まいど憶良(おくら)です。
ラーメンスープにレンゲが立つ、これ程濃厚なスープを見たことがあるだろうか。
いや、ない。(反語)というくらい特徴的なスープのラーメン屋があると聞き、京都は左京区一乗寺にやって来ました。
開店前にはそれが例え、底冷えがすると評判の京都で、
しかも雪が降っていようとも、公共交通手段では行きにくい場所だと言われていても、
行列に並んでまでも食べたい
そんなラーメンが食べられるという評判の人気店があります。
看板を探すより行列を探した方が早いと言われる名店ですが、実はこの一乗寺のあたりは関西屈指のラーメン激戦区なんです。
その中でも特別異彩を放つのがここ極鶏のラーメン。
店内はさほど広くなく、テーブル席が2つと、
5人掛けカウンターの合計13席です。
メニューはシンプル。
鶏だく、赤だく、黒だく、魚だくと、いろいろありますが、基本形は鶏だく700円です。
ごはんを頼んでも850円。しかもお代わり無料。
玉子かけご飯セット900円を頼む人も多いようです。
看板商品の鶏だくラーメンが出来るまで
奥にあるのがスープの入った寸胴。
そのズンドウの左では弱火にかけられたスタンバイ的なスープ、
そして手前が出すラーメン用に加熱されるスープ。
加熱されると、マグマのように、ボコッ、ボコッとスープが震えます。
液体が加熱されている反応ではないです。
麺を茹でます。
麺は麺屋棣鄂(ていがく)さんに特別注文して作ってもらっているエッジの立った四角い麺。
麵屋棣鄂と言えば昭和6年創業の、京都製麺所の雄です。
が、今や全国の有名ラーメン店から引く手あまたの超有名製麺所です。
普通の麺ではスープの力強さに負けてしまって、麺が口の中にいる事がわからないくらい頼りなくなってしまうという事で、特別存在感の強い噛みごたえのある麺を作ってもらっているんです。
さて、スープをお玉ですくってラーメンどんぶりへ。
よく見かけられるのは、小さな鍋からそのままザーッとスープが流されるという光景ですが、
ここのスープは半固形物扱いです。
スープをどさあぁっと注ぎます、という表現が合いそうですね。
この高さから普通のスープを注ぐと、半分くらいはこぼれそうです。
たぶんですが、鍋を傾けてもざーっとは流れないと思います。
湯切りに入りました。
ちゃっ、ちゃっと。
麺をスープに投入、ではなくて、
スープの上に麺を乗せます。
そこへチャーシューが乗りました。
これも普通のチャーシューだとスープに負けるという理由から、大判で厚めに仕上がっています。
メンマ。コイツも存在感半端なし。
全てのパーツが普通の物だとスープに負けてしまって存在感がなくなってしまうんです。
白髪ねぎも同じ理由で、辛味が強いもの。
さぁ、出来上がりです。
この方向から見るとメンマが、いかに頑張ってその存在感を出そうとしているかがわかります。
こちらの角度だと、チャーシューがスープに乗っている様子が見られます。
レンゲが立ってしまうほど濃厚なスープは半固形物と言っても過言ではない
レンゲ、スープに立つ!
レンゲを刺すと、立ったままです。
実際に持ってみて頂けるとわかるんですが、このレンゲが結構重いんです。
麺を掴んでリフトしましたが、そこにスープは一滴たりとも確認できませんでした。
そう、麺だけ掴んでもダメなんです。
スープなんて、全く絡んできません。
正解はこうです。
スープと一緒に麺をつかむ感覚。
そして一気に、ずぞぞっと口に。
これは、なんだっ!というくらいのインパクト!
