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「ポンジュース」の味は毎年変わってる…!? 製造元のえひめ飲料で味を決めるキーパーソンに会ってきた

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こんにちは。さすらいの畦道ライダー、四国案内人の林ぶんこです。柑橘生産量日本一を誇る柑橘王国愛媛を代表するジュースといえば、やっぱり「ポンジュース」です。昭和の昔からあり、懐かしい子供時代の思い出とともに日本人なら誰でも知っているポンジュース。 

今回は松山市にあるポンジュースの製造元である「えひめ飲料」を訪ね、工場見学をさせていただきながら、その変わらないジュースつくりのヒミツを探って参りました。

1. えひめ飲料へ

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松山市北部にある「えひめ飲料」本社にやってきました。遠くからでもポンジュースの文字がばっちり目立ちます。 

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工場横のこの方は、えひめ飲料の創立者の桐野忠兵衛 (きりのちゅうべえ)翁。右手に持たれてるのも、やっぱりポンジュース(ですよね??)。

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建物内に入ると 受付には、本家本元の「蛇口からポンジュース」が!愛媛FCのマスコット、オ~レくん、たま媛ちゃん、伊予柑太の姿もあります。

ポンジュースの“ポン”の意味は、日本一(ニッポンイチ)のジュースになるようにとの願いをこめて名付けられたのだそう。ちなみに英文字表記ではPONではなくPOMです。

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現在えひめ飲料ではこれらのジュースを販売しているのだそうです。ポンジュース以外にもこんなにたくさんあるんですね!知りませんでした……。

 

2. 工場見学

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それでは、営業企画課の森永さんに工場へ案内していただきます。

 

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白衣に着替えて、手洗い消毒&エアシャワーを浴び、ブルーの作業服の高橋副工場長の後に続いて工場内へ潜入です!

今回はポンジュースの1リットルペットボトルの製造工程を見せていただきます。

 

みかんの搾汁

ポンジュースの元になっているのは、濃縮還元された温州みかんとブラジル産オレンジの果汁。温州みかんの収穫は10月から12月までの秋冬間ですので、その間に1年分の果汁を搾汁してしまい、冷凍保管しているそうです。

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【写真提供:(株)えひめ飲料 2015年の搾汁風景】

みかんの巨大な山がゴロゴロと転がり、搾汁されていく工程はかなり面白いらしく秋の小学生の社会見学の人気コースになっているとのこと。

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【写真提供:(株)えひめ飲料】

松山工場では毎年秋から冬の間に約8,400トンもの温州みかんを搾汁し、濃縮果汁やストレート果汁へと加工しています。このトラックが1台10トンですので、ざっくりこのトラック840台分!ということになります。いやはや、すごい量です!

そして8,400トンの温州みかんから採れる果汁は約半分の4,200トン。皮や袋の部分など、果汁にならない部分は家畜飼料などとして利用されます。

ペットボトルに充填

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一般の人が入れないドアの向こうで、加熱殺菌されたポンジュースがペットボトルに充填されていきます。蒸気が立ち上り、かなり暑い製造現場です。

この充填直後の熱いポンジュースが、ライン上で徐々に温度を冷まされながら、検査、外包装、箱詰めされていきます。

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空のペットボトルが工場内に入ってきてから、製品になって箱詰めされるまでの所要時間は約1時間だそうです。

ちなみに、ポンジュースには5層構造になった「オキシブロックペットボトル」という内包物への酸素透過量が非常に少ない特殊なペットボトルが使われており、果汁の持つ美味しさや栄養分が損なわれにくくなっています。

検査

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充填後、ポンジュースはライン上で数々の検査をうけながら、直立したり横になったり、徐々に冷却され進んでいきます。

ここでは、直立で移動してきたポンジュースが静かにぞろぞろと横になって寝ていきます。面白い!

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さまざまな機械のチェックを受けてきたポンジュースたちは、最終段階として目視検査へと進みます。

ラベル~包装

検査に合格したポンジュースは、ここでラベルを装着されます。

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晴れて一人前、じゃなかった、一ポン前の おいしいポンジュースとなり、人々を喜ばせるために出荷準備に入ります。

まず、ロット番号が印字され、 

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 箱詰めされて、工場から隣の保管庫へと移動していきます。

松山工場では1リットル6本入りのこのケースが1時間に2,700ケース作られているのだそうです。

 

3. ジュースになる前の濃縮果汁を飲んでみる

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ポンジュースは安定した美味しさを保つために、ブラジル産オレンジと温州みかんの果汁を濃縮還元したものをブレンドして作られています。

「濃縮還元」とは果汁の水分を蒸発させて濃縮したものに、蒸発した量だけ水分を戻して元の濃度に戻す製法です。水分を戻す前の濃ーい濃縮果汁が、これ。 

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左から700%の温州みかん、600%のオレンジ。それぞれ7倍、6倍に水でうすめると右側の100%ジュースになります。

 

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見てください、濃縮果汁のこのとろっとろ感!

