係

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 (c)ジェイピィールーム

 

12年間活動したフットサルチーム、「ハロー! プロジェクト」のガッタス・ブリリャンチスH.P.が2015年、活動を止めた。その記録を吉澤ひとみさんに聞き、インタビューを掲載した。

 

掲載直後に一つのメールがやって来た。そのメールには「他の人たちの声も聞きたかった。それでこそ実像が浮かび上がるのではないか」と書かれていた。

 

そこでガッタスの内部をよく知る人に話を聞くと、「確かにそのとおりだろう」という声が返ってきた。だが、在籍していたメンバーは多く、とても全員の話を聞くことはできそうにない。すると、せめて副キャプテンの話は聞いたほうがいいのではないかと教えてくれた。

 

そして実現したのが今回のインタビューだ。

 

藤本美貴さんは、昔と変わらない快活な様子だった。まるで10年以上時間が巻戻ったような感覚に襲われるほどだった、というと大げさだろうか。だが、話している感じも、その豊かな表情も、あっけらかんとした明るい様子も、昔の知っているイメージのまま。

 

彼女を観ていると、「闘争心」は「暗さ」とイコールではないことがよくわかる。「勝つぞ」「おう!」という、心震えるけれど明るく前に向かっていく光景が見える気がした。その明るい語り口と大爆笑の中で楽しいときが過ぎていった。

 

アイドルだけど真剣勝負…悔しさでタオルを床に叩きつけたことも

ガッタス・ブリリャンチスH.P.の解散は、仕方がなかったかもしれませんね。みんな歳も取ってきたし、結婚したり、それこそ子どもができたりして、続けるのが大変になりましたね。それからフットサルの試合も少なかった。大会にも出たりしたけど、それもなかなか出場できるわけでもなかったし。

 

みんなそれぞれのグループを卒業して活動がバラバラになったから、スケジュールを組みづらくなったというのもあったかな。それに私は子どもができてから、夜の練習っていうのがなかなか難しくって。他のメンバーは学生もいて、夜じゃないと練習できないですから。

 

でも子どもができてからも試合にも出たんですよ。2013年の「a-nation CUP 2013 powered by ウイダーinゼリー」。8月9日、10日の2日間開催されて、それぞれの日で優勝を争うんですけど、2日間とも優勝することができた。出る以上は「絶対負けない」って、昔と同じように気合いを入れて。1日目に優勝したけれど、「2日目も優勝しなければ意味ない。絶対負けない」ってみんなに言って。北澤豪監督に変わらないねって言われました(笑)。

 

ガッタスの活動はすごく楽しかった。「青春」って感じでした。「モーニング娘。」や、それぞれのグループで活動は、基本的には歌やライブで、歌詞やメロディー、振りが決まっているものを、どう見せるかというテーマでのパフォーマンスです。だけどフットサルは自分たちの行動で結果が決まっていく。そういうのがまったく違ったし、ゼロから自分たちで作っていくというのが楽しかった。それに、負けて悔しくて余計に、燃えたというのがありましたね。

 

アイドルがファンの人たちの前で本気で目の前で怒るとか、ユニフォーム引っ張ったりとか、普通はないですよね。私は試合で活躍できなくて、その悔しさで首に巻いていたマフラータオルを床に叩きつけてたって、あとで人から聞いたことがあります。マジメに活動してるから、練習で骨折っちゃう子もいたし。でも事務所もフットサルの活動を推してたし、そういう部分には何も言わなかった。「真剣なのが面白いんだよ」みたいな感じでしたよ。

 

事務所はアイドルでも頑張っていたけど、女子芸能フットサルも先駆者だったし、周りに負けちゃいけないっていうことは言ってました。「芸能界でもフットサルでもトップじゃないと意味がない」っていう事務所でしたね。特に「芸能界のチームでやるリーグで負けるな!」って私たちもそう感じてた。だから負けられないというプレッシャーもありました。

 

対戦相手からグイグイやられたり、ボール持った途端にドーンと身体に当たられたりということがありました。けれど、それで逆に燃えてました。「来るなら行くよ」みたいな、そんなテンションですよ。「体が小さくても負けない」って。相手はみんな大きくて、平均が160センチ以上が普通で、170センチの人もいたくらいで。うちのチームはみんな小さかったから。

