こんにちは。さすらいの畦道ライダー、四国案内人の林ぶんこです。
私は現在、愛媛県宇和島市に住んでいます。四国と九州の間の宇和海に沈む夕日が美しい場所です。
いつもはのんびりした空気が流れる南予地方ですが、2018年7月の西日本豪雨ではひどい被害を受けてしまいました。
宇和島市の吉田町や西予市の野村町、大洲市など、至るところで河川の氾濫や地すべりが起こり、美しかった海岸線やみかん山がズタズタに……。大規模な冠水や土砂崩れで多くの方々が被災され、穏やかだった南予の暮らしは変わりました。
今回の西日本豪雨もしかり、災害はいつ何時、どんな形でやってくるか本当にわかりません。自然災害を避けることはできませんが、普段からそれに備えておくことはできます。
みなさんは非常時への準備はしていますか?何をどのくらい備えていますか?
そして、実際避難した場合、避難所ではどのようなものが配られているのでしょうか?また避難時に食べたくなるものって何でしょうか?
今回は、土砂崩れで一時期孤立してしまった宇和島市吉田町の避難所に取材をさせてもらいました。非常時に備えておきたい食べ物とグッズに加え、これを知っていれば役立つ!というワザなどをまとめてみました。
これを機に、どうか自宅の備蓄をもう一度、見直してみてくださいね。
- 甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨
- 土砂崩れで孤立した吉田町奥南地区
- 実際に避難していると何が食べたくなるのか
- 約1週間を自力で乗り切れるように備える
- 【今回のまとめ】
- 愛媛ミカン発祥の地、吉田町 復興に向けて
甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨
▲自衛隊車両がずらりと整列した西予市立野村小学校グラウンド
2018年の6月終わりから7月はじめにかけて降り続いた記録的な大雨。
広島、岡山、愛媛など西日本の広い地域にわたって洪水や土砂崩れを発生させ、200人以上の方が亡くなり、多くの人が家や職場を失うという甚大な被害をもたらしました。
土砂崩れで孤立した吉田町奥南地区
被害をうけた地域は広範囲に及びますが、今回は愛媛県宇和島市にある吉田町奥南地区について。
吉田町は柑橘栽培が盛んな南予の小さな町。海の中に山が突き出ているような、海と陸地が入り組んだリアス式の海岸を持ち、山の下のわずかな平地に道を通して小さな集落が続いています。
奥南地区は、↑の写真左側に見える半島の向こう側にあります。
土砂崩れで集落が孤立してしまい、停電、断水と過酷な状況の中、道路が復旧するまで船で救援物資が運ばれた地区です。
取材時は8月中旬過ぎと豪雨災害からひと月以上たっていましたが、土まみれの防波堤、海に流れこんだ瓦礫の山、緑の山の所々に残る茶色の筋のような土砂崩れの跡、と奥南地区へ続く道のあちこちに豪雨災害の爪痕が見られました。
このお宅では人的被害はなかったそうですが、土石流の凄まじさが伝わってきます……。
実際に避難していると何が食べたくなるのか
吉田町奥南地区には約1,600人、640世帯が住んでいます。集中豪雨時は土砂崩れ、河川の氾濫、停電、断水……と、家にいられる状況ではなかったため、ほとんどの方が公民館や小学校などの避難所に身を寄せていたそうです。
多くの方が、「雨」だけでこんなに被害が出るとは思っていなかったようで(そうですよね……)、大雨、山が崩れる轟音と停電の暗闇の中、着の身着のまま避難されてきたそうです。
そしてみなさん口を揃えて、「豪雨の日は極度の緊張からなのか、朝昼と食べなくても空腹を感じなかった」といいます。ただ、暑い中で救助活動を行うなど、体力は使っているし、喉も渇く。でも水道は使えない……という状況で、一番困ったのはやはり水がないことだったそうです。夕方、救援物資を積んだ船が来るまでは、まだ稼動している自動販売機を見つけては飲み物を確保していたとか。
被災直後にまず困るのは飲料水含め、水がないこと。そして次に問題になるのは食糧です。
避難所のひとつ、奥南公民館を担当された宇和島市吉田町奥南地区の地域おこし協力隊員、渡部武士(わたなべたけし)さんは、その孤立した当時の食事情について、こう話してくれました。
「最初の救援物資が届いたのは被災当日の夕方5時頃で、ごくわずかなアルファ米(炊いた米を乾燥させたもの。湯や水を注いで食べる)と水、毛布10枚だけでした。
その翌日、地区にある備蓄品倉庫の鍵が届いたので、レトルトのカレーや豚丼にパックごはんがついたセットの非常食や飲用水などをようやく地域の方へ配ることができたんです。そして、4日後くらいから白いごはんをにぎっただけの小さなおにぎり2個パックが1人あたり1日に1回届くようになりました。
でもそれだけじゃ全然足りなくて、地域の方が持ち寄った食材でどうにか賄っていた状態ですね……。きちんとしたものが十分な量で届くようになったのは被災から1週間くらい経ってからだと思います。ですから、やっぱり1週間分くらいの食糧は自分で準備しておくべきですね」
ふだんから備えておくことがいかに大事か、この証言だけでも十分にわかりますね……。
地区に通じる道が復旧してからは、1人1日あたり下記の写真くらいのものが非常食として受け取れるようになったとのこと。パンやレトルトの非常食、缶詰などです。
渡部さんいわく「今回僕が配った非常食の中で一番喜ばれたのはパックごはんとフリーズドライの味噌汁ですね。アルファ米よりパックごはんのほうが評判がよかったです。
