まいど憶良(おくら)です。
食い倒れ都市、大阪は天満にやってきました。
「安くて旨い寿司 密集」というキーワードでググってみると上位に出てくるのが大阪「天五」(天神橋筋5丁目)のお寿司屋さんです。
JR大阪駅から環状線で一駅。天満駅から天六(天神橋筋6丁目)方面にちょっと移動した、このあたりは、歩いて10秒程度の範囲に超有名店3店が軒を連ねるグルメスポット。いわば安くて旨い寿司の聖地とも言うべき場所です。
日本一長い商店街としても有名な天神橋筋商店街はJR天満駅から南北に2.6kmも伸びており、約600店舗がひしめき合い、毎日がお祭り状態の様です。
商店街は天一から天七(天神橋筋1丁目から7丁目)まで続いていますので、時間があれば日本一長い商店街を歩いてみてください。
安く旨い寿司の聖地「天五」の有名店「すし政」
さてさて、そんなことをしてしまうと、どうしてもお腹がすいてしまいます。
そこで、日本一、いや、ひょっとしたら世界一「コスパ」「安い」という言葉に反応するのでは、と思われる大阪府民の舌と財布を満足させる「激戦区のお寿司屋さん」をご紹介したいと思います。
今回は並ぶのが嫌いな大阪人が並んででも食べたいお店ばかり集結しているここ天五から創業50年の「すし政 中店(すしまさ・なかみせ)」さんをご紹介。
暖簾をくぐると、味にこだわりをバリバリに持っている、頑固一徹のような寿司職人さんが出迎えてくださいました。
あっ、ちょっと怖いかも。
そこで、「このお店で一番イケメンの職人さんのお写真を頂きたいのですが」と、恐る恐る申し出ますと、「あっ、じゃあ、私ですねっ」と寿司屋さんだけに、しゃしゃり出て・・・、いや、仕方なく写って頂きました。取材協力に感謝です。
ありました、ありました。
大阪のすし屋さんにある、食べ放題ガリ。大阪では刻んているですよ。
奥にあるのは醤油用の刷毛です。
今回は大将のご配慮により、特別に二階席での取材、インタビューとなりました。
通された二階席は活気の一階に対して、落ち着くスペースになっています。
上マグロやサザエが300円という衝撃価格!
壁に貼ってある価格表を見てびっくり!上マグロやサザエなどが300円と衝撃価格です。
寿司は高くても400円と、一般的な相場では考えられない値段。
100円均一ではない回転寿司を基準としても「安いねっ、」と言ってしまう価格帯でした。
値段追求であればこれまた衝撃の500円定食という選択肢もあったのですが、電車賃を払ってまで、折角職人さんが握ってくれる寿司屋さんに来たので、ちょっとだけリッチに、と言っても安いのですが、1000円の寿司定食を注文。
目の前で握っているところを見られるという贅沢。
ワサビ、ちよんっとして。
シャシャッ、パッとして
キュッ。
あっという間に、出来上がり。
噂の1000円寿司定食と大将のオススメ
これが噂の寿司定食、1000円。
中身は、日によってネタは変わりますが、この日はカッパ、鉄火、ウナギ、イクラ、甘海老、たいらぎ、ブリ、サーモン、マグロ、鯛というラインアップでした。
赤だし付きです。
他にも、一品ものを大将のお勧めで。
そう、ここなんですよ。寿司屋に行って「大将のお勧めで適当に握ってっ!」なんてなかなか言えないですよね。
リーズナブルさが保証されているからこそ、値段も聞かずに注文ができます。安い旨い。これもある意味、贅沢ですよね。
ちなみにネタと、無粋なことを言いたくないのですが、2貫のお値段はと言いますと、
左上からトロ400円、ウナギ400円、ウニ400円。
下が鯛ハラミ200円、ハマチハラミ200円、シマアジハラミ400円、サーモンハラミ200円、穴子300円と、ほぼハラミ尽くし。
ホントに2貫で400円なの?と思わず聞き返す絶品のトロ
こうなるとガリがいるんじゃないかな、脂っこくてくどいんじゃないかな、と思いがちですが、ここでもいい裏切り。
さらっとして、旨味の濃い脂でした。
トロの値段を聞いた時に、一度「えっ、2貫で?」と聞いてしまい、食べた後「旨っ!ホントに2貫で400円なの?」ともう一度聞き返しました。
とろけて、消えてしまいます。
こんなお寿司が2貫400円なんて。
ホントにいいのかなぁ。罪悪感すら感じます。
しかし・・・、旨いっ。
噂の刷毛を使い、丁寧に醤油を塗っていきます。
こう考えると江戸っ子もそうなんでしょうが大阪人も、気が短いのかも。もっとも、気が短いというより「合理的」という言葉が好きな人も多いでしょうが。
はい、準備完了。
お茶で心を落ち着かせ、 只今より、頂きますっ!