ラーメンを食べている感覚とはちょっと違う感じです。
一番近い感触は、濃厚マカロニグラタンを食べている感じか・・・。
いや、ちょっと違う・・・。
もしこれと同じことを豚でしてしまうと、くどすぎて味が破たんしてしまいそうですが、鶏だからこそ成り立つ。そんなラーメンですね。
旨みが溶け込んだスープではなく、鶏の旨味を固めたもの。ゼリー、いや違う。
とにかく、間違いないのは世界の中でもここでしか食べられない物です。
正に、鶏ラーメンの極限のスタイルですね。
あっという間の完食です。
これ程濃厚にもかかわらず、全然くどくないんです。
途中で白髪ねぎと一緒に、そしてチャーシューをはさんで、メンマを食べてと、変化をつけつつ食べました。
スープ自体が圧倒的な存在感を持っているので、途中に区切りを入れないとスープに圧倒されただけで終わってしまったという事になりかりません。
スープは、結局一度もすすらず。
レンゲですくってパクッと食べた感じです。
これも近い感覚としては、水分が少なくなってきたおじやをレンゲですくっている感じでしょうか。
あるタレントさんの有名な、「カレーは飲み物だ」という名言がありますが、私も言わせていただきます。
麵屋極鶏のスープは、食べ物だ。
ここで店長さんのお話を。
憶良 :とにかく特徴的なスープですね。なかなか鶏ガラだけで出る濃度ではないように思うのですが、鶏肉なんかも入っていたりするんでしょうか。
店長さん :そうですねぇ、以前オーナーがそんな感じの事を言っていたようにも思いますので、あるいはそうなのかもしれません。
憶良 :やはり、企業秘密で言えないと・・・。
店長さん :いえ、従業員の誰も、というよりもオーナー以外の誰もこのスープの作り方は知らないんです。
憶良 :こういうスープを作ろうというような、きっかけのようなものもご存知ないですか。
店長さん :とにかくありきたりではない、今までにない物。
すべてのお客さんが想像したこともないもの、他所では絶対食べられない物という事をコンセプトに、10年くらいの時間をかけて作り上げたスープです。
憶良 :それを鶏で、というのはどういう事でしょう。
店長さん :豚骨で超濃厚というのであればいろんなところで食べられる。それなら鶏で勝負してやろうと。
憶良 :なるほど。 確かに超濃厚の鶏スープという事で考えると肩を並べる候補が全く思いつきません。
店長さん :そうですね、ここまで個性が強いと「まぁ、一生に一度くらいは話題性で食べてもいいけれど、もういいかな」とおっしゃるお客さんもおられます。
憶良 :ただ、ドはまりしてしまった人は、それこそ抜けられなくなる。
この濃度にはまってしまったら、他所のスープではとても満足できないですよね。
店長さん :そういっていただくと嬉しいです。
憶良 :4種類のラーメンがありますが、どんな特徴があるんでしょうか。
店長さん :ベースは同じ鶏だくですが、トッピングが違うという感覚でしょうか。
憶良 :では、残り3種類の中からもう一杯、赤だくをお願いします。
このラーメンを作るうえで、一番気を使っているところは何処でしょうか。
店長さん : やっぱり、スープですね。このスープが、なかなか繊細な性格なんです。
憶良 :と、いいますと。
店長さん :これだけ濃厚だと、実は冷めやすいんです。
憶良 :えぇっ。なかなか冷めないイメージがありますが。
店長さん :冷めやすいからと言って、熱し過ぎると風味が飛んでしまうので、加熱のサジ加減が難しいですね。
ぎりぎりを見極めて、全ての手順が決まります。
もちろん外で待っていただいて、店内に入っても待っていただいて、やっと着席してからまだ待っていただくというわけにはいきませんので、すぐにお出しできるタイミングをはかって作ります。
並んで頂いている時にオーダーを頂いていますので、タイミングをはかりながらしっかりと準備しています。
お客さんがトイレに入られたので作り直しすることも…
憶良 :パスタなんかは秒単位で味が変わってしまうから、出来たらすぐに食べないと。といいますが、そういう感覚なんですね。
店長さん :ですので、お客さんがトイレに立ったりするとちょっとドキドキします。
すぐに帰ってこられると問題がないのですが、あれっ、帰ってこない・・・となると、残念ですが作られたラーメンは破棄されて、もう一杯作り直す事となります。
憶良 :ええっ、なんと勿体ない。
店長さん :ですが冷めてしまったラーメンをもしお出しすると、「あぁ、美味しくなかった」という事になりかねません。
これだけ待って食べてこの味かぁ、とだけは思ってほしくないので、そこはもったいないとは言わずに最高の状態で出したいんです。
最高の状態でお出しして、それでも口に合わなかったという事であれば、それは仕方がない事だとおもいます。
これだけ独特の味が万人に受けるとは思いません。
ですが、最大限の努力なくして出したとしたら、それはやっぱり失礼な行為だと思うんですよ。
憶良 :神経ピリピリですね。ずーっとそれが続くと、大変なんじゃないですか。
店長さん :それはもう、クタクタです。
気が張っている営業時間内はそうでもないんですが、店が終わると、どーっと疲れます。
「気持ちも含めて、味なんですよ」
憶良 :最大限の気を使って、というのは例えばラーメンを作る以外のところでも?
