日本を代表する料理の一つといえば「そば」。
その歴史は古く、少なくとも500年前には現在のような形で食されるようになっていたようです。
そばの食べ方は全国各地で様々ですが、中でも日本三大そばの一つにも数えられ、長い歴史を誇るのが「出雲そば」。その名の通り、島根県出雲地方の郷土料理として親しまれています。
……といっても、どんなものなのか、出雲以外の方にはピンとこないかもしれません。
やはり食を語るには、実際に食べてみなければ!
東京で「出雲そば」を食べられるお店
ということで、東京で出雲そばが食べられるお店「錦織(にしこおり)」にやってきました。
店内はあたたかい光に包まれたスタイリッシュな空間が広がっており、カウンター席の前にはガラス張りのそば打ち部屋があります。
ここで職人さんの技を間近に見ることができるというわけですね。
……そして実は今回、スペシャルなゲストにお越しいただいています!
映画『たたら侍』(5月20日公開)の錦織良成監督と、主演の青柳翔さんです!
【たたら侍】
5月20日公開予定。第40回モントリオール世界映画祭 ワールドコンペティション部門 最優秀芸術賞作品。EXILE HIROがプロデュースを務め、錦織良成氏が監督・原作・脚本を手がける。主演は劇団EXILEの青柳翔で、錦織監督とは映画「渾身 KON-SHIN」(2013)以来、2度目のタッグとなる。
舞台となるのは奥出雲の小さな村。生まれながらに玉鋼をつくることを宿命付けられた青年・伍介は村を守るために武芸を磨き、やがて侍に憧れて旅立っていく――。
(C) 2017「たたら侍」製作委員会
実はこの「錦織」はEXILEのHIROさんがプロデュースしたお店。HIROさんは錦織監督作品に惚れ込んでおり、店名も錦織監督のお名前から付けられたそうです。
また、錦織監督は出雲出身であり、青柳さんも出雲とは浅からぬ縁があるのだとか。これはもう、ぜひお二人と一緒にいただきたいですね!
では、さっそくご紹介しましょう。こちらが錦織の名物「割子蕎麦」です!
【割子蕎麦】(900円)
む!?
ちょっとビジュアルに驚いてしまいました。
そばの入った丸い器が三段重ねになっている……?
これはいったい、どうやって食べればいいのだろう……。
わからないことは素直に聞こう!
ということで、
料理長の和田さんに教えていただくことにしました。
――お忙しいところすみません。出雲そばってどうやって食べるのですか?
和田さん「お椀型の器は割子(わりご)といいます。一番上の器につゆをかけ、薬味をのせて召し上がってください。一段目のそばを食べ終わったら器を外し、残ったつゆを二段目にかけてから、また薬味をのせて食べます。三段目も同じようにして食べます」
―― へー! なるほど、だから三段重ねになっているんですね。
撮影中、出雲そばをよく食べていたという青柳さんは食べ方もばっちり!
筆者も和田さんの教えを忠実に守って食べてみると、これはおいしい……!
そばの香りが強い!なんていうか、今まで食べてきたそばと香りが全然違うんです。
つゆはかなり甘めで、キリッとしたしょうゆベースの関東のつゆとはぜんぜんタイプが違います。また、「余ったつゆを次の器に移す」という作業は初体験で、ちょっと新鮮な感覚でした。
薬味にはネギ、かつおぶし、海苔、そして左手前には普段そばの薬味ではあまり見かけない"もみじおろし"が!
でもこれが甘いつゆで味付けられたそばにぴったりのアクセント! うんまぁ!
和田さん「出雲そばでは、もみじおろしはポピュラーな薬味ですね。出雲からさらに西の方にいくとわさびも薬味に使われるそうです。わさびの有名な産地があるからでしょうね」
青柳さん「とてもおいしいです! 懐かしいですね。映画の撮影で出雲に行ったとき初めて食べたのですが、よく現地のおいしいおそば屋さんに連れて行ってもらいましたよ。こうしてまた東京でも食べられるのが嬉しいですね」
錦織監督「うん、旨いです!僕は出雲が地元だから昔からよく食べていました。出雲そばって、東京のそばに比べて黒いのが特徴なんです。東京に来たら、そばが白いからびっくりしましたよ」
――たしかに、江戸三大そばの一つ、更科そばなんかはもっと真っ白ですよね。それに、一口食べてみて香りの強さにビックリしました。
和田さん「出雲そばは、そばの実の殻を剥かずに、殻ごと挽くんですよ。だから穀物感やそばの香りが強く出るんですね。麺も少し太めだし、香りは強いし、良い意味で荒々しさのようなものが感じられると思います。
当店ではそばの実を石臼で挽いているのですが、一回挽いた後に殻の状態を見て、もう一度割りたい殻だけ入れて二回挽きしています。それから、十割なのもこだわりのポイントです」
――なるほど……錦織ならではの石臼二度挽きに加えて、十割そばだからこそ、こんなにそばの風味がしっかり味わえるんですね。ところで青柳さんは撮影中、出雲の食事もいろいろと楽しまれたのですか?