非常時に一番食べたくなるのは、やっぱり温かい白いごはんと味噌汁、という人が多いみたいですね。温かいものを口にすると落ち着きますから、停電でもお湯を沸かせるカセットコンロは絶対持っていた方がいいですよ」とのこと。
さらに、食欲がない時でも食べられそうなものも非常食として準備しておいてほしい、と渡部さんは続けます。
「食欲がなくてカップラーメンはいらないという方でも春雨スープなんかだと食べられる人もいたようです。なので、スープ類も持っておくといいですね。
それからふりかけと缶詰。缶詰は魚肉缶だけじゃなくて、みかんなどのフルーツもあるといいです。さっぱりするからと欲しがる方が多かったので。
あとは何といっても美味しいものですね。大変な時ほど美味しいものが体力、気力を向上させますから。僕のオススメは井村屋のえいようかんです。非常食とは思えないほどよくできたようかんなんですよ」
なるほど、説得力があります。非常時で精神的な負担が大きいときほど、美味しいものの存在はありがたいものですね。
▲渡部さんが担当した避難所 奥南公民館
また、避難生活が長くなると野菜不足になりがち。これを補えるものを用意しておくといいということです。保存がきくもの、たとえばレトルトの野菜スープや紙パックの野菜ジュース、サプリメントなどを用意しておくのがよさそうです。
このほか、避難所で配られる非常食は塩分濃いめのものが多いです。塩分制限をされている方は気を付けて下さい、とも渡部さんはおっしゃっていました。
約1週間を自力で乗り切れるように備える
愛媛南予地区の避難所の自治体担当者や被災された方々にお話を伺って、防災グッズとして用意しておきたいものをまとめました。
災害援助が整うまでの約1週間を自力で生活していけるように準備しておくこと、これが重要です。
まず、絶対にあったほうがいいのはポリタンクです。誰に聞いても最初に挙がりました。
災害時、電気は比較的早い段階で復旧するようですが、水はなかなか復旧しないもの。
飲料用はもちろんのことトイレを流したり、手を洗ったり、水がないと非常に不便です。地域が断水した場合、道が通じていれば給水車は早い段階で回ってきますが、ポリタンクがないと水を分けてもらえません。
自宅はマンションの高層階だから大丈夫、と思っている人も要注意。地階に設置してあるポンプや電源設備などが水没してしまったら、当然、停電も断水も起こりえます。
普段から非常時の生活用水として浴槽などに水をためておき、ポリタンクをいくつか持っているようにしたいですね。
またゴミ袋を重ねてエコバッグや保冷袋に入れて口を結べば応急給水袋になります。
厚手のゴミ袋やラップ、ガムテープは非常時には本来の用途以外にもいろいろと役に立つので、普段からたくさんストックしておくと良さそうです。
というわけで、いろいろな方に聞いた話などをもとに、自宅の備蓄を見直してみました。
・ポリタンク
・カセットコンロ
・飲料水(ウォーターサーバー用の水12リットル×2)
・魚肉系缶詰
・果物系缶詰
・ふりかけ
・カップスープ類やインスタント味噌汁
・レトルト食品
・パックごはん
・マスク
・水なしシャンプー
・歯磨きシート
・簡易ぬれタオル
・非常用毛布
・アイマスク
・耳栓
・ラップ
・紙皿、紙コップ、割りばしなどの使い捨て食器
・ゴミ袋
・井村屋のえいようかん
・薬
我が家は家族3人。これだけのものはまさかの時に備えてストックしておきたいと思います(写真の量ではもちろん足りません)。
また、写真右上に浮き輪が写っていますが、吉田町では冠水した家からの救助時に浮き輪が役に立ったのだそう(実話です)。なので、捨てるくらいなら折りたたんで非常用リュックに入れておきましょう。
それから、寝袋やポップアップテントなどのキャンプ用品は、物置の奥にしまっておくより、車のトランクにしまっておくのがいいかもしれません。そのほうがすぐに取り出せるし、車で避難する際にも便利ですよ。
【今回のまとめ】
これまでの話をまとめておきます。参考にしてみてくださいね。
・1週間分くらいの食糧は準備しておく。
・非常時に食べたくなるのは温かい白いごはんと味噌汁。ごはんは、パックごはんもあると良い。
・カセットコンロがあったほうが良い。
・スープなど、食欲がないときでも食べられそうなものもあると良い。
・缶詰は魚肉系に加えてフルーツを。
・非常時ほど美味しいものがあると元気が出る。
・野菜不足を補えるものを準備しておくと良い。
・救援物資は塩分濃度が高めのものが多いので、塩分量に注意。
・ポリタンクは絶対にあったほうが良い。ゴミ袋+エコバッグなどでも応急給水袋は作れる。
愛媛ミカン発祥の地、吉田町 復興に向けて
宇和島市吉田町は愛媛みかん発祥の地で、愛媛の柑橘栽培は吉田町から発展したといわれています。発祥の地にふさわしく、吉田町の山々はこんな様子でシーズンにはみかんが鈴なりでした。
が、豪雨災害の後、上の写真の場所はこのようになってしまいました。
まるで別の場所のよう……。
ここだけでなく、至るところでみかん山が崩れてしまい、吉田町周辺のみかん畑はひどい状況。みかん山の復興には20年以上かかるともいわれています。
しかし、現地の方々は日々前向きに頑張っています。
私たちが美味しいものを口にできるのは生産者の方の努力と自然の恵みがあってこそ。この地を恵みの大地に戻すためにはいろんなものが必要です。私たちにできることはまず被災地のことを知り、募金などで支援することでしょう。筆者もできることから、お手伝いしていきたいです。
がんばるんぞ南予!
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