店長さん :そうですね、例えば従業員がちょっと暇な瞬間が出来てしゃべっていたりなんかすると、『そんなだらだらと喋っているからこんなに待たされているんじゃないか』と思われるかもしれない。
そう思いながら食べると、やっぱり味って落ちるんですよ。
特に、私自身が待って食べるという事が嫌いなので余計にそう思うんですが、お待たせしている事がすでに申し訳ないという気持ちなんですね。
だから出来る事はすると。
タバコなんかもそうですね。食べている時に近くでタバコを吸われてしまうと、もうそれで全てが台無しだ、と考える方は非常に多いんです。
ですのでウチでは店の中ではもちろんですが、外で並んでいる時から完全禁煙です。
タバコを吸われる方には申し訳ないですが、そこは徹底しています。
憶良 :この張り紙は。
店長さん :ご近所さんから、自転車やバイクが邪魔になるとのご指摘がありまして、お客さんに告知して、更にスタッフがご近所を巡回してます。
人員を割いて、見回りまでしなくてもと言ってくださるお客さんもいるんですが、ご近所に嫌われる店ではいたくないですし、ウチの店がもとになってお客さんとご近所さんがもめるというと、結局は食べに来てくれたお客さんの嫌な思い出になってしまう。それは本末転倒ですから。
憶良 :客層としては、やっぱり若い方がほとんどという事になるんでしょうか。
店長さん :実は、お年を召した方も増えてきているんです。
憶良 :ちょっと勇気がいりそうですが。
店長さん :この辺も口コミで。思ったよりずっとあっさりしてて、おいしかったよと。
憶良 :ご近所さんとの付き合い方も含めて、お客さんを大切にしているからこそ、口コミも良い情報が広がっているんですね。
店長さん :と、思って頂けると、甲斐があるといいますか、よかったなぁと思います。
憶良 :そうこうしている内に赤だくの登場です。
これはまた、見事な赤です。
当然ですが、
レンゲは立ちます。
お味はと言いますと、これも見た目ほどは辛くないです。
私が辛さに強いというところもあるかもしれませんが、メチャ辛いもの好きという方だと物足りないと感じるかも、というくらいの程よい辛さです。
これもあっという間の完食。
美味しかったぁ。個人的には赤だくの方が好きです。
全種類食べたいですが、癖になりそうで怖いです。
ご馳走様でした。
憶良 :では、最後にお客様に一言願います。
店長さん :並んでいただいているお客様、本当に申し訳ございません。
整理券をお配りする方式にして、少しはお待ちいただく時間も緩和されたのではと考えていますが、それでも長い時間待っていただいていることに心苦しさを感じています。
とにかく一生懸命作らせていただきますで、なにとぞご容赦をお願い致します。
店を出て、並ばれている方に少しお話をお聞きしました。
なんと4人にお話を聞いて、うち3人が東京から、このラーメンを食べに来たとの事でした。
「前回は、1年前に、2時間待って食べました。
新幹線の時間ぎりぎりだったので5分ほどで食べ終わったんです。あまりにも美味しかったので、もう一度ゆっくりと味わいたいと思っての再訪となりました。
この1年間、待ちに待った味との再会ですので今日は思いっきり楽しんで帰りたいと思います。」
という男性。
東京から来た女性の二人組は、「このラーメンを目的にしたツアーを組みました。思ったほど並んでいなくてよかったです。出発前からワクワクで、本当に楽しみにしてきたんです。」と皆さん一度は食べないと損、という反応でした。
確かに賛否の分かれるラーメンかもわかりませんが、大勢のファン、特に遠方からのリピーターが多いのもまた事実。
一度はこの味を体験してみても良いのでは、と思います。
但し、スープは作り置きしない、そして人気店のため、スープがなくなってしまい、終了という事もありますのでご注意を。
場所など詳しくは公式ページよりチェック願います。
紹介したお店
近くの趣のある観光地
電車で1駅。叡山電鉄叡山本線修学院駅から
少し離れたところに
鷺森神社(さぎのもりじんじゃ)は紅葉の名所としても有名な観光スポット。
ですが、冬は冬で良いかと思います。
極鶏と一緒に回って見るのも
大変良ろしいかと思いました。
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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