老舗おもしろサイト デイリーポータルZに江ノ島くんというライターがいる。
「ああ、こいつか」と思った人も多いだろう。
江ノ島くんが書く記事は、とにかく何かを食べるものが多い。
本当に食べてばっかりだ。
参考までに、過去デイリーポータルZに掲載された江ノ島くんの記事の内、気になるタイトルを並べてみよう。
叙々苑のランチを知っておきたい
https://dailyportalz.jp/kiji/lunch_at_jyojyoen
50年後にささげるコンビニのフライドチキン食べ比べ
https://dailyportalz.jp/kiji/170425199426
牛焼肉定食で学ぶチームマネジメント
https://dailyportalz.jp/kiji/170221198857
オムライスに恋をして
https://dailyportalz.jp/kiji/161129198175
時は来た! 「シロコロホルモン」と今こそ向き合う
https://dailyportalz.jp/kiji/imakoso-shirokoro-horumon
なんだろう。「そんなもん勝手に食っとけや」みたいな感情が生まれる。「時は来た!」の意味のわからなさもすごい。
試しにデイリーポータルZに掲載されている江ノ島くん記事のタイトルから「食べもの・飲みものがテーマのもの」と「それ以外」を判別した所、こんな結果になった。
食べたり飲んだりする記事
65件
それ以外の記事
45件
「おや、思ったより少ないな?」と思う人も居るかも知れないが、江ノ島くんは食べ物がテーマではない記事でも何かを食べたり飲んだりする事が多いので、体感では8割くらいの記事で何かを飲み食いしているように思える。
「修行」がテーマの記事でもはやり飲み食いする描写が出て来る。
映画に出てくる修行で体重は減るのか?
https://dailyportalz.jp/kiji/180903203849
そんな風に江ノ島くんの記事を長年ウォッチしていると、だんだん「江ノ島くんが食べている所をもっと見たい!」という妙な感情が自分の中に芽生えている事に気付いた。
DPZ江ノ島くんが食べてる姿をひたすら愛でてる。 pic.twitter.com/lTwnMMLePg
— ヨッピー (@yoppymodel) January 24, 2018
この感覚、実は僕だけのものではない。忘年会的なものなど、たくさんの人が集まる大規模な飲み会ではいつも江ノ島くんの周りに人がいて、「江ノ島さん、ケーキありますよ」「江ノ島さん、お肉食べましたか?」など、色んな人があれやこれやと食べ物を持って来ては江ノ島くんに食べさせようとするのだ。
ひょっとして、「たくさん食べる人を見たい」という気持ちは、人類共通、普遍的に存在する感情ではないだろうか。
そこで本日はその仮説を検証するため、「焼き肉を奢るよ」という口実で仕事帰りの江ノ島くんを豪徳寺に呼び出した。
「たくさんお肉が食べられますように」と豪徳寺でお参りする江ノ島くん。そんな願い事をされたら仏様だって困惑すると思う。
焼肉店に向かう途中にあったからあげ屋さんに気を取られる江ノ島くん。今日は「焼肉を奢ってもらう!」という事で昨日の夜から何も食べてないらしい。
「江ノ島くんって、食べ物のために記事を書いてるのか、記事のために食べ物を食べてるのかどっちなの?ハタから見てると食べ物のために記事を書いてるとしか思えん」
「そんな事ないですよ。僕はまず、『あれを食べてみたいな』ってところからスタートして、それで取材して記事を書いてるんで」
「それ、食べ物を食べたいから記事を書いてるじゃん」
「あ、そうか」
そして本日のもう一人のゲスト。Twitterで見つけた「べっちん」さん。
僕がTwitterで「焼肉奢るから食べたい人は顔写真付きで応募してね!」と呼びかけた所、彼が応募してくれたのである。
その時のやりとり。焼肉を奢る事の応募条件に「顔写真の送付」を入れたのは、「焼肉を奢ってあげたくなる顔かどうか」を自分なりに判定したかったからである。
そういう意味において、べっちんさんはパーフェクトに近い顔つきだ。こういう顔の男子学生に焼肉を奢ってあげたくなる気持ち、共感してくれる人もいるはずだ。
「なんで僕が選ばれたんですか」
「まあ、単刀直入に言えば『貧乏学生っぽさ』だと思う」
「実際、僕は貧乏な学生ですからね」
「でしょう」
そして本日の舞台となる豪徳寺の焼肉店「ひゃくてん」。
実は以前、当「みんなのごはん」で特集されているのを読んで以来、来たかったお店でもある。
ひゃくてんは「オススメ焼肉食べ放題コース」に2時間の飲み放題をつけても4,500円くらいなのでかなりお得感がある。
メニューを見ながら「これ全部食べ放題なんですね……」と笑顔の二人。
「今日は良い宴になりそうだ」という予感がしてきた。
オーダーが済んだらしばし歓談。ホームランの打球がスタンドに届くまでの滞空時間みたいなものである。べっちんさんは今日の焼肉のために、大事な用事をぶっちぎって来たらしい。本当に貧乏学生をしていて、お店で焼肉を食べるのは本当に久しぶり、とのこと。
キムチの盛り合わせが届いたが、江ノ島くんもべっちんさんも手をつけようとしない。二人は「やっぱり初手は肉から行きたいですよね」と謎の意気投合をしている。「野菜から食べよう」みたいな健康を意識したセオリーは通用しないらしい。
そして食べ放題とは思えないゴツい肉がドンと届き、
「ライスの昔話盛り」も届いた。「日本昔ばなし」に出て来る山盛りのごはんをイメージしているらしい。
べっちんさんが頼んだのはまかないご飯。
ああ、これに肉を乗せて食べたら間違いなく美味いやつですね……。
そして「宴」がはじまった。
「肉、ひときれでそんなにご飯行く!?」っていうぐらい、ふたりともお米を食べるペースが早い。
べっちんさんも同じく、とんでもないスピードでご飯を平らげる。
どんどん肉を焼き、どんどん食べる。
「お米」というと僕くらいの年齢(38歳)になると毛嫌いされる傾向にあるというか、「糖質制限してる」「あんまり食べると眠くなる」みたいな理由で敬遠される事も多い。考えてみたら焼肉屋さんに行ってもその辺を考慮して「まあ、ご飯は一杯だけ食べておくか」くらいの扱いである。高校生の頃みたいに、「お肉もご飯も腹いっぱい!」みたいな食べ方をしたのはここ5年くらい無い気がするのだ。その、お米を敬遠した5年間で築いた「お米を食べすぎるのはよくない」という心のダムが今、目の前で決壊している。
焼肉って、「まずはタンから。次にロース」みたいな順番で焼くものだと思っていたのだけど、この二人にセオリーは通用しない。ハラミもカルビも、とにかく到着次第網に敷き詰め、どんどん焼く。
「あの、順番に焼くやつって意味わかんないじゃないすか。どんどん焼けばいいのに」
「でも、こんな風に全部乗せたらはしっこの方が焼けなくない?」
「端っこの方は野球で言うネクストバッターズサークルみたいなものなんですよ。打席待ち、みたいな。あっためておくんです」
「あー、それです」
大食いの人達は思考回路も似て来る。
昔話盛りを平らげた江ノ島くんが、今度は卵かけご飯をオーダー。お米の消費ペースが早すぎる。
べっちんさんは、まかないご飯から冷麺を経由し、白ご飯に到着。
ひたすらに焼き、そして食べる。
「今回のヨッピーさんもそうですけど、何故かみんな僕に食べ物をくれるんですよ。飲み会の席でも『まあ、今日は江ノ島がいるからな』みたいなテンションで普段よりみんなたくさん頼むんですけど、結局全部それが僕の所に来るんですよね。『江ノ島、からあげだよ』みたいな。まあ、食べるんですけど」
そして二人はまだお肉が残っているのにデザートまで頼み始めた。「食べものが来るまで待つという行為が心底嫌い」だそうです。
「こんなこと言うのもあれだけど、江ノ島くん健康状態は大丈夫なの?」
「いや、バッチリ健康ですよ!」
「会社の健康診断で『もっと体重減らせ』とか言われない?」
「言われますよ。言われますけど無視します。人は『不健康』という状態を自覚する事によって不健康になるので、そういう情報を無視して『自分は健康だ』と思い込めば常に健康でいられますから」
「よくわからない理屈だな」などと思っていたらかき氷まで食べはじめた。
デザートも食べ放題らしい。
そして二時間後、大量の肉、大量のご飯、大量のデザートを食べ切ったふたり。摂取カロリーが7,000kcalくらいありそう。
たくさん食べた二人を見て
というわけでバクバク食べる二人を眺めていたのですが、やはり「たくさん食べる人」というのはそれだけで見ていて気持ちがいい。
考えてみれば田舎のおばあちゃん家に行った時なんかに、おばあちゃんやおじいちゃんが「あれも食べろ」「これも食べろ」と孫である僕に何かを食べさせようとせっせと食べ物を運んで来るやつ。あれなんかは「たくさん食べて大きく成長しろ」とかそういう想いが込められているのかな、なんて風に理解していたのだけど、あれも単純に「たくさん食べる孫を見てると気持ちがいいぞ」とかそれくらいの感覚だったのかもしれない。
飲み会の席で、江ノ島くんの席にピザやから揚げをせっせと運ぶのもきっと同じような理由からである。
ちなみにこの日、江ノ島くんから「また奢ってもらう気まんまんのメール」が届いた。「食べものは当分いらない」などと言っていたはずなのだけど。そしてその後、江ノ島くんのTwitterを覗いてみたら明らかにハイカロリーそうな食べ物を喜々として食べていた。
くれぐれも健康には留意して頂きたいものである。
取材協力
紹介記事
「ひゃくてん」は平日920円、休日1,000円のランチ食べ放題が神コスパなので、皆さんもぜひ行きましょう。
著者プロフィール
「オモコロ」「SPOT」「Yahoo!ニュース個人」「みんなのごはん」など、さまざまなWEBメディアで活躍中のライター。「WEBでウケること」の第一人者として、タイアップ広告案件なども多数手がける
Twitter ID: @yoppymodel / 公式サイト:ヨッピーのブログ