まいど憶良(おくら)です。
前菜付きのパイ包みオニオンスープつけ麺という、とんでもなく個性のあるメニューがあると聞いて、奈良県は大和高田市にやって来ました。
普通のラーメン屋さんとは思えない、高級感の漂う店内。
めちゃくちゃ綺麗なお店です。
今回はこのお店「くろす」から、他所では絶対に食べられないラーメン&つけ麺をご紹介します。
フレンチシェフが作るラーメンとは?
まずは人気ナンバーワン、鶏煮込み塩ラーメン790円から。
器を温めるところからスタートするのは他のラーメン屋さんと同じなんですが、なんだか温め方もオシャレな感じがします。
次いで麺を茹でていきます。
メニューにより麺の太さ、加水率などを変えた麺を使います。
鶏煮込み塩ラーメンは全粒粉の中太麺。
これを3分ほど茹でます。
白濁したスープ。
仕上げに攪拌して空気を取り入れます。
器にはオリジナルのかえしがスタンバイしています。
秘伝の醤油だれと塩だれは2年かけてそのレシピが作られました。
奈良県産の片上醤油、フランスゲランド産の海塩、北海道利尻産の真昆布や本枯れ鰹節などを使って完成させたこだわりの塊です。
そこにスープを加えます。
スープは希少価値の高い生後450日以上飼育された、鹿児島産さつま知覧どりの種鶏(しゅけい)を使って、実に12時間かけてとったもの。
店長さん :知覧どりからはコラーゲンと旨みたっぷりのスープがとれます。他の鶏ではなかなかこの旨みは出ないですね。
麺が投入されると
青ネギ、白ネギ、玉葱、そしてフライドエシャロットが加わって
仕上げにロースチャーシューが飾られます。
フレンチシェフが作るラーメンのお味は・・・。
食感、味ともに繊細さと大胆さが感じられるラーメンというイメージ。
まずは九州は知覧どりから取った濃厚スープが、ガツンっと来るのですが、そのあと、さらっと優しい旨味が舌を包み、また良質の脂が持つ強いコクが時間差で舌を刺激してくる。
この甘みと旨みは知覧どりのガラから出たものだと思うのですが、雑味がなくワイルドさだけが前面に来ない所に凄味を感じます。
ナンバーワン人気メニューというのもうなずけます。
真空調理で旨味を逃がさずに作ったロースチャーシューもフレンチではよく使われる手法。
チャーシューと言うより、良いハムという感じ。
あっさりテイストながら噛みしめると旨みがじゅわ~っと広がります。
ガーリックチップやフライドオニオンではなく、フライドエシャロットと言うのにもこだわりを感じます。
かなり濃厚なスープですが、気づいたらなくなっていたというくらい、するっと完食しました。
前菜付きパイ包みつけ麺という未体験ゾーン
続いてはパイ包みのオニオンスープつけ麺1600円。
多加水の麺はモチモチとして弾力が強いのが特徴。
茹で時間も8分とかなり長めです。
麺の盛り付け準備を見ていても、もうフレンチって感じです。
話題のパイ包みオニオンスープ。
どんな仕上がりになるのか、ワクワクです。
限定20食。
注文から出てくるまでの時間もつけ麺のそれではない。
固形燃料が付いているのも、始めて見ました。
正に非日常。特別なメニューです。
作っているところは
もう完全にフランス料理。
この時点で、「今、つけ麺を作っています。」といわれると、
ええっ!うそっ! ってなりそう。
しっかりと8分茹でられた麺が丁寧に置かれて、
つけ麺の完成です。
まずは、前菜から頂きます。
チーズリゾットと、季節野菜のテリーヌ、スモークサーモン添え。
バルサミコとバジルソースは好みでつけながら。
とてもつけ麺を食べている風景ではないですが、一度は食べてみて損なし。
だって、他所では絶対に食べられない味ですから。
リゾットは途中まで食べて置いておきます。
このリゾットがこのお値段で付いてくるだけでもお得感あり。
しかも、単におまけとして付いてくるだけでなく、ちゃんとつけ麺と一緒にまた後で楽しめるんです。
パイ包みスープを頂くときに一番テンションの上がる瞬間がここ。
パイを割って中のスープを覗いた瞬間の、ふわっとした香り。
うおっ、美味しそう。
フレンチは、音を立てずに飲むために、スプーンを縦にして口に運ぶんでしたっけ・・・。
いや、つけ麺だからすする音が出てもいいのか・・・。
つけ汁と言っていいのか、スープと言えばいいのか。
まぁとにかく、旨い。
麺を付けて。
この絡み方が良い。
パイと一緒に食べても、モチロン良し。
艶々の麺は、そのまま食べても小麦の味を楽しめます。
風味が良いフランス産小麦など、4種類の小麦粉をブレンドして使っています。
最初食べたときにはつけ汁の濃厚さに、一気にお腹が膨れてしまうのではと思ったのですが、不思議なことに食べ進めるうちに食欲も増し、加速が付いて食べてしまいました。
つけ汁が冷たくなってきたなぁ、と感じたら固形燃料に点火。
最後まで温かく食べられますし、
残しておいたリゾットを加えて食べるとこれまた旨い。
ロースチャーシューもそのまま食べて良し、麺をくるんで良し、ちょっと加熱してもまた旨い。
付け合わせの野菜もそのまま食べても、スープにつけても良し。
自由な食べ方全てに応えてくれます。
コイツは楽しい!
最後に煮詰まったつけ汁を ”食べ” ましたが、これがめちゃくちゃ旨いんです。
よくあるのは、つけ汁に割り汁を足して味を薄くして飲むというシーンですが、これは逆に煮詰めて楽しむ。
こんな食べ方が出来るのも凄いです。
ラーメンの可能性を追求「スパイスカレーラーメン」
かなりお腹一杯状態ですが、新作のラーメンがあるとの事で、もう一杯だけ食べる事にしました。
スパイスカレーらーめん850円。
平たく言うとカレーラーメンなんですが、これがまた一味違う。
麺もくろすのオリジナル麺。
様々なアイディア、工夫も練り込まれたこれまた独特の麺に仕上がっています。
茹で時間は1分ちょっとくらい。
ラーメン好きの方には是非一度、麺をじっくりと味わってみて欲しいですね。
フレンチシェフが本気で作ったカレーらーめんって、もうなんだかどういうジャンルなのかもわからない感じですが、ここは黙って仕上がりを待ちましょう。
まずはスープが入り、
スパイスカレーらーめん用の特製油が回しかけられます。
5種のスパイス(内2種はスープの中に既に入っています)を効かせたラーメンが
ここに堂々完成。
煮卵のトッピングも素敵です。
豚バラスライスの脂の甘みが、スパイシーなスープと融合して口の中でスパークします。
トロっとした玉子の黄身も甘みと辛さの引き立てに一役買います。
もうお腹一杯と思っていた私の、別腹が作動。
これもまた他所では食べられないラーメンですね。
なにより小食が売りの私が3杯完食したことが驚きです。
なぜフレンチシェフがラーメンを作るのか
もともとこの店は創業400年と、歴史ある老舗料亭旅館が前身のフランス料理店「ヴェルデ辻甚」が、プロデュースしたラーメン店。
とのことですが、そもそもがなんでラーメンってところが知りたいのです。
店長さん :きっかけはひょんなところからなのからですが、「ヴェルデ辻甚」でお出しした鶏鍋の締めに入れた麺がめちゃくちゃ美味しいと好評で、これをメインに是非食べたいという声があがりました。
ならばと、どうせやるなら中途半端なことはせず、店舗も別に作って本格的に挑戦しようという事から始まったことだったんです。
憶良 :と、なると、もう美味しいラーメンは出来ているわけなので、後はとんとん拍子に店も出来上がって・・・
店長さん :と言うほど簡単にはいかなかったんです。
麺、スープの開発には実に2年かかりましたし、試作品の数も200を超えました。
憶良 :もう、美味しいものが出来ているのに?!
店長さん :ヴェルデ辻甚と言えば、この辺りでは料亭旅館の時代から頂いている信用という物があります。
いくらおいしいとはいえ、鍋の締めに入れた麺と、お客様にお出しする料理が同じレベルと言うわけにはいかないですから。
ですので、8店舗の有名ラーメン店のオーナーさんや、有名ラーメンブロガーの方にも食べて頂き、助言、苦言を頂きながらの開発になりました。
憶良 :一番大変だったのはどういう所でしょう。
店長さん : 皆さんに言われた事が、とにかく個性がある物、ここでしか食べられないメニュー。それがなかなか難しい。
それでもようやく納得のできる物を作り上げることができました。
こだわり抜いた味は、正にここでしか食べられない物となっています。
例えばパイ包みつけ麺。
フレンチテイスト、そして盛り付け。
技術もそうですが、料亭旅館時代からのおもてなしの心も含めて、出来る事はしっかりとやっていく。それがこの店の個性だと思って頂けるように努めています。
「奈良に旨いものなし」…だからこそ、旨いものにこだわる
志賀直哉の随筆「奈良」で有名になってしまったこの言葉。
関西圏では言われ続けてきたことですが、それだからこそ、この奈良から美味しい物を発信したい。
そんな熱い気持ちが伝わってきました。
今回紹介しましたスパイスカレーらーめんのように、定期的に新メニューにも挑戦し続け、伝統を守るだけで良しとしない、料理人の心が詰まったメニューを味わう事も出来ました。
ラーメンの790円はともかく、値段だけを考えると、つけ麺に1600円は高いと感じる方もいるかと思います。
それでもやっぱり、ここでしか食べられないご馳走をと、他府県からこの店を訪れる方も、そして他府県のリピーターも多いと言います。
フランス料理が好きな方にはリーズナブルにフレンチを楽しむことができる店として、また、フレンチシェフがラーメンを作るとどうなるのか・・・という所を楽しみに。
ラーメンが好きな方はこれだけ特徴のあるラーメンを、是非一度は楽しんで欲しいと思います。
お店の場所、営業時間などはこちらからチェックを!
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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