1つ1つのネタが、旨いっ!分厚い!
ボリュームがありながらも、なんぼでも入りそうです。
甘い。甘すぎるボタンエビ400円はねっとりと。
剣先イカ300円はもっちりとした食感。
この鰻のこうばしさよ!
たいらぎは、貝特有の刺激もほぼなし。旨みと甘みが感じられます。
縁側は、300円にしてカレイでなくヒラメの物。
すし政の「安くて旨い」を支えるこだわりは「シャリ」
この後こういうショットが延々と続いてもいいのですが、失礼しまして、お寿司をいただきながら、大将にネタのこだわりを聞きました。
ネタは、中央、天満、黒門市場の3つの市場からそれぞれの担当者が厳選したネタを、競ってもらった上で、納得したものを仕入れているそうです。
厳しい目に耐えて、勝ち残ったものだけがすし政の板場で握られるという事です。
ネタそのものの力もありますが、切り方、保存の仕方でも味が変わってくるそうです。じゃあ、やっぱり自慢はネタなんですね、というと、そうではない。
また裏切られました。一番の自慢は、「シャリです」とのことでした。
信頼の厚いお米屋さんに、その時その時で入る、一番の理想のお米を頼んでいるとの事。理想、こだわりとは、粒の大きい米。そして表面が固くならず、ふわっとする米。
お米屋さんも、このオーダーに応えるべく、選びに選んだ米で、すし政と勝負しているという感じなのです。
米もブランドによって1年中同じ味がするという事ではなく、その時期によって質も味も変わります。米のプロが厳選した、その時一番の米が、すし政のシャリになることを許されるのです。
そして、もう一つのこだわりが炊き上がってからのシャリの鮮度。コストや手間を考えると、どうしても一度に炊き置きしてしまうものですが、それが嫌だと。実際、他所の寿司を食べに行くと、「ああ、これは炊き置きだな、シャリが重たい」と感じることが多いそうです。
炊き置きだと、折角のシャリがふわっと感を保てず、重く沈んでしまう。食べた人が、「シャリが旨いな」とか「ふわっとしてるわ」と感じるのは、こういう差だったのです。
最後に、この激戦区の中で戦い続けるのはしんどくないですか、との質問に対して。
みなさん、この3店が日々火花を散らして戦っているというイメージを持っているようなんですが、実はこの3人、同じ学校の大体同世代だし、中には同じ塾に行ってたりと、昔から仲はいいんですよ。
いいライバルが、しのぎを削っているからこのクオリティが保てている部分も、もちろんあると思うし、この天五という場所でできることをやっていきたいんですよね。
47歳、寿司を握って30年の大将は笑いながら答えてくれました。
大阪を訪れる時には、そしてタイミングが合えば、是非旨くて安くて、ふわっとしたシャリの寿司をご賞味いただきたいと思います。
紹介したお店
すし政(すしまさ) 中店
大阪市北区天神橋5-6-19
06-6358-2558
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は名古屋から鳥取あたりの温泉に浸かり、地元スーパーで珍しい食材を買っては料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。