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秋葉原駅ホームにある「ミルクスタンド」は、世界一回転の早い飲食店だ【東京別視点ガイド ぐるなび支店】

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▲総武線上下線ホームにあるミルクスタンド

 

実家が新小岩だったから、総武線にはよく乗っていた。

駅前のでっかいセガワールドでバーチャファイターをやるために、中学生のころから秋葉原に足しげく通い、総武線のホームを行き来した。少しでも早くプレイしたくて、秋葉原に到着すると自然と足早になる。

人混みにまぎれて急ぎ足になりながら、なんだか気になってしまって、毎回、横目でちらっと様子をうかがってしまう存在。それがミルクスタンドだった。

いまとなっては、駅構内にミルクスタンドがある都内の駅は、秋葉原ぐらいだそうだ。

 

 

 

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遠目には、キヨスクと大差ない外観。

だけど、店頭の看板にはかわいい牛乳瓶のイラストと「ミルクスタンド」と書かれた青い文字。商品ラインナップも牛乳に特化している。

メグミルクや明治乳業といった大御所から地方メーカーのマイナー牛乳まで取り揃え、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳、変わったところでは甘酒なんかもそろえている。小学校を卒業して以来、あまり口にすることのないビン牛乳が、横一列に並んだ姿は壮観であるし、どこか懐かしい。

さっと小腹を充たせるように、申し訳程度だがパンも売られている。パンを食べると言っても、座る席など当然ないから、立ち食いをして牛乳で流しこむ。

 

 

 

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天井から吊りさげられたメニュー表を見て、値段を確認するシステムだけれど、常連さんは一瞥もくれない。たいていはスーツ姿のサラリーマンか、なんの仕事をしてるのか分かんないようなおっさん。お釣りが出ないよう金額ピッタリをカウンターに置き、ぐっと飲んで、さっと帰る。30秒にも満たない見事な犯行。

常連さんたちのあまりにも洗練されたスムーズな手口が、他を寄せつけないムードになって、大量の人が行き交う秋葉原総武線ホームのなかで、聖域のように異次元のように浮かびあがり、中学生だった私の視線を惹きつけた。

今で言うなら、一見さんがラーメン二郎に感じる、とっつきづらくて怪しくも魅力的なムードに近いかもしれない。

 

 

 

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▲何十種類ものビン牛乳がキンキンに冷やされている

 

 

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▲フルーツ牛乳、コーヒー牛乳なんかもある

 

「急いで食事をしなければいけない必然性」を有した人間だけが立ち入ることを許される。そんな暗黙の了解を感じていたので、興味こそあれど、中学生の私には利用する勇気は湧かなかった。

 

 

 

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▲「売れ筋は時期によって違う」そうだ。現在は特売中の『みんなの牛乳』が人気だとか。

 

しかし、私も良い年齢。なんの仕事をしているのか分からないようなおっさんになっている。利用条件はもう充分に満たしていることだろう。

十数年の時を経て、はじめてミルクスタンドを利用してみた。

 

 

 

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パンのラインナップもたいへん硬派。

小倉、白、うぐいすと、あんぱんだけやたらと品ぞろえが豊富なことからも、ここの客層が推して分かる。

学生時分なら、迷わず「まるごとソーセージ」を選んでいたことだろう。

 

 

 

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牛乳とあんぱんを組み合わせたものを「定食」と呼ぶかいなかは置いとくとして、お店のおすすめは、やはり、あんぱん定食のようだ。

 

 

 

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遅めの朝食に選んだのが、この3点。

左から青汁、飛騨高山牛乳、ヤマザキのあんぱんである。

クラシックな組み合わせのなかに、攻めの青汁を投入した。

 

 

 

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ビンの青汁なんてあるんですね。

まずは青汁を一気飲み。どことなくトマトジュースのような味がして、少しだけ苦い。頭が冴えない寝不足の朝に飲み干せば、脳のクロック数がぐっと上がりそう。大人の飲み物。

 

 

 

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店の前に備えつけてある、テーブルとも言えない、鉄の直方体に寄りかかって、あんぱんを食べ、牛乳を飲む。

私の食事スピードは決して遅いほうではない。むしろ早食いに属されるほうなんだけど、食べ終わるまでに、お客さんが3回転した。メニュー表を見ることもなく「安曇野牛乳!」とピンポイントで商品名を叫び、ピッタリの小銭をカウンターに置き、一気飲みし、空瓶を返却。颯爽と階段をおりていくおっちゃんたち。

 

遠巻きに眺めているときはソロプレイと思っていた早業だけれど、間近で観察すると、店員さんとのタッグプレイなのだと気がついた。餅つきで杵をうつ人とこねる人の息が合っているように、店員さんはテンポよく牛乳を出して、ビンをひっこめる必要がある。

 

もしかしたら、世界一回転が早い飲食店じゃないだろうか、ミルクスタンド。

 

 

取材したお店 

店名:パンと牛乳の店 ミルクスタンド
住所:東京都千代田区外神田1 JR秋葉原駅 総武線ホーム
TEL:03-3251-3286

作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)

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東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo byGMO

 

東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/matsuzawa_s


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