三軒茶屋に「イカした大衆酒場がオープンした」と知人から聞き、これはさっそく行ってみなければ…ということで、その知人とGO。
お店は、田園都市線の三軒茶屋駅から徒歩2分、国道246号線の南側の路地を入ったところにあるという。てくてく、てくてくと歩いて行くと…
おぉ、あったあった。
ビール煮込お食事「麦酒宿 まり花」
看板が何とも趣深い。
いや、趣深いというか…あまりにも街の風景に馴染みすぎというか。書体なんかを見ても、何十年も前からここに佇む老舗大衆酒場としか思えません。
本当にオープンしたてなのでしょうか? とりあえず店頭からのぞいてみましょう。
確かに、店構えは新店舗らしい清潔感がありますが、それにしても老舗大衆酒場の貫禄を思わずにいられません。
お店のなかに入ってみても…
入ってすぐのところに「煮込み」の大きな鍋が鎮座しており、ますますの老舗感。
「オープンしたばかり」という情報にモヤモヤしつつ奥に進むと、目に飛び込んできたのがこれ!
え? 大衆酒場感がここだけ一気にイマ風になったけど、どゆこと?
そんなことどこかに書いてあったっけ? と思い、一度お店の外に戻ってみたら…
圧倒的大衆酒場感あふれるメニュー看板のなかに、チラッと「クラフトビール」と書いてある。
ガンガンにアピールする感じじゃないのが、逆にそそる!
お店のなかに戻ってみると、大きな黒板にクラフトビールのメニュー表。
日本津々浦々&海外のもの、あわせて12種類も取り揃えてあって、ワクワク♡
カウンターに置いてあるメニューには、それぞれの味わいが表やマトリクス図で示されており、クラフトビール初心者にもわかりやすい。
お店に着いたときには、完全にホッピーやらレモンサワーやら、大衆酒場の飲み物を期待する口になっていましたが、ここはひとつ、クラフトビールとまいりましょう。
山梨「富士桜 サマーヴァイツェン」
苦みは少なく、ほのかな酸味があり、爽やかな飲み口。
一杯目にぴったりの味わいでございます。
さぁ、クラフトビールとくりゃ、それに合わせる美味しいお料理も重要です。
えーっと、「塩煮込み」と、あと…ん? 「パッタイ」やら「青パパイヤサラダ」なんてものもあるの?
「青パパイヤサラダ」って、タイの東北部・イサーンの郷土料理「ソムタム」のことですよ。
大衆酒場にあるような品だっけ? うん、いろいろ頼んでみよう。
まず供されたのが「塩煮込み」。
各種牛モツが入った、おつゆ多めの煮込みです。
食べてみると、コクを感じさせつつも、たいへんあっさりしており、丁寧に作られているのがわかります。
品のよい洋風コンソメのような味わいだけど、全日本人がちゃんと懐かしさを感じる仕上がりです。
店員さんに聞いてみたところ、ギアラ(牛の第四胃袋)を塩と数種の香味野菜とともに、汁気がなくなるまで煮込んだ、イタリアのフィレンツェ名物「ランプレドット」という料理をもとにしているのだとか。こちらでは「ランプレドット」をアレンジして、わざと汁気を残した状態で「塩煮込み」として出しているそう。
とにかく旨味がハンパないのですが、コンソメなど市販の調味料は使わず、素材の味を引き出すようにしてじっくり煮込むことが味の秘訣とのこと。
やさしい味わいに卒倒。こりゃクラフトビールとバッチリ!
そしてやってきました「青パパイヤのサラダ」。
爽やかな見た目に誘われ、さっそくひと口ぱくり…よい、すっごくよい!
正直、酒場の「青パパイヤサラダ」にそこまで期待していなかったけど、ちゃんとタイ料理してるじゃないですか!
どの野菜でも代用できない、青パパイヤならではのシャキシャキ感にトマトや海老、ミントの葉がハーモニーを加えるかのごとく口内調味され、アローイ(タイ語で「美味しい」)!
盛り付けも味も華やかで、いやはや恐れ入りました。
これもクラフトビールがススム!
あとはどんなのがあるのかな? とメニューを見ていると「自家製ソーセージ」を発見。
こんがりと焼かれたソーセージに、ザワークラウトと浅漬けのあいだのような、ホッとする味わいのお漬物が添えられて登場。
食べてみると、これまた洋と和が混ざり合ったような味わいに驚かされます。
肉の旨味と塩気の向こうから、山椒の薫りが追いかけてくるという、酒飲みの心をくすぐる一品で、またまたクラフトビールとの相性◎!
と、ここまでの1杯と3品を口にしたところで、完全に「まり花」のセンスにハマってしまいました!
しかーし! クラフトビールもお洒落な味わいのお料理もいいけど、大衆酒場ど真ん中のメニューはどうかと思い、頼んだメニューがこれ。
「中華ガツ」、カモン!!
ピリリと甘辛で、これはもう、親子三代で通っている常連がいるような老舗大衆酒場で、何十年も前から愛されている味。
続いては「レバテキ」!
こちらは、酒升に入った石焼きペレットで、自分で炙るスタイル。
ジューッと炙ったら、ゴマ油とおろしにんにくを纏わせて口へ運ぶと、熱々&シャキ&ジュワなレバーの魅力たっぷりな一品に。
こうしたメニューには、お似合いの飲み物を。
ハイッピーでハッピー。もういうことナシ。
このハイセンスで、お客の心をくすぐる酒場の秘密を聞かねば!