 

だけど、ガッタスは根性ありましたから。だからガッタスは、暑い日が得意だったんです。どんな環境でも「負けんな」みたいな。「暑いなんて言い訳、知らない。負けんな」って口に出して、自分にもプレッシャーかけるし、周りにもかける。他の選手は「あんなこと言ってる、どうしよう」みたいな。

 

まぁ私はアイドルだったけど、そういうキャラだったから(笑)。私がそういうことやっても、きっとファンの人は「やってくれるね」ってぐらいで見てくれていたと思いますよ。私、闘争心で生きてますから(笑)。そして闘争心を前面に出すのは私ぐらいしかいなかったから、いつも「負けないぞ」ってみんなに気合い入れてました。

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 (c)ジェイピィールーム

 

激しいライバル意識もあったガッタス内の人間関係

だけど私、最初からチームにいたんじゃないんですよ。最初の年の2003年は選んでもらってなかった。2003年の「ハロー! プロジェクト」の運動会でフットサルの試合をしてMVPを取って、それで北澤監督から「フットサルチームに入ってくれ」って言われたんです。で、「あぁ、そう言うなら」って、入ってほしいならいいよって、調子に乗ってチーム入りしました。

 

それまで授業ぐらいでしかボール蹴った経験はなかったですね。女の子がサッカーをプレーする機会って、当時は体育ぐらいですよ。あとはキックベースボールぐらいかなぁ。それで週2回練習することになったんですけど、せっかく呼んでくれたし、自分でも入るって決めたんだから、「まぁ一生懸命やってみるか」って感じでした。もともと運動は好きだったから、やってみると夢中になった。負けず嫌いだからメンバーに選ばれないと嫌だし、勝てないと嫌だから、「じゃあうまくなるしかないだろう」みたいな感じですよ。

 

サッカーは経験なかったけど、基本的に球技で自分にできないスポーツはないと思っているから。空中に浮いたボールをトラップするって得意でしたけど、どうやってるかわからない。感覚ですね。ところが、その割にリフティングはできないんです(笑)。最高で3回ぐらい。「何、あれ?」みたいな。一度、北澤監督が「リフティングが10回できないと試合に出さない」っていうルールを決めたことがあって、一生懸命練習したんですけどね。最後までできなかったです。

 

私は練習のときから負けたくなかったですね。紅白試合すらも負けたくない。1つのチームだし、チームとしては相手と戦います。でもチームメイトではあっても、試合では1つのポジションには1人ずつしか出られない。やっぱり出たいし、そのためには味方のライバルに勝たなきゃいけない。

 

そういう気持ちがあるから、みんな強くなれたんだと思います。私はピヴォ(FW)だったから、「カントリー娘。」のあさみとライバルでした。2人だから、前半、後半で1人ずつ使われるかもしれないけれど、出来が悪かったら交代させられるかもしれない。ライバルより少しでもでもうまくならなければ、試合に出してもらえないというのがあるからこそ、みんな頑張れたんだと思うし、強くなったんだと思います。ピリッとした部分がないと勝てないから。

 

ある日の練習で、私がフリーだったのにゴレイロ(GK)のコンコン(紺野あさ美)からパスが出てこなかった。だからコンコンに「あたし見えてた?」って聞いたんです。するとコンコンがビビってたという話がありました(笑)。私にとっては「見えてて出してないのか」「見えなかったのか」は大きな違いがあるので聞いただけだったんですけどね。私は脅すつもりは一切なくて、普通に、同じチームメイトとして聞いているだけなのに、見ていた人からコンコンは怯えてたって。そして「パス出さなきゃいけないのかな」って思ってたかも。そうじゃないんだよ、みたいな。だけど、怖いから出してくれてたのかな(笑)?