とろっとろ感を表す単位はBrix(ブリックス)といい、この温州みかんの濃縮果汁のとろっとろ度は63Brix。はちみつがだいたい80Brixくらいなので、かなりのとろとろ感だということがわかるでしょうか。

 

そして「飲んでみる?あまりオススメはしないけどねー」と、コップを渡されたのでチャレンジ。

濃縮700%ってどんなもんなんでしょう?かなり酸っぱそうな予感もしますが……。

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酸っぱくない!甘い!!

 

ドキドキしながら舐めてみたらなんと、全く罰ゲームな味ではありませんでした。ケーキにかかってるオレンジソースみたい。飲むんじゃなくて、ヨーグルトとかに入れたら断然美味しいな、これ。

と、予想を裏切って、酸っぱいというより甘~い温州みかん濃縮700%果汁でした。 ビックリ! 

もう一方のオレンジの方の濃縮果汁はマーマレードみたいで、パンにつけたい美味しさでした。

意外や意外、濃縮されたみかんの果汁って酸っぱいというより甘いんですね!いやー、初めて知りました。

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とろっとろの濃縮果汁の後、それに加水して100%に戻したものを飲んでみました。

が、今度は強烈な甘さがなくなった分、風味が弱く感じられ、なんだか味がわからなくなりましたよ……?こちらは予想外にあんまり美味しくないです。

濃縮果汁は、濃縮していく過程で、水分と一緒に果実本来の香りもとんでいってしまうので、ただ水分だけ足しても、このように「なんだこのオレンジの水は?」状態になってしまうんですね。

 

しかし、この濃縮還元(100%)に香料を足してみると、

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あれ!? 美味しい!!!

メイク前と後で別人になってしまう人がいますが、これがまさしくそう!香りをつけただけで、あのよくわからない味から、みかんの風味たっぷりの美味しいポンジュースになってしまいました!

美味しさには香りが必須なんですね。味覚って嗅覚なのか??

香りのあるなしでこんなに変わるなんて、改めてビックリです。

 

このように濃縮果汁を還元する時には、少し香料を足しています。しかし、果汁の持つ本来の甘さ、美味しさをなるべくそのままに味わってもらいたい、というのがポンジュースのこだわり。そのため、香料はできる限り少量、本来の果実が持っている程度に抑えているのだそうです。 

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濃縮還元ジュース、ストレート果汁。香りのあるもの、ないもの。とさまざまなオレンジジュースを飲み比べ、1人宴会のような机の上になってしまいました…。

ちなみに、濃縮還元とストレート果汁の違いは、濃縮還元は甘い、ストレート果汁は酸っぱいという感じでした。どちらも美味しいのですが、静岡育ちの私にとってなじみがあるのは、やっぱりストレート果汁かな……。

 

4. ポンジュースの味を決めるキーパーソン 

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このとろっとろ状態の濃縮液を毎回チェックして、味決めをされているのが、品質保証部長の野村さんです。

味決めの今の仕事に就かれて今年で12年目になる野村さんが、一番苦労されていることは、やはり味のばらつきを抑えることなのだそう。

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「柑橘は、同じものでも収穫時期によって味が違っちゃうんですよね。温州みかんなら、ほら、シーズン初めは酸っぱくて、だんだん甘くなってくるでしょ。自然のものだからどうしても味が変わってきちゃうんですよ。でも、なるべくそれを抑えて、一定枠内に味を揃えるのは、やっぱり大変ですね」

 

──どうやって毎年同じ味にしてるんですか?

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「同じ味にはしていません。全く同じにはできないんですよ。味の基準として大まかなワクみたいなものはあって、もちろんその中にはおさめています。でもやっぱり自然のものだし、細かいところまでは調整できないですね」

 

──じゃあ、実はポンジュースって毎年味が違うんですか?

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「はい、違っています(笑)。違いがわからないように味を決めているんですが、もうずーっとポンジュースを飲んで下さっているお客さんの中には、僕ら以上に繊細な舌を持っている方がいらっしゃって、今年のポンジュースの出来について、なんてお電話をいただくこともあります(笑)」

 

──今年のポンジュースの出来について、ですか。まるでワインみたいですね(笑)。

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「そうなんですよ。ストレートだともろに果実の当たり外れがでやすいので、2種類の果汁のブレンドにしてリスク回避をしています。その方が味も安定しやすいんですよね。

だけど、その濃縮果汁が同じ果汁のはずなのに、各ロットによって味が違うんですよ。保管場所や保管期間によってまた味が変わってきちゃうから、難しいんです」

 

──同じ果汁なのに、そんなに違うんですか!?

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「元は同じ果実とは思えないほど味が変化している場合もあります。なので、各濃縮果汁のロットの味をチェックして、“味の暴れ” が出ないよう組み合わせを考えます。そして使用ロットを指定してから、還元してジュースを作っています」

 

──ロット決めで味が変わってしまうんですね。

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「そうです。番号を間違えたら使い物になりませんから、神経使いますね。

それから面白いのは、温州みかんとオレンジをブレンドするとそれぞれの短所が消えて、互いの長所だけが引き出された味になるんですよ」

 

──へぇー。温州みかんとオレンジジュースの組み合わせって、1+1>2のような最強の組み合わせなんですね。結婚式の祝辞とかでそんな夫婦になりなさいって言われそうな(笑)。

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優れた味覚を持ち、動く高機能センサー(と呼ばれている?)野村さん。普通の社員さん以上に体が資本。風邪をひいたり鼻がつまったりしたら仕事になりません。そのため健康管理には人一倍気を使っているはず!と思って、今度はご自身についてひとつ聞いてみました。

f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「え?風邪ひかないように気を付けていること?」(しばらく考える野村さん)

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f:id:g-gourmedia:20180629134704j:plain「別にないですねぇ。何にもしてないけど、考えてみたらもう何年も風邪はひいたことないですね」 

お肌ツヤツヤの野村さん。お隣の営業企画課の田本さんも同じくお肌ツヤツヤ。

お2人ともお仕事上オレンジジュースはかなり頻繁に飲んでいるそうです。そして、営業企画課の方々も風邪で休む人はここ数年いないそうです。これはやっぱり、みかんに風邪予防効果があるといえるんじゃないでしょうか……!

 

5. ただ飲むだけじゃない!ポンジュースの裏ワザレシピ

ホテルの朝食バイキングとかでやってみるといいですよ、と営業企画課の方にオススメされたポンジュース裏ワザレシピを最後にご紹介します。

実は、ポンジュースはトマトジュースと混ぜても美味しくなるんだそうです。

ということで、やってみました! 

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ポンジュース3:トマトジュース1 の割合でいれてみました。

ルックスは、ほぼほぼトマトジュース調です。そして、気になるお味の方は…

 …おいしい!

 普通にコレおいしいです。見た目と反対に味はほぼオレンジジュース。濃くて甘いオレンジジュースって感じで、あまりトマトジュースの味はしません。みかんのコクがより増した感じ。

これは確かにイケます!トマトジュースが苦手な人でもこれなら無理なく飲めそうです。ブラッドオレンジのジュースだよ!とか言って飲ませちゃってもわからないかも。

 

そして、ポンジュースって普通に飲むだけじゃなく、料理に入れても美味しいって知ってました? 愛媛ではポンジュースを入れてごはんを炊く「みかんごはん」というものがあるくらい、ポンジュースは料理にも使われています。

これからの季節にぴったりなポンジュースを使ったそうめんつゆや、冷しゃぶだれなどのレシピをえひめ飲料のホームページで紹介しています。飲むだけじゃなくて、お料理にも使えるポンジュース、夏にかけては一家に一ポン必ず常備しておきたいですね。

ポン de レシピ | ポンジュースを使ったレシピ集

 

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今回お話を伺ったえひめ飲料 企画開発部営業企画課のみなさま。(左から)越智課長、森永さん、田本さん。ありがとうございました!

 

【取材協力】

株式会社えひめ飲料
https://www.ehime-inryo.co.jp/index.html

 

プロフィール

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林ぶんこ

相棒エストレヤと四国の畦道や山道をトコトコするさすらいの0850(オバハン)ライダー。

ブログ:四国トコトコ
Twitter :@tepo11734


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