こんにちは。ライターの斎藤充博です。
飯を炒めただけなのに、メチャメチャうまい料理、チャーハン。ところでアレって作るのが大変そうに思えるのです。
鉄鍋にご飯を入れて、何度も振り回す……。まあ1回くらいだったらやれるかもしれませんが、プロは注文が入る度になんどもそれをやるわけです。実際はどうなんだろう?
というわけで、今日はチャーハンの専門店「カニチャーハンの店」渋谷店に来てみました。店長の新垣さんにチャーハンを作るのってどうなのかを聞いてみましょう。
(なお、ぼくは間違ってものすごく気が散る柄のシャツで取材に来てしまいました。記事の内容には全く関係ありません)
チャーハンを作るのは大変だけど慣れる
――早速なんですが、チャーハンを作るのって大変じゃないですか?
新垣 私は「カニチャーハンの店」でチャーハンを作って15年ほどになります。さすがにもう慣れましたね。
――その言い方だと、最初はやっぱり大変だった……?
新垣 大変でしたね。調理員として入社すると、最初の1ヶ月間「研修」をやるんです。そこでチャーハン作りの基礎を習います。
――チャーハンに1ヶ月。
新垣 といっても、1日中チャーハンを作っているというわけではありません。店舗運営に関することもいろいろ習います。ただ、最終日には「チャーハンを作る試験」があるんです。
新垣 会社の偉い人がこちらをじっと見ている中でチャーハンを作るんです。あれは緊張しましたね……。
――ちなみに新垣さんは1日どのくらいのチャーハンを作るんでしょうか?
新垣 バラつきはあるんですが、100食くらいです。ちなみに1食を作るのに鍋を振る回数は10回くらいですね。
――じゃあ1日1000回……? すご……。
新垣 3人前まではまとめて作るので、1000回にはなりませんが……。改めて言われてみるとけっこうな回数ですね(笑)。もっとも、試験を突破しても、いきなりそれだけの量をこなせるわけではないんです。最初は1日10~20食くらいから。社員が横について作り方をチェックしながらです。
――大変そう! と思っていたんですが、会社もやさしいですね。ちゃんと見ていてくれる。
1日に100食のチャーハンを作る男の腕です。モリっと太く、たくましい。
試しに腕相撲対決を申し込みました。ものすごく強い。左手で行っているのは、ぼくの利き手にあわせているからで、新垣さんは右利きです。それなのに、全然勝てません。
――ハア、ハア、メチャクチャ強いじゃないですか。
新垣 右手でお玉を持って、左腕で鍋をふっていますから。左腕にも筋肉はついていると思いますね。
なるほど。チャーハン職人と腕相撲するときは利き手じゃない方にも注意した方が良いといえるでしょう。ぜんぜん汎用性のない情報ですが。
チャーハンを作ってもらおう
ここからは新垣さんにチャーハンを作っているところを見せてもらいます。
業務用のガスコンロ。さすが、家庭用では絶対に出ない火柱が上がっています。
鉄の中華鍋。油がいい感じに馴染んでいて、ピカピカしています。持たせてもらったんですが「これを10回振ったらもうおれは今日の仕事おしまいでいいや」って感じの重さです。1食しか作れないな……。ひとり暮らしの昼飯レベルですね。
中華鍋に油を入れて熱します。
溶いた玉子は2つに分けます。1つは鉄鍋で炒り卵に。もう1つはご飯にかけておいて、ご飯と一緒に炒めます。
中華鍋にご飯を押しつけていって……
バッっと返す。鍋のふりがとてもコンパクト。動きを最小限に抑えているという感じ。これがきっとチャーハンを1日作り続けるコツなんでしょう。
お皿に盛り付け、最後にカニを乗せて「かにチャーハン」が完成……! 炒めていた時間は50秒ほど。あっという間です。
うまい。お米がパラパラを通り越して、サラッサラなんです。まるで水のように口の中に入ってゆく……。
――シンプルだけどめちゃくちゃうまいですよね。これ、なにか秘密があるんですか?
新垣 カニの風味を味わっていただくために、味付けは控えめにしていますね。油の量も普通の中華料理屋さんよりずっと少ないと思います。
――あー! たしかに。中華料理屋でチャーハンを頼んで食べると、お皿の底に油が貯まっていること、ありますよね。「カニチャーハンの店」ではそういうのないですね。
新垣 開店した当初は、お客さんがぜんぜん来なかったんですよ。チャーハンの専門店は認知がなかったと言うことだったんだと思います。本部の偉い人からも「あの不採算店、いつ閉めるんだ?」って言われていたらしいです。
――そんな過去が……。今では大人気店ですよね。ぼく、ここではないけれども大宮駅ナカにあるお店にしょっちゅう行っていましたよ。
新垣 ところで……。斎藤さんも1回作ってみますか? チャーハン。鍋を振るところだけでも。
――えっ。良いんですか?
チャーハンを作ってみよう
まず新垣さんが最初の工程を全部やってくれて……
ぼくにバトンタッチ。中華鍋はやっぱり重たいですね。膝のバネを使って鍋を振ろうとした結果、なんかへっぴり腰になっちゃっています。
それから、奥で見ている新垣さんのうれしそうな顔! なんなんだ。
ご飯を鍋の中でぐるっと返す。ひっくり返ったことはひっくり返ったんですが、ご飯が鍋の外に飛び散っちゃいました。
新垣 すごい。すごい。大きな中華鍋でご飯をひっくり返すの、なかなかできないですよ。
――ホントですか! チャーハン試験だったら、点数いくつもらえますかね?
新垣 (笑)点数は付けられないですが、かなり才能ありますよ。当社で1ヶ月の研修が2週間で済むとは思います。
自分がヘンにうまくできちゃったもんで、なんかチャーハン職人のすごさが微妙にわかりにくくなってしまったような。チャーハン上手な自分がうらめしい……。
とはいえ、かきまぜ続けるのはやっぱり大変。聞いてみると「手首の角度が重要」とのことです。
新垣さんは自然な角度で持っていて、ぼくは不要な力が入ってしまっているわけです。なるほど……。このせいで、ぼくはチャーハンを1皿作るのに汗だくになってしまいました。
さて、そもそもの疑問に対する答えはこんなところでしょうか。
Q:チャーハンを作るのって大変じゃないの?
A:作るのは大変だけれども、職人さんはテクニックを抑えている
当たり前と言えば当たり前の結論……。
カニチャーハンの店にはいろんなメニューがあるぞ
せっかくなので他のメニューも紹介させてください。これはエビ中華マヨチャーハン。まずエビがでかい。フライドエッグも乗っていて、食べごたえがすごいです。
カニのユッケ。生卵とコチュジャンとカニ。今まで考えたことのなかった組み合わせだけれども、食べてみたら、首がもぎとれるほど納得しました(おいしさに激しく何度もうなずいたという意味です)。
半熟玉子のかに玉チャーハン。オムライスみたいなかわいい見た目。ちょっと甘いあんがかかっています。
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今までぼくは軽いノリで「チャーハンうめえな~~~」って食べていましたが、やっぱり作り手は努力していました。それにしても試験があるとは……。またチャーハン食べに来たいと思います!
行ったお店

- ジャンル:チャーハン
- 住所: 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町31-4 篠田ビル3F
- エリア: 渋谷
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TEL:03-5784-2443
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。
プロフィール
斎藤充博
1982年生まれの指圧師(国家資格所有)。指圧師なのにインターネットで記事を書くことをどうしてもやめられない。
ツイッター:@3216
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ホームページ:下北沢ふしぎ指圧