 

みんな忙しかったけど、監督は「練習に来ないと使わない」という方針だったから、みんなトレーニングに出てました。朝からフットサルして、そこからコンサートのリハーサルでしたもん。でもみんなフットサル大好きだから、頑張れていましたよ。いい意味でライバル関係でバチバチだけど、「勝つ」という一緒の目標を持ってるから仲間意識が強かった。体力的には大変だったけど、メンバー同士も仲良くて、すごく楽しい場でした。

 

北澤監督とだいぶ経ってから話をしたら、「フジ(藤本)は、いつ帰るかわからないからハラハラしてた」って言われたんですよ。私、一度も帰ろうとしたことなんかないのに、「あれ? そんな風に思われてたの?」って(笑)。「コイツ、何か言ったらすぐ帰っちゃう」って思われたみたいで。そういう風に見えたんだなぁって。

 

「帰る」って言ったのはコンコン(笑)。コンコンと辻(希美)は先発じゃないと嫌だって いうバトルをやってましたからね。まぁでも、その気持ちもわかる。先発に選ばれるって言うのは、自分のほうがいいから最初から出られるっていう認識があったから。辻は運動神経がいいタイプなのに対して、コンコンは努力家。辻は練習しなくても瞬発力で何とかなっちゃうタイプだから、それもコンコンは悔しかったんじゃないかな。辻は練習に来てないのに、出たらシュートを止めて活躍して、いい成績を収めたりするし。

 

他にもお互いのライバル意識も凄かったと思います。「カントリー娘。」のみうなと里田まいは、同じグループだったけどポジションを争っていたし。そういう関係があったからチームが強くなれたのかなって思います。(石川)梨華ちゃんはみんなの間に入ってまぁまぁってやってたけど。そう考えると個性の強い集団でしたよね。

 

その中で、よっちゃん(吉澤ひとみ)は1人だけサッカーの経験者だった。私にはよっちゃんが最初、周りのみんなを信頼していないように見えました。ボールを持つと自分1人でもっていってシュートしようとしてたから。サッカーだったら1人でドリブル突破できるかもしれないけど、フットサルはコートが狭いからパスしないと無理なことがある。だからフットサルだったら周りを信用してパスを出すしかない。

 

そう思ったから私、わざと他の方向を向いて「(パスを)出せ、出せ」とか「パス出てこないんだけど」とか言ってたんです。よっちゃんに向かって、「出して」って言ったら気まずいだろうと思ったから。だから大声で「(パス)出てこないんだけど」とか「フットサルってパス出すもんだよね」とか言ったりしてた。

 

そんな私の言葉や態度に、最初よっちゃんはきっと怒ってたかもしれない。けれど、そこは信頼してもらうしかないし、話し合うしかない。しばらくしてからはよっちゃんと直接話したりしてプレーしてました。「なんで出さないの?」って話をしたり。そうしたら「こうだから出さない」って。「そうしたらこっちでボール取られちゃうよね。それをどうするの?」という話が途中からはできるようになったんです。

 

そういう関係になってから、ガッタスはみんなで焼肉に行ってました。これって珍しいんです。アイドルグループって、みんなでご飯に行くってことはあまりないんですよ。「モーニング娘。」も、何期って年代で別れてて、期同士では仲良いんだけど、それでも2人ぐらいで食事に行く感じで、みんなでどこかに出かけるっていうのはあんまりなかった。まぁ人数も多かったから。「モーニング娘。」も、一人ひとりがライバルなんです。

 

しかもガッタスは、チームメイトのグループは別々だし、先輩後輩という関係もあって、最初はほとんどしゃべらなかった。でも一つのチームだし、遠慮されても成り立たない。フットサルやるようになると話し合わなければいけないじゃないですか。そこで話しをするようになってすごく仲良くなったんです。グループを卒業してもフットサルだけはみんな続けたから、ユニットとは違う、すごい仲のいい仲間っていう感じになれたというのは思いますね。その仲間意識がすごくできたので、みんなで焼肉に連れてってと事務所に言ってました。

 

焼肉に行ったらみんなバクバク食べてました。それに私は太る体質でもないし。お肉大好きだったし、すごいカルビを食べた(笑)。今もカルビ大好き。脂あるけど、ご飯進むから。

 