クラフトビールを、日常の飲み物として楽しんで欲しい
クック井上。 こちらのお店、センスがただ者ではないと感じ入りました。まずは自己紹介からお願いします。
西山篤子さんありがとうございます。「株式会社プロダクトオブタイム」の西山篤子です。「麦酒宿 まり花」の店主をやっております。
「株式会社プロダクトオブタイム」といえば“ネオ大衆酒場”の先駆け的存在「大衆酒場ビートル」を手がけている会社じゃないですか!
西山さんは、これまでどのようなお仕事をされてきたんですか?
弊社が運営している、和素材にこだわったビストロ料理や自家製シャルキュトリー(お肉から作られる加工食品の総称)のほか、31種類の厳選樽生クラフトビールやニュー・ワールド・ワインを提供する「クラフトマン五反田」というお店で5年ほど店長をしていました。
そのご経験を活かされて「大衆酒場×クラフトビール」という新業態を始められたんですね。その発想はどこから湧いてきたのでしょうか?
もともと、ベルギービールを扱うビストロ「ヘイメル」を10年以上前に立ち上げた後、クラフトビール業態の「クラフトマン」をスタートさせるなど、弊社は美味しいビールを扱うお店を立て続けに手がけてきました。その一方で、古きよき庶民的な居酒屋のテイストを活かした「大衆酒場ビートル」も育ててきましたので、いわばその2つを融合させたものが「麦酒宿 まり花」です。
なるほど。お料理はどれも気が利いていて、とくに煮込みやソーセージなどは、懐かしさの向こうに工夫が感じられました。どのようにメニュー開発されているのですか?
メニュー開発担当の料理長と、社長が試食会を繰り返しています。「塩煮込み」も、2人が海外の旅を通して得た、舌の記憶から生まれました。
確かに、センスの光るお料理でした! コロナ禍の真っ只中、2020年5月29日オープンと聞きましたが、ご苦労もあったのでは? お客さんからの反応、気を付けていることなどと合わせてお聞かせください。
もともと今年5月オープン予定でしたが、工事は早い時期から始めていたので、地元のお客さまからは「どんな店ができるのか、気になっていた」といわれましたね。もちろん、コロナの感染対策と衛生管理は、徹底しておこなっています。
「麦酒宿 まり花」のウリ、そしてお客さんにいちばん伝えたいことはは何でしょうか?
「クラフトビールを、日常の飲み物として楽しんでほしい!」という思いから、日常の食べ物を扱う大衆酒場と組み合わせました。大衆酒場なのに、ビアタップがあるのでびっくりされるお客さまが多いです。クラフトビールに馴染みのないお客さまも、もともと好きなお客さまも、ここでは固定概念にとらわれず、酒場メニューといろいろな種類のクラフトビールを好きに合わせて楽しんでいただきたいですね。
素敵な想いです! 「麦酒宿 まり花」のおかげで、クラフトビールのハードルが下がるのではないでしょうか。ところで店名は、どなたかのお名前ですか? 込めた思いなどありましたら、教えて下さい。
「麦酒宿 まり花」は「ビアジュク マリバナ」と読みます。「まり花」とは、ビールのホップの花の名前です。
「マリカ」だと思ってました! マリバナ(毬花)=ホップのことだったんですね。ネーミングまでセンスあふれていて、虜です!
ということで、見た目は大衆酒場、入ればイマっぽさやセンスがきらりと光る「麦酒宿 まり花」の成り立ちについて、お話をうかがいました。
江戸時代、大山道の本道(現在の世田谷通り)と近道(現在の国道246号)の分岐点に、「信楽」「角屋」「田中屋」という三軒の茶屋が存在したことに由来する街、三軒茶屋。
いまや三軒茶屋駅周辺には、三角地帯(飲食店が数多く、狭い路地が有名なエリア)も含めて、数えきれないほど無数の茶屋ならぬ“数百軒酒場”が軒を連ねています。
そんな群雄割拠の三軒茶屋で、新型コロナ禍真っ只中にオープンした「麦酒宿 まり花」。
数十年前からそこにあったんじゃないかと思うような自然な佇まいに、上っ面ではない本物のイマっぽさがエッセンスとして加えられた同店。
まだお目見えしてから間もないにも関わらず、ホップステップジャンプ!
すでに常連客でいっぱいの大人気店となり、大輪の花を咲かせています。
(編集:漆原直行)
紹介したお店
店名:麦酒宿 まり花
TEL:03-5787-5154
https://www.facebook.com/maribana.sancha/
営業時間:[月~金]16:00~翌1:00 / [土・日・祝]14:00~翌1:00
著者プロフィール
フードコーディネーター・野菜ソムリエ・食育インストラクター・BBQインストラクター等、7つの食の資格を持つ料理芸人。 料理教室講師・食のイベントMC・レシピ開発・食品プロデュース等を務め、“最強料理芸人”の異名をとる。EX「『ぷっ』すま」やTBS「爆問パニックフェイス」の料理バトルでは優勝を果たしている。その他の出演歴は、NHK「グッと!スポーツ」・NTV「得する人損する人」・TBS「はなまるマーケット」・TX「TVチャンピオン極」等。
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