こんにちは。指圧師の斎藤充博です。今日行くところは温泉です。
温泉の後って、食べ物が100倍くらいおいしくなりませんか。
実は東京に、安くて気軽に行ける良い温泉があるんですよ。
JR蒲田駅から徒歩10分の「蒲田温泉」
やってきたのは東京都大田区にある「蒲田温泉」。JRの蒲田駅から徒歩10分くらいの良い立地だ。
蒲田温泉は460円で入ることができる。
浴槽には正真正銘、無加水の温泉が満たされているが、設備としては「銭湯」になるからだ。東京都内では銭湯の価格は統一されており、どこでも460円である。
なにか法の抜け道みたいな話だな……と思うが、トクしているのは僕たち利用者の方だ。
ちなみに最近(2016/4/23)『昼のセント酒』という、主人公が実在の銭湯に行くドラマに登場した。
受付で聞いてみると、土日はドラマ効果で、若いお客さんが遠くから来ているそうだ。まあ僕も電車で1時間かけてきているんだけど。なんだかみんなと一緒のことしているの、恥ずかしいな。
温泉は濃厚な「黒湯」
(特別に許可をもらって営業時間前に写真だけ撮らせてもらいました)
実は東京都大田区には温泉を入れている銭湯が多い。このあたりにわいているのは、真っ黒な「黒湯」だ。
この温泉、ブラックコーヒー級の黒さがあって恐ろしい。魔界に温泉があるとしたら、蒲田温泉と同じ色をしているんじゃないだろうか。つまり蒲田は魔界ということになる。
黒湯は「高温」と「低温」に分かれている。しかし、低温でもだいぶ熱い! 高温の方は足先をつけるだけで「こりゃ無理だ」と脊髄反射のスピードで悟った。
温泉というと山に湧いているイメージが強い。都内のスパでは、遠くからタンクローリーで温泉を運搬していたりする。
しかし蒲田の温泉はこの場所で湧いている温泉である。一度入ると「見た目通りの、ものすごく濃い温泉」ということがわかる。
この「黒さ」がご理解いただけただろうか……。
この黒さの素になっているのは、フミン酸だ。古代の植物の堆積したものが地下水に溶け込んでこんな色になっているという。日本の温泉は火山性のものが多く、全国的に見ても珍しい温泉なんだそうだ。
蒲田温泉は美肌の湯ともいわれている。はっきりとわかるくらい肌ががスベスベになった。
おっさんの肌がスベスベになってなんか意味があるのか、という気もするが、単純にうれしい。
風呂上がりに500円で浴衣を借りることができる。
帯をピシッと巻いた瞬間に頭の中で「これで『温泉』が完全に完成したな……」と思った。この写真、どこからどうみても友達と行った温泉旅行のスナップ写真だろう。
80年の歴史の蒲田温泉
蒲田温泉の2階は宴会場になっている。お風呂のキャパの3倍以上はありそうな広さだ。
ここなら100%本気の宴会ができそうである。ステージに描かれた松のシブさにクラクラしてくるぜ。
蒲田温泉オーナーの島雪江さんに話を聞いてみた。
「うちはもう80年やってます。先代が浴場建築の棟梁でね。東京大空襲で焼かれたときも建て直して、営業してね。近所のお風呂のない人がみんな来たんですよ」
当初の蒲田温泉は娯楽というより、地域の人の必需品だったのだ。それにしても、空襲とは……温泉でホンワカしてしまった頭には歴史が深すぎる。
「この場所もね、最初はただの休憩所のつもりだったんですよ。食事も、サンドイッチとコーヒーくらいしか出さなかった。でも……カラオケ設備を置いちゃって。そしたらもう、お客さんからのお酒と食事のリクエストがすごくてね。結局宴会場になっちゃったわね」
どうみても宴会場ありきのスペースにしか見えなかったが、そんな経緯があったのか。長い時間が全てを正しく導き、広いところでみんながお酒を飲むようになった。これは絶対に正しいアップデートだと思う。
怪奇! 消えてなくなるビール
生中を注文。
温泉から上がった後のビールって、こんなに光り輝いている物だったっけ……? わからない。見つめているともう何もわからなくなってくる。
ジョッキに口をつけた瞬間、ビールが口の中で消滅してしまう。あれ? 飲んでいるはずのビールはどこに行ったんだ……と探っているうちに、ジョッキの半分がなくなってしまった。
もちろんビールは消滅なんかしていなくて、単に自分が飲んでいるだけである。
でも、みんなもここに来て風呂上がりにビール注文すればきっとわかる。マジで消えてなくなるぜ、これ。
釜飯の「米」がうまい
蒲田温泉でイチオシのメニューだという「温泉釜飯」だ。聞いてみたら別に温泉で炊いているわけではなく、ふつうの五目釜飯だという。
うん……。まあ……ふつうの釜飯。でもこれだけ温泉で気持ちよくなった後だから、何を食べてもうまいんじゃないかな……。
島さんは言う。
「このお米は、新潟の栃尾の山の棚田でとれたコシヒカリを使っているんです。ホタルが出るような山の湧き水で育てているお米ですよ」
……おお、なんだかすごそうだ。
「私は栄養士の免許持ってますからね。みなさんには身体に良い物を食べて欲しいんです。とくに良い温泉に入った後は、身体も疲れていますしね。温泉って、疲れるんですよ。
この釜飯の具は特別な物は入っていないですが、身体に優しい物を使っています。それから、素材がお米の味とケンカしないように取り合わせているんです」
なんだなんだ、期待を持たせすぎじゃないか。いろいろ言っているけど、銭湯についてる宴会場の釜飯だろうが……。いただきます。
この釜飯、ものすごくうまい。
島さんの宣言通り、釜飯の「米」が今まで食べたことのないくらいうまいのだ。
粒がはっきりと立っていて、香りが良くて、上品で。京都あたりの高級旅館で出てくるような感じのやつじゃないのか。
そんなところ行ったことないけど、これ以上の釜飯は多分ないだろう。 あっという間に釜飯の一合をたいらげてしまった。
以上、都心で温泉旅行気分に旅気分にひたれる蒲田温泉でした。
いつの間にかカメラの中に残っていた謎のツーショット写真。なんだなんだ、そんなに楽しかったのか、おれよ。
紹介したお店
蒲田温泉
TEL:03-3732-1126(みなさんにいい風呂)
住所:東京都大田区蒲田本町2-23-2
プロフィール
斎藤充博
1982年生まれの指圧師(国家資格)。「下北沢ふしぎ指圧」を運営しています。インターネットで記事を書くことをどうしてもやめられない。
ツイッター:@3216
ホームページ:下北沢ふしぎ指圧
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