すかいらーくカフェでもみんな食べてましたよ。甘いものがたっぷりあった。みんなで行ってましたね。一番のお気に入りはピザかな。ピザにサラダみたいなのがのってて、そこに蜂蜜かけて食べるっていうメニューがありました。すごい美味しかったですよ。

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  (c)ジェイピィールーム

フットサルをやってわかったサッカーの魅力

今は1人目の子どもと一緒にフットサルボールを蹴ったりしてるんですよ。子ども相手に「ボール取ってみな」って言って、キープして取らせない(笑)。旦那さんは元々野球をやってて、私はフットサルだったから、野球かサッカーかどっちかやってほしいねって言ってるんです。運動神経はいいと思うんで。だけどサッカーやったらチャラくなりそう。すぐ調子に乗るから(笑)。

 

負けて悔しくって泣けるぐらいの、そういうスポーツを1つ見つけて欲しいと思います。ガッタスも結構負けましたよ。でも、負けたから悔しいと思えたし、じゃあもっとうまくなってやろうとも思えるから、負けは負けでよかったと思います。全部勝てたらそれはいいけど、なかなかそんなことは難しいから。歌は勝ち負けじゃないけど、スポーツは勝ち負けがハッキリするじゃないですか。だから燃えられましたね。負けるのは嫌だから勝たなきゃ、みたいな。前しか見てない。自分がそういう感覚を持てたから、スポーツをやってきてよかったと思うし、「青春だな」って思ってました。それにガッタスって、観に来てる人たちもすごく熱かったし、青春してましたよね。

 

今、昔のチームメイトでガッタスの話をすると、結局は「北澤監督やコーチがよくやってくれたよね」っていう話になります。

 

メンバーの中には北澤監督がプレーをしているところを知らない子もいたんですよ。私はお兄ちゃんがいたし、お兄ちゃんがサッカーやってたから知ってたけど、私がギリギリぐらいで、辻ちゃんなんて北澤監督がサッカー選手だったなんて知らなかった。北澤監督はテレビで話している人というイメージで、辻ちゃんは「サッカーがうまい人なんだな」ってぐらいしか思ってなかった。

 

だいたいJリーグの試合を見たことがないし。だから「イエー、キーちゃん」みたいなノリで接してた(笑)。コーチのケンちゃん(藤井健太フットサル元日本代表)にしても、フットサル日本代表の試合なんて見たことない。何かで見たとき「やっぱりうまいんだね、ケンちゃん、イエイ!」みたいな。

 

そんな人たちが何もわからない私たちを教えなきゃいけなかったから、イライラしただろうって思ってます。「一生懸命やってくれたよね」って話になります。メンバーも来たり来なかったり。メンバー1人、2人というときでもやってくれたり。

 

昔はサッカーなんて、なんで1時間余りずっと走り回って、1点決まるかどうかわからない試合を見てなきゃいけないのか、って思ってましたね。だって、何もわかってない女の子からしたら、ただ走ってるだけだから。それでやっと90分が終わったと思ったら、アディショナルタイムで「プラス5分」。「え? 終わったんじゃないの? 意味分かんない」って思ってたし。無得点の試合なんて、普通の女の子が見るにはハードルが高いと思う。でも自分でやってみてルールもわかると、すっごい楽しい。今は0-0で終わっても楽しく見られます。今は旦那と一緒に楽しんでますから。フットサルは今でも好きです。

 

フットサルを始めたのがもう12年前? 若かったですね。でも今もあんまり変わってないかな。そう、今も全然変わってないですよ。

 

 

藤本美貴 プロフィール

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アイドルグループ「モーニング娘。」の元メンバーで、第5代リーダーを務めた。
2002年、ソロデビュー後、2003年にモーニング娘。へ加入。2009年に庄司智春との婚約を発表。

愛称は「ミキティ」。

北海道出身、1985年生まれ。

(写真:(c)ジェイピィールーム )

 

 

 

 

取材・文:森雅史(もり・まさふみ)

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佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本サッカー協会公認C級コーチライセンス保有、日本蹴球合同会社代表。

ブログ:http://morimasafumi.blog.jp/

 


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