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「脂こそとんかつの本体」と思う人にとって、浅草橋「とんかつ藤芳」のバラかつ定食は心の友である

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脂への探究心が強いことでおなじみのココロ社です。

 

われわれがおいしいとんかつに出会ったとき口にするフレーズの中央値はおそらく、「衣がサクサクしていて、肉は厚みがあるのに軟らかく、噛むごとに肉汁があふれてくる。脂の甘みもたまらない!」……などになるだろう。
ここで、もし、この文でいちばん大事なところに線を引きなさいという問題が出たら、あなたはどこに線を引くだろうか。わたしの場合、恥を忍んで告白すると、「脂の甘みもたまらない!」に線を引くだろうし、もしかしたら「脂の甘みが最高。ちなみに肉は柔らかくてジューシー」などと口走り、肉は脂の引きたて役であるとの認識を露わにしてしまうかもしれない。

この記事を、脂が好きだけれども「何よりも脂が好き」と素直に言えない同志に贈りたいと思う。

 

味も味以外も濃い街として知られる秋葉原。今回の舞台は、そこから一駅の浅草橋駅のすぐそばにある、「とんかつ藤芳 駅前店」である。

 

秋葉原から歩くと寂寥感と疲労感が気持ちいい

ノーマルな感性の方におかれましては、浅草橋駅で降りることをおすすめするけれども、秋葉原駅から総武線のガード沿いに浅草橋まで歩くのもいい。これからとんかつを食べるので多少は運動しておきたいという気持ちもあるし、秋葉原から徐々に人がいなくなっていく寂しさに浸れてよいのである。

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ガード下のスペースを有効活用している感じに興奮してしまう。中はどうなっているか知らんけど……。

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「バラかつ」という謎の文字列に心を奪われる

心地よい寂寥感に包まれながらうつむき加減で歩いていると、「バラかつ定食」の文字が飛びこんでくる。

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わたしは初めてこの看板を見たとき、「バラかつ」の意味を解するのに10秒ほど要した。バラ肉のとんかつということである。わたしは驚いた。

そういえば、バラ肉はおいしい肉であるにもかかわらず、とんかつといえば、ヒレ肉やロース肉のとんかつばかり。バラ肉のとんかつは、串カツのような小規模なとんかつを除けば、体験したことがない。そして、店を訪れる前から「なぜわたしはバラかつを食べていないのだろう」という気持ちになった。脂好きが高じたらバラかつを食べたいに決まっているではないか……。

 

ガード下をくぐって線路の向こう側に店があった。

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さきほどの看板の印象とは異なって、けっこうな老舗のようである。考えなしに歩いていても、こんなすてきな店に巡りあえるなんて……東京に住んでいてよかったと思う瞬間。

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店先では改めてバラかつの説明がされているのだが、「焼肉の○ルビの部分」というフレーズ、消えかかっているが、カルビであることがわかる。なぜならカルビが好きだから。消えかかっているというのに圧倒的な説得力である。焼肉の代表であるカルビをなぜいままでとんかつとして食べなかったのだろうと入店前から反省をはじめてしまう。

 

店内はいつも混雑しているが、ランチのピークタイムを外して伺えばスムーズに脂の甘みへの欲求を満たすことができるだろう。ひとりのお客さんも多く、気軽に入れる。初めて訪れて以来、すっかりバラかつの虜となったわたしは何度も伺っているが、だいたい14時ごろ、秋葉原でたんまり買い物をしてから行くことにしている。

 

バラかつ以外のバリエーションも果てしない

いままでバラかつの話しかしてこなかったけれども、メニューは凡百のとんかつ屋の追随を許さないほどのバリエーション。たとえばバラかつに興味がない人を連れて入った場合でもはヒレかつやクリームコロッケなどがある。また、バラかつを頼むにしても、初心者のために、バラかつ1本+別のかつの定食も潤沢に用意されているので安心。

わたしは毎回「ここの蟹クリームコロッケ、絶対においしいだろうな~」と思いながら30秒ほど悩むのだが、ここでも件の「焼肉のカルビの部分になります」のフレーズに心を打たれ、バラかつは2本にしたいという気持ちになってしまうので、未体験である。

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そして驚きなのはバラかつ定食は900円。とんかつの本質は脂にあると認識している人にとっては、ヒレかつやロースかつの何倍も本質に迫っているというのに、より安いのだから、いいことずくめである。

 

そして、バラかつ定食をお願いする。

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バラかつ様とご対面する前にテーブルの上のソースの確認をしておこう。
大きくて赤い容器がブレンドソース。これがこちらの店の標準的なとんかつ用ソースである。
黒くて大きな方の容器は特級ウスターソースで、通称プリンスソース。

そして、黒くて小さい容器はポン酢しょうゆ。

 

想像していたのとは異なるバラかつ様のお姿

ほどなくしてバラかつ定食とご対面。

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長細いカツが2本並んでいる。「バラかつ」という文字列から、正方形に近いカツを勝手に想像していたのだが、意外である。ほどなくしてこの供し方が唯一解であることを知ることになるのであった。

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いただく前からカツが大変芳しい。とんかつの香りというより、クッキーのような甘い香りがする。ちんすこうの香りに似ていて、つまり、よい脂の純度が高まると、とんかつも甘い香りがするのだと理解した。

とんかつをいただく前に、必ずお肉の様子を確認してしまうのだが、雪のように白くて感動した。

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そして脂を雪に喩えるのは重症の脂マニアなのかもしれない。

十分にお伝えできたかどうか不安なので、アップにしたものを念のため掲載させていただきたい。

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白くて眩しい!

 

……この宝石について、調味料をどうするか検討していこう。

 

お酢が苦手な人も、バラかつ&ポン酢の組み合わせなら昇天!

もともとお盆にはおろしポン酢が用意されていて、つまり、ソースも用意しているが、バラかつについては、ポン酢を強くおすすめするということだろう。わたしは酢の味が好きではないのだけれど、せっかくなのでポン酢でいただいてみた。

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ひと切れいただいて、細長いカツとして供された理由がよくわかった。最高に濃い状態のカツだから、かぶりつくというよりも、小さめなひと切れにポン酢しょうゆをたっぷりつけて、少しずついただくのが最適。これはお酒を飲む人にとってはおつまみにもなるのではないだろうか。

 

念のため、標準のソースとプリンスソースを試してみた。

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上がプリンスソースで、下が特製とんかつソース。

どちらもビジュアル的には申し分ないと思うのだけれど、バラかつにいちばん合うのはおろしポン酢しょうゆだと思う。こんなに体が酢を欲したことがあっただろうかと思うほどだった。

プリンスソースは、買うと、ふつうのソースの3倍くらいの値段がする。せっかくなので、キャベツの千切りにかけていただくのがおすすめ。「高いソースっておいしいなぁ」という純朴な感想が得られるはずである。

〆にお漬物をつまみながらお茶をいただき、日常に戻る。

 

はじめて行ってからというもの、秋葉原に買い物に行くたび、せっかくだから特別濃いものを……と思い、かなりの頻度で立ち寄るようになってしまった。

 

とんかつの脂に魅了されている方は、一度、この「バラかつ」と向き合うことをおすすめする。

 

紹介したお店

▼本店は浅草橋駅から徒歩7分ほどのところにある。

 

著者プロフィール

ココロ社
ライター。主著は『マイナス思考法講座』『忍耐力養成ドリル』『モテる小説』。ブログ「ココロ社」も運営中。 

ブログ:ココロ社
Twitter:ココロ社 (@kokorosha) | Twitter

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