焼き鳥が1本50円!
焼き鳥が1本50円の居酒屋さんがあると聞きつけ、湯島に行ってきました。上野エリアです。
東京メトロ千代田線・湯島駅の2番出口を出てすぐのところに、今回お邪魔する「天神下 あん」さんがあります。タイルに直描きされている「50円」の文字がひときわ目立ちます。
1本50円ならいっぱい焼き鳥が食べられるなあ、とお店に入ると
怒涛のメニュー短冊。
壁という壁に、規則性なくベタベタと貼り付けられている様は圧巻。書かれているメニュー名もユニークなものが多く、つい壁ばかり見ちゃう・・・。
まずは看板メニューを
ドリンクも、生ビール380円などお手頃。私はホッピーセット(中200円、外300円)をオーダーしました。
複数名で訪問すると、お通しにキャベツが登場。おかわりできるのがうれしいです。
キャベツとは別に、その日のお惣菜を合わせたお通しも。このお皿、中央に丸いくぼみがありまして、たぶん「ソーサー」であると思われます。味は、おいしい。
豊富な焼き鳥メニュー。50円で提供しているのは、豚ナンコツ、むねあぶり、むね、かわ、ねぎまの5種類でした。それぞれ1本ずつ、いただいてみます。
左から、むねあぶり、ねぎま、むね、豚ナンコツ、かわ。全部塩味にしました。
サイズは小ぶりながら、味は絶品。特に、サッと炙った鶏むね肉にワサビが乗った「むねあぶり」がたまらない。むねのレアな食感をワサビがピリッと締めてくれます。
そして「あん」の名物はもうひとつ。それは店頭に置かれていた牡蠣です。
お店に入るときは全然気づいていなかったけれど、立派な岩牡蠣が店頭にごろごろありました。大きさによって価格は異なり、その日いちばん大きなものはひとつ1,800円とのことでした。その紹介を受けながら「じゃ、ソレください」と言えたら恰好いいんですが、懐具合というものがありまして・・・」。困っていると「養殖もありますよ!」と店主さん。
2つで600円とリーズナブルながら、ポン酢ともみじおろしの演出もあってかずいぶん立派。大きいから、とそれぞれ半分にカットしてくださってました。お気遣い、嬉しいです。食べやすくなりました。
見た目だけでも堪能できますが、味にも大満足。岩牡蠣になるとどれだけおいしいんでしょう。1,800円クラス、一度はいただいてみたいですね。
「あげすぎポテト」に「裏切ステーキ」・・・謎のメニューの数々
さて、看板メニューはいただきました。大満足でした・・・と、基本を押さえたところで、ついに入店以来ずっと気になっていた「謎の短冊メニュー」たちと触れ合うときが来ました!
ご覧の通りの豊富すぎるメニュー量ゆえ、一部のみとなりますがオーダーしてみました。
まずは、あげすぎポテト(190円)。確かにカリッとよく揚がってます。マクドナルドのポテト、ふにゃふにゃ派の人はごめんなさい。カリカリ派の人は必食。私はどっちも好きですが。
さて、これは何でしょうか。
チーズとろ~り・・・正解は裏切ステーキ(580円)です。
チキンステーキの上に合挽き肉、上からデミグラスソース&チーズ。いろんな食感と味わいが詰まった580円とは思えぬクオリティに感動しつつ・・・何ゆえ「裏切」なのか、店主さんに伺ってみました。
「お客さんの(ステーキに対する)期待を裏切るからです」
くっ、確かに想像を裏切られた!!してやられた感!
合挽き肉をお通しキャベツに乗せていただくのも、おすすめです。これが「裏切食い」ってやつだぜ!どうだ店主さん!あっ、もういない・・・(お料理以外のお仕事を全部ひとりでなさっているので、お忙しいのです)。
続きましてはこちら。
ここまでのすべてのメニュー、オーダー時に「これってどんなお料理ですか?」と事前確認せずにお願いしていたのですが、裏切ステーキ以上に想像できなかったメニューがこの、ぬるぬるスキン(250円)でした。
注文を受けるや否や、厨房へ「ぬるぬる、ひとつね!」とオーダーを通す店主さん。そういう略称なのか。多少どきどきしておりましたが、目の前に現れた料理の正体は「ウナギのヒレ」。それで「ぬるぬる」なんですね。とはいえ目の前のそれはカリッと素揚げされており、正しくは「カリカリスキン」ではないかと思います。
忙しい店主さんを引き留めてお話を伺ってみれば、こんなふざけたメニュー名ながら、使用しているヒレはなんと某有名店のものだそう。うなぎのタレを絡めていただく、スナック感覚のうなヒレ。出自を伺った途端になんだか格式高いものに感じられてきましたが、料理名でいい具合に気が抜けます。そのぐらいがちょうどいい。
続いての謎は「インド人ビックリ」(480円)。ターメリックな色彩が期待を膨らませてくれます。カレーどす。
登場したのが、 こちら。
ライスでもナンでもなく、既視感のあるポテト(あげすぎポテト)が添えられています。
ネーミングの理由は一体・・・。確認してみましょう。
「何度も同じ質問で申し訳ないんですが、これは何ゆえ“インド人びっくり”なんでしょう…」
「インド人もびっくりするくらい辛いから、です!」
えー! /(^o^)\
恐る恐るいただいてみると、確かに辛い・・・のですが、牛すじカレー風の家庭的な味わいは、どこか優しさ・あたたかさを感じさせてくれるほど。シンプルに言えば「まったくもってインド風ではない」ということになります。これは白米と合わせて食べてみたい!
カレーの流れで、〆ごはん系の変わったメニューもお願いしてみましょう。
めんなしラーメン(680円)! 糖質制限中の皆さんにも安心の一品です。味は醤油・味噌の2種類から選べます。
▲醤油
▲味噌
具は同じです。たまごに炙りチャーシュー、メンマにもやしに、
麺代わりの絹ごし豆腐がたっぷり。
めんなしを侮ることなかれ。小ぶりのどんぶりに入っているのに、なかなか食べごたえがあります。汁に浸かったもやしの旨さは、ラーメンファンなら誰もがわかってくださることでしょう。チャーシューは炙るひと手間がかかっており、口に含んだときの香ばしい香りは「めんなし」からくる貧相なイメージを粉々に打ち砕いてくれます。
ううう、どれもこれも愉快なメニュー名なのに、いい仕事しやがって・・・!クラスにいた「ふざけてばかりで先生によく怒られるのに成績優秀な男子」みたいなのやめて!ときめいちゃうから!!
定番メニューももれなく、安くてウマイ
謎メニューで昂ぶった心を落ち着けるべく、安心と信頼の文字列で綴られた「お馴染み居酒屋メニュー」も数点お願いしてみました。
まぐろカマ焼きは480円というびっくりお手頃価格です。大きくはありませんが、むしろちょうどいいくらいのサイズ。大根おろしをたっぷり乗せていただけるのがうれしいし、生臭さが残りやすい血合いの部分も、おいしくてペロリでした。
変わり種だと、もんじゃ焼き(600円)あたりでしょうか。ステーキ用の鉄板に乗って、ジュージュー音を奏でながらテーブルにやって来ます。そこからの加熱ができないので、焦げが作りにくいのがたまにキズでしょうか。
このままでも桜海老の香りと駄菓子風味に大満足できますが、明太子、チーズ、カレー粉、赤ウインナーがそれぞれ100円でトッピングできるそうです。
こういうメニューでも、お通しキャベツが大活躍します。
それにしても、どれもこれも安い。ここはひとつ「あん」さんのメニューの幅の広さを知りたいと思い、高級な岩牡蠣以外で最も高いメニューをお願いしてみました。
アンガス牛の肩ロースステーキ(200gで1280円)であります!某立ち食いステーキ店より安い気が・・・。
ソースはみんな大好き焼肉のタレ風のお味です。別名、ごはんがすすむ味。肉汁たっぷり~!とか、とろける~!とか、そういうのじゃないんです。「安心できる肉」とでも言いましょうか。肉を食ってるぞ、という実感を噛みしめました。
お客様とともに変わり続ける“あん”ダーランド
「あん」さんは今年で創業から11~12年くらい経つそうです。今でこそ壁が短冊でフサフサですが、最初の1年ほどは、落ち着いた雰囲気のお店だったのだとか。あっという間に現在の短冊スタイルとなり、今に至ります。最初の1年は、さぞや無理をしていたんでしょう。マイペース全開の店内、とても和みます。
店内を覆い尽くす短冊は常に変化しているそうで、注文が入らないメニューはどんどん外されてしまいます。
「古い紙のメニューは、人気メニューってことなんです」
なるほど!来店時、オーダーに悩んだら年季の入った短冊に注目するとよいかもしれません。
ちなみに写真中央の「やきおに」はそろそろ外す予定だとか。新規のお客さんは頼まないし、頼む人は常連さんなので短冊は必要ない、という判断だそうです。
空いた「やきおに」スペースには次なる新参者が現れるわけですが、ユニークなメニューの数々、どうやって考えているんでしょう?
「みんなで考えているんです。というより、お客さんのリクエストがメニューになっていることが多いですね。“あげすぎポテト”はお客さんからの“よく揚げたポテトが食べたい”とリクエストがきっかけです。そのお客さんが命名しました。
“裏切ステーキ”は、“薄切りステーキ”を頼もうとしたお客さんの言い間違いから生まれたんですよ!」
裏切ステーキ、誕生の背景に至るまでこちらの予想を裏切ってくるとは・・・。
短冊まみれの陽気なお店ですが、カウンター席にはお酒がズラリ。せんべろ居酒屋とは思えぬ充実ぶりです。
「湯島という場所柄、お酒に詳しいお客さんが多いんです。メニューを見ずに“○○をソーダで割って”といった注文をされる方も多いので、すぐ対応できるように、ある程度は揃えています」
お酒の種類も、へんてこりんな短冊も、お店を愛するお客さんたちとの絆の証なんだなあ。居心地のよさの理由がわかった気がします。
なんと女性同士で訪問すると金宮焼酎が無料になるというので、確実に今後もお邪魔します。夢は、私が命名したメニューの短冊が掲出されること! とりあえず「ぬるぬるスキン」から「カリカリスキン」への改名を提案しましたが、結果やいかに。「裏切ステーキ」を超える何かを生み出してみたいもんです!
紹介したお店
天神下 あん
TEL:03-5818-3121
住所:東京都文京区湯島3-46-8
営業時間:月~土 12:00~24:00
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。
著者プロフィール
85年生まれのアラサー銀座OL。今のところ独女です。人生の楽しみは食べること。”食べものエッセイスト”を自称し、ブログ「言いたいことやまやまです」にて食べもの関連記事を公開中。好物はスーパーの総菜コーナーの白身魚フライと、料理の汁に浸した白米ORパン。お酒はハイボール&焼酎派です。
ブログ:言いたいことやまやまです
Twitter:@やまま