青柳さん「ええ。現地の方から差し入れをいただいたりして、恵まれた現場でしたね」
錦織監督「青柳くんは出雲によく行ってるんですよ。この『たたら侍』もそうですけど、前作の『渾身 KON-SHIN』も隠岐の島で撮影でしたし、プライベートでもちょくちょく行ってるよね」
青柳さん「そうなんです。釣りをしに隠岐の島へ……」
錦織監督「全部合計したらすでに半年くらいは滞在してるんじゃない? 他のスタッフも、すっかり出雲に魅了されちゃった人が多くて、嬉しい限りです」
青柳さん「食べ物がおいしいですよね。仁多米(にたまい)、しじみ、うなぎ、それに、やっぱりこの出雲そば!」
――初めて食べる味でしたが、ちょっとクセになりそうなおいしさですよね。東京のそばが万人向けだとしたら、より力強くて濃厚な香りと甘さが余韻に残る出雲そばは、好きな人にとことんハマりそうな味わいだと思いました。
和田さん「出雲そばの他の食べ方では、釜揚げもおすすめですよ。そば湯を器に入れて、そこにそばを入れ、さらにつゆをかけて好みの濃さのかけ汁にして食べるんです。私が出雲そばを好きになったきっかけでもありますね」
――へー!そば湯でそばを食べるんですね、おもしろい!
出雲は肉も魚もウマい!
さらにこちらのお店、おいしいのはそばだけではありません。
新鮮な肉や魚、野菜を使った様々な出雲料理が充実しており、日本酒や焼酎と一緒に楽しむことができるのです。ほんの一部ですが、料理長・和田さんのオススメメニューを紹介します。
【奥出雲和牛のカルパッチョ】(1,200円)
く、口の中でとろける……!奥出雲和牛の甘味がしっかりと感じられて、いくらでも入ってしまいそうです。前菜に最適!
【石見ポークのすきしゃぶ】(2人前 4,000円)
薄切りの石見ポークを贅沢にすきしゃぶで!豚肉の自然な甘さはまさに絶品……。大量のネギを肉で巻いて食べるのが錦織流だとか。このネギがまた甘くておいしいのですよ……!シャキシャキ感のある状態でどっさりのネギを巻くのがポイント!
出雲は肉も最高もおいしいということを教えてくれる一皿でした。ぜひ食べてみてほしい。
【のどぐろと宍道湖しじみの酒蒸し】(2,100円)
のどぐろとしじみも島根の特産品。春らしく菜の花も添えてありました。こちらのお店では海産物もぜひ味わっていただきたい……!日本海に面した島根県は海の幸にも恵まれているからです。高級魚と名高いのどぐろは脂がのっていて、ホロホロっと崩れるほどやわらかい!そして宍道湖のしじみはとにかく身が大きいんです。プリッとした身に旨みがギュッとつまっています。うーん、贅沢!
店内の様子
また、目黒川沿いなので、お花見の季節には美しい桜がこんなにも近くに。取材にお邪魔したときにもちょうど桜がお出迎えしてくれました。
桜を鑑賞しながらゆったりと食事できるとは……なんて贅沢な空間!
壁に目をやると、そばちょこがずらり! 壮観です。それぞれ柄が異なっているので、見ているだけでも楽しくなってしまう。
戸隠そば、わんそこばと同様、日本三大そばの一つに数えられるほどの出雲そば。初めて食べると、その香りの強さとつゆの甘さにビックリするかもしれませんが、個人的には相当好きな味でした。そばだけでなく、お肉もお魚もたっぷり味わえる錦織。おいしいお料理に、大満足でお店を後にするのでした。
本日お越しいただいた、錦織監督と青柳さんがタッグを組んだ映画『たたら侍』については「レッツエンジョイ東京」で!
中目黒に『たたら侍』参上!?青柳翔さんと錦織良成監督が出雲そばの名店で映画『たたら侍』を語る!
紹介したお店
「たたら侍×ぐるなび」公開記念キャンペーン
『たたら侍』とぐるなびがコラボして、公開記念キャンペーンを開催中!
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著者プロフィール
山田井ユウキ
フリーライター。雑誌「料理王国」「MacFan」などで執筆。
ワインとカメラがないと生